2020(02)
■ドキドキデート応援団
++++
「はい、点呼! 1番!」
「2番!」
「3番!」
「よし!」
今日は北星が緑ヶ丘のくるちゃんなる女の子と個別に会う日。夏合宿の班打ち合わせで初めて会ったんだけど、そこで借りたハンカチを返したいっていう口実でデートのお誘いをしたってワケ。
だけどそのお誘いは雨竜が北星のスマホで勝手に送ったもの。北星本人にくるちゃんと2人で会う度胸はなく。それで私、当麻、雨竜の3人は北星から見える少しだけ離れた場所から見守ることになりましたとさ。あらすじおしまい。
「あやめさん、くるちゃん来てくれますかね」
「来るでしょう、自分から日付指定してきてるんだから」
「あーっ、あれかな!?」
「あれだ! 北星、お前挙動不審だぞ!」
向こうからやってきたのは茶髪で小柄な女の子。確かに小さくて可愛い。北星は背がすごく高いから、もっと小さく見えてそうだ。くるちゃんの登場に、こっちでは大興奮。でも、目立たない程度にしないと。危ない危ない。
北星は、ずっと握り締めていたオレンジ色のハンカチをくるちゃんに返している。それから、服をここなんだけど、という風に指さしてチェックしてもらって。洗濯出来たよっていう報告かな。あっ、くるちゃん小さく拍手してる。
「よっしゃ北星、好感触だ!」
「とりあえずノルマは達成したけど、勝負はここからだな」
「当麻、北星にどういう指示したんだ?」
「返す物を返して見せる物を見せたら、立ち話も難だしカフェに誘えって。カフェならケーキとかお菓子もあるだろうし、相手の好みがちょっとわかる。甘い物が好きって子なら、ケーキの好みは重要だろ」
「すげー! さすが当麻!」
「うん、凄いねえ。北星が頼りにするのもわかる」
ちなみに、当麻には高校の頃から2年付き合ってる彼女がいるんだって。まあ、当麻は顔も結構いいし普通にいい子だもんねえ。彼女の1人くらいいてもおかしくない。その経験を買われ、事実上北星の相談役になっている。
当麻の示したプランの通り、北星とくるちゃんはその場所から離れ、近くのカフェに向かっている。すかさず、こちらも近すぎず遠すぎずの距離を守りながら後をつける。問題はカフェでの距離感だけど。
「よーしいいぞ北星。座ってもらう位置も完璧だ」
「つか当麻お前、そんな細かいトコまで指示してたのか」
「印象づけなんかそういうのの積み重ねだ。いい印象なんかコツコツたくさん積み重ねなきゃ定着しないのに、ちょっとしたことですーぐダメになる。だけど、いいことをそれなりに重ねておけば、たまのミスはそんなこともあるよね程度に思ってもらえることもある」
「はー、なんか腹黒っ」
「何だ腹黒いって」
「や、保身っつーか保険っつーか、打算的っつーか?」
「うるせえよ。それでなくたって北星は普段がああだぞ。せめて抜けてるけど優しい奴くらいの印象にしといた方がいいだろ」
「まあな? それはわからないでもないけど」
向こうでは。くるちゃんがメニューを見ながらどれにしようかなーって悩んでるようだった。北星にどれがいいかなって聞いてる風でもある。どうすんの、北星そんな相談に乗れるタイプじゃないでしょ。
少しして、くるちゃんが席を立った。トイレかな? するとすかさず当麻に北星からのLINEが届く。「どうしよ~緊張する~」って。これにどう返せと。「頑張れ」としか言いようがないんですが。
そうこうしてる間に向こうのテーブルに飲み物とケーキが届いた。北星はコーヒー……って、前回やらかしてるのに大丈夫かなあ? そして、くるちゃんのだと思われるケーキとドリンクも。北星はくるちゃんの帰りを待ってるみたい。
「あっ、くるちゃん帰ってきた」
「どうなる」
「あー、ケーキ食べてる顔が可愛い~。本当に甘いの好きなんだねー」
「あーあ。北星は完全にオチますわ」
「あっ! 雨竜、あやめさん! ヤバいですよ!」
「なになに!?」
くるちゃんがケーキの皿を北星の方にちょっと寄せてる。もしかしてこれは「北星も一口食べてみる?」のパターンのヤツ! ちょっと~、北星完全に固まってるよー大丈夫~?
こっちの応援が届いてるかはともかく、北星はぎこちなくフォークを口元に持って行き、一口のお裾分けをいただいていた。そして、すすす、とケーキのお皿をくるちゃんの側に戻す。これは、ダメなヤツです!
「うおー! 北星お前!」
「でも、これで今現在北星はくるちゃんに嫌われてないってことがわかったな。よかったよかった」
「あ、そうだよね。嫌いな人に自分のケーキ分けてあげたりしないもんね」
「北星~、頑張れよお前~…!」
「声が聞こえない位置なのがちょっとなー。何喋ってんだろ」
「仕方ないですよ、これ以上近付くと完全に怪しいですからね」
遠いなりに、楽しそうに話をしてるなっていうのはわかるからいいんだけど。くるちゃんの表情は窺い知れるポジションだし。ただ、北星の様子が背中でしかわかんないから、挙動不審になってないかって心配にはなっちゃうんだよね。
「あやめさん、もし北星が恋愛にうつつを抜かして映像もラジオも腑抜けになったらどうします?」
「それは大丈夫そうじゃない? ここ数日の感じを見てても。オンオフの切り替えはちゃんとなってるじゃん」
「オンはともかく、オフがとにかくくるちゃん一色になってんのが心配なんすよ俺たちは」
「ぶっちゃけ、元々寝ぼけてるし大して変わんなくない?」
「しーっ! あやめさん、事実でも言っちゃダメなヤツっす!」
end.
++++
北星からチラリと見える場所に応援団の人たちが待機しているという感じの最初のデート。デート? デートなのかこれは
多分くるちゃんには何の他意もなく単純にハンカチを返してもらって班員との交友を深めてるだけっぽいのが今後大変そうね
この応援団のご意見番は当麻なのね。キャラ立ちしてないって先輩は心配してたけど、ここから一皮むけたらいいなあ
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「はい、点呼! 1番!」
「2番!」
「3番!」
「よし!」
今日は北星が緑ヶ丘のくるちゃんなる女の子と個別に会う日。夏合宿の班打ち合わせで初めて会ったんだけど、そこで借りたハンカチを返したいっていう口実でデートのお誘いをしたってワケ。
だけどそのお誘いは雨竜が北星のスマホで勝手に送ったもの。北星本人にくるちゃんと2人で会う度胸はなく。それで私、当麻、雨竜の3人は北星から見える少しだけ離れた場所から見守ることになりましたとさ。あらすじおしまい。
「あやめさん、くるちゃん来てくれますかね」
「来るでしょう、自分から日付指定してきてるんだから」
「あーっ、あれかな!?」
「あれだ! 北星、お前挙動不審だぞ!」
向こうからやってきたのは茶髪で小柄な女の子。確かに小さくて可愛い。北星は背がすごく高いから、もっと小さく見えてそうだ。くるちゃんの登場に、こっちでは大興奮。でも、目立たない程度にしないと。危ない危ない。
北星は、ずっと握り締めていたオレンジ色のハンカチをくるちゃんに返している。それから、服をここなんだけど、という風に指さしてチェックしてもらって。洗濯出来たよっていう報告かな。あっ、くるちゃん小さく拍手してる。
「よっしゃ北星、好感触だ!」
「とりあえずノルマは達成したけど、勝負はここからだな」
「当麻、北星にどういう指示したんだ?」
「返す物を返して見せる物を見せたら、立ち話も難だしカフェに誘えって。カフェならケーキとかお菓子もあるだろうし、相手の好みがちょっとわかる。甘い物が好きって子なら、ケーキの好みは重要だろ」
「すげー! さすが当麻!」
「うん、凄いねえ。北星が頼りにするのもわかる」
ちなみに、当麻には高校の頃から2年付き合ってる彼女がいるんだって。まあ、当麻は顔も結構いいし普通にいい子だもんねえ。彼女の1人くらいいてもおかしくない。その経験を買われ、事実上北星の相談役になっている。
当麻の示したプランの通り、北星とくるちゃんはその場所から離れ、近くのカフェに向かっている。すかさず、こちらも近すぎず遠すぎずの距離を守りながら後をつける。問題はカフェでの距離感だけど。
「よーしいいぞ北星。座ってもらう位置も完璧だ」
「つか当麻お前、そんな細かいトコまで指示してたのか」
「印象づけなんかそういうのの積み重ねだ。いい印象なんかコツコツたくさん積み重ねなきゃ定着しないのに、ちょっとしたことですーぐダメになる。だけど、いいことをそれなりに重ねておけば、たまのミスはそんなこともあるよね程度に思ってもらえることもある」
「はー、なんか腹黒っ」
「何だ腹黒いって」
「や、保身っつーか保険っつーか、打算的っつーか?」
「うるせえよ。それでなくたって北星は普段がああだぞ。せめて抜けてるけど優しい奴くらいの印象にしといた方がいいだろ」
「まあな? それはわからないでもないけど」
向こうでは。くるちゃんがメニューを見ながらどれにしようかなーって悩んでるようだった。北星にどれがいいかなって聞いてる風でもある。どうすんの、北星そんな相談に乗れるタイプじゃないでしょ。
少しして、くるちゃんが席を立った。トイレかな? するとすかさず当麻に北星からのLINEが届く。「どうしよ~緊張する~」って。これにどう返せと。「頑張れ」としか言いようがないんですが。
そうこうしてる間に向こうのテーブルに飲み物とケーキが届いた。北星はコーヒー……って、前回やらかしてるのに大丈夫かなあ? そして、くるちゃんのだと思われるケーキとドリンクも。北星はくるちゃんの帰りを待ってるみたい。
「あっ、くるちゃん帰ってきた」
「どうなる」
「あー、ケーキ食べてる顔が可愛い~。本当に甘いの好きなんだねー」
「あーあ。北星は完全にオチますわ」
「あっ! 雨竜、あやめさん! ヤバいですよ!」
「なになに!?」
くるちゃんがケーキの皿を北星の方にちょっと寄せてる。もしかしてこれは「北星も一口食べてみる?」のパターンのヤツ! ちょっと~、北星完全に固まってるよー大丈夫~?
こっちの応援が届いてるかはともかく、北星はぎこちなくフォークを口元に持って行き、一口のお裾分けをいただいていた。そして、すすす、とケーキのお皿をくるちゃんの側に戻す。これは、ダメなヤツです!
「うおー! 北星お前!」
「でも、これで今現在北星はくるちゃんに嫌われてないってことがわかったな。よかったよかった」
「あ、そうだよね。嫌いな人に自分のケーキ分けてあげたりしないもんね」
「北星~、頑張れよお前~…!」
「声が聞こえない位置なのがちょっとなー。何喋ってんだろ」
「仕方ないですよ、これ以上近付くと完全に怪しいですからね」
遠いなりに、楽しそうに話をしてるなっていうのはわかるからいいんだけど。くるちゃんの表情は窺い知れるポジションだし。ただ、北星の様子が背中でしかわかんないから、挙動不審になってないかって心配にはなっちゃうんだよね。
「あやめさん、もし北星が恋愛にうつつを抜かして映像もラジオも腑抜けになったらどうします?」
「それは大丈夫そうじゃない? ここ数日の感じを見てても。オンオフの切り替えはちゃんとなってるじゃん」
「オンはともかく、オフがとにかくくるちゃん一色になってんのが心配なんすよ俺たちは」
「ぶっちゃけ、元々寝ぼけてるし大して変わんなくない?」
「しーっ! あやめさん、事実でも言っちゃダメなヤツっす!」
end.
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北星からチラリと見える場所に応援団の人たちが待機しているという感じの最初のデート。デート? デートなのかこれは
多分くるちゃんには何の他意もなく単純にハンカチを返してもらって班員との交友を深めてるだけっぽいのが今後大変そうね
この応援団のご意見番は当麻なのね。キャラ立ちしてないって先輩は心配してたけど、ここから一皮むけたらいいなあ
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