2018
■サニーデイランチサービス
++++
今日は暑いくらいの陽気だ。この日差しを利用して一気に洗濯物を片付けてしまおうとベランダで作業していると、外から聞こえるバイクのエンジン音。ああ、もうそんな時間になってたのか。部屋に戻って、インターホンに備える。
「おーい浅浦、来たぞー」
「お邪魔しまーす」
「どうぞ。で、材料は?」
「バッチリ」
「冷蔵庫に入れといてくれ。俺まだ洗濯物干してる途中だから」
エコバッグを提げてやってきたのは、伊東とその彼女の宮林サンだ。俺と伊東は生まれた頃からの腐れ縁というヤツで、親も幼馴染みだし濃い付き合いをしている。宮林サンとは高校からの付き合いだけど、クラスメイトだったこともあるし、伊東繋がりでまあまあ仲良くしている。
このバカップルが俺の部屋に何をしに来たのかと言えば、オムライスを俺に作らせようとしているのだ。オムライスやグラタンを食わせろと言われるのは割とあることだし、材料は買って来てもらえるから特に断ることもしない。
大学に進学して1人暮らしを始めてから、3年になった今でも自炊は続いている。元々料理が好きだったというのもある。一品だけの料理が許せなくて、つけ合わせや汁物を作ったり。人にそれを言うと手を掛け過ぎだと言われる。
「伊東」
「んー?」
「お前、バイクで来たのか。花粉は」
「そろそろ落ち着いて来たしバイク解禁かなーって。天気良かったしタンデムで」
伊東は大型のバイクに乗っているけど、雨の日や花粉飛散量が多いときは極力乗らないようにしている。ここ最近、ようやく花粉が落ち着いて来たということでバイクに乗り始めたようだ。ということは、これまで室内干しにしていた洗濯物も外に干し始めたのかもしれない。
「さ、作るか」
「いよっ、浅浦!」
「きゃー浅浦クンすてきー」
エプロンをして、台所に立つ。今日はオムライスとサラダ、それからミネストローネにしようか。いや、トマトトマトするからオニオンコンソメスープとかにしとこうか。そうだ、そうしよう。
「浅浦、何かしようか」
「お前はあの人の相手をしててくれ。ほっとくと拗ねるだろ」
「いや、このシチュエーションに限っては放置してても問題ない。エネルギーは自家生産出来るから。むしろ邪魔するなって怒られるかもしれない」
「難儀な趣味だな」
「ホントだよ」
宮林サンという人は、爛れたワーカホリックだ。趣味はゲームや同人活動。ボーイズラブというジャンルを好む所謂腐女子というヤツだ。そんな彼女と知り合って5年、幼馴染み属性のナントカと妄想されること5年だ。
「つーかお前さ、自分以外の人間を台所に立たせないよな」
「俺の包丁を他の奴に握らせる気はないからな」
「はー、さすがなこった」
「と言うか、お前に俺の包丁は使いにくいだろ普通に」
「まあな」
俺は料理をする機会も多いし、それなりの値段をする包丁を持っていたっていいだろうと思って用意したのが1万円の左利き用包丁だ。手入れが簡単だし、何より切れ味が凄い。切れ味というのは、刃の質もだけど左利き用に作られているからこその味もある。
伊東も料理は上手いほうだと思うけど右利きだし、わざわざ使いにくい包丁を使ってもらうこともない。そもそも、今は彼女に妄想の燃料を与えるためにここで喋っているけど、普段はロフトでごろごろしているだけなのだ。
「カーズー、ちょっとー」
「あーい。どうしたー?」
彼女に呼ばれて伊東が部屋に戻れば、俺は料理だけに集中して。自分だけが食べるならある程度雑でも困らないけど、3人分となるといつもよりもしっかりやらないといけないという気持ちはある。味付けが大体なのは変わらないけど。
俺の作るオムライス、またはエビグラタンがたまにすごく食べたくなると言われるのは悪い気はしない。たまにすごく食べたくなると言われるからには俺の味というものがある程度舌に刻まれているのだろう。だからこそ、質はある保たなければならない。作り慣れたものであれば手癖でも行けるから問題ないと言えばないけれど。
「伊東、出来たから運ぶの手伝ってくれ」
「おっ、わかった」
オムライスと、サラダとオニオンコンソメスープ。それらと水を運んで。たまにある部屋での会食、振る舞い。伊東に手伝わせるなら料理じゃなくて洗濯だったかな、と多少の失敗を自覚しつつ、席に着く。
「それじゃ、いただきます」
「いただきまーす」
end.
++++
今期の浅浦雅弘登場回。日曜日なのは何かもうお約束な感じ。花粉のシーズンが落ち着いてくると、いち氏も外に出たり活発になってくるようです。
包丁に1万円をぽーんと出せてしまうのは、普段から料理をするから出せるのか、それとも生活水準がそうさせるのか……前者ですかね
いち氏が浅浦クンの部屋にいる時は大体ロフトで人をダメにするクッションでごろごろさせがちなので、台所でのお喋りというのはナノスパ的にも斬新だなあ
.
++++
今日は暑いくらいの陽気だ。この日差しを利用して一気に洗濯物を片付けてしまおうとベランダで作業していると、外から聞こえるバイクのエンジン音。ああ、もうそんな時間になってたのか。部屋に戻って、インターホンに備える。
「おーい浅浦、来たぞー」
「お邪魔しまーす」
「どうぞ。で、材料は?」
「バッチリ」
「冷蔵庫に入れといてくれ。俺まだ洗濯物干してる途中だから」
エコバッグを提げてやってきたのは、伊東とその彼女の宮林サンだ。俺と伊東は生まれた頃からの腐れ縁というヤツで、親も幼馴染みだし濃い付き合いをしている。宮林サンとは高校からの付き合いだけど、クラスメイトだったこともあるし、伊東繋がりでまあまあ仲良くしている。
このバカップルが俺の部屋に何をしに来たのかと言えば、オムライスを俺に作らせようとしているのだ。オムライスやグラタンを食わせろと言われるのは割とあることだし、材料は買って来てもらえるから特に断ることもしない。
大学に進学して1人暮らしを始めてから、3年になった今でも自炊は続いている。元々料理が好きだったというのもある。一品だけの料理が許せなくて、つけ合わせや汁物を作ったり。人にそれを言うと手を掛け過ぎだと言われる。
「伊東」
「んー?」
「お前、バイクで来たのか。花粉は」
「そろそろ落ち着いて来たしバイク解禁かなーって。天気良かったしタンデムで」
伊東は大型のバイクに乗っているけど、雨の日や花粉飛散量が多いときは極力乗らないようにしている。ここ最近、ようやく花粉が落ち着いて来たということでバイクに乗り始めたようだ。ということは、これまで室内干しにしていた洗濯物も外に干し始めたのかもしれない。
「さ、作るか」
「いよっ、浅浦!」
「きゃー浅浦クンすてきー」
エプロンをして、台所に立つ。今日はオムライスとサラダ、それからミネストローネにしようか。いや、トマトトマトするからオニオンコンソメスープとかにしとこうか。そうだ、そうしよう。
「浅浦、何かしようか」
「お前はあの人の相手をしててくれ。ほっとくと拗ねるだろ」
「いや、このシチュエーションに限っては放置してても問題ない。エネルギーは自家生産出来るから。むしろ邪魔するなって怒られるかもしれない」
「難儀な趣味だな」
「ホントだよ」
宮林サンという人は、爛れたワーカホリックだ。趣味はゲームや同人活動。ボーイズラブというジャンルを好む所謂腐女子というヤツだ。そんな彼女と知り合って5年、幼馴染み属性のナントカと妄想されること5年だ。
「つーかお前さ、自分以外の人間を台所に立たせないよな」
「俺の包丁を他の奴に握らせる気はないからな」
「はー、さすがなこった」
「と言うか、お前に俺の包丁は使いにくいだろ普通に」
「まあな」
俺は料理をする機会も多いし、それなりの値段をする包丁を持っていたっていいだろうと思って用意したのが1万円の左利き用包丁だ。手入れが簡単だし、何より切れ味が凄い。切れ味というのは、刃の質もだけど左利き用に作られているからこその味もある。
伊東も料理は上手いほうだと思うけど右利きだし、わざわざ使いにくい包丁を使ってもらうこともない。そもそも、今は彼女に妄想の燃料を与えるためにここで喋っているけど、普段はロフトでごろごろしているだけなのだ。
「カーズー、ちょっとー」
「あーい。どうしたー?」
彼女に呼ばれて伊東が部屋に戻れば、俺は料理だけに集中して。自分だけが食べるならある程度雑でも困らないけど、3人分となるといつもよりもしっかりやらないといけないという気持ちはある。味付けが大体なのは変わらないけど。
俺の作るオムライス、またはエビグラタンがたまにすごく食べたくなると言われるのは悪い気はしない。たまにすごく食べたくなると言われるからには俺の味というものがある程度舌に刻まれているのだろう。だからこそ、質はある保たなければならない。作り慣れたものであれば手癖でも行けるから問題ないと言えばないけれど。
「伊東、出来たから運ぶの手伝ってくれ」
「おっ、わかった」
オムライスと、サラダとオニオンコンソメスープ。それらと水を運んで。たまにある部屋での会食、振る舞い。伊東に手伝わせるなら料理じゃなくて洗濯だったかな、と多少の失敗を自覚しつつ、席に着く。
「それじゃ、いただきます」
「いただきまーす」
end.
++++
今期の浅浦雅弘登場回。日曜日なのは何かもうお約束な感じ。花粉のシーズンが落ち着いてくると、いち氏も外に出たり活発になってくるようです。
包丁に1万円をぽーんと出せてしまうのは、普段から料理をするから出せるのか、それとも生活水準がそうさせるのか……前者ですかね
いち氏が浅浦クンの部屋にいる時は大体ロフトで人をダメにするクッションでごろごろさせがちなので、台所でのお喋りというのはナノスパ的にも斬新だなあ
.