2020
■secret weapon of MMP
++++
「土田さん、本当にやるんですか」
「ま、やるだけタダすし? やってみてダメならお蔵入りにすりャいーだけなンで。あくまで試験番組スよ」
「はいはい……もうどうにでもな~れ!」
今日は祝日で授業は休みです。こんな時にサークル室で私と土田さんが始めようとしているのは昼放送の収録です。それこそやろうとしているのは先に彼が言ったように試験番組なのですが、何故かアナウンサー席に座るのは私です。
事の発端は、先週のサークル後に土田さんからかかってきた電話です。先のサークルで昼放送について話していたのですが、今期はアナウンサーがヒロさんしかいないので1ペアしか作れませんでした。そして3年生ミキサー3人があぶれる結果となり。
電話の内容は、1ペアしか作れないのは事実として、ミキサーがトークをしてはいけないという決まりはどこにもありません。ですから、試しにお前がアナウンサーとしてトークをしてみないかという話でした。
如何せん私はこの方ずっとミキサーでやってきていますから、アナウンサーとしてトークが出来るとは思いません。ですが、今あぶれているミキサー3人なら私が一番適性があるのではないかという彼の見立てだったようです。
私は「この状況ですからやるだけやってみますけど、ダメでも怒らないでくださいね」とお願いしました。すると土田さんからは「こっちが頼んでる立場だし感謝こそすれ怒りはしない」と返ってきました。
土田さんにしては珍しく優しい、と言うか真面目なこの返答に、やるならちゃんとやらないと、と思いました。ファンフェスの打ち合わせでも、事情を話して果林に簡易アナウンサー講習を開いてもらいました。
クドいですが試験番組なので、他のメンバーに言うことなくひっそりと行われる収録です。これで行けそうなら出来れば毎週、無理でも隔週ではやってサークルとしての体裁を保ちたいという代表の考えのようです。1ペアよりも1.5ペアでと。
「それじャ、始めヤーす」
「はーい」
いざ収録が始まってみると、自分がアナウンサーとしてトークをしているのは不思議な感じがしつつも、案外出来ないこともないのかなという気がします。また、これまでのMMPで見てきたアナウンサーの誰ともタイプが違う感じがしますね。
曲紹介時のイントロ乗せなどは、あまり気の利いたことも言えませんのでそのまま淡々とアーティスト名と曲名を紹介するだけですが、これもまた私の味ということにしておきましょう。案外すっきりしていて良くありませんか?
そして肝心のトークですが、良くも悪くも淡々としていたかもしれません。内容はどうでしょうか……まあ、それは私がどうこう言う事でもありませんね。言ってしまえば見よう見まねでしたが、何とか切り抜けたと言えましょう。
「はい、お疲れさんシた」
「はー……疲れました。慣れないことはするものじゃないです」
「や、でも悪くなかったスよ。個人的には深夜3時台に聞きたい感じスわ」
「それ、昼放送の評価としてはどうなんですか」
「これが青女とか緑ヶ丘みたいな明るくて綺麗なカフェテリアとかなら微妙すけど、言って明るくオシャレな学食でもないンでいーンでないです?」
「で、これは採用なんですか?」
「採用して行きヤしょうか。とりあえず、後日食堂のフェア情報をもらって差し込みヤしょう」
「編集するんです?」
「せっかく生じゃないンすから、やってくッしょ」
これまでの昼放送では、収録放送と言え基本的には30分ぶっ通しでやっていました。ですが、せっかく編集も出来るんですから出来るところではやっていこうという感じのようです。
学食では時期ごとにフェアが開催されるんですが、昼放送ではその情報を流しています。いわゆるコマーシャルとか、広報活動の一環ですね。こういうメニューがありますよとか、いつからいつまでという情報を紹介します。
それらの情報も基本番組中盤にコーナーを設けているのですが、それを後日編集で差し込もうという魂胆ですね。ミキサー2人だからこそのやり口ですよね。如何せんこの試験番組がそこそこの出来だったばっかりに。
「ところで土田さん」
「なんスか?」
「それで、今後はどうするんですか」
「今後? まァ、適度にやってく感じで」
「ええー……その辺は決めてくださいよ」
「じャ毎週で」
「隔週でお願いします」
「は?」
隔週でと言った瞬間の圧ですよ。うわーい、これでこそ土田さんですね! ふざけたことを言ってると殺すぞと言わんばかりの威圧感こそ私の知る土田さんですよ、やったーい!
「そんな毎週なんて出来ませんって! 言って私はミキサーですし! そもそもミキサーが片手間に喋った番組を流すなんて本業のアナウンサーさんに怒られますよ……」
「や、個人的な感想としては圭斗先輩とかヒロよか扱いやすいって点だけでもアナウンサーとしてはまァ優秀スよ」
「比較対象が対象なので誉められているのかよくわかりませんが、今後も私はミキサーとしてやっていきたいとはお伝えしておきますよ」
「それはいーンすよ。ただ、アナウンサーでもミキサーを触る人がいるじャないスか。逆に、ミキサーが喋ってもいーと思うンす?」
「それはそうですけど」
土田さん評では「午前3時に聞きたい」という感じの番組らしいですが、それでも一応はそれなりに聞ける番組にはなったようです。同録を流してもらっているのですが、本当に抑揚がない午前3時ですね。早朝からの仕事か、寝る前のひとときか。
「でも、その理屈で言えば土田さんが喋っても、野坂さんが喋っても言いと思うんですよね? 特に野坂さんなんてイケボで売れるイケメン詐欺ですよ?」
「自分は論外として、野坂はアナウンサー理論なんかは頭にあってもそれを表現出来るかってーと、やれないタイプじゃないスか」
「言っていることはわかります。おふざけ番組ですらあまり喋りませんからね」
「だからこそウザドルの有効活用スよ」
end.
++++
そう言えば、ワールドカップの年になると緑ヶ丘では番組を乗っ取ってマルチでやり始めるミキサーがいましたね。
りっちゃんがどうやら奥の手を使って来たようです。MMP存続の危機という単語がちょこちょこ出て来ている今期のMMPです。
前年度でもアナウンサーよりミキサーの方が筆まめだったりしたし、案外やってみたらイケるのかも。
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「土田さん、本当にやるんですか」
「ま、やるだけタダすし? やってみてダメならお蔵入りにすりャいーだけなンで。あくまで試験番組スよ」
「はいはい……もうどうにでもな~れ!」
今日は祝日で授業は休みです。こんな時にサークル室で私と土田さんが始めようとしているのは昼放送の収録です。それこそやろうとしているのは先に彼が言ったように試験番組なのですが、何故かアナウンサー席に座るのは私です。
事の発端は、先週のサークル後に土田さんからかかってきた電話です。先のサークルで昼放送について話していたのですが、今期はアナウンサーがヒロさんしかいないので1ペアしか作れませんでした。そして3年生ミキサー3人があぶれる結果となり。
電話の内容は、1ペアしか作れないのは事実として、ミキサーがトークをしてはいけないという決まりはどこにもありません。ですから、試しにお前がアナウンサーとしてトークをしてみないかという話でした。
如何せん私はこの方ずっとミキサーでやってきていますから、アナウンサーとしてトークが出来るとは思いません。ですが、今あぶれているミキサー3人なら私が一番適性があるのではないかという彼の見立てだったようです。
私は「この状況ですからやるだけやってみますけど、ダメでも怒らないでくださいね」とお願いしました。すると土田さんからは「こっちが頼んでる立場だし感謝こそすれ怒りはしない」と返ってきました。
土田さんにしては珍しく優しい、と言うか真面目なこの返答に、やるならちゃんとやらないと、と思いました。ファンフェスの打ち合わせでも、事情を話して果林に簡易アナウンサー講習を開いてもらいました。
クドいですが試験番組なので、他のメンバーに言うことなくひっそりと行われる収録です。これで行けそうなら出来れば毎週、無理でも隔週ではやってサークルとしての体裁を保ちたいという代表の考えのようです。1ペアよりも1.5ペアでと。
「それじャ、始めヤーす」
「はーい」
いざ収録が始まってみると、自分がアナウンサーとしてトークをしているのは不思議な感じがしつつも、案外出来ないこともないのかなという気がします。また、これまでのMMPで見てきたアナウンサーの誰ともタイプが違う感じがしますね。
曲紹介時のイントロ乗せなどは、あまり気の利いたことも言えませんのでそのまま淡々とアーティスト名と曲名を紹介するだけですが、これもまた私の味ということにしておきましょう。案外すっきりしていて良くありませんか?
そして肝心のトークですが、良くも悪くも淡々としていたかもしれません。内容はどうでしょうか……まあ、それは私がどうこう言う事でもありませんね。言ってしまえば見よう見まねでしたが、何とか切り抜けたと言えましょう。
「はい、お疲れさんシた」
「はー……疲れました。慣れないことはするものじゃないです」
「や、でも悪くなかったスよ。個人的には深夜3時台に聞きたい感じスわ」
「それ、昼放送の評価としてはどうなんですか」
「これが青女とか緑ヶ丘みたいな明るくて綺麗なカフェテリアとかなら微妙すけど、言って明るくオシャレな学食でもないンでいーンでないです?」
「で、これは採用なんですか?」
「採用して行きヤしょうか。とりあえず、後日食堂のフェア情報をもらって差し込みヤしょう」
「編集するんです?」
「せっかく生じゃないンすから、やってくッしょ」
これまでの昼放送では、収録放送と言え基本的には30分ぶっ通しでやっていました。ですが、せっかく編集も出来るんですから出来るところではやっていこうという感じのようです。
学食では時期ごとにフェアが開催されるんですが、昼放送ではその情報を流しています。いわゆるコマーシャルとか、広報活動の一環ですね。こういうメニューがありますよとか、いつからいつまでという情報を紹介します。
それらの情報も基本番組中盤にコーナーを設けているのですが、それを後日編集で差し込もうという魂胆ですね。ミキサー2人だからこそのやり口ですよね。如何せんこの試験番組がそこそこの出来だったばっかりに。
「ところで土田さん」
「なんスか?」
「それで、今後はどうするんですか」
「今後? まァ、適度にやってく感じで」
「ええー……その辺は決めてくださいよ」
「じャ毎週で」
「隔週でお願いします」
「は?」
隔週でと言った瞬間の圧ですよ。うわーい、これでこそ土田さんですね! ふざけたことを言ってると殺すぞと言わんばかりの威圧感こそ私の知る土田さんですよ、やったーい!
「そんな毎週なんて出来ませんって! 言って私はミキサーですし! そもそもミキサーが片手間に喋った番組を流すなんて本業のアナウンサーさんに怒られますよ……」
「や、個人的な感想としては圭斗先輩とかヒロよか扱いやすいって点だけでもアナウンサーとしてはまァ優秀スよ」
「比較対象が対象なので誉められているのかよくわかりませんが、今後も私はミキサーとしてやっていきたいとはお伝えしておきますよ」
「それはいーンすよ。ただ、アナウンサーでもミキサーを触る人がいるじャないスか。逆に、ミキサーが喋ってもいーと思うンす?」
「それはそうですけど」
土田さん評では「午前3時に聞きたい」という感じの番組らしいですが、それでも一応はそれなりに聞ける番組にはなったようです。同録を流してもらっているのですが、本当に抑揚がない午前3時ですね。早朝からの仕事か、寝る前のひとときか。
「でも、その理屈で言えば土田さんが喋っても、野坂さんが喋っても言いと思うんですよね? 特に野坂さんなんてイケボで売れるイケメン詐欺ですよ?」
「自分は論外として、野坂はアナウンサー理論なんかは頭にあってもそれを表現出来るかってーと、やれないタイプじゃないスか」
「言っていることはわかります。おふざけ番組ですらあまり喋りませんからね」
「だからこそウザドルの有効活用スよ」
end.
++++
そう言えば、ワールドカップの年になると緑ヶ丘では番組を乗っ取ってマルチでやり始めるミキサーがいましたね。
りっちゃんがどうやら奥の手を使って来たようです。MMP存続の危機という単語がちょこちょこ出て来ている今期のMMPです。
前年度でもアナウンサーよりミキサーの方が筆まめだったりしたし、案外やってみたらイケるのかも。
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