2020

■所によりムチャ振りの嵐

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「おらァー! お前ら! 注ッ目!」

 今日も豊葦でUSDX6人が集合しての打ち合わせなんだけど、今日招集されたのはプロさんの住むマンションの一室ではなく、星羅の家のスタジオだ。って言うかカンの奴、いつの間に誠司さんに話付けてやがったんだ。「音楽の話するならうちのスタジオ使っていいよー」って。誠司さんも誠司さんでノリが軽すぎる。
 ちなみに俺の彼女、星羅のお父さんの誠司さんはプロのサックス奏者だ。家にはレコーディングスタジオや普通に練習用のスタジオが構えられていて、俺たちのバンド・CONTINUEも普通にお世話になっている。誠司さんはプロアマ問わず世の音楽に貪欲で、それを自分の音楽のエッセンスにしようとする人だ。
 で、星羅宅に初めてお邪魔するプロソルバネレイの4人には、ついでに星羅の妹でUSDXの各種イラストを担当しているイラストレーターのきららも紹介しておく。レイこと朝霞は放送部で星羅とも関わりがあるから、お姉さんとはこれこれこういう……と話が少し続いていた。

「お前らがあつ森できゃっきゃしている間! 俺は独り黙々と作業をしてました!」
「オレは島暮らしはしとらんぞ」
「うるせーリン、お前はFF7Rやってたの知ってんだぞ」
「む」
「でだ、本題な」
「スタジオに呼び出されたってことは、音楽の話か」
「そーだ、さすがスガ、話が早い。そう、前にちょろっとUSDXの楽曲アルバムの話をしてたじゃん? その音源が、完・成! しましたー!」

 そう言うや否や、カンはさっそくその音源を流し始めた。音源を流しながらも話は続く。まず、これまでSDX・USDXの動画で使っている曲をまとめたアルバムが1枚。それから、朝霞以外の全員が何かしらの楽器をやっているということで、バンド風に打ち込んでみたアルバムが1枚と。

「バンド風…? いや、ここ3人と俺はわかるけど、樹理も人数に含めてるのか。このクソ下手糞なバイオリンを」
「無いよりはあった方がいいじゃんな、下手なバイオリンでも。つか実際にハコとかでライブやるワケでもないしよくね? 的な。でだ、問題はお前だよ朝霞」
「はい? 俺ですか?」
「今回のバンド風アルバムでは、お前がギターをやってる体で打ち込んだから。心配しなくても簡単な編曲にしといたし、頑張ろうぜ初心者!」

 カンは頑張ろうぜ初心者、と朝霞の肩をポンと叩くけど、その意味するところだ。

「おい菅野、それは俺にギターを弾けということか!?」
「やっぱ物分かりがいいなお前は!」
「いや、ちょっと待てよ。俺は楽器なんか音楽の授業で触ったくらいで、それこそリコーダーか鍵盤ハーモニカくらいのレベルでだな」
「そんだけやれりゃ十分よ。でも鍵盤はもう俺とリンがいるから今回はギターで頼む」
「マジかよ~……ギター買う金なんかねーぞ?」
「あ、それはUSDXの予算から補助が出るし。何だかんだ言ってお前なら一旦始めりゃのめり込むから元は取れるだろ」

 流れている曲は、さすがカンと言うか、やはりカッコいい出来だ。だけど、さっき自分で「実際にハコとかでライブやるワケでもないし」と言っているにも関わらず朝霞にギターを始めさせようとするってメチャクチャじゃないか。
 何にせよ、USDXの音楽アルバムを2バージョン出せることには決まっているらしい。それこそカンが島暮らしをしたいのを我慢して作業してくれた結果だ。あとは広報活動をして、通販サイトの準備をすればオッケーな状態なんだそうだ。

「樹理、許可したのか」
「許可したよ。面白そうじゃない」
「まあ、お前はそういう奴だな」
「手元だけ映すギター練習実写動画とか、サブアカのメンバー限定とかで上げてもいいんじゃない?」
「つか、お前自身バイオリンが下手糞な癖に朝霞にどうこう言える立場じゃねえからな」
「あ、やっぱ俺も練習しなきゃダメ? チータ~」
「そこはやるでしょ。年末の第九よりはレベルアップしてもらわないと」
「しょうがないなあ」
「で、第3弾アルバムの企画も既に立ち上がってて」
「は? 菅野お前裏でどんだけ作業してんだよ」

 朝霞のツッコミには「それはカンだし仕方ない」としか言いようがないんだけど、そもそもそれをお前にだけは言われたくないというのが感想だ。特大ブーメランと言うか。と言うか第3弾アルバムって。これはまだ企画段階みたいだけど、カンのことだからそっちの作業ももう水面下でやってんだろうな。

「まあ、それをお前にだけは言われたくないんだけども、第3弾アルバムは歌物にしたいワケよ。っつーことで朝霞!」
「はい…?」
「作詞しようか!」
「いや、だからお前はどうしてそんな話を何の相談もなく勝手に決めやがる! 作詞!? やったことなんかねーぞ!」
「へーきへーき。お前なら出来るって。物書きの一種だし」
「そんな軽いノリで言うことかよ」
「何で歌物をやりたいかっつったら、せっかくバンド風アルバム出すならソルレイっつーボーカルを生かさない手はなくね? 的な。ほら、実況者が歌ってみたやっちゃいけないとかオリジナル曲を出しちゃいけないっつーこともないし。チータの音楽性を認められてコラボに呼ばれた実績がある以上、俺の音楽には一定の需要があると判断した!」

 カンの言いたいことを要約すると「このメンバーだからこそ出来る音楽をやりたい」ということなのだろう。ギターに作詞にとムチャ振りをされた朝霞は戸惑いを隠せないようだけど、他のメンバーは意外にもそこまで悪い顔をしていないというのがまた。

「曲が出来次第デモ音源とスコア送りますし、朝霞はギターの練習頑張りましょう」


end.


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チータことカンD主導でUSDXが音楽方面でも動きを見せ始めました。そして須賀家はやっぱり誠司さんが軽いノリなんだよなあ。お母さんとかはそれでいいのか
そして今回の話ではカンDから朝霞Pへのムチャ振りがなかなか凄まじい。それでも出来ない、やらないとは言わないところがさすがのPさん。
プロ氏のバイオリンを下手糞だと言いまくるソルさんがうまーである。ところでギターとバイオリンはそれぞれ誰がレッスンをするのかしら。

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