2020(02)
■目指す秋のチーム戦
++++
「――というワケで、そろそろ大学祭のことについても少しずつ話し合いましょう。ブース出展申し込みをしないといけないんですけど、MBCCでは例年通りDJブースと食品ブースで2スペース取って行きたいと思います」
まだ7月だけど、L先輩が切り出したのは大学祭の話。ブース申し込みとか責任者を決めなきゃいけないとか、何気にこの時期からやることはあるらしい。とりあえず責任者だけ決めちゃえばあとは秋学期に入ってからでもいいみたいだけど。
「で、食品ブースは1年生が中心になって回してもらいたいです。伝統的にそうやってるんで」
「回すって具体的に何をするんすか?」
「焼きそばのレシピは何気に毎年違くて、その開発とか材料費の計算、ガスや鉄板のレンタルや何かの調整とかがある。去年は高木とエージ、あとハナの3人がメインでやってたから、その辺に聞いてもいいし。あと、これは果林とも話してたんだけど、1年生6人を3人ずつ分けて、食品チームとラジオチームでそれぞれ動いてもらおうかなと」
もちろんもう一方のチームの作業をやっちゃいけないということはないけど、メインに据えられたチームの仕事を主に担って行くということらしい。2年生以上はゼミとかの都合も出て来るだろうからそっちの様子も見つつシフトに入って行くんだそうだ。
食品チームは焼きそばのいろいろ、ラジオチームは学年で担当する番組の構成を考えたりするのを担当しましょうという話になった。やっぱり1年生には大学祭という響きが魅力的なのか、みんなもうワクワクしてるように見える。特にシノとくるみ、それからすがやんが。
「誰か、食品チームの責任者をやりたいって人いる?」
「はいっ! あたしにやらせてください!」
「くるみがやりたいって言ってるけど、みんなそれでいいか?」
「いいでーす」
「よろしくお願いします!」
くるみは将来コンビニスイーツを開発するか、それを宣伝する広報になりたいとは聞いたことがある。スイーツと焼きそばとは似ても似つかないけど、やろうとしてることは食品の開発だから、好きな分野なのかもしれない。
「そしたら食品チーム、あと2人。あと、ラジオやりたいってヤツでも」
「はいはい! 俺はラジオやります!」
「じゃあ、シノが1年ラジオチームのリーダーでいい?」
「シノがリーダー? 不安すぎる……」
「ウソ!? レナ!? ウソだと言ってくれ!」
レナは口に出して言ってたけど、口に出さないだけで大多数のメンバーが同じことを思ってたんじゃないかなと思う。例に漏れず、俺もそう。だけど、自分もラジオやりますとササが立候補してくれてみんなホッとしたよね。
「くるみ、誰かコイツに右腕になって欲しいとかいうのがいれば指名してもいいぞ」
「えっと、そしたらサキに食品チームに来て欲しいなー」
「え、俺? いいけど、何で?」
「サキ、昔のノートとか読んでいろいろ知ってるだろうし頼りになりそうだもん」
「ああ、うん。料理はともかく、過去ログ探しなら任せて」
「L先輩! 俺も食品チーム行きます! せっかく大学祭だし、それっぽいことやりたいんで!」
「すがやんがこう言ってるけど、レナはラジオチームでいいか?」
「いいですよ」
「じゃ、シノ・ササ・レナがラジオチーム、くるみ・サキ・すがやんが食品チームということで2年生以上も協力して頑張って行きましょう」
3人ずつのチーム分けが終わった瞬間サキが過去の書記ノートを引っ張り出して来て、食品ブースはどのように運営していたのかを紐解いている。どんな焼きそばをどう作ってどう売るのか、それでいくら売れたのかを年度ごとに分析を始めた。
……分析はいいんだけど、去年はこれまでにないくらいに売れたらしいんだよね。その理由なんかも分析されたら居ても立っても居られないんだけど。そこには辿り着いて欲しくないなあ。でも会計帳簿とか書記ノートを見れば嫌でも辿り着いちゃうんだろうなあ。嫌だなあ。
「とりあえず去年は超えて行こうぜ! サキ、去年の売上っていくらだ?」
「ちょっと待ってね。えっと……え?」
「どしたの」
「22万ちょうど…?」
「22万!? すげー! やっぱ大学だからそんなモンなのか!」
「まあ、経費があるから丸々22万の利益が出たわけではないけど、それでも凄いよ。えっと、ね……過去数年の売り上げの中でも去年がぶっちぎりだ」
去年の焼きそばブースは、伊東先輩と高崎先輩の大活躍のおかげでこれだけの売り上げになったんだと思う。緑大のミスと準ミスターがいるブースっていう宣伝効果もかなり大きかったみたいだし。うん、俺の事には触れなくていいよ!
「去年の売り上げデータはあまり参考にしない方がいいかも。レシピとかは分析していいだろうけど」
「うーん、そっかー。3日で20万なら頑張れば行けるのかなーって思っちゃったけど」
「エージ先輩、去年は何が良くてこんなに売り上げが突出したんすか?」
「あー、去年はなー……4年の先輩らがエグかった。それに尽きる。お前らも、使える物は使っていけよ」
「はーい」
ありがとうエイジ、俺のことを掘り起こさず1年生をかわしてくれて。まさか女装ミスコンでワンツーフィニッシュしてしまった結果その直後から売り子として駆り出され続けたなんて言えないよ。だって女装だよ?
「あっ高木先輩、ソースにはやっぱりこだわった方がいいんですよね!」
「そうだね。ソースは焼きそばの味を決定づける物だからね。そこはケチっちゃダメだよ」
「おーいササ、レナ! ラジオの方も負けるな! やるぞ!」
end.
++++
大学祭のブース云々のチーム分け回。くるちゃんが食品ブースの責任者に立候補してくれました。サキの活躍が見られるか。
しかし去年の大学祭はMBCCの歴史から見ても頭おかしいことをやってるので、売り上げに関してはあんま参考になりませんね。大体ミスコンの所為だ。
そしてシノがリーダーのラジオチーム……ササレナがいるから大丈夫だとは思うけど、本当に大丈夫か…?
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「――というワケで、そろそろ大学祭のことについても少しずつ話し合いましょう。ブース出展申し込みをしないといけないんですけど、MBCCでは例年通りDJブースと食品ブースで2スペース取って行きたいと思います」
まだ7月だけど、L先輩が切り出したのは大学祭の話。ブース申し込みとか責任者を決めなきゃいけないとか、何気にこの時期からやることはあるらしい。とりあえず責任者だけ決めちゃえばあとは秋学期に入ってからでもいいみたいだけど。
「で、食品ブースは1年生が中心になって回してもらいたいです。伝統的にそうやってるんで」
「回すって具体的に何をするんすか?」
「焼きそばのレシピは何気に毎年違くて、その開発とか材料費の計算、ガスや鉄板のレンタルや何かの調整とかがある。去年は高木とエージ、あとハナの3人がメインでやってたから、その辺に聞いてもいいし。あと、これは果林とも話してたんだけど、1年生6人を3人ずつ分けて、食品チームとラジオチームでそれぞれ動いてもらおうかなと」
もちろんもう一方のチームの作業をやっちゃいけないということはないけど、メインに据えられたチームの仕事を主に担って行くということらしい。2年生以上はゼミとかの都合も出て来るだろうからそっちの様子も見つつシフトに入って行くんだそうだ。
食品チームは焼きそばのいろいろ、ラジオチームは学年で担当する番組の構成を考えたりするのを担当しましょうという話になった。やっぱり1年生には大学祭という響きが魅力的なのか、みんなもうワクワクしてるように見える。特にシノとくるみ、それからすがやんが。
「誰か、食品チームの責任者をやりたいって人いる?」
「はいっ! あたしにやらせてください!」
「くるみがやりたいって言ってるけど、みんなそれでいいか?」
「いいでーす」
「よろしくお願いします!」
くるみは将来コンビニスイーツを開発するか、それを宣伝する広報になりたいとは聞いたことがある。スイーツと焼きそばとは似ても似つかないけど、やろうとしてることは食品の開発だから、好きな分野なのかもしれない。
「そしたら食品チーム、あと2人。あと、ラジオやりたいってヤツでも」
「はいはい! 俺はラジオやります!」
「じゃあ、シノが1年ラジオチームのリーダーでいい?」
「シノがリーダー? 不安すぎる……」
「ウソ!? レナ!? ウソだと言ってくれ!」
レナは口に出して言ってたけど、口に出さないだけで大多数のメンバーが同じことを思ってたんじゃないかなと思う。例に漏れず、俺もそう。だけど、自分もラジオやりますとササが立候補してくれてみんなホッとしたよね。
「くるみ、誰かコイツに右腕になって欲しいとかいうのがいれば指名してもいいぞ」
「えっと、そしたらサキに食品チームに来て欲しいなー」
「え、俺? いいけど、何で?」
「サキ、昔のノートとか読んでいろいろ知ってるだろうし頼りになりそうだもん」
「ああ、うん。料理はともかく、過去ログ探しなら任せて」
「L先輩! 俺も食品チーム行きます! せっかく大学祭だし、それっぽいことやりたいんで!」
「すがやんがこう言ってるけど、レナはラジオチームでいいか?」
「いいですよ」
「じゃ、シノ・ササ・レナがラジオチーム、くるみ・サキ・すがやんが食品チームということで2年生以上も協力して頑張って行きましょう」
3人ずつのチーム分けが終わった瞬間サキが過去の書記ノートを引っ張り出して来て、食品ブースはどのように運営していたのかを紐解いている。どんな焼きそばをどう作ってどう売るのか、それでいくら売れたのかを年度ごとに分析を始めた。
……分析はいいんだけど、去年はこれまでにないくらいに売れたらしいんだよね。その理由なんかも分析されたら居ても立っても居られないんだけど。そこには辿り着いて欲しくないなあ。でも会計帳簿とか書記ノートを見れば嫌でも辿り着いちゃうんだろうなあ。嫌だなあ。
「とりあえず去年は超えて行こうぜ! サキ、去年の売上っていくらだ?」
「ちょっと待ってね。えっと……え?」
「どしたの」
「22万ちょうど…?」
「22万!? すげー! やっぱ大学だからそんなモンなのか!」
「まあ、経費があるから丸々22万の利益が出たわけではないけど、それでも凄いよ。えっと、ね……過去数年の売り上げの中でも去年がぶっちぎりだ」
去年の焼きそばブースは、伊東先輩と高崎先輩の大活躍のおかげでこれだけの売り上げになったんだと思う。緑大のミスと準ミスターがいるブースっていう宣伝効果もかなり大きかったみたいだし。うん、俺の事には触れなくていいよ!
「去年の売り上げデータはあまり参考にしない方がいいかも。レシピとかは分析していいだろうけど」
「うーん、そっかー。3日で20万なら頑張れば行けるのかなーって思っちゃったけど」
「エージ先輩、去年は何が良くてこんなに売り上げが突出したんすか?」
「あー、去年はなー……4年の先輩らがエグかった。それに尽きる。お前らも、使える物は使っていけよ」
「はーい」
ありがとうエイジ、俺のことを掘り起こさず1年生をかわしてくれて。まさか女装ミスコンでワンツーフィニッシュしてしまった結果その直後から売り子として駆り出され続けたなんて言えないよ。だって女装だよ?
「あっ高木先輩、ソースにはやっぱりこだわった方がいいんですよね!」
「そうだね。ソースは焼きそばの味を決定づける物だからね。そこはケチっちゃダメだよ」
「おーいササ、レナ! ラジオの方も負けるな! やるぞ!」
end.
++++
大学祭のブース云々のチーム分け回。くるちゃんが食品ブースの責任者に立候補してくれました。サキの活躍が見られるか。
しかし去年の大学祭はMBCCの歴史から見ても頭おかしいことをやってるので、売り上げに関してはあんま参考になりませんね。大体ミスコンの所為だ。
そしてシノがリーダーのラジオチーム……ササレナがいるから大丈夫だとは思うけど、本当に大丈夫か…?
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