2020
■新世代方式の課題
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いよいよファンタジックフェスタ前日。俺たち定例会は明日に備え、インターフェイスの機材を回収しに来ていた。向島インターフェイス放送委員会は、フィネスタという企業にお世話になっている。昔はもっとガッツリお世話になっていたそうだけど、今では会議室と物置を借りるくらいの付き合いだ。
フィネスタのインターフェイス担当が中村さんという若そうな男の人だ。この人は話が長いから急ぐ時には手短にして逃げろと前定例会議長・圭斗先輩からの助言をもらっている。物置に失礼しますと一言挨拶だけをして、定例会3年4人でそこに入って行く。
「えーっと、インターフェイスの機材は、っと」
「うえっほえほっ!」
「ハマちゃん大丈夫?」
「へーきへーき。でも、すげーホコリだな、マジパねえ」
「あんまり出入りする人もいないそうだからな」
窓もない、暗い物置の電気を点ければ埃が舞って視野がぼんやりしているのが分かる。と言うか汚過ぎて耐えられない。今すぐにこの空間を掃除したい衝動に駆られている。足の踏み場もない中インターフェイスの機材の場所まで掻き分けていく。
去年はここから機材を掘り起こすのを面倒がって星大さんから機材を借りたけど、その結果今年のインターフェイスの財政がとんでもなく困窮している。今年はこの作業を面倒がらずにちゃんと機材保障費の収入を得ていきましょうという方針だ。
「って言うか今更だけどハマちゃん車の中に残ってなくて大丈夫か? 路駐になるんじゃ」
「それを思い出してテルに戻ってもらった」
「自分が戻るんじゃないんだね」
「あー、それなんだけど、ちょっとつばみから機材に関して頼まれててさ」
「つばめから? 何て」
「あー、例の件か」
「類も知ってる感じ?」
「何か、機材運搬するときにワイヤレス関係の物も含めて全部持って来いって頼まれてるんだよ」
「……もしかして」
「やる気なんだろうな」
つばめからワイヤレス関係の機材も全部持って来いと連絡があったときに、中継をやる気なんだろうなとは察することが出来た。だから俺は定例会議長として、一般の人に迷惑になるようなことや公序良俗に反することはしないようにとだけ言っておいた。
直とハマちゃんは去年の夏合宿でヒロ率いる7班に属していた。そこで、インターフェイス夏合宿史上初となる中継を用いた番組スタイルを打ち出したんだ。合宿とは言え一応経験者だから、まさかファンフェスで中継をやるかと気圧された様子だ。
「多分、ミキサーがつばみじゃなかったらヒロも中継やるって言わなかっただろうな」
「そうだね。こういうときの機動力はさすが星ヶ丘さんって感じだよ」
「言っちまえば、夏だってシゲさんがいたから出来たみたいなトコはあるからなー」
一応、中継に関してはまだ禁止してなかったし、このつばめ班がどう立ち回るかで今後のあり方が決まって行くのだろう。つばめからの依頼通り、中継に必要なワイヤレス関係の機材もピックアップする。
3人ではさすがに一度に運びきれないので、何度かに分けて延々と往復する。アンプやコンプレッサーといった機材は1つずつ運ばなければならないから、時間も結構かかる。だけど、これら重い系の機材を越える厄介な物が機材群の中にはあった。
「MDストックかー……せー、のっ! 重っ」
「わ、危ない! 持ち手が壊れそうだよ!」
「L、そのカゴは抱えた方がいいぞ!」
「オッケ」
こういう行事では、曲のリクエストを取っている。そのデータベースとなっているのがインターフェイスで作っているMDストックだ。このストックにも何気に結構な費用が掛かっていて、このシステムも今後どうするかなという話にはなっていた。
よくあるスーパーのカゴいっぱいにMDが詰め込まれていて、その重さはこれまで運んだ機材の比ではない。持ち手部分を支えるプラスチック部品がひび割れて壊れそうになっていた。2人の助言で俺はカゴを抱える方式に変えた。
「これもゆくゆくはミュージックライブラリ化しなきゃなとは思ってるんだけどなあ」
「この膨大な量を?」
「でも、やらない限りは行事の度にこれを運搬しなきゃいけないんだ。しかも増え続けるんだぞ」
「緑ヶ丘とかって今そーゆーのどーしてんの?」
「ウチはパソコンが導入されたから、そこに少しずつ移してるよ」
「番組に使う時もそこから?」
「そうだな。ラグとかブランクの計算もしつつだけど、最近ちょっと慣れてきたかなって感じ。そういうのは俺より高木が強いな」
MDストックのストックリストも更新し続けなければならないし、何気にこれが結構めんどくさい。ちなみにMBCCでは俺が持ってるこれまでのストックリストをぶち込んだデータベースを作った。そして今の定例会は人数の都合で機材管理は三役みんなでやりましょうということになっている。どーしたモンかな。
「さ、これで全部かな!」
「えっと、明日は7時半だっけ?」
「だな。その時間でよろしく」
「それじゃあ明日は頑張りましょう」
end.
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ハマちゃんを現場に置いときたいけど、路駐対策のドライバーどうする?と途中で思い出した結果のパシリ。テルはドンマイ。
つばちゃんからのお願いはハマちゃんにもLにも行っていたようだし、Lからは定例会議長としての忠告もあった模様。Lが少しずつ議長然としてきたわね
大量に溜まったMDストックの扱いがこの学年の課題になってくるのかしら。まさかキーマンはTKGか
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いよいよファンタジックフェスタ前日。俺たち定例会は明日に備え、インターフェイスの機材を回収しに来ていた。向島インターフェイス放送委員会は、フィネスタという企業にお世話になっている。昔はもっとガッツリお世話になっていたそうだけど、今では会議室と物置を借りるくらいの付き合いだ。
フィネスタのインターフェイス担当が中村さんという若そうな男の人だ。この人は話が長いから急ぐ時には手短にして逃げろと前定例会議長・圭斗先輩からの助言をもらっている。物置に失礼しますと一言挨拶だけをして、定例会3年4人でそこに入って行く。
「えーっと、インターフェイスの機材は、っと」
「うえっほえほっ!」
「ハマちゃん大丈夫?」
「へーきへーき。でも、すげーホコリだな、マジパねえ」
「あんまり出入りする人もいないそうだからな」
窓もない、暗い物置の電気を点ければ埃が舞って視野がぼんやりしているのが分かる。と言うか汚過ぎて耐えられない。今すぐにこの空間を掃除したい衝動に駆られている。足の踏み場もない中インターフェイスの機材の場所まで掻き分けていく。
去年はここから機材を掘り起こすのを面倒がって星大さんから機材を借りたけど、その結果今年のインターフェイスの財政がとんでもなく困窮している。今年はこの作業を面倒がらずにちゃんと機材保障費の収入を得ていきましょうという方針だ。
「って言うか今更だけどハマちゃん車の中に残ってなくて大丈夫か? 路駐になるんじゃ」
「それを思い出してテルに戻ってもらった」
「自分が戻るんじゃないんだね」
「あー、それなんだけど、ちょっとつばみから機材に関して頼まれててさ」
「つばめから? 何て」
「あー、例の件か」
「類も知ってる感じ?」
「何か、機材運搬するときにワイヤレス関係の物も含めて全部持って来いって頼まれてるんだよ」
「……もしかして」
「やる気なんだろうな」
つばめからワイヤレス関係の機材も全部持って来いと連絡があったときに、中継をやる気なんだろうなとは察することが出来た。だから俺は定例会議長として、一般の人に迷惑になるようなことや公序良俗に反することはしないようにとだけ言っておいた。
直とハマちゃんは去年の夏合宿でヒロ率いる7班に属していた。そこで、インターフェイス夏合宿史上初となる中継を用いた番組スタイルを打ち出したんだ。合宿とは言え一応経験者だから、まさかファンフェスで中継をやるかと気圧された様子だ。
「多分、ミキサーがつばみじゃなかったらヒロも中継やるって言わなかっただろうな」
「そうだね。こういうときの機動力はさすが星ヶ丘さんって感じだよ」
「言っちまえば、夏だってシゲさんがいたから出来たみたいなトコはあるからなー」
一応、中継に関してはまだ禁止してなかったし、このつばめ班がどう立ち回るかで今後のあり方が決まって行くのだろう。つばめからの依頼通り、中継に必要なワイヤレス関係の機材もピックアップする。
3人ではさすがに一度に運びきれないので、何度かに分けて延々と往復する。アンプやコンプレッサーといった機材は1つずつ運ばなければならないから、時間も結構かかる。だけど、これら重い系の機材を越える厄介な物が機材群の中にはあった。
「MDストックかー……せー、のっ! 重っ」
「わ、危ない! 持ち手が壊れそうだよ!」
「L、そのカゴは抱えた方がいいぞ!」
「オッケ」
こういう行事では、曲のリクエストを取っている。そのデータベースとなっているのがインターフェイスで作っているMDストックだ。このストックにも何気に結構な費用が掛かっていて、このシステムも今後どうするかなという話にはなっていた。
よくあるスーパーのカゴいっぱいにMDが詰め込まれていて、その重さはこれまで運んだ機材の比ではない。持ち手部分を支えるプラスチック部品がひび割れて壊れそうになっていた。2人の助言で俺はカゴを抱える方式に変えた。
「これもゆくゆくはミュージックライブラリ化しなきゃなとは思ってるんだけどなあ」
「この膨大な量を?」
「でも、やらない限りは行事の度にこれを運搬しなきゃいけないんだ。しかも増え続けるんだぞ」
「緑ヶ丘とかって今そーゆーのどーしてんの?」
「ウチはパソコンが導入されたから、そこに少しずつ移してるよ」
「番組に使う時もそこから?」
「そうだな。ラグとかブランクの計算もしつつだけど、最近ちょっと慣れてきたかなって感じ。そういうのは俺より高木が強いな」
MDストックのストックリストも更新し続けなければならないし、何気にこれが結構めんどくさい。ちなみにMBCCでは俺が持ってるこれまでのストックリストをぶち込んだデータベースを作った。そして今の定例会は人数の都合で機材管理は三役みんなでやりましょうということになっている。どーしたモンかな。
「さ、これで全部かな!」
「えっと、明日は7時半だっけ?」
「だな。その時間でよろしく」
「それじゃあ明日は頑張りましょう」
end.
++++
ハマちゃんを現場に置いときたいけど、路駐対策のドライバーどうする?と途中で思い出した結果のパシリ。テルはドンマイ。
つばちゃんからのお願いはハマちゃんにもLにも行っていたようだし、Lからは定例会議長としての忠告もあった模様。Lが少しずつ議長然としてきたわね
大量に溜まったMDストックの扱いがこの学年の課題になってくるのかしら。まさかキーマンはTKGか
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