2020(02)
■確かに自分の領域だけど
++++
「君たち、今度の連休に緑ヶ丘大学のオープンキャンパスが開催されることは知ってるよね?」
佐藤ゼミでは、3日間に亘って行われるオープンキャンパスでインフォメーション放送の仕事をしているそうだ。何時から体験講義がありますとか、どこどこに並んでくださいとか、そんなようなことを1日中延々とアナウンスするらしい。何でも、司会放送部という文化会の部活からこの仕事を強奪したとの噂。
「体験講義をやってる間の1時間で、2年生はラジオ番組をやるっていうのが毎年の流れなんだよ。せっかく班があるんだし、その班でひとつ番組を作ってね。で、テーマは重複しないようにこっちで決めたから。オープンキャンパスだし高校生が関心ありそうな内容でね。去年の映像流すし、それを参考にしてちょっと話し合ってよ」
――ということで、俺たち3班には「部活・サークル」というテーマが与えられ、1時間……転換の時間なんかもあるから厳密には45分間の番組を作ることになった。ガラス張りのラジオブースがあるのにそれを敢えて使わず、特設ブースを設置して運営する佐藤ゼミのラジオだ。
オープンキャンパスは例年歩くのもしんどいくらいのとんでもない人混みになるらしいけど、体験講義をやっている間の人通りはかなり落ち着いているらしい。だから気張る必要はないと先生は言う。だけど、普通は緊張もするし急に番組って言われてもどうすればいいかわからないよね。
ただ、ラジオという単語と、ゼミのバーベキューの時に言われていた一人一幹事制度の免除という話が線で結び付いて来る。実際、班でさあ話し合いましょうと輪になった瞬間集中的に浴びる視線だ。
「そういうことだから高木君、仕切ってもらっていい?」
「仕切るのはいつも通り佐竹さんにお願いしたいです。必要があればちゃんと喋るし」
「じゃあ、高木君を中心にどういう番組にしていくかを考えましょう」
「はーい」
「ひとつ言っておくと、番組の構成は考えられるけど、トーク内容は喋る人にお任せしたいかなと。で、去年の映像を参考にすれば2人がトーク、2人がミキサーって感じで分かれてるね。そういう感じでまず分かれようか。俺はミキサーで」
「ちょっと高木、自分の領域だからって好き勝手すんなし。あっ由香里さん、アタシもミキサーがいいんだけど」
「そしたら、アタシと鵠沼君でトークを担当しようか。鵠沼君、それでいい?」
「俺は何でも」
安曇野さんには痛いところを突かれつつも、無事にパートが決まって一安心。俺は去年の映像を横目で見ながら、MBCCのラジオとは何がどう違うのかを分析していく。ちょっと聞いた感じではダブルトークだからかトークの時間が長めかなというのと、曲の時間も結構長い。
去年の番組をキューシートにざっと書いてみると、何の変哲もない普通の番組だということがわかった。曲の時間も長いからトーク時間が特別長いわけでもないし、45分番組とはいうけど実際はそこまでのボリュームにはならなさそうだ。
「軽く構成を考えてみたんだけど、こんな感じで。基本的にトークが5分、曲が4分。オープニングとエンディングのトークが3分。で、オープンキャンパスだしもしかしたら合間合間に緊急の放送が入って来る可能性も考えた方がいいかもね」
「緊急の放送って?」
「落とし物とか、その他必要なお知らせの放送だね。でも、そういうのは人通りの多い3年生の時間に入って来るかな? まあでも一応」
下手にわかっていると余計なことまで考えてしまいがちだ。それは良くない。まさか2年生の枠でインフォメーションなんか入って来ないと信じて。だって今流れてる去年の映像でも2年生の番組をやってる時間の人通りは落ち着いてるどころか全然いない。
「君たち、どう? まあ、言っても君たちの班には高木君がいるしどうにでもなるよね! そうだ高木君、君に話があるんだけどね」
「は、はい…?」
「君にはねえ、3年生が放送する時間にもミキサーとしてやってほしいんだよ」
「えっ、3年生の時間もですか?」
「そう」
「3年生の時間って、具体的にどういうことをすればいいんですか?」
「君に頼みたいのは講義と講義の間の放送じゃなくて、昼休みのフリー番組だよ。3日間とも千葉君に頼んであるんだけどね」
「え、もしかして~、ですけど~、俺がやるのって~」
「千葉君との番組だね。1時間が3日間。君たちなら出来るでしょ? まさかねえ、君たちに2年生番組でやるような物は求めてないからね。佐藤ゼミはこんなにカッコいいラジオをやってますよっていうアピールをね! じゃ、そういうことだから。千葉君とも話し合っといてね」
って言うか、いつもやってるラジオは一応社会学のテイストをちょっと残してある学術的な体験学習ラジオの体じゃなかったっけ。MBCC的ラジオだと完全にエンターテイメント寄りにならないかな、大丈夫かな。まあいいか。果林先輩と俺を組ませるってことは、好きにやれって言ってるような物だよね。
「え、ちょっと待って? それって3日間とも来いってこと!?」
「だな。高木、ドンマイ」
「ええー……4連休~……」
end.
++++
出た~~~いつものヤツ~~~、という感じでやっぱり毎日出て来ることになったタカちゃんでした。ちゃんちゃん。
そう、肝心なのはラジオ番組の構成を考えたりミキサーを触ることは出来てもトーク内容なんかは完全に専門外だということ。得意不得意はありますね
きっとこの後ヒゲさんからそれぞれ仕事を任命されて、TKGが疫病神としての力をどんどん強めていくんだろうなあ
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「君たち、今度の連休に緑ヶ丘大学のオープンキャンパスが開催されることは知ってるよね?」
佐藤ゼミでは、3日間に亘って行われるオープンキャンパスでインフォメーション放送の仕事をしているそうだ。何時から体験講義がありますとか、どこどこに並んでくださいとか、そんなようなことを1日中延々とアナウンスするらしい。何でも、司会放送部という文化会の部活からこの仕事を強奪したとの噂。
「体験講義をやってる間の1時間で、2年生はラジオ番組をやるっていうのが毎年の流れなんだよ。せっかく班があるんだし、その班でひとつ番組を作ってね。で、テーマは重複しないようにこっちで決めたから。オープンキャンパスだし高校生が関心ありそうな内容でね。去年の映像流すし、それを参考にしてちょっと話し合ってよ」
――ということで、俺たち3班には「部活・サークル」というテーマが与えられ、1時間……転換の時間なんかもあるから厳密には45分間の番組を作ることになった。ガラス張りのラジオブースがあるのにそれを敢えて使わず、特設ブースを設置して運営する佐藤ゼミのラジオだ。
オープンキャンパスは例年歩くのもしんどいくらいのとんでもない人混みになるらしいけど、体験講義をやっている間の人通りはかなり落ち着いているらしい。だから気張る必要はないと先生は言う。だけど、普通は緊張もするし急に番組って言われてもどうすればいいかわからないよね。
ただ、ラジオという単語と、ゼミのバーベキューの時に言われていた一人一幹事制度の免除という話が線で結び付いて来る。実際、班でさあ話し合いましょうと輪になった瞬間集中的に浴びる視線だ。
「そういうことだから高木君、仕切ってもらっていい?」
「仕切るのはいつも通り佐竹さんにお願いしたいです。必要があればちゃんと喋るし」
「じゃあ、高木君を中心にどういう番組にしていくかを考えましょう」
「はーい」
「ひとつ言っておくと、番組の構成は考えられるけど、トーク内容は喋る人にお任せしたいかなと。で、去年の映像を参考にすれば2人がトーク、2人がミキサーって感じで分かれてるね。そういう感じでまず分かれようか。俺はミキサーで」
「ちょっと高木、自分の領域だからって好き勝手すんなし。あっ由香里さん、アタシもミキサーがいいんだけど」
「そしたら、アタシと鵠沼君でトークを担当しようか。鵠沼君、それでいい?」
「俺は何でも」
安曇野さんには痛いところを突かれつつも、無事にパートが決まって一安心。俺は去年の映像を横目で見ながら、MBCCのラジオとは何がどう違うのかを分析していく。ちょっと聞いた感じではダブルトークだからかトークの時間が長めかなというのと、曲の時間も結構長い。
去年の番組をキューシートにざっと書いてみると、何の変哲もない普通の番組だということがわかった。曲の時間も長いからトーク時間が特別長いわけでもないし、45分番組とはいうけど実際はそこまでのボリュームにはならなさそうだ。
「軽く構成を考えてみたんだけど、こんな感じで。基本的にトークが5分、曲が4分。オープニングとエンディングのトークが3分。で、オープンキャンパスだしもしかしたら合間合間に緊急の放送が入って来る可能性も考えた方がいいかもね」
「緊急の放送って?」
「落とし物とか、その他必要なお知らせの放送だね。でも、そういうのは人通りの多い3年生の時間に入って来るかな? まあでも一応」
下手にわかっていると余計なことまで考えてしまいがちだ。それは良くない。まさか2年生の枠でインフォメーションなんか入って来ないと信じて。だって今流れてる去年の映像でも2年生の番組をやってる時間の人通りは落ち着いてるどころか全然いない。
「君たち、どう? まあ、言っても君たちの班には高木君がいるしどうにでもなるよね! そうだ高木君、君に話があるんだけどね」
「は、はい…?」
「君にはねえ、3年生が放送する時間にもミキサーとしてやってほしいんだよ」
「えっ、3年生の時間もですか?」
「そう」
「3年生の時間って、具体的にどういうことをすればいいんですか?」
「君に頼みたいのは講義と講義の間の放送じゃなくて、昼休みのフリー番組だよ。3日間とも千葉君に頼んであるんだけどね」
「え、もしかして~、ですけど~、俺がやるのって~」
「千葉君との番組だね。1時間が3日間。君たちなら出来るでしょ? まさかねえ、君たちに2年生番組でやるような物は求めてないからね。佐藤ゼミはこんなにカッコいいラジオをやってますよっていうアピールをね! じゃ、そういうことだから。千葉君とも話し合っといてね」
って言うか、いつもやってるラジオは一応社会学のテイストをちょっと残してある学術的な体験学習ラジオの体じゃなかったっけ。MBCC的ラジオだと完全にエンターテイメント寄りにならないかな、大丈夫かな。まあいいか。果林先輩と俺を組ませるってことは、好きにやれって言ってるような物だよね。
「え、ちょっと待って? それって3日間とも来いってこと!?」
「だな。高木、ドンマイ」
「ええー……4連休~……」
end.
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出た~~~いつものヤツ~~~、という感じでやっぱり毎日出て来ることになったタカちゃんでした。ちゃんちゃん。
そう、肝心なのはラジオ番組の構成を考えたりミキサーを触ることは出来てもトーク内容なんかは完全に専門外だということ。得意不得意はありますね
きっとこの後ヒゲさんからそれぞれ仕事を任命されて、TKGが疫病神としての力をどんどん強めていくんだろうなあ
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