2020

■灯台下に誰がいる

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 先週、果林先輩に講習会の講師を依頼して惨敗した後、俺はエイジにお願いして対策委員の緊急会議を開催してもらうことにした。果林先輩に言われたように、対策委員は詰めが甘い。それを少しでも詰めて行きたいと思ったからだ。
 青女さんは植物園ステージが近いみたくてわかばしか来れないけど、他はみんな揃って良かった。俺が話したいのは主にミキサーについての話だから、ミキサーの人数が多ければ多いほどありがたかった。

「みんなゴメンね、急に呼び出して」
「ううん、私もエージから事の顛末を聞いて、週1の会議じゃ少ないと思ってたところだったから。前回の会議から今回までであったことの報告をお願いします。まず、エージから」
「はい。果林先輩に講師を依頼したところ、全体講習かアナ講習かちゃんと決めてから来いっつって言われたんで、ちゃんとそれを決めたいっていう」
「ちなみに、奈々も野坂先輩に依頼してくれたんだよね?」
「そうですねッ! うちも正直ちょっとふわふわ~っとした感じの依頼だったんすけど、何か野坂先輩は全体講習の体で解釈してるのかなーって感じだったっす」
「それで、今日の会議はタカティから提案があって招集されたんだけど、タカティに場を渡していい?」
「あ、はい。じゃあもらいます」

 議長のアオから場を引き継いで、今日俺がみんなを呼びだした理由と、自分の考えを話させてもらうことになった。それは俺が対策委員の機材管理担当として、全体の事はともかくミキサー講習について考えた結果出した、1つの答えだ。

「俺が考えた結論から言えば、果林先輩にはアナウンサー講習を、野坂先輩には全体講習をお願いしたいです」
「そしたらミキサー講習は?」
「それで、ミキサー講習なんだけど、俺はL先輩にお願いしたいと思ってます。ちょっと、こないだから身内ばっかり推薦してちょっとアレなんだけど、根拠はあって」
「あの、エージさん、L先輩ってどなたですか?」
「あー、こないだのファンフェスでサドニナと組んでた背の高い猫目の先輩だっていう。直クンさんの彼氏の。って言えばわかるか?」
「あ、はい、あの人ですね。わかりました」
「それで、特にミキサー陣に考えて欲しいんだけど」

 今期の対策委員はエイジとサドニナ以外がミキサーだ。だから今現場にいるのはエイジ以外全員ミキサー。だからぶっちゃけ全員が考える話ではあるんだけども。

「春の番組制作会から、同録の録音方法が変わったよね。パソコンを使って音声ファイル形式で保存してーって感じで」
「そうだね」
「それから、これは定例会と対策委員の機材管理……まあ、俺だね。俺との間で進んでる話なんだけど、インターフェイスのMDストックを音声ファイルとして保存し直して、ストックをミュージックライブラリ化するっていう計画が持ち上がってます」
「マジか」
「うん。MBCCでは既にちょっとずつ始まってるやり方なんだけど、インターフェイスではわざわざそうしてる大学さんもまだないと思うんだ。MDデッキがまだ使えてるワケだし。だけど俺たちが1年間やってきた機材の接続の仕方が、パソコンを1台噛ませるだけでまた変わったでしょ。今はパソコンでやってるのが入力だけだけど、ストックがミュージックライブラリ化したら、出力もやることになる。そうした時に、機材の配線の仕方や、音声ファイル形式での録音の仕方、再生時に生じるブランクやラグについてもミキサーは理解してる必要があるよね。その最先端の機材事情に今のインターフェイスで一番精通してるのがL先輩なんだよ。何せ自分で改革をしようとしてる人だし。1年生に伝えてもらうっていうのもそうだけど、俺たち自身が教えてもらわなきゃいけない事柄だと思うから、ミキサー講習はL先輩にお願いしたいと思ってます。俺の話は以上です」

 果林先輩に言われた「その年によって欲しい物は変わるはず」という言葉を受けて考えたことだった。ミキサー事情はこの春に結構変わったはずなのに、講習会について話し合う現場ではそのことにも全然触れられてなかったなって。で、今それを一番理解してるのは誰だって考えた結果浮かんだ顔だ。

「私は、タカティの言うことは一理あると思う。実際パソコンを使った同録収録は始まってるし、これからもそれを活用していくならミキサー講習で触れて欲しい」
「パソコンを含めた機材の繋ぎ方は確かに教えて欲しいかも。俺、春も全然だったし」
「あと、野坂先輩に全体講習をお願いしたいっていうのは、奥村先輩譲りの放送観だとか、合宿や制作会前にラジオやらない子たちにアナミキ関係なくラジオのことを教えてたっていう実績からだね」
「あ、そう言えばこないだ野坂先輩から聞かれたんだけど、見本番組ってやる感じなのかーって。やるんだったら準備しないといけないしって」
「つか、それだったら最初に果林先輩と野坂先輩に従来通りのスタンダードな番組をやってもらうべ。全部の講習が終わった後にもう1回、今度は果林先輩とL先輩でパソコンでの出力を踏まえた未来の番組をやってもらうっていうのはどうかっていう」
「あー、未来の番組。いいね」
「でも果林先輩の負担にならない? いくら2つ合わせて30分でも」
「俺が落とす。任せろっていう」
「エイジ、かっこいい」
「っつーコトだから高木、お前はL先輩の交渉を頼む」
「あ、そっか。L先輩はアポ取りからだったね」


end.


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出直しの対策委員、カレンダー上での会議の密度を高めていくようです。今までがサクサク過ぎたんや
というワケで、TKGがみんなを招集して気付いたことを発表したようですが、そこまで発言できるようになったのねタカちゃんも。
そして果林とのリベンジ戦に燃えるエイジ、俺が落とす宣言が何気にカッコいいヤツ。なかなか今の2年生でそこまで言える子はいないからね

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