2020
■熱烈歓迎ホットトピック
++++
前に来たときから少し時間が空いているプチメゾン。伏見と一緒に顔を出せば、俺たちが来たと気付いたベティさんが熱烈に歓迎してくれた。いつもが10とすれば、50くらいのテンションの差がある。俺の存在自体がビッグニュースかのような。
「カオルちゃん、聞いたわよ! あずさのこと、よろしくねぇ」
「やっぱり聞いてたんですね」
「次の日にはもう聞いたわよ。あずさがとんでもないテンションでここに駆け込んできて「朝霞クンと付き合えることになったー! 祝杯のモスコミュールー!」って」
「……想像は付くけどお前、もうちょっと落ち着いて言えなかったのか。何だ祝杯のモスコミュールって」
「あまりの嬉しさで舞い上がってたよね。次の日二日酔いになっちゃって」
「俺が止めるのも聞かないで延々と飲むからだよ。あずさ、いい? いくら幼馴染みでも今までみたいにお世話できなくなるからね。飲み過ぎないでよ」
「えっ、困る!」
二日酔いの記憶を語る伏見を、裏口からカウンターに入って来た大石が窘める。と言うか今までのお世話のレベルが幼馴染みのそれを越えているのであろうことは理解出来たけど、それだけ伏見がここで飲むとぐだぐだになるということなのだろう。大石に対するガードの緩さというヤツか。
気の置けない奴と飲んでいるとガードが緩むというのは理解出来るし、俺のやらかし具合も酷いから人にあまり強くは言えないんだ。山口曰く、俺がガチで酔うと酷いなんてレベルじゃないくらいに酷いらしい。俺の酒癖を知っているから、山口からは女とはサシで飲まない方がいいとは何度も忠告を受けている。
「あっ、いらっしゃーい」
カランコロンとドアベルが鳴り、また新しい客が来た。そっちの方に目をやれば、リン君とミーナ。ミーナの姿を見るやいなや伏見は表情をパッと明るくして、美奈ちゃーんと声を上げ挨拶代わりにきゃっきゃとミーナの手に指を絡めている。
「朝霞、聞いたぞ」
「どの件を?」
「伏見と付き合い始めたのだな」
「ああ、その件ね。彼是ちょっと前に」
「次の打ち合わせではカンノに気を付けるのだな」
「ええー……もうそんなトコまで知れ渡ってんの?」
「それはもうキャンキャンと吠え散らかしていてだな」
リン君の話では、既にUSDXメンバーには知られてしまっているらしい。あれ、おかしいな。俺自身は大石にしか言ってないはずなんだけどな。これは伏見ルートから知った誰かが話をデカくしてるな。現にリン君もミーナから聞いたそうだし。いや、それにしたって早くないか。
ちなみに、俺がゲーム実況グループで活動していることは伏見にも言ってある。その配信だとか諸々で時間が取れない時は本当に取れないと伝えた。すると「書く物がいっぱいあるのはいいことだね。朝霞クンの書いたシナリオのTRPG動画チェックするね!」と返事があったので伏見も大概変な女だと思う。
「って言うか伏見ってゼミ飲みの時とかってそこまで悪酔いしないだろ。何でここだとそんなに緩むんだ?」
「ゼミ飲みの時は気を張ってるからね。って言うか大酒飲みの女だと思われるのも嫌だし」
「つかモスコミュールが好きな時点で十分酒好きだし、度数高いモンをかぱかぱ行ってるって普通に酒飲みだろ」
「えー! 朝霞クン酷い! ねえちー酷い!」
「あずさは普通にお酒大好きでしょ」
「ほら見たか。付き合いの長い大石が言ってるんだからガチだろ」
「もー」
「別に酒好きを悪いとは一言も言ってないだろ。俺からすれば、一緒に飲めて楽しいし」
「そ、そうかな」
「まあ、朝霞もそんなに強くないワケだし。共倒れだけはしないようにね」
「確かに、ロイはあまり強くない……」
「はーっ……朝霞の酒癖はな……」
「あーっとっと、リン君? 毎度毎度すみません?」
俺のあまりに酷い酒癖を知っているリン君に、伏見は何がどう酷いのかを聞こうと詰め寄っている。その詰め寄り方があまりに強いものだから、リン君は一刻も早く解放されようと俺の酒癖を売った。
具体的には同じことを話し続けた挙句寝落ちして、リン君に抱き着いて胸板を枕代わりに一晩中そのままだったとか、胡坐を掻いたリン君の懐に入り込んで太腿を枕代わりに寝ていたとかそんなような内容だ。ちなみに山口相手にはもっと酷いらしい。
「――とまあ、朝霞は同じ話を何度も繰り返し、側にいる相手を拘束する癖があるようでな」
「う、う……羨ましい!」
「む」
「朝霞クンに抱き締められるとかリンさん羨ましい!」
「何をどう聞いたらそのような解釈になる」
「……ロイ、来たる時には……」
腕を身体の前で交差するミーナのジェスチャーが「ハグを」と伝えている。それこそ素面では出来そうにないのだが?
「あずさ……ちなみに、手は…?」
「物理的接触はまだありません! ちー、モスコミュールおかわり~!」
「あずさ、今日の話の内容わかってる?」
「ちょっと酔ってもちーには迷惑かけませ~ん」
「は~あ。はいはい、わかりましたよ。そういうことだから朝霞、よろしく」
「大石お前、そんなに感情表現豊かな奴だったか? いや、つか普通に逆方向で」
「それを融通利かせるのが彼氏なの」
呆れたような顔をしつつも、大石は伏見にモスコミュールを出してくれぐれもこれ以上はヤケで飲むなと繰り返している。今日はとことん伏見の扱いを俺に投げているようだし、俺はあまり飲まない方がいいか。飯を食う方にシフトしよう。
end.
++++
USDXにもレイ君のニュースが広がったみたいですが、その情報元はふしみんルートじゃなくてちーちゃんルートなんだよなあ……(ちー→オミ)
そしてこういう話題になるとイキイキし出すのが美奈である。ふしみんがおめでたいのはいいけど、自分はどうなんでしょう。リン様もリン様でアレやからな
今までぐだぐだになったふしみんをちーちゃんがどのようにお世話していたのかがちょっと垣間見える呆れ方。それは幼馴染み以上やったんやろなあレベルが。
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前に来たときから少し時間が空いているプチメゾン。伏見と一緒に顔を出せば、俺たちが来たと気付いたベティさんが熱烈に歓迎してくれた。いつもが10とすれば、50くらいのテンションの差がある。俺の存在自体がビッグニュースかのような。
「カオルちゃん、聞いたわよ! あずさのこと、よろしくねぇ」
「やっぱり聞いてたんですね」
「次の日にはもう聞いたわよ。あずさがとんでもないテンションでここに駆け込んできて「朝霞クンと付き合えることになったー! 祝杯のモスコミュールー!」って」
「……想像は付くけどお前、もうちょっと落ち着いて言えなかったのか。何だ祝杯のモスコミュールって」
「あまりの嬉しさで舞い上がってたよね。次の日二日酔いになっちゃって」
「俺が止めるのも聞かないで延々と飲むからだよ。あずさ、いい? いくら幼馴染みでも今までみたいにお世話できなくなるからね。飲み過ぎないでよ」
「えっ、困る!」
二日酔いの記憶を語る伏見を、裏口からカウンターに入って来た大石が窘める。と言うか今までのお世話のレベルが幼馴染みのそれを越えているのであろうことは理解出来たけど、それだけ伏見がここで飲むとぐだぐだになるということなのだろう。大石に対するガードの緩さというヤツか。
気の置けない奴と飲んでいるとガードが緩むというのは理解出来るし、俺のやらかし具合も酷いから人にあまり強くは言えないんだ。山口曰く、俺がガチで酔うと酷いなんてレベルじゃないくらいに酷いらしい。俺の酒癖を知っているから、山口からは女とはサシで飲まない方がいいとは何度も忠告を受けている。
「あっ、いらっしゃーい」
カランコロンとドアベルが鳴り、また新しい客が来た。そっちの方に目をやれば、リン君とミーナ。ミーナの姿を見るやいなや伏見は表情をパッと明るくして、美奈ちゃーんと声を上げ挨拶代わりにきゃっきゃとミーナの手に指を絡めている。
「朝霞、聞いたぞ」
「どの件を?」
「伏見と付き合い始めたのだな」
「ああ、その件ね。彼是ちょっと前に」
「次の打ち合わせではカンノに気を付けるのだな」
「ええー……もうそんなトコまで知れ渡ってんの?」
「それはもうキャンキャンと吠え散らかしていてだな」
リン君の話では、既にUSDXメンバーには知られてしまっているらしい。あれ、おかしいな。俺自身は大石にしか言ってないはずなんだけどな。これは伏見ルートから知った誰かが話をデカくしてるな。現にリン君もミーナから聞いたそうだし。いや、それにしたって早くないか。
ちなみに、俺がゲーム実況グループで活動していることは伏見にも言ってある。その配信だとか諸々で時間が取れない時は本当に取れないと伝えた。すると「書く物がいっぱいあるのはいいことだね。朝霞クンの書いたシナリオのTRPG動画チェックするね!」と返事があったので伏見も大概変な女だと思う。
「って言うか伏見ってゼミ飲みの時とかってそこまで悪酔いしないだろ。何でここだとそんなに緩むんだ?」
「ゼミ飲みの時は気を張ってるからね。って言うか大酒飲みの女だと思われるのも嫌だし」
「つかモスコミュールが好きな時点で十分酒好きだし、度数高いモンをかぱかぱ行ってるって普通に酒飲みだろ」
「えー! 朝霞クン酷い! ねえちー酷い!」
「あずさは普通にお酒大好きでしょ」
「ほら見たか。付き合いの長い大石が言ってるんだからガチだろ」
「もー」
「別に酒好きを悪いとは一言も言ってないだろ。俺からすれば、一緒に飲めて楽しいし」
「そ、そうかな」
「まあ、朝霞もそんなに強くないワケだし。共倒れだけはしないようにね」
「確かに、ロイはあまり強くない……」
「はーっ……朝霞の酒癖はな……」
「あーっとっと、リン君? 毎度毎度すみません?」
俺のあまりに酷い酒癖を知っているリン君に、伏見は何がどう酷いのかを聞こうと詰め寄っている。その詰め寄り方があまりに強いものだから、リン君は一刻も早く解放されようと俺の酒癖を売った。
具体的には同じことを話し続けた挙句寝落ちして、リン君に抱き着いて胸板を枕代わりに一晩中そのままだったとか、胡坐を掻いたリン君の懐に入り込んで太腿を枕代わりに寝ていたとかそんなような内容だ。ちなみに山口相手にはもっと酷いらしい。
「――とまあ、朝霞は同じ話を何度も繰り返し、側にいる相手を拘束する癖があるようでな」
「う、う……羨ましい!」
「む」
「朝霞クンに抱き締められるとかリンさん羨ましい!」
「何をどう聞いたらそのような解釈になる」
「……ロイ、来たる時には……」
腕を身体の前で交差するミーナのジェスチャーが「ハグを」と伝えている。それこそ素面では出来そうにないのだが?
「あずさ……ちなみに、手は…?」
「物理的接触はまだありません! ちー、モスコミュールおかわり~!」
「あずさ、今日の話の内容わかってる?」
「ちょっと酔ってもちーには迷惑かけませ~ん」
「は~あ。はいはい、わかりましたよ。そういうことだから朝霞、よろしく」
「大石お前、そんなに感情表現豊かな奴だったか? いや、つか普通に逆方向で」
「それを融通利かせるのが彼氏なの」
呆れたような顔をしつつも、大石は伏見にモスコミュールを出してくれぐれもこれ以上はヤケで飲むなと繰り返している。今日はとことん伏見の扱いを俺に投げているようだし、俺はあまり飲まない方がいいか。飯を食う方にシフトしよう。
end.
++++
USDXにもレイ君のニュースが広がったみたいですが、その情報元はふしみんルートじゃなくてちーちゃんルートなんだよなあ……(ちー→オミ)
そしてこういう話題になるとイキイキし出すのが美奈である。ふしみんがおめでたいのはいいけど、自分はどうなんでしょう。リン様もリン様でアレやからな
今までぐだぐだになったふしみんをちーちゃんがどのようにお世話していたのかがちょっと垣間見える呆れ方。それは幼馴染み以上やったんやろなあレベルが。
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