2020
■慎ましやかな暮らし方?
++++
1人暮らしを始めて3ヶ月目に突入。生活がぐだり始める頃合いとも言われてるけど、それなりにやれていると思う。毎食じゃないけど自炊だって何となく続いてるし、掃除も洗濯もやってる。まだ生活は破綻していないし今後も多分大丈夫じゃないかなと思いたい。
俺は山羽から出て来て、住み始めたのは大学近くのコーポ・エトワールというアパート。星ヶ丘大学の近くは坂が多くて細い道が入り組んでいる。星港という大都市ではあるけど、端の方だし学生街だし、あんまりザ・都会って感じではないかな。
バイトをしているのは星港市の中心市街・花栄にあるコーヒースタンドだ。コーヒースタンドとは言うけどビールを売ってたり、食パンを出してたりする。でもいちいち店の外装や内装、グラスなどがいちいちオシャレだし、ここは都会だなって感じがする。
「えっと、メモは……っと」
家の近くのスーパーに買い物に来た。あんまりたくさん買ってもどうせ使い切れないからっていう理由で1回の買い物量はそこまで多くない。だけど、あんまりたくさん買わないからちょこちょこ買い物には来なきゃいけないということになってしまっている。
まあ、どっちにしても授業はあるから外には出なきゃいけないし。それに、ずっと部屋に引き籠もっているよりは外に出て周りの観察だとか、近所の探索なんかをした方がいいだろうからこの買い物スタイルで今後も固定していくことに。
「あ。よう」
「彩人。こんにちは」
鉢合わせたのはみちるだ。実はみちるも向島の外から来ているらしく、大学近くで1人暮らしをしているそうだ。勝手なイメージだけど、みちるは結構しっかり系の性格だから、部屋も綺麗なんじゃないかなって。自炊もバリバリやってそうだし。
「みちるって料理得意?」
「出来ないことはないけど、得意とは言えないかな。おかずの素とか普通に使うし」
「クックドゥとか?」
「私はうちのごはんシリーズが好き。彩人は料理」
「ちょっとだけな。ホント最低限。「肉を加えてすぐ一品!」的なヤツの世話になりっ放し」
「ちゃんと食べられればそれでも全然いいと思うけど」
「だよな。白いご飯におかずが一品でも十分だよな」
「十分十分。むしろ、勝手に彩人のイメージを決めつけてて申し訳ない」
「俺のイメージ?」
「外食多そうとか、コンビニのパンでおしまいとか」
「外食もたまにするし、朝とかは普通にコンビニのパンとコーヒーだから、合ってるっちゃ合ってる」
そんな話をしながらも、みちるはタマネギやジャガイモを2、3個ほどカゴの中に入れている。俺はと言えば、近頃の暑さに耐えかねて豆腐とおろししょうがのチューブを。冷奴とか、そういうのが食べたいと思って。
俺の豆腐に影響されたのか、みちるも豆腐をカゴに入れる。だけどみちるは冷奴じゃなくて麻婆豆腐にして食べる予定だそうだ。中華でピンと来て、俺はキュウリをカゴにイン。バンバンジーが食べたい。精肉のコーナーに着いたら鶏肉を買わないと。
「ハムどうですかー」
精肉コーナーを抜けて冷蔵コーナーに差し掛かると、ハムの試食販売をしている。多分バイトであろう若い男の試食販売員が、俺とみちるにハムを勧めて来た。それを受け取り一口。そのままでも食えるしパンにも挟めるから、あれば便利なんだろうけど本当に要るか?
4枚入りの物が4パック連なったタイプのヤツだ。ちょっと食べたいけど、こんなには要らないような気がする。試食販売員は、今の季節なら冷やし中華のトッピングにもいいと思う、などと懸命にセールスしてくるけれども。
「あ~……どーするかなぁー…!」
「彩人、私ハム買うけど、2パックずつ分ける? こんなには多分使わないから」
「あ、それ助かります! 金は後で徴収して!」
「わかった」
「ありがとうございまーす。あ、ついでにウインナーもどうですか」
「お兄さん、夏にウインナーはどう食べるのが美味しいですか?」
「ボイルしてビール合わせ一択。俺ならそこにこの生ハムも追加して~……あっ」
単純にそれはアンタの欲求じゃないのかって思うけど、ボイルしたウインナーや生ハムとビールの相性は単純にいいだろうな。
「ただただ美味そう」
「彩人、家でお酒とか飲むの?」
「あんま飲んだことないけど、やってみたいなっていう憧れはある。みちるは?」
「私はちょこちょこ飲んでるけど」
「あ、そうなんだ。やっぱビールとか?」
「ビールも飲むし、梅酒とかも」
「いいな、晩酌か。今日は晩酌してみようかな」
「そしたら彩人、一緒に飲む? サシ飲み」
「いいね。飲むか」
サシ飲みをする話がまとまると、みちるはウインナーをカゴの中に入れた。そして俺は生ハムを。大人しそうに見えてみちるが行動派だなと思うのは、ウインナーや生ハムの他のビールのおともを販売員のお兄さんに聞くところだ。枝豆は欲しいと返って来たので、冷凍食品コーナーに行くことに。
冷凍食品を見たら酒を調達、会計を済ませたら俺の部屋集合。今日はそんな流れで。この事が海月に知れたらいろいろうるせーだろうけど、下宿組だからこその偶然ということで押し切らせてもらおう。
「……これ、日常的に飲むようになったら金が怒涛の勢いで飛んでくな」
「紙パックの梅酒とかオススメだよ。安いなりの味だけど、値段の割に量あるし」
「いや、つかお前どんだけ飲んでるんだよ」
end.
++++
彩人とみちるはどうやら下宿生のようです。彩人の住んでる部屋はこれからちょこちょこ出てきそうですが、みちるの部屋はまだまだ謎。
基本的にご都合主義で出来ているナノスパですが、ご近所なのでこんなことがあってもいいかなと思ったなどと供述しており
多分今回出て来た試食販売員の人もこれまでに何回かやってるあの人のバイトの風景だし、この辺ならこれからワンチャンありそうな気がする
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1人暮らしを始めて3ヶ月目に突入。生活がぐだり始める頃合いとも言われてるけど、それなりにやれていると思う。毎食じゃないけど自炊だって何となく続いてるし、掃除も洗濯もやってる。まだ生活は破綻していないし今後も多分大丈夫じゃないかなと思いたい。
俺は山羽から出て来て、住み始めたのは大学近くのコーポ・エトワールというアパート。星ヶ丘大学の近くは坂が多くて細い道が入り組んでいる。星港という大都市ではあるけど、端の方だし学生街だし、あんまりザ・都会って感じではないかな。
バイトをしているのは星港市の中心市街・花栄にあるコーヒースタンドだ。コーヒースタンドとは言うけどビールを売ってたり、食パンを出してたりする。でもいちいち店の外装や内装、グラスなどがいちいちオシャレだし、ここは都会だなって感じがする。
「えっと、メモは……っと」
家の近くのスーパーに買い物に来た。あんまりたくさん買ってもどうせ使い切れないからっていう理由で1回の買い物量はそこまで多くない。だけど、あんまりたくさん買わないからちょこちょこ買い物には来なきゃいけないということになってしまっている。
まあ、どっちにしても授業はあるから外には出なきゃいけないし。それに、ずっと部屋に引き籠もっているよりは外に出て周りの観察だとか、近所の探索なんかをした方がいいだろうからこの買い物スタイルで今後も固定していくことに。
「あ。よう」
「彩人。こんにちは」
鉢合わせたのはみちるだ。実はみちるも向島の外から来ているらしく、大学近くで1人暮らしをしているそうだ。勝手なイメージだけど、みちるは結構しっかり系の性格だから、部屋も綺麗なんじゃないかなって。自炊もバリバリやってそうだし。
「みちるって料理得意?」
「出来ないことはないけど、得意とは言えないかな。おかずの素とか普通に使うし」
「クックドゥとか?」
「私はうちのごはんシリーズが好き。彩人は料理」
「ちょっとだけな。ホント最低限。「肉を加えてすぐ一品!」的なヤツの世話になりっ放し」
「ちゃんと食べられればそれでも全然いいと思うけど」
「だよな。白いご飯におかずが一品でも十分だよな」
「十分十分。むしろ、勝手に彩人のイメージを決めつけてて申し訳ない」
「俺のイメージ?」
「外食多そうとか、コンビニのパンでおしまいとか」
「外食もたまにするし、朝とかは普通にコンビニのパンとコーヒーだから、合ってるっちゃ合ってる」
そんな話をしながらも、みちるはタマネギやジャガイモを2、3個ほどカゴの中に入れている。俺はと言えば、近頃の暑さに耐えかねて豆腐とおろししょうがのチューブを。冷奴とか、そういうのが食べたいと思って。
俺の豆腐に影響されたのか、みちるも豆腐をカゴに入れる。だけどみちるは冷奴じゃなくて麻婆豆腐にして食べる予定だそうだ。中華でピンと来て、俺はキュウリをカゴにイン。バンバンジーが食べたい。精肉のコーナーに着いたら鶏肉を買わないと。
「ハムどうですかー」
精肉コーナーを抜けて冷蔵コーナーに差し掛かると、ハムの試食販売をしている。多分バイトであろう若い男の試食販売員が、俺とみちるにハムを勧めて来た。それを受け取り一口。そのままでも食えるしパンにも挟めるから、あれば便利なんだろうけど本当に要るか?
4枚入りの物が4パック連なったタイプのヤツだ。ちょっと食べたいけど、こんなには要らないような気がする。試食販売員は、今の季節なら冷やし中華のトッピングにもいいと思う、などと懸命にセールスしてくるけれども。
「あ~……どーするかなぁー…!」
「彩人、私ハム買うけど、2パックずつ分ける? こんなには多分使わないから」
「あ、それ助かります! 金は後で徴収して!」
「わかった」
「ありがとうございまーす。あ、ついでにウインナーもどうですか」
「お兄さん、夏にウインナーはどう食べるのが美味しいですか?」
「ボイルしてビール合わせ一択。俺ならそこにこの生ハムも追加して~……あっ」
単純にそれはアンタの欲求じゃないのかって思うけど、ボイルしたウインナーや生ハムとビールの相性は単純にいいだろうな。
「ただただ美味そう」
「彩人、家でお酒とか飲むの?」
「あんま飲んだことないけど、やってみたいなっていう憧れはある。みちるは?」
「私はちょこちょこ飲んでるけど」
「あ、そうなんだ。やっぱビールとか?」
「ビールも飲むし、梅酒とかも」
「いいな、晩酌か。今日は晩酌してみようかな」
「そしたら彩人、一緒に飲む? サシ飲み」
「いいね。飲むか」
サシ飲みをする話がまとまると、みちるはウインナーをカゴの中に入れた。そして俺は生ハムを。大人しそうに見えてみちるが行動派だなと思うのは、ウインナーや生ハムの他のビールのおともを販売員のお兄さんに聞くところだ。枝豆は欲しいと返って来たので、冷凍食品コーナーに行くことに。
冷凍食品を見たら酒を調達、会計を済ませたら俺の部屋集合。今日はそんな流れで。この事が海月に知れたらいろいろうるせーだろうけど、下宿組だからこその偶然ということで押し切らせてもらおう。
「……これ、日常的に飲むようになったら金が怒涛の勢いで飛んでくな」
「紙パックの梅酒とかオススメだよ。安いなりの味だけど、値段の割に量あるし」
「いや、つかお前どんだけ飲んでるんだよ」
end.
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彩人とみちるはどうやら下宿生のようです。彩人の住んでる部屋はこれからちょこちょこ出てきそうですが、みちるの部屋はまだまだ謎。
基本的にご都合主義で出来ているナノスパですが、ご近所なのでこんなことがあってもいいかなと思ったなどと供述しており
多分今回出て来た試食販売員の人もこれまでに何回かやってるあの人のバイトの風景だし、この辺ならこれからワンチャンありそうな気がする
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