2020(02)
■甘い世界の新たな視点
++++
「……ねえ当麻。北星はどうしたの?」
「くるちゃんとのデートの後からこうですよ」
「溜め息ばっかりよりはいいけど、これはこれでどうしたのって感じ」
北星が物凄い集中力でパソコンと向き合っている。北星は、普段は抜けているけど作品制作の時だけ覚醒するっていうタイプの子。だから作品を作ってるのかなって思ったけど、ひたすら同じ映像を繰り返し再生していて。
そっと脇から見ている物を確認すると、見ているのはスイーツの断面図動画。スッと包丁を入れて、横にパカッと開いてみるっていう感じの美味しそうな動画だね。あー、夕方に見ちゃダメだったな。おやつ食べたい。
「北星、これってどういう動画なの?」
「これは見た通り、スイーツの断面図です。よくグルメ番組なんかであるカットインのような、ああいう物です。このページっていうのが実はくるちゃんがやってるプチプラスイーツブログで、動画はくるちゃんが趣味で撮ってる物なんだそうです。こないだこういうのをやってるって教えてもらって、それで見てるんですけど。なかなか上手いなと思って。負けてられないなと」
「あ、創作意欲に燃えてるってことね」
「俺は食べ物にあんまり興味がないんで、何をどうすれば美味しそうに見えるとか、そういう考えになかなか至らないんですけど。でも食品というテーマの短い動画で、何をどう伝えればいいのかを押さえるのは大事だなと」
どうやら緊張して浮かれてばかりいたデートの中で、北星は映像作品に繋がるポイントを得てサークルに帰ってきたようだった。今まで自分がやったことのないテーマの作品に触れて刺激されちゃったみたい。悪いことじゃなくてよかったね。
私が聞き出した事情を当麻と雨竜にも伝えると、結局くるちゃん絡みじゃねーかと雨竜は呆れた様子。そう言いたくなる気持ちもわからないでもないけど、映像に着地するところがやっぱり北星らしいとは当麻。
「これ、くるちゃんは必ず2つ撮ってるんですよね。こういったクリーム系のお菓子や柔らかいお菓子だと、斬ったときにクリームが垂れたり断面がよれたりしてあんまり上手く撮れないらしいんです。クリームが垂れる絵もそれはそれでいいそうなんですけど、少し凍らせて、綺麗な断面を撮るというのがこだわりって聞いて」
「なるほどね」
「ただ、悔しいのが、どうすればもっと上手く撮れるかなって聞かれたのに答えられなくって。普段俺は結構いい機材を使ってやってるじゃないですか。だけどくるちゃんはスマホひとつでこれを撮ってて。やっぱり、一応映像をかじってる人間としては、聞かれた時にちゃんと答えてあげたかったなって。撮影環境を言い訳にしたくないなと思いました」
もしかしたら、くるちゃんとの出会いが北星にとって大きな成長の機会だったんじゃないかなと思う。普段やらないテーマとの向き合い方に、人との接し方のようなことにしても。
少し前までの北星なら、こんなこと天地がひっくり返っても言わない。「別に~、好きに撮ったらいいよ~」で終わりそう。それが、聞かれたことにちゃんと答えてあげたいって。
「そしたら北星、俺らもスマホだけで何か作ってみたらいいんじゃね? そしたらくるちゃんとの話題作りにもなるし、俺らも作品制作が出来るし一石二鳥じゃんな。ノウハウも培われるし」
「雨竜、いいの」
「やらぬ善よりやる偽善だ!」
「それ、このシチュエーションで使う言葉かな」
「うるせー当麻! やるのかやらねーのか!」
「やるに決まってんだろ」
そうと決まると1年生3人はスマホだけで作れる映像作品のことを調べ始めてしまった。3人揃ったときの行動力と言うか推進力って凄いなと思う。三人よれば文殊の知恵だっけ。それにも似た何かがありそう。
私は基本1人で撮影モチーフを探して歩いて好き勝手にやってるけど、たまにはチームでの制作もいいかもなあと、1年生を見ていて思ったりもする。久々にかんなでも誘って何かやってみようかな。双子だからこそのセンスで何かひとつ。
「あやめさん、ここから一番近いコンビニってどこすか!?」
「だったら普通に学内じゃないの」
「あそっか。あるんだった」
「何するの?」
「今日は時間もないんで、とりあえずくるちゃんと同じテーマで断面図撮影に挑戦して、話題作りに協力を。実際やってみたんだけどっていうアレっすよ」
「でも丸パクってちょっと嫌だな。私個人はね」
「スイーツは参考っすよ。パクリじゃないっす。北星がくるちゃんに気持ちを寄せてアドバイスするためのアレっす。俺らは俺らでくるちゃんリスペクトでインスパイアのヤツをサクッとやって」
「要は、すぐにはネタが降りてこなかった、と」
「そうっす、はい」
「サクッとやるならそれくらいでいいかもだけど。ちゃんとやるならじっくり構成練らなきゃだし。スマホだけで映画だって作れちゃうからね、何でも出来るよやろうと思えば」
「うー、そうこうしてる間にもうテスト~」
「なんですよね。とりあえず、コンビニ行くなら行ってきたら?」
「そうしまーす。ほら当麻、北星、行くぞー」
断面図動画を撮影した後のスイーツを借りて私もひとつ、写真でも撮ろうかな。あわよくば「※あやめさんが美味しくいただきました」チャンスも狙って。
end.
++++
青敬の存在感がやっぱり増しているので1年生は正義。あと1年生の元気がいいのですっかりハマちゃんの気配がががが
AKBCにはあやめ以外にも2年生はもちろんいるのですが、インターフェイス系の子しかキャラが練れていないという事情ですね。かんなもご無沙汰。
そして明らかになるくるちゃんの趣味、スイーツブログ。多分すがやんとかサキも見て見て~って感じで見せてもらってるんだろうなあ
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「……ねえ当麻。北星はどうしたの?」
「くるちゃんとのデートの後からこうですよ」
「溜め息ばっかりよりはいいけど、これはこれでどうしたのって感じ」
北星が物凄い集中力でパソコンと向き合っている。北星は、普段は抜けているけど作品制作の時だけ覚醒するっていうタイプの子。だから作品を作ってるのかなって思ったけど、ひたすら同じ映像を繰り返し再生していて。
そっと脇から見ている物を確認すると、見ているのはスイーツの断面図動画。スッと包丁を入れて、横にパカッと開いてみるっていう感じの美味しそうな動画だね。あー、夕方に見ちゃダメだったな。おやつ食べたい。
「北星、これってどういう動画なの?」
「これは見た通り、スイーツの断面図です。よくグルメ番組なんかであるカットインのような、ああいう物です。このページっていうのが実はくるちゃんがやってるプチプラスイーツブログで、動画はくるちゃんが趣味で撮ってる物なんだそうです。こないだこういうのをやってるって教えてもらって、それで見てるんですけど。なかなか上手いなと思って。負けてられないなと」
「あ、創作意欲に燃えてるってことね」
「俺は食べ物にあんまり興味がないんで、何をどうすれば美味しそうに見えるとか、そういう考えになかなか至らないんですけど。でも食品というテーマの短い動画で、何をどう伝えればいいのかを押さえるのは大事だなと」
どうやら緊張して浮かれてばかりいたデートの中で、北星は映像作品に繋がるポイントを得てサークルに帰ってきたようだった。今まで自分がやったことのないテーマの作品に触れて刺激されちゃったみたい。悪いことじゃなくてよかったね。
私が聞き出した事情を当麻と雨竜にも伝えると、結局くるちゃん絡みじゃねーかと雨竜は呆れた様子。そう言いたくなる気持ちもわからないでもないけど、映像に着地するところがやっぱり北星らしいとは当麻。
「これ、くるちゃんは必ず2つ撮ってるんですよね。こういったクリーム系のお菓子や柔らかいお菓子だと、斬ったときにクリームが垂れたり断面がよれたりしてあんまり上手く撮れないらしいんです。クリームが垂れる絵もそれはそれでいいそうなんですけど、少し凍らせて、綺麗な断面を撮るというのがこだわりって聞いて」
「なるほどね」
「ただ、悔しいのが、どうすればもっと上手く撮れるかなって聞かれたのに答えられなくって。普段俺は結構いい機材を使ってやってるじゃないですか。だけどくるちゃんはスマホひとつでこれを撮ってて。やっぱり、一応映像をかじってる人間としては、聞かれた時にちゃんと答えてあげたかったなって。撮影環境を言い訳にしたくないなと思いました」
もしかしたら、くるちゃんとの出会いが北星にとって大きな成長の機会だったんじゃないかなと思う。普段やらないテーマとの向き合い方に、人との接し方のようなことにしても。
少し前までの北星なら、こんなこと天地がひっくり返っても言わない。「別に~、好きに撮ったらいいよ~」で終わりそう。それが、聞かれたことにちゃんと答えてあげたいって。
「そしたら北星、俺らもスマホだけで何か作ってみたらいいんじゃね? そしたらくるちゃんとの話題作りにもなるし、俺らも作品制作が出来るし一石二鳥じゃんな。ノウハウも培われるし」
「雨竜、いいの」
「やらぬ善よりやる偽善だ!」
「それ、このシチュエーションで使う言葉かな」
「うるせー当麻! やるのかやらねーのか!」
「やるに決まってんだろ」
そうと決まると1年生3人はスマホだけで作れる映像作品のことを調べ始めてしまった。3人揃ったときの行動力と言うか推進力って凄いなと思う。三人よれば文殊の知恵だっけ。それにも似た何かがありそう。
私は基本1人で撮影モチーフを探して歩いて好き勝手にやってるけど、たまにはチームでの制作もいいかもなあと、1年生を見ていて思ったりもする。久々にかんなでも誘って何かやってみようかな。双子だからこそのセンスで何かひとつ。
「あやめさん、ここから一番近いコンビニってどこすか!?」
「だったら普通に学内じゃないの」
「あそっか。あるんだった」
「何するの?」
「今日は時間もないんで、とりあえずくるちゃんと同じテーマで断面図撮影に挑戦して、話題作りに協力を。実際やってみたんだけどっていうアレっすよ」
「でも丸パクってちょっと嫌だな。私個人はね」
「スイーツは参考っすよ。パクリじゃないっす。北星がくるちゃんに気持ちを寄せてアドバイスするためのアレっす。俺らは俺らでくるちゃんリスペクトでインスパイアのヤツをサクッとやって」
「要は、すぐにはネタが降りてこなかった、と」
「そうっす、はい」
「サクッとやるならそれくらいでいいかもだけど。ちゃんとやるならじっくり構成練らなきゃだし。スマホだけで映画だって作れちゃうからね、何でも出来るよやろうと思えば」
「うー、そうこうしてる間にもうテスト~」
「なんですよね。とりあえず、コンビニ行くなら行ってきたら?」
「そうしまーす。ほら当麻、北星、行くぞー」
断面図動画を撮影した後のスイーツを借りて私もひとつ、写真でも撮ろうかな。あわよくば「※あやめさんが美味しくいただきました」チャンスも狙って。
end.
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青敬の存在感がやっぱり増しているので1年生は正義。あと1年生の元気がいいのですっかりハマちゃんの気配がががが
AKBCにはあやめ以外にも2年生はもちろんいるのですが、インターフェイス系の子しかキャラが練れていないという事情ですね。かんなもご無沙汰。
そして明らかになるくるちゃんの趣味、スイーツブログ。多分すがやんとかサキも見て見て~って感じで見せてもらってるんだろうなあ
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