2020(02)
■夏の分水嶺
++++
毎年この時期に、MBCCでは1年生が本格的な30分番組を作る練習をする。1年生が組みたい2、3年生を選んで1本の番組を作り、その同録を録るっていう。アタシたちも通ってきた道だし、去年はそれが派生して作品出展に繋がったというのもある。
今年の1年生は6人いる。だから軽く見積もっても3時間以上はかかるということで2回に跨って作品発表会が開かれることになった。で、その2回目が終わった後でアタシとLが抱いた感想は、嬉しくもあり難しくもあるという、なかなか贅沢な悩みになりそうな。
「今年の1年生はみんないいな。こう言っちゃ難だけど、誰も脱落してないって地味に凄くないか」
「それね。まあ、だからこそ夏合宿でも全員1年生ペアになってるんでしょ」
「緑ヶ丘だから何とかなるだろ的なアレか」
「そんな。でも、まだ完成してないけど本当に大丈夫かな」
「大丈夫だろ。確かにまだちょっと粗はあるけど、そんなものはこれからだ」
「みんな同じ人から同じような教わり方をしてるはずなのに、やっぱりちょっとずつ違うのって個性なんだろうね」
「そうだな。性格が出る部分は少なからずある」
やっぱり、シノなんかはハデな感じの演出をしたがっていたみたい。だけどまだやりたいことに本人の技量が追い付かないみたくて音的にはまだ全然だったけど。くるみは使うBGMが結構かわいい感じでポップな印象。でも相手を選びそう。サキは音も動きもちょっとかっちりしてる感じかな。もうちょっと滑らかな動きでもいいかも。
アナウンサー陣はササとレナが安定感抜群といった感じ。だけど特にレナは抑揚がちょっと少ない感じだからもう少しメリハリをつけられるようになるといいねという講評を受けていた。すがやんは人への共感性が高すぎて自分の意見が矛盾しがちという課題が浮き彫りになった。
それぞれに課題はある。だけど1年生のこの時期としてはかなりいいし、全員が全員真面目にサークル活動に取り組んで、ここまで仲が良いっていう学年はここ数年じゃなかったんじゃないかと思う。この子たちがこのままの調子で成長したら、どうなるか。
「秋の昼放送が本格的な戦争になるかな」
「このまま行けばな。俺たちもうかうかしてられないぞ、2年生も伸びて来るだろうし」
「ですよねー」
「仮に今番組やってるメンバーが全員秋も当確レベルをキープして、1年生6人も全員そのレベルに来たらどうするかっていう問題もある」
「それは問答無用で椅子取りでしょ?」
「そうだけどさ、1年生に昼放送の経験を積ませてやりたいなーって思うじゃんか」
「だからと言って3年が引くのも違くない?」
「まあなあ。難しいよなあなかなか」
昼放送のペア決めは総じて春より秋の方が難しいとは言うけど、それは1年生が上がってきたら人数があぶれるいう話だと理解する。今から考えててもしょうがないけど、その時が来る前にもちょっとは考えなきゃなあと思う。履修の関係もあるし難しいんだけどね。
もちろん今から1年生が全員当確って決めつけるのもよろしくない。予定が合えば夏合宿のモニター会を見に行って、それを見た上で決めないとね。高ピー先輩も去年はこのモニターでタカちゃんとエージとおハナの当確を決めたっぽいし。
「でもさ、向島が本格的に大変みたいね」
「大変って?」
「アナがヒロしかいないからこーたが急遽アナとして番組やってるんだって。何にせよやらないとって」
「2年生が1人で1年生も2人だろ。この先2、3年は体制を維持するだけで精一杯だろうな。インターフェイス全体のことを考えたときに、向島の国力衰退っていうのは割と真面目にヤバいんだよ」
「今の3年がいなくなったらもっと大変になるってことね」
「そういうこと。昼放送の枠を1つ増やすのに苦労してるって相当だろ」
「向島の昼放送って収録だし、ワンチャンウチであぶれた子を留学させてもいいんじゃない? 同じ豊葦だし距離的にもイケそうじゃない? まあ冗談だけどさ」
「留学か」
本当に冗談のつもりで言ってたんだけど、Lがこの留学案を真面目に受け止めるモンだから冗談だからねと繰り返し念を押す。ノリではいくらでも言えるけど、現実問題そう簡単に出来るようなことでもなさそう。向こうの都合もあるし、留学することになる子の気持ちもある。
今回の1年生番組の同録を繰り返し再生しながら、今後の事について考える。夏合宿に向けた動きのこともちょこちょこ耳に入って来ているから。タカちゃんが意外とやり手だとか、エージがスパルタとか、おハナが大変そうだとか。2年生もまだまだこれからだからね。
「ま、何にせよ夏を見てからだな」
「そうですね」
「秋学期が始まるとまた状況が変わるかもだし」
「学祭のこともあるからね」
「あ」
「どうしたのL」
「学祭で思い出した。ブースの申し込みとかしなきゃいけないんだ! 果林、次のサークルはそれぞれ代表者決める回にするから」
「了解でーす」
end.
++++
大学祭の本格的な準備は秋学期に入ってからですが、申し込みなどは早々に行う必要があるらしいです。緑大学祭回への布石。
今回は大学祭に限らず昼放送のことなど、秋に向けてツートップがいろいろ考えてるって感じで先を見ていますね。
全員欠けずにきゃっきゃやれてる学年は確かに今の2~4年で見てもなかったですね。殺伐としてたり行方不明だったり。
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毎年この時期に、MBCCでは1年生が本格的な30分番組を作る練習をする。1年生が組みたい2、3年生を選んで1本の番組を作り、その同録を録るっていう。アタシたちも通ってきた道だし、去年はそれが派生して作品出展に繋がったというのもある。
今年の1年生は6人いる。だから軽く見積もっても3時間以上はかかるということで2回に跨って作品発表会が開かれることになった。で、その2回目が終わった後でアタシとLが抱いた感想は、嬉しくもあり難しくもあるという、なかなか贅沢な悩みになりそうな。
「今年の1年生はみんないいな。こう言っちゃ難だけど、誰も脱落してないって地味に凄くないか」
「それね。まあ、だからこそ夏合宿でも全員1年生ペアになってるんでしょ」
「緑ヶ丘だから何とかなるだろ的なアレか」
「そんな。でも、まだ完成してないけど本当に大丈夫かな」
「大丈夫だろ。確かにまだちょっと粗はあるけど、そんなものはこれからだ」
「みんな同じ人から同じような教わり方をしてるはずなのに、やっぱりちょっとずつ違うのって個性なんだろうね」
「そうだな。性格が出る部分は少なからずある」
やっぱり、シノなんかはハデな感じの演出をしたがっていたみたい。だけどまだやりたいことに本人の技量が追い付かないみたくて音的にはまだ全然だったけど。くるみは使うBGMが結構かわいい感じでポップな印象。でも相手を選びそう。サキは音も動きもちょっとかっちりしてる感じかな。もうちょっと滑らかな動きでもいいかも。
アナウンサー陣はササとレナが安定感抜群といった感じ。だけど特にレナは抑揚がちょっと少ない感じだからもう少しメリハリをつけられるようになるといいねという講評を受けていた。すがやんは人への共感性が高すぎて自分の意見が矛盾しがちという課題が浮き彫りになった。
それぞれに課題はある。だけど1年生のこの時期としてはかなりいいし、全員が全員真面目にサークル活動に取り組んで、ここまで仲が良いっていう学年はここ数年じゃなかったんじゃないかと思う。この子たちがこのままの調子で成長したら、どうなるか。
「秋の昼放送が本格的な戦争になるかな」
「このまま行けばな。俺たちもうかうかしてられないぞ、2年生も伸びて来るだろうし」
「ですよねー」
「仮に今番組やってるメンバーが全員秋も当確レベルをキープして、1年生6人も全員そのレベルに来たらどうするかっていう問題もある」
「それは問答無用で椅子取りでしょ?」
「そうだけどさ、1年生に昼放送の経験を積ませてやりたいなーって思うじゃんか」
「だからと言って3年が引くのも違くない?」
「まあなあ。難しいよなあなかなか」
昼放送のペア決めは総じて春より秋の方が難しいとは言うけど、それは1年生が上がってきたら人数があぶれるいう話だと理解する。今から考えててもしょうがないけど、その時が来る前にもちょっとは考えなきゃなあと思う。履修の関係もあるし難しいんだけどね。
もちろん今から1年生が全員当確って決めつけるのもよろしくない。予定が合えば夏合宿のモニター会を見に行って、それを見た上で決めないとね。高ピー先輩も去年はこのモニターでタカちゃんとエージとおハナの当確を決めたっぽいし。
「でもさ、向島が本格的に大変みたいね」
「大変って?」
「アナがヒロしかいないからこーたが急遽アナとして番組やってるんだって。何にせよやらないとって」
「2年生が1人で1年生も2人だろ。この先2、3年は体制を維持するだけで精一杯だろうな。インターフェイス全体のことを考えたときに、向島の国力衰退っていうのは割と真面目にヤバいんだよ」
「今の3年がいなくなったらもっと大変になるってことね」
「そういうこと。昼放送の枠を1つ増やすのに苦労してるって相当だろ」
「向島の昼放送って収録だし、ワンチャンウチであぶれた子を留学させてもいいんじゃない? 同じ豊葦だし距離的にもイケそうじゃない? まあ冗談だけどさ」
「留学か」
本当に冗談のつもりで言ってたんだけど、Lがこの留学案を真面目に受け止めるモンだから冗談だからねと繰り返し念を押す。ノリではいくらでも言えるけど、現実問題そう簡単に出来るようなことでもなさそう。向こうの都合もあるし、留学することになる子の気持ちもある。
今回の1年生番組の同録を繰り返し再生しながら、今後の事について考える。夏合宿に向けた動きのこともちょこちょこ耳に入って来ているから。タカちゃんが意外とやり手だとか、エージがスパルタとか、おハナが大変そうだとか。2年生もまだまだこれからだからね。
「ま、何にせよ夏を見てからだな」
「そうですね」
「秋学期が始まるとまた状況が変わるかもだし」
「学祭のこともあるからね」
「あ」
「どうしたのL」
「学祭で思い出した。ブースの申し込みとかしなきゃいけないんだ! 果林、次のサークルはそれぞれ代表者決める回にするから」
「了解でーす」
end.
++++
大学祭の本格的な準備は秋学期に入ってからですが、申し込みなどは早々に行う必要があるらしいです。緑大学祭回への布石。
今回は大学祭に限らず昼放送のことなど、秋に向けてツートップがいろいろ考えてるって感じで先を見ていますね。
全員欠けずにきゃっきゃやれてる学年は確かに今の2~4年で見てもなかったですね。殺伐としてたり行方不明だったり。
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