2020
■台所は保護者部屋
++++
俺の部屋に集合してくださいと高木先輩から招集がかかり、1年から3年生まで、来れる人みんなが高木先輩の部屋に集合した。1年から3年までの12人が入ってもそれなりにスペースのある部屋だよ。8畳らしいけど、数字以上の広さを感じる。
そして台所では伊東さんがせっせと料理を作っていて、その横ではエージ先輩が助手として働いている。高木先輩の部屋の台所は家主以上にエージ先輩が把握していて、食料の在庫管理や衛生管理も完全にエージ先輩の仕事になっているとか。
今日ここで何が行われているのかと言うと、高木先輩主催のジャガイモパーティー。何か、インターフェイスの人から大量にジャガイモを譲られたらしく、それを人海戦術でとにもかくにも食べ尽くすという大会で今回が2回目。果林先輩は箸を握って完全に準備万端だ。
「はーい、そしたらみんな、まずはコロッケでーす」
「わーい! いっただっきまーす!」
「ちょっ、L先輩一応パーティーの体っすから乾杯の音頭とか!」
「えー、そしたらみんな、果林の隙を縫って何とか食うように。乾杯!」
「かんぱーい!」
「いっちー先輩のごはんの前にアタシが隙なんか作るはずないんですよねー。ん~、コロッケおいひ~!」
このパーティーはいろんな人にとっていいことずくめらしい。MBCC的には飲み会が出来て楽しい、高木先輩は保存食を作ってもらえて嬉しい、ジャガイモをくれた人は大量消費してもらえて嬉しい、伊東先輩はみんなにご飯を振る舞えて嬉しい、と。
コロッケの他にもジャガイモを使ったおつまみがどんどんと出て来て、その度にみんな大歓声。1年生はこのジャガイモパーティーが初めてだから、俺も含めて本当に感動してる。何でも、伊東さんが現役のときはもっと料理の規模が凄かったらしい。
「果林、ちゃんと1年生のことも考えてあげてよ。たくさん作ってはいるけど」
「アタシ去年1年間でタカちゃんを結構甘やかしてきましたけど、そこで辿り着いた結論としては、1年生も生存競争を勝ち抜くべきだと思うんですよね? 守られて遠慮しながら食べるご飯と、攻めて勝ち抜いて得たご飯のどっちが美味しいかと」
「そもそも飯に勝ち負けの概念を作るのはどうかと思うぞ」
「食べない人には言ってませーん。1年生、Lは無視していっぱい食べなー」
1年6人の間にも開戦のゴングが鳴り響く。シノとすがやん、それからくるみが我先にと箸を伸ばす。サキは大丈夫かなと思ったけど、意外に大丈夫そうだ。サキは静かにみんなの間を縫って上手く欲しい物を獲得しているようだった。だけど、12人分の食事を作り続ける伊東さんは大変なはずだ。このペースで消費されたら。
「伊東さん、何か手伝いますか?」
「あっ、いいよ。大丈夫大丈夫。エージもいるし。リクは食べてて」
「でも、本当に凄いですね。話には聞いてましたけど。こないだのクッキーにしろ」
「俺が好きでやってることだからね。自分の部屋がなくなって、こういうことがなかなか出来なくてさ。タカシからジャガイモの話を聞いた時は無制限飲みでしょって飛びついたよ」
「高崎先輩が怒るんじゃないすか? あの人カズ先輩の飯めっちゃ好きだっていう」
「高ピーには別枠で何かやることにするよ。まあ、その時はLの部屋を借りることになるだろうけど」
「あ~…! 久々に高崎先輩と飲みてーなー」
「高崎先輩って、お酒強いんですか」
「去年のMBCCで1番か2番か。うん、強いね。って言うかMBCCの子ってみんな強いからね」
MBCCは、泣く子も黙る酒豪サークルとも呼ばれているらしい。確かに2年生と3年生の先輩はみんな強いし、1年生6人も、約1名を除いてみんな結構飲めてたんだ。ちなみに、みんなの飲みっぷりについては新歓コンパのときに見た。
で、ザルから除かれた約1名っていうのがシノなんだけど。シノとは個別に高木先輩の部屋に遊びに来たことがあって、その時に飲んでたんだ。まあやらかすやらかす。高木先輩に悪絡みしてたのを俺は必死に引き剥がそうとしたけど、逆に意固地になってしまって。あの時は大変だった。
「高木せーんぱいっ、せーんぱいっ」
「……シノ、始まったかな?」
「せーんぱいっ」
「せんぱいっ」
「くるみとすがやんはシラフの悪乗りだよね?」
「すみませーん」
「おーいシノ、お茶飲もうぜー」
「シノってお酒弱いんですねー」
「あんまり強くないみたいだね。前も1回ササと3人で飲んでたけど、あの時も結構酷く酔ってたから。ほらシノ、すがやんがお茶持って来てくれたから」
「高木先輩のパソコンが見たいんですー? どーなってんですかー?」
「どうもなってないよ」
「そんなはずないっすよ! すげー音声ファイルとかあるんじゃないすか!」
高木先輩がちらっちらこっちを見てくる…! これは完全に救援要請だよなあ……。ええー……俺行かなきゃダメですか? いや、もしかしたら俺じゃなくてエージ先輩か伊東さんに対して送られてる可能性を考えよう。
「ササー! シノを何とかしてー!」
「ササ、呼ばれてんべ」
「やっぱり俺だったか……。はーい、今行きます」
「あ、ついでだからこれも持ってって。山盛りフライドポテト」
「わかりました」
end.
++++
ジャガイモの出所は言うまでもなく星大情報センターですね! 高崎がいない分戦力ダウンだけど、1年生の人数がいるから結果オーライ。
シノがお酒弱くて酒癖悪いのをいつかやりたかったんだけど、今回はちょっと控えめ。悪乗りするすがくるがかわいい。
そしてTKGのパソコンに興味津々のシノである……でも確かに何かやってそう感はあるもんな。でもパソコンは見ないでやれ
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俺の部屋に集合してくださいと高木先輩から招集がかかり、1年から3年生まで、来れる人みんなが高木先輩の部屋に集合した。1年から3年までの12人が入ってもそれなりにスペースのある部屋だよ。8畳らしいけど、数字以上の広さを感じる。
そして台所では伊東さんがせっせと料理を作っていて、その横ではエージ先輩が助手として働いている。高木先輩の部屋の台所は家主以上にエージ先輩が把握していて、食料の在庫管理や衛生管理も完全にエージ先輩の仕事になっているとか。
今日ここで何が行われているのかと言うと、高木先輩主催のジャガイモパーティー。何か、インターフェイスの人から大量にジャガイモを譲られたらしく、それを人海戦術でとにもかくにも食べ尽くすという大会で今回が2回目。果林先輩は箸を握って完全に準備万端だ。
「はーい、そしたらみんな、まずはコロッケでーす」
「わーい! いっただっきまーす!」
「ちょっ、L先輩一応パーティーの体っすから乾杯の音頭とか!」
「えー、そしたらみんな、果林の隙を縫って何とか食うように。乾杯!」
「かんぱーい!」
「いっちー先輩のごはんの前にアタシが隙なんか作るはずないんですよねー。ん~、コロッケおいひ~!」
このパーティーはいろんな人にとっていいことずくめらしい。MBCC的には飲み会が出来て楽しい、高木先輩は保存食を作ってもらえて嬉しい、ジャガイモをくれた人は大量消費してもらえて嬉しい、伊東先輩はみんなにご飯を振る舞えて嬉しい、と。
コロッケの他にもジャガイモを使ったおつまみがどんどんと出て来て、その度にみんな大歓声。1年生はこのジャガイモパーティーが初めてだから、俺も含めて本当に感動してる。何でも、伊東さんが現役のときはもっと料理の規模が凄かったらしい。
「果林、ちゃんと1年生のことも考えてあげてよ。たくさん作ってはいるけど」
「アタシ去年1年間でタカちゃんを結構甘やかしてきましたけど、そこで辿り着いた結論としては、1年生も生存競争を勝ち抜くべきだと思うんですよね? 守られて遠慮しながら食べるご飯と、攻めて勝ち抜いて得たご飯のどっちが美味しいかと」
「そもそも飯に勝ち負けの概念を作るのはどうかと思うぞ」
「食べない人には言ってませーん。1年生、Lは無視していっぱい食べなー」
1年6人の間にも開戦のゴングが鳴り響く。シノとすがやん、それからくるみが我先にと箸を伸ばす。サキは大丈夫かなと思ったけど、意外に大丈夫そうだ。サキは静かにみんなの間を縫って上手く欲しい物を獲得しているようだった。だけど、12人分の食事を作り続ける伊東さんは大変なはずだ。このペースで消費されたら。
「伊東さん、何か手伝いますか?」
「あっ、いいよ。大丈夫大丈夫。エージもいるし。リクは食べてて」
「でも、本当に凄いですね。話には聞いてましたけど。こないだのクッキーにしろ」
「俺が好きでやってることだからね。自分の部屋がなくなって、こういうことがなかなか出来なくてさ。タカシからジャガイモの話を聞いた時は無制限飲みでしょって飛びついたよ」
「高崎先輩が怒るんじゃないすか? あの人カズ先輩の飯めっちゃ好きだっていう」
「高ピーには別枠で何かやることにするよ。まあ、その時はLの部屋を借りることになるだろうけど」
「あ~…! 久々に高崎先輩と飲みてーなー」
「高崎先輩って、お酒強いんですか」
「去年のMBCCで1番か2番か。うん、強いね。って言うかMBCCの子ってみんな強いからね」
MBCCは、泣く子も黙る酒豪サークルとも呼ばれているらしい。確かに2年生と3年生の先輩はみんな強いし、1年生6人も、約1名を除いてみんな結構飲めてたんだ。ちなみに、みんなの飲みっぷりについては新歓コンパのときに見た。
で、ザルから除かれた約1名っていうのがシノなんだけど。シノとは個別に高木先輩の部屋に遊びに来たことがあって、その時に飲んでたんだ。まあやらかすやらかす。高木先輩に悪絡みしてたのを俺は必死に引き剥がそうとしたけど、逆に意固地になってしまって。あの時は大変だった。
「高木せーんぱいっ、せーんぱいっ」
「……シノ、始まったかな?」
「せーんぱいっ」
「せんぱいっ」
「くるみとすがやんはシラフの悪乗りだよね?」
「すみませーん」
「おーいシノ、お茶飲もうぜー」
「シノってお酒弱いんですねー」
「あんまり強くないみたいだね。前も1回ササと3人で飲んでたけど、あの時も結構酷く酔ってたから。ほらシノ、すがやんがお茶持って来てくれたから」
「高木先輩のパソコンが見たいんですー? どーなってんですかー?」
「どうもなってないよ」
「そんなはずないっすよ! すげー音声ファイルとかあるんじゃないすか!」
高木先輩がちらっちらこっちを見てくる…! これは完全に救援要請だよなあ……。ええー……俺行かなきゃダメですか? いや、もしかしたら俺じゃなくてエージ先輩か伊東さんに対して送られてる可能性を考えよう。
「ササー! シノを何とかしてー!」
「ササ、呼ばれてんべ」
「やっぱり俺だったか……。はーい、今行きます」
「あ、ついでだからこれも持ってって。山盛りフライドポテト」
「わかりました」
end.
++++
ジャガイモの出所は言うまでもなく星大情報センターですね! 高崎がいない分戦力ダウンだけど、1年生の人数がいるから結果オーライ。
シノがお酒弱くて酒癖悪いのをいつかやりたかったんだけど、今回はちょっと控えめ。悪乗りするすがくるがかわいい。
そしてTKGのパソコンに興味津々のシノである……でも確かに何かやってそう感はあるもんな。でもパソコンは見ないでやれ
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