2020
■改革準備は入念に
＋＋＋＋
「高木、ちょっといいか」
「あ、はい」
ファンタジックフェスタの番組の合間、人の番組を聞きながら控えブースで休んでいるとＬ先輩から声をかけられた。俺の隣に座った先輩が切り出したのは、インターフェイスの機材を今後どうしていくかという話だ。
「それをどうして俺に。定例会で話すことじゃないんですか？」
「定例会でも話してるけど、対策委員の機材管理担当にも相談した上で決めたいと思って」
「そうだったんですね」
「それで、具体的に何をどうしたいかっていう話な」
「はい」
「あれが見えるか？ あのカゴ」
「はい。MDストックですよね」
インターフェイスでは、毎月のヒット曲や話題になった曲などをメディアに記録してこういったイベントなどで使えるようにストックしている。昔はこれを全部MDで記録していて、トラックのトータルタイムやイントロの時間などを調べて記録したストックリストも同時に作っていた。
だけど、今ではMDで記録するというのもなかなか非現実的だし、何より毎月ディスクが増えていった結果、場所も費用も圧迫していた。それはインターフェイスだけじゃなくてMBCCでも同じ現象が起こっていたから、それをどうしようということを今と同じくＬ先輩と話し合っていた。
「俺はそろそろあのストックもファイル変換してミュージックライブラリ化したいと思ってるんだ」
「まあ、実際その方が効率的だとは思いますよね、番組で使う曲を探すにしても」
「実際同録もパソコンで取り込み始めたんだから、入力をやってるなら出力もやって良くね？ と思って」
「それには俺も個人的には賛成です」
「今は定例会三役が機材管理を共同でやっててこの件についても話し合ってるんだけど、俺たち３人もその線で行きたいとは思ってるんだ」
よくあるスーパーのカゴいっぱいに詰められた、何年分かわからない程のMD音源は、何がどこにあるのか探すのも手間だった。さっき野坂先輩からこの中にある曲のAD作業を頼まれたけど、その曲が収録されたMDを探すだけで５分は使った。
定例会三役の人たちがその線で話し合っているのなら、実際俺もデジタル化には賛成だしわかりましたと返事をするだけだ。対策委員の機材管理担当としてと言うよりは、俺個人の意見には違いないのだけど。抵抗のある人にはまだ抵抗があるのかもしれない。
「それで、今は結構無理矢理ミキサーとPCを接続してるけど、実はウチの機材の壁の中にUSB端子付きコンパクトミキサーっていうのがあって」
「ああ、佐藤ゼミから譲り受けた物ですか？」
「そうだな。CDはこれからも使うからともかく、仮にMDを廃止出来れば、MDデッキのあったところにそのコンパクトミキサーを置いてっていうことも出来るワケだ」
「あー、なるほど。ちょっとコンパクトになって、機材接続も簡単になるんですね」
「MBCCで使ってるミキサーにはもうUSBあるし、コンパクトミキサーはあったら何かに使うかなとは思うけど、正直インターフェイスで使う方が有用な気もするんだよ」
「言ってしまえばMBCCにはそのうちまた降りて来る可能性もありますからね。俺はいいと思いますよ」
Ｌ先輩はとにかく作業効率の向上と、音楽ストックを作る費用削減をしたいようだった。これまでずっとやってきたことを時代に合わせて見直して、それを実行しようとするのは本当に勇気のいることだと思う。歴史を重ねて来た100人規模の団体なら尚更だ。
「欲を言えばライブラリの中から条件を指定して該当する曲を検索できるガチデータベースも作りたいと思ってて」
「条件」
「アーティストやタイトルの単語検索とか年代、季節、タイアップ情報で検索とか。例えばオリンピックにまつわる曲を探したいなら「オリンピック」で検索して出て来る的な。まあすぐには無理だろうけど」
「誰にでも作れるシステムでもないですよね」
「まあ、インターフェイスの人間だったらー……野坂に相談するのが一番いいのかな？」
データベースを作って検索出来るようにするという構想もまず俺にはなかなか思いつかなかったし、それだけＬ先輩がインターフェイスのストック事情の改革に本気なんだなと窺い知ることが出来た。対策委員の機材管理担当として、これは協力しなきゃなと思った。
「DBは欲にしても、ファイル化は現実的に進めたいんだ。先行してMBCCのストックをファイル化してるお前に相談をだな」
「でも、この量をファイル化するには相当時間がかかりますね。それこそ人数をかけてやらないと。必要なのはMDを再生出来る機材とケーブル、あとはパソコンですね」
「ちょっと、やり方をまとめたレジュメを作ってもらえるか？ それを定例会で共有して人海戦術を使おうと思う」
「わかりました。一応、ポータブルMDプレイヤーでも出来るか試してみますね。ポータブルがイケれば家庭でも出来るようになると思うので」
「頼む」
end.
＋＋＋＋
華やかさはないかもしれないけど、ちゃんと仕事をしている定例会議長・Ｌです。まるで前の議長が仕事してないみたいに言わないの
MBCCで進めているストックのデジタル化作業をインターフェイスでも進めたい様子。タカちゃんは最先端を行ってたのね
佐藤ゼミから降りて来るものを受け入れるスペースも必要だからね、いつか使うかもは大体使わないわよね
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「高木、ちょっといいか」
「あ、はい」
ファンタジックフェスタの番組の合間、人の番組を聞きながら控えブースで休んでいるとＬ先輩から声をかけられた。俺の隣に座った先輩が切り出したのは、インターフェイスの機材を今後どうしていくかという話だ。
「それをどうして俺に。定例会で話すことじゃないんですか？」
「定例会でも話してるけど、対策委員の機材管理担当にも相談した上で決めたいと思って」
「そうだったんですね」
「それで、具体的に何をどうしたいかっていう話な」
「はい」
「あれが見えるか？ あのカゴ」
「はい。MDストックですよね」
インターフェイスでは、毎月のヒット曲や話題になった曲などをメディアに記録してこういったイベントなどで使えるようにストックしている。昔はこれを全部MDで記録していて、トラックのトータルタイムやイントロの時間などを調べて記録したストックリストも同時に作っていた。
だけど、今ではMDで記録するというのもなかなか非現実的だし、何より毎月ディスクが増えていった結果、場所も費用も圧迫していた。それはインターフェイスだけじゃなくてMBCCでも同じ現象が起こっていたから、それをどうしようということを今と同じくＬ先輩と話し合っていた。
「俺はそろそろあのストックもファイル変換してミュージックライブラリ化したいと思ってるんだ」
「まあ、実際その方が効率的だとは思いますよね、番組で使う曲を探すにしても」
「実際同録もパソコンで取り込み始めたんだから、入力をやってるなら出力もやって良くね？ と思って」
「それには俺も個人的には賛成です」
「今は定例会三役が機材管理を共同でやっててこの件についても話し合ってるんだけど、俺たち３人もその線で行きたいとは思ってるんだ」
よくあるスーパーのカゴいっぱいに詰められた、何年分かわからない程のMD音源は、何がどこにあるのか探すのも手間だった。さっき野坂先輩からこの中にある曲のAD作業を頼まれたけど、その曲が収録されたMDを探すだけで５分は使った。
定例会三役の人たちがその線で話し合っているのなら、実際俺もデジタル化には賛成だしわかりましたと返事をするだけだ。対策委員の機材管理担当としてと言うよりは、俺個人の意見には違いないのだけど。抵抗のある人にはまだ抵抗があるのかもしれない。
「それで、今は結構無理矢理ミキサーとPCを接続してるけど、実はウチの機材の壁の中にUSB端子付きコンパクトミキサーっていうのがあって」
「ああ、佐藤ゼミから譲り受けた物ですか？」
「そうだな。CDはこれからも使うからともかく、仮にMDを廃止出来れば、MDデッキのあったところにそのコンパクトミキサーを置いてっていうことも出来るワケだ」
「あー、なるほど。ちょっとコンパクトになって、機材接続も簡単になるんですね」
「MBCCで使ってるミキサーにはもうUSBあるし、コンパクトミキサーはあったら何かに使うかなとは思うけど、正直インターフェイスで使う方が有用な気もするんだよ」
「言ってしまえばMBCCにはそのうちまた降りて来る可能性もありますからね。俺はいいと思いますよ」
Ｌ先輩はとにかく作業効率の向上と、音楽ストックを作る費用削減をしたいようだった。これまでずっとやってきたことを時代に合わせて見直して、それを実行しようとするのは本当に勇気のいることだと思う。歴史を重ねて来た100人規模の団体なら尚更だ。
「欲を言えばライブラリの中から条件を指定して該当する曲を検索できるガチデータベースも作りたいと思ってて」
「条件」
「アーティストやタイトルの単語検索とか年代、季節、タイアップ情報で検索とか。例えばオリンピックにまつわる曲を探したいなら「オリンピック」で検索して出て来る的な。まあすぐには無理だろうけど」
「誰にでも作れるシステムでもないですよね」
「まあ、インターフェイスの人間だったらー……野坂に相談するのが一番いいのかな？」
データベースを作って検索出来るようにするという構想もまず俺にはなかなか思いつかなかったし、それだけＬ先輩がインターフェイスのストック事情の改革に本気なんだなと窺い知ることが出来た。対策委員の機材管理担当として、これは協力しなきゃなと思った。
「DBは欲にしても、ファイル化は現実的に進めたいんだ。先行してMBCCのストックをファイル化してるお前に相談をだな」
「でも、この量をファイル化するには相当時間がかかりますね。それこそ人数をかけてやらないと。必要なのはMDを再生出来る機材とケーブル、あとはパソコンですね」
「ちょっと、やり方をまとめたレジュメを作ってもらえるか？ それを定例会で共有して人海戦術を使おうと思う」
「わかりました。一応、ポータブルMDプレイヤーでも出来るか試してみますね。ポータブルがイケれば家庭でも出来るようになると思うので」
「頼む」
end.
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華やかさはないかもしれないけど、ちゃんと仕事をしている定例会議長・Ｌです。まるで前の議長が仕事してないみたいに言わないの
MBCCで進めているストックのデジタル化作業をインターフェイスでも進めたい様子。タカちゃんは最先端を行ってたのね
佐藤ゼミから降りて来るものを受け入れるスペースも必要だからね、いつか使うかもは大体使わないわよね
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