2017(02)
■テンション乱高下
++++
「うーい、帰ったぞー」
「どちら様ですか」
背中には大きなリュックを背負い、両手には大量の紙袋。紙袋を持ちながらもその手は体の前で段ボール箱を抱えていて、声はすれども姿は見えず状態。いや、誰かはわかっているのだが、姿形が見えんという話でだな。
「いいから手伝え」
「爆買いの産物でしたら手伝います。芋なら押し潰されろ」
「産物だ」
「長い旅路をお疲れさまでした」
まずは段ボール箱を預かり、机に載せる。ひどい重さだ。そして両手に提げていた紙袋も預かる。これはまあまあの重さ。2つ預かればあとは自分でも何とかなる範囲。四方を囲んでいた荷物が剥がれて身軽になった体は自然と弾む。
「おー、軽い!」
「春山さん、アンタは相変わらず無茶をしますね」
「イケると思った」
北辰の実家に帰っていた春山さんが9月に入って戻ってきた。春山さんと入れ替わるように帰省に入るのが川北だ。人員のいない情報センターでは長期休暇の間、下宿生はこのように入れ替わりで帰省することになる。
春山さんは空港に行くとテンションが上がるのか、土産物売場で爆買いをしてくる。それをセンターやその他のところでばらまくのが恒例行事。今も抱えてきたのはそれらの土産物。その恩恵はオレも受けられるので素直に手伝ったのだ。
「リン、まだ暑いしゼリー食うか。メロンゼリー」
「食います」
「じゃあ、冷蔵庫入れとくぞ」
「冷えてないんですか」
「うるせー文句言うなら私が全部食うぞ」
「冷えた頃に美味しくいただきます」
北辰は土産物のクオリティが高いとオレの中で評判だ。メロンゼリーなど、安くて美味い。コストパフォーマンスの面で見てもかなり高評価を得られる部類の土産だろう。夏はゼリーなどが食いやすいからな。早く冷えんか。
春山さんの爆買いは限度という物がない。ひとつ誉めるとじゃあこれも美味いから食えなどと、わんこそばならぬわんこ土産のように次から次へと出てくるのだ。財力はここのバイトで培ったのだろうが、よくぞ他人にそこまで振る舞えるなと。
「バターサンドはありますか」
「あるぞ」
「そう言えば、前に川北がバターサンドが気になると言っていたような気がします」
「おっ、そうか。じゃあとっといてみるか」
紙袋の中からは定番から変わり種まで様々な土産が出てくる。春山さんのよく見る爆買いの図。しかし、手つかずの段ボールとリュックサックだ。リュックサックなど、限界まで荷物が積められているように見えるが。
「リン、これが例のおかきのカップタイプだ。やる。エビとホタテ、どっちがいい」
「ホタテで。しかしこれは便利ですね」
「だろ。やめられないとまらないおかきの止めどきがわかる画期的なカップだ。おかき食いながらでいいから聞け」
「はい」
「さて、この段箱とリュックサックの中身だ」
妖怪土産配りの春山さんが人間に戻って例の段ボールを開けると、その中には無数のジャガイモ。まーたこの季節が来てしまったかと。と言うか土産を提げてよくそんなモンを抱えて来れたなこの人は。
春山さんには農業をやっている親戚がいるらしい。その人がこれでもかとジャガイモを春山さんに送ってくるのだが、それが一人では到底処理しきれない量だ。送られてきた物の大半がここにやってくる。それを押しつけられるのはオレなどのスタッフだ。
「芋なら押し潰されろと言いましたがオレは」
「畑での産物。爆買いの産物とは言ってねーぞ私は」
「例によって押しつけられるんですか。春の分もまだ全部食ってないというのに」
「これはほんの一部だ。おかきうめーだろ。人助けだと思え」
「ならばこれで手を打ちましょう」
「えっ、300?」
「ふざけるな。30だ」
「じゃあ間を取って1回目は100だな」
「何の間だ」
がさごそと、春山さんが芋を袋に詰めていく。ご丁寧に、玉入れのように数をひとつひとつ数えながらだ。
「それともう1コ」
「まだあるんですか」
「バンドやるぞリン。決定事項だ。大祭まででいい。やらないっつーなら今ここにある芋全部押しつけるしお前のシフト全部Aにする」
「さらりと言いますけど暴挙ですね」
「うるせー芋投げつけんぞ」
end.
++++
春山さんは結構小柄なのに体が埋もれるほどの荷物を抱えてきてたとかホント結構なムチャをするね
ミドリがもうすぐバターサンドに目覚めてしまうのか……何かいつか「太った気がするけどどうしてだろう」「バターサンドの食い過ぎだ」って話をやりたい
そしてさらりとブルースプリングの話がwww 芋+A番はキツすぎる
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「うーい、帰ったぞー」
「どちら様ですか」
背中には大きなリュックを背負い、両手には大量の紙袋。紙袋を持ちながらもその手は体の前で段ボール箱を抱えていて、声はすれども姿は見えず状態。いや、誰かはわかっているのだが、姿形が見えんという話でだな。
「いいから手伝え」
「爆買いの産物でしたら手伝います。芋なら押し潰されろ」
「産物だ」
「長い旅路をお疲れさまでした」
まずは段ボール箱を預かり、机に載せる。ひどい重さだ。そして両手に提げていた紙袋も預かる。これはまあまあの重さ。2つ預かればあとは自分でも何とかなる範囲。四方を囲んでいた荷物が剥がれて身軽になった体は自然と弾む。
「おー、軽い!」
「春山さん、アンタは相変わらず無茶をしますね」
「イケると思った」
北辰の実家に帰っていた春山さんが9月に入って戻ってきた。春山さんと入れ替わるように帰省に入るのが川北だ。人員のいない情報センターでは長期休暇の間、下宿生はこのように入れ替わりで帰省することになる。
春山さんは空港に行くとテンションが上がるのか、土産物売場で爆買いをしてくる。それをセンターやその他のところでばらまくのが恒例行事。今も抱えてきたのはそれらの土産物。その恩恵はオレも受けられるので素直に手伝ったのだ。
「リン、まだ暑いしゼリー食うか。メロンゼリー」
「食います」
「じゃあ、冷蔵庫入れとくぞ」
「冷えてないんですか」
「うるせー文句言うなら私が全部食うぞ」
「冷えた頃に美味しくいただきます」
北辰は土産物のクオリティが高いとオレの中で評判だ。メロンゼリーなど、安くて美味い。コストパフォーマンスの面で見てもかなり高評価を得られる部類の土産だろう。夏はゼリーなどが食いやすいからな。早く冷えんか。
春山さんの爆買いは限度という物がない。ひとつ誉めるとじゃあこれも美味いから食えなどと、わんこそばならぬわんこ土産のように次から次へと出てくるのだ。財力はここのバイトで培ったのだろうが、よくぞ他人にそこまで振る舞えるなと。
「バターサンドはありますか」
「あるぞ」
「そう言えば、前に川北がバターサンドが気になると言っていたような気がします」
「おっ、そうか。じゃあとっといてみるか」
紙袋の中からは定番から変わり種まで様々な土産が出てくる。春山さんのよく見る爆買いの図。しかし、手つかずの段ボールとリュックサックだ。リュックサックなど、限界まで荷物が積められているように見えるが。
「リン、これが例のおかきのカップタイプだ。やる。エビとホタテ、どっちがいい」
「ホタテで。しかしこれは便利ですね」
「だろ。やめられないとまらないおかきの止めどきがわかる画期的なカップだ。おかき食いながらでいいから聞け」
「はい」
「さて、この段箱とリュックサックの中身だ」
妖怪土産配りの春山さんが人間に戻って例の段ボールを開けると、その中には無数のジャガイモ。まーたこの季節が来てしまったかと。と言うか土産を提げてよくそんなモンを抱えて来れたなこの人は。
春山さんには農業をやっている親戚がいるらしい。その人がこれでもかとジャガイモを春山さんに送ってくるのだが、それが一人では到底処理しきれない量だ。送られてきた物の大半がここにやってくる。それを押しつけられるのはオレなどのスタッフだ。
「芋なら押し潰されろと言いましたがオレは」
「畑での産物。爆買いの産物とは言ってねーぞ私は」
「例によって押しつけられるんですか。春の分もまだ全部食ってないというのに」
「これはほんの一部だ。おかきうめーだろ。人助けだと思え」
「ならばこれで手を打ちましょう」
「えっ、300?」
「ふざけるな。30だ」
「じゃあ間を取って1回目は100だな」
「何の間だ」
がさごそと、春山さんが芋を袋に詰めていく。ご丁寧に、玉入れのように数をひとつひとつ数えながらだ。
「それともう1コ」
「まだあるんですか」
「バンドやるぞリン。決定事項だ。大祭まででいい。やらないっつーなら今ここにある芋全部押しつけるしお前のシフト全部Aにする」
「さらりと言いますけど暴挙ですね」
「うるせー芋投げつけんぞ」
end.
++++
春山さんは結構小柄なのに体が埋もれるほどの荷物を抱えてきてたとかホント結構なムチャをするね
ミドリがもうすぐバターサンドに目覚めてしまうのか……何かいつか「太った気がするけどどうしてだろう」「バターサンドの食い過ぎだ」って話をやりたい
そしてさらりとブルースプリングの話がwww 芋+A番はキツすぎる
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