2020(02)
■ひよこの行列
++++
「とにかく派手な構成に! ああしてこうしてわーっとして」
「私がグレイトフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズとしての輝きを最大限発揮出来るようなプログラムに」
「効果音とかめっちゃ入れましょ! バーンとかシューンとか! 何なら音から作りましょ!」
「音にこだわるのはいいけど、公開生放送ならビジュアル面も大事かと。まずは衣装のコンセプトから統一して」
一言で言うと、うるさい。夏合宿2班の顔合わせをしてるのはいいんだけど、1年生が全員派手好きでとにかくうるさいというのが現時点で班長として抱く悩みだっていう。1年生はウチのシノを筆頭に、星ヶ丘のくららこと海月、青女のまつり、青敬の雨竜と、それぞれのキャラがまあケンカするわな。
シノを引き取った時点である程度は覚悟してたけど、見事に今年のインターフェイスのうるさい系キャラクターが固まったなっていう印象だ。俺はともかく、わかばが圧倒されちまってて大丈夫かって心配になるやかましさだ。自分トコの子もいるのに操縦しきれてない。
「エージさん、私、こんな調子でやっていけるんでしょうか……」
「大丈夫だって、こないだのステージだってちゃんとやれたんだろっていう。青女のステージっつったら華やかな舞台だべ?」
「ステージは直先輩がいてくれたので何とかなりましたけど……」
「コイツら全員サドニナだと思えばイケるべ! そうだ、コイツら全員サドニナだっていう!」
如何せんわかばはインターフェイス比で内気で引っ込み思案だ。ミキサーとしての腕は着実につけて来てるけど、本人も周りもコミュニケーションの方をちょっと心配してるようだった。だから対策委員で唯一班長にならない人間を決めるときもすんなり決まった感がある。
わかばとペアを組むのは青敬の雨竜に決まった。あやめによれば、コイツは足し算が好きな奴で、作品をごちゃごちゃさせるのが好きらしい。情報量が多ければ多いほどいいと思いがちと言うか。わかばは音を扱うにしてもどちらかと言えば素朴なタイプだから、果たしてどうなるか。
派手好きがこれだけ集まると、班としての番組のスタイルにも多少影響が出そうだ。俺はどちらかと言えば正統派なアナウンサーだと思うけど、1年生たちがそれでは満足しなさそうと言うか。去年の高木たちほどじゃないにせよ、多少のアソビは許容しないと不満が出そうだ。
「……確かに、実際くららちゃんはサドニナさんにちょっと似てる雰囲気がありますね。発言が」
「だべ? だから、コイツら全員サドニナだっていう。派手好きで、ビッグマウスで」
「衣装の装飾を増やしたがるんですよ、サドニナさん。結果、衣装の原型がなくなって訳がわからなくなって、沙都子先輩も毎回困ってて」
「あー、写真見たけど確かにダサくなってんべ。ユキのアレンジはいい感じだけど」
「悪い人じゃないんですけどね、サドニナさんも。勇気があって凄いとも思います」
「悪い奴じゃないけど、何かちょっと残念っていう」
1年生は全員サドニナだと言い聞かせていたら、いつの間にか本家サドニナの話になっていた。その間も1年4人は全員でぎゃあぎゃあと番組プランを掛け合わせて戦わせている。これをどうにか収集つけるのはかなり骨の折れる作業だろう。
「おーい、演出にこだわる前に、番組の内容で勝負すんだぞお前ら」
「私はグレミューとして当然! その存在感だけじゃなくてトークの内容でも人を惹きつけますから大丈夫ですよエージさん!」
「とうとうグレイトフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズを略したべ」
「あんまり長いと尺を取りますからね。動画ならカットの対象になるんで」
「俺は高木先輩もビビるような斬新な構成を生み出すっす!」
「アイツの構成力は並じゃねーべ。それで基礎を疎かにするとかナメたことしてたらぶちのめすべ」
「エージ先輩こっわ!」
「いいかお前ら、番組で遊ぶならそれなりに基礎を固めてからだ。基本的なことをちゃんとしてるから、アソビはアソビとしてメリハリを生む効果になるっていう。番組をちゃんとしないとそれはただふざけておちゃらけてるだべ。俺は内容の伴うアソビになら多少は付き合うけど、ただのおふざけは容赦なく叩き斬るからな。わかったら返事」
はーいと返事が4つ。シメるところでシメとかないと。秩序がちゃんとしてこその自由だ。自由には責任が伴う。ただふざけておちゃらけてるだけのモンを45分も見せられるとかただの苦行だし、チャンネルを変えられるなら変えるし電源を消せるなら消す。
「エージさん、さすがです! 話に聞いてた通りです!」
「ん? どうしたくらら」
「エージさんがどんな人か、ゴローさんと戸田さんに聞いてたんですよ」
「おー、つばめサンか。何て言ってた?」
「厳しさと面倒見では今の2年生の中では1、2を争うって。グレミューを自称するならエージさんに発声や滑舌の基礎から叩き込んでもらえーって」
「え、そんなトコまで見なきゃいけないのかっていう」
相変わらずぎゃあぎゃあと1年生はうるさいけど、時々ちゃんと締めとけば何とかなりそうな感じはして来た。最初にナメられちまったら最後までそのまま行っちまう。何事も最初が肝心だ。
end.
++++
グレイトフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズがとうとうグレミューと略されたので、今後はこの簡略化された形での表記になりそうです。
というワケで夏合宿の顔合わせが始まったのですが、エイジがなかなか2年生にはいない感じの厳しい班長になりそうですね。MBCCアナの血脈かな?
って言うか「コイツら全員サドニナ」っていうのもどうかと思うんですよw なっちゃんを励ますための方便にしてもだ
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「とにかく派手な構成に! ああしてこうしてわーっとして」
「私がグレイトフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズとしての輝きを最大限発揮出来るようなプログラムに」
「効果音とかめっちゃ入れましょ! バーンとかシューンとか! 何なら音から作りましょ!」
「音にこだわるのはいいけど、公開生放送ならビジュアル面も大事かと。まずは衣装のコンセプトから統一して」
一言で言うと、うるさい。夏合宿2班の顔合わせをしてるのはいいんだけど、1年生が全員派手好きでとにかくうるさいというのが現時点で班長として抱く悩みだっていう。1年生はウチのシノを筆頭に、星ヶ丘のくららこと海月、青女のまつり、青敬の雨竜と、それぞれのキャラがまあケンカするわな。
シノを引き取った時点である程度は覚悟してたけど、見事に今年のインターフェイスのうるさい系キャラクターが固まったなっていう印象だ。俺はともかく、わかばが圧倒されちまってて大丈夫かって心配になるやかましさだ。自分トコの子もいるのに操縦しきれてない。
「エージさん、私、こんな調子でやっていけるんでしょうか……」
「大丈夫だって、こないだのステージだってちゃんとやれたんだろっていう。青女のステージっつったら華やかな舞台だべ?」
「ステージは直先輩がいてくれたので何とかなりましたけど……」
「コイツら全員サドニナだと思えばイケるべ! そうだ、コイツら全員サドニナだっていう!」
如何せんわかばはインターフェイス比で内気で引っ込み思案だ。ミキサーとしての腕は着実につけて来てるけど、本人も周りもコミュニケーションの方をちょっと心配してるようだった。だから対策委員で唯一班長にならない人間を決めるときもすんなり決まった感がある。
わかばとペアを組むのは青敬の雨竜に決まった。あやめによれば、コイツは足し算が好きな奴で、作品をごちゃごちゃさせるのが好きらしい。情報量が多ければ多いほどいいと思いがちと言うか。わかばは音を扱うにしてもどちらかと言えば素朴なタイプだから、果たしてどうなるか。
派手好きがこれだけ集まると、班としての番組のスタイルにも多少影響が出そうだ。俺はどちらかと言えば正統派なアナウンサーだと思うけど、1年生たちがそれでは満足しなさそうと言うか。去年の高木たちほどじゃないにせよ、多少のアソビは許容しないと不満が出そうだ。
「……確かに、実際くららちゃんはサドニナさんにちょっと似てる雰囲気がありますね。発言が」
「だべ? だから、コイツら全員サドニナだっていう。派手好きで、ビッグマウスで」
「衣装の装飾を増やしたがるんですよ、サドニナさん。結果、衣装の原型がなくなって訳がわからなくなって、沙都子先輩も毎回困ってて」
「あー、写真見たけど確かにダサくなってんべ。ユキのアレンジはいい感じだけど」
「悪い人じゃないんですけどね、サドニナさんも。勇気があって凄いとも思います」
「悪い奴じゃないけど、何かちょっと残念っていう」
1年生は全員サドニナだと言い聞かせていたら、いつの間にか本家サドニナの話になっていた。その間も1年4人は全員でぎゃあぎゃあと番組プランを掛け合わせて戦わせている。これをどうにか収集つけるのはかなり骨の折れる作業だろう。
「おーい、演出にこだわる前に、番組の内容で勝負すんだぞお前ら」
「私はグレミューとして当然! その存在感だけじゃなくてトークの内容でも人を惹きつけますから大丈夫ですよエージさん!」
「とうとうグレイトフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズを略したべ」
「あんまり長いと尺を取りますからね。動画ならカットの対象になるんで」
「俺は高木先輩もビビるような斬新な構成を生み出すっす!」
「アイツの構成力は並じゃねーべ。それで基礎を疎かにするとかナメたことしてたらぶちのめすべ」
「エージ先輩こっわ!」
「いいかお前ら、番組で遊ぶならそれなりに基礎を固めてからだ。基本的なことをちゃんとしてるから、アソビはアソビとしてメリハリを生む効果になるっていう。番組をちゃんとしないとそれはただふざけておちゃらけてるだべ。俺は内容の伴うアソビになら多少は付き合うけど、ただのおふざけは容赦なく叩き斬るからな。わかったら返事」
はーいと返事が4つ。シメるところでシメとかないと。秩序がちゃんとしてこその自由だ。自由には責任が伴う。ただふざけておちゃらけてるだけのモンを45分も見せられるとかただの苦行だし、チャンネルを変えられるなら変えるし電源を消せるなら消す。
「エージさん、さすがです! 話に聞いてた通りです!」
「ん? どうしたくらら」
「エージさんがどんな人か、ゴローさんと戸田さんに聞いてたんですよ」
「おー、つばめサンか。何て言ってた?」
「厳しさと面倒見では今の2年生の中では1、2を争うって。グレミューを自称するならエージさんに発声や滑舌の基礎から叩き込んでもらえーって」
「え、そんなトコまで見なきゃいけないのかっていう」
相変わらずぎゃあぎゃあと1年生はうるさいけど、時々ちゃんと締めとけば何とかなりそうな感じはして来た。最初にナメられちまったら最後までそのまま行っちまう。何事も最初が肝心だ。
end.
++++
グレイトフルマスターオブセレモニー兼ステージミューズがとうとうグレミューと略されたので、今後はこの簡略化された形での表記になりそうです。
というワケで夏合宿の顔合わせが始まったのですが、エイジがなかなか2年生にはいない感じの厳しい班長になりそうですね。MBCCアナの血脈かな?
って言うか「コイツら全員サドニナ」っていうのもどうかと思うんですよw なっちゃんを励ますための方便にしてもだ
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