2020(02)

■班長、しっかりしてください!

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「それではッ! 4班はこの6人でやっていきますッ! よろしくお願いしまーすッ」

 うちが班長になった4班(去年の菜月先輩と一緒の数字!)は、2年生が星ヶ丘のマリン、あと1年生が4人の班。緑ヶ丘のくるちゃん、星大の千颯、青女のちとせちゃん、青敬の北星っていうメンバー。くるちゃんとちとせちゃんがとにかく可愛い! 女の子! すき!
 くるちゃんはもちもちしてそうだし小さくてかわいい。ちとせちゃんはくりくりとして小さくてかわいい。あっ、153のうちが人に小さいって言えた分際じゃなかったっす、うっすうっす。千颯は星大さんっぽいのんびりした感じ。北星は……独特な感じの子だね、現時点では。
 ペアはうちとちとせちゃん、マリンと北星、千颯とくるちゃんって感じに決まった。マリンと北星は星ヶ丘と青敬っていうラジオをあまりやらない学校同士のペアだけど、マリンは「野坂先輩とつばめ先輩からラジオの基礎はみっちり教わってますから大丈夫ですよ!」と言ってくれたのでお願いすることに。

「ちとせちゃんは女の子だから仲良くなりたいし、千颯はペアだから仲良くなりたいし、北星も同じミキサーだから仲良くなりたいし。奈々先輩、夏合宿って忙しいですね!」
「あーん、くるちゃ~ん! 先輩とも仲良くして~!」
「きゃー、仲良くします~! マリン先輩も仲良くしましょう~!」
「くるちゃんの人畜無害さが毒気を抜かれるです」
「マリンも、星ヶ丘では大変かもだけど、インターフェイスではリラックスしなよッ」
「元々そのつもりですよ。でも、多少肩に力は入るですよ。これまでみたくラジオに慣れた人たちや先輩たちのお世話になりっ放しじゃいられないですよ」
「マリン先輩は責任感が強いんですね」
「くるちゃんありがとうね。でも、これから私はプロデューサーとして、つばめ先輩の右腕として班を引っ張って行かなきゃいけないですよ。責任感のひとつやふたつは当然持ってないと」

 確かに、マリンの責任感の強さや真面目さを見てると、どっちが班長なんだかって感じ。うちはとにかく可愛い1年生たちに浮かれてる感じだからね。はっ…! もしかして去年のヒロ先輩もこういう感じだったから直クン先輩が実質的な班長として班を仕切ってたんじゃ!?
 ヤバいヤバい! うちがしっかりしないと、これだから向島はって言われちゃうよねッ! ただでさえ悪乗りの向島みたいな悪評になってるみたいだし、ここらでバシーンとやるときはやるんだぞってところを見せて行かないと、菜月先輩や圭斗先輩たちがこれまで築き上げて来た物がガラガラと崩れちゃう!

「あと、これを見てるとちょっと不安になるですよ」

 ――と、マリンが呆れたような目を向けるのは、コーヒーがなみなみ入ったカップを口元にやったまま目を閉じて今にも舟を漕ごうとしている北星だ。あやめからは「普段はボケボケしてるけど番組作り“は”ちゃんとしてくれるから」とは聞いてたけど。逆に言えば、番組作り以外は……ということだよね?

「ぐぼっ」
「わっ! 北星! 起きてー、溺れちゃうよ!」
「あ~、死ぬかと思った~」
「どうやったらコーヒーカップで溺れるです?」
「ほっといたらコーヒーが染みになっちゃうよ。ごめん、ちょっと叩くね」

 コーヒーを飲もうとしたままぶくぶくと溺れそうになってコーヒーをこぼすって、なかなか見たことがない。北星が服にコーヒーをこぼしてしまったのを、くるちゃんがハンカチでトントンと叩いて応急処置。

「はいっ、これで一応オッケーだよ。家に帰ったらすぐに洗濯してね。洗う前に液体の漂白剤を塗ってあげたら多分染みにならないから」
「ありがと~」
「くるちゃん、普段から家事とかよくしてるの?」
「自分の服は自分で洗ってるよ。ちとせちゃんは?」
「洗濯はお母さん任せかな。休みの日ならご飯作るけど、家事なんてそれくらいかな」
「えー、お料理出来るのいいなー。あたし、すぐドジしちゃうからあんまり難しいのは出来ないよー。奈々先輩はお料理します?」
「うちはお菓子作りが得意だよッ」
「きゃー! すごーい! あたし、甘いお菓子がだ~い好きなんですっ!」
「くるちゃ~ん! お姉さんが好きなの作ってあげるねーッ!」

 くるちゃんが可愛すぎて緑ヶ丘さん羨ましすぎ。萌香が可愛くないってワケじゃないんだけど、どうもまだサークルと距離を置いてる感じだよね。確かにまだ正式加入するとは聞いてないんだけど、それだったらいっそ……ううん、ダメダメ。ちゃんと入ってもらえるように努力しないとッ! でも、他の大学さんを見てると人数多いよね今年。いいなあ。

「何のお菓子作ろうかなー、久し振りだし練習しないとなー」
「それで奈々、お菓子作りもいいですけど、どういうコンセプトの番組にするです?」
「あっそうだった」
「班長なんですからしっかりするですよ」
「どうしよう、このままだとマリンが班長だと思われて求心力がなくなっちゃうよねッ!」
「奈々先輩大丈夫ですよ! みんなを盛り上げるのも班長の大事なお仕事です!」
「あーんくるちゃ~ん!」
「くるちゃん、今から奈々を甘やかすの禁止で」
「マリン!?」
「仮にも野坂先輩を擁する向島のミキサーですよ? 機材王国の看板を背負ってるですよ奈々は」
「あいたたた、お腹痛くなってきた。これはもうケーキしか食べられない」
「がっつり食べてるですよ。それで、番組の話ですよ」


end.


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女子に飢えるのはMMP女子の流れを見事に受け継ぐ奈々であった。菜月さんより愛で方がダイレクトではある。
しかし、マリンが締めるのが北星じゃなくて奈々になりつつあるのがさすがですね! 奈々も頑張ってはいるんですよ……本当だよ
くるちゃんがただただかわいいのがダメなんだ! ちくしょう! 奈々じゃなくても愛でるわ

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