2020
■ゆるふわ惚気はほどほどに!
++++
世間ではゴールデンウィークに入ったが、今日はまだ一応平常授業日ということでシフトも平常通りだ。これを抜ければ学内を歩く人間の数が減るはずだから、多少は仕事も楽になるのではないかと思う。
大型連休と言うだけあって、休みは長い。大学生ともなれば出席を1回捨てることにより大連休を作り出すことも可能だ。尤も、カレンダー的な大連休に限らずそれはいつでも可能ではあるのだが。
情報センターのスタッフにも何人か地方出身の者がいる。と言うか、オレと高山以外は地方出身者故に、こうした連休の時期は帰省する可能性があるかどうかをまず確認しなければならないのだ。中途半端に近いとすぐ帰れてしまうからな。
「まあ、シフト決めの時点でわかっていたが、お前たちは帰省せんのだな」
「俺はこっちで用事があるのでー」
「私は東都出陣ですし」
「俺は帰ってもしょうがないしね」
長篠出身の川北、そして山羽出身の綾瀬は隣のエリアだけに帰ろうと思えばすぐ帰れそうなものだがそれぞれ用事があるらしい。そして西京出身の烏丸は、公共交通機関が充実しているからすぐ帰れるが、コイツには帰省という概念がない。
烏丸は生まれ育った環境がオレなど普通の家庭で普通に育った者と比べるとかなり過酷だった。今の実家も15歳で初めて会った父らしい者の家だそうだ。高校時代は高専の寮に入っていたし、実家で過ごしたことはほとんどないらしい。
「烏丸さんて、普段何やってるんですか? お休みのときとか」
「動物のドキュメント映画を見たり図鑑を見たりしてるよ。動物園に出かけることもあるかな」
「へえ、やっぱり生き物のことをやってるんですねー」
「ミドリは? 建築のことをやってるんじゃないの?」
「そうですね、俺も建築の動画を見ますし、写真集を眺めてほわーってすることもありますね。でも普通にサークル関係のお出掛けもありますし」
「烏丸さん、ミドリ君には彼女がいるんですからぁ」
「あっ、そうだよね! でもさ、真面目な話ミドリさ、セックスはだいじょ」
「わーっ! 烏丸さん!? 少なくともセンターで話すことじゃないです!」
川北に(物理的に)口を塞がれた烏丸は苦しそうにむぐむぐとくぐもった声を発する。センターで話す話題でないのは確かなのだが、どこの誰とは言わんが前バイトリーダーがいたら間違いなくその話題になっていただろう。
「でも、ミドリは平均よりもずっと大き」
「烏丸さんもう1回黙りましょうかー」
「むごごごご」
「……何か、ミドリが先輩相手に実力行使をしてるなあと思ったら感慨深いですね」
「自習室の輩どもにもこれが出来ればいいのだがな、まだまだビビリで困る」
「アオも林原さんもしみじみ言わないでくださいよーもー」
こんなやり取りを、机の隅の方にちょこんと座って眺めているのが1年の有馬だ。有馬は手作りのテディベアを常備していなければ精神的に不安になるというディスアドバンテージこそあるが、センターの職務に関しては何ら問題なく覚えている。
「川北さんの彼女さんて、どういう感じの人なんですか」
「えっ!? 有馬くんから聞かれるとは思わなかったなあ。そういう話するんだね」
「一応、人並みに興味は」
「レン君、どんな子だと思う? 実は私も知らないんだけど、一緒に妄想しよう。蒼希ちゃんはミドリ君の彼女ちゃんを知ってるんだよね」
「そうですね、サークル関係の共通の友人なので」
「ミドリ君の彼女だったら、そうだなー、ミドリ君と一緒にほわーっとしてそう」
「ああー。でも、2人ともがほわっとしてると肝心なところが締まらなさそうなので、その役割は彼女さんに期待したいですね」
「あっ、蒼希ちゃんが笑ってる」
「綾瀬さんとレンの見立てが大体合ってて面白いなあと思って」
「大体合ってるんだ」
ちなみに、ここにいるスタッフの半数は現在シフトに入っているワケではなく、次の授業やシフトまでの時間潰しや混雑回避のためにここに来ている。繁忙期はともかく、閑散期は事務所で世間話をしていても何ら問題なく回るのだ。
「補足すると、ミドリの彼女も建築やものづくりなんかに興味があって、工芸品やハンドメイド雑貨も好きな子ですよ」
「へー、ミドリ君と一緒の趣味なんだね」
「それから、一応ほわっと系ですけど基本ミドリは尻に敷かれてます」
「あー、わかる気がする」
「アオ、尻に敷かれてるっていうのはちょっと違うよ」
「第三者から見てそういう風に見える。今はそうじゃなくても、将来的にはもっとユキちゃんの方が強くなるでしょどう考えても」
「うう、はっきりと否定できない」
どいつもこいつも、ゴシップになるとなかなか止めどきが見つからんらしい。当の川北も根掘り葉掘り聞かれてタジタジになっているかと思いきや、昨日の誕生日に彼女からもらったというキーケースを見せるなど満更でもないようだ。楽しい時なのだろうな。しかし、一応は業務中だ。ずっとこうでは困る。
「おい、話もいいが綾瀬、ヒマならホワイトボードの予定表を書き替えてくれんか」
「あっはい、今やりますー」
「それから烏丸、さすがに自習室を空け過ぎだ。そろそろ一度見に行って来い」
「はーい。行って来まーす」
end.
++++
情報センターがほわほわする集団になってしまったのだけど、いずれまたどこかでフルスロットルして欲しい……物足りない
そう考えると春山さんの存在感がデカすぎるなあ。でも、村井サン然りでいないはずだけどいつか現れるんじゃないか感もものっそい。
情報センター新キャラのレン君のキャラがまだ定まらないですが、それは1周する頃には定まるだろ精神。出始めの頃は大体ブレッブレさ
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世間ではゴールデンウィークに入ったが、今日はまだ一応平常授業日ということでシフトも平常通りだ。これを抜ければ学内を歩く人間の数が減るはずだから、多少は仕事も楽になるのではないかと思う。
大型連休と言うだけあって、休みは長い。大学生ともなれば出席を1回捨てることにより大連休を作り出すことも可能だ。尤も、カレンダー的な大連休に限らずそれはいつでも可能ではあるのだが。
情報センターのスタッフにも何人か地方出身の者がいる。と言うか、オレと高山以外は地方出身者故に、こうした連休の時期は帰省する可能性があるかどうかをまず確認しなければならないのだ。中途半端に近いとすぐ帰れてしまうからな。
「まあ、シフト決めの時点でわかっていたが、お前たちは帰省せんのだな」
「俺はこっちで用事があるのでー」
「私は東都出陣ですし」
「俺は帰ってもしょうがないしね」
長篠出身の川北、そして山羽出身の綾瀬は隣のエリアだけに帰ろうと思えばすぐ帰れそうなものだがそれぞれ用事があるらしい。そして西京出身の烏丸は、公共交通機関が充実しているからすぐ帰れるが、コイツには帰省という概念がない。
烏丸は生まれ育った環境がオレなど普通の家庭で普通に育った者と比べるとかなり過酷だった。今の実家も15歳で初めて会った父らしい者の家だそうだ。高校時代は高専の寮に入っていたし、実家で過ごしたことはほとんどないらしい。
「烏丸さんて、普段何やってるんですか? お休みのときとか」
「動物のドキュメント映画を見たり図鑑を見たりしてるよ。動物園に出かけることもあるかな」
「へえ、やっぱり生き物のことをやってるんですねー」
「ミドリは? 建築のことをやってるんじゃないの?」
「そうですね、俺も建築の動画を見ますし、写真集を眺めてほわーってすることもありますね。でも普通にサークル関係のお出掛けもありますし」
「烏丸さん、ミドリ君には彼女がいるんですからぁ」
「あっ、そうだよね! でもさ、真面目な話ミドリさ、セックスはだいじょ」
「わーっ! 烏丸さん!? 少なくともセンターで話すことじゃないです!」
川北に(物理的に)口を塞がれた烏丸は苦しそうにむぐむぐとくぐもった声を発する。センターで話す話題でないのは確かなのだが、どこの誰とは言わんが前バイトリーダーがいたら間違いなくその話題になっていただろう。
「でも、ミドリは平均よりもずっと大き」
「烏丸さんもう1回黙りましょうかー」
「むごごごご」
「……何か、ミドリが先輩相手に実力行使をしてるなあと思ったら感慨深いですね」
「自習室の輩どもにもこれが出来ればいいのだがな、まだまだビビリで困る」
「アオも林原さんもしみじみ言わないでくださいよーもー」
こんなやり取りを、机の隅の方にちょこんと座って眺めているのが1年の有馬だ。有馬は手作りのテディベアを常備していなければ精神的に不安になるというディスアドバンテージこそあるが、センターの職務に関しては何ら問題なく覚えている。
「川北さんの彼女さんて、どういう感じの人なんですか」
「えっ!? 有馬くんから聞かれるとは思わなかったなあ。そういう話するんだね」
「一応、人並みに興味は」
「レン君、どんな子だと思う? 実は私も知らないんだけど、一緒に妄想しよう。蒼希ちゃんはミドリ君の彼女ちゃんを知ってるんだよね」
「そうですね、サークル関係の共通の友人なので」
「ミドリ君の彼女だったら、そうだなー、ミドリ君と一緒にほわーっとしてそう」
「ああー。でも、2人ともがほわっとしてると肝心なところが締まらなさそうなので、その役割は彼女さんに期待したいですね」
「あっ、蒼希ちゃんが笑ってる」
「綾瀬さんとレンの見立てが大体合ってて面白いなあと思って」
「大体合ってるんだ」
ちなみに、ここにいるスタッフの半数は現在シフトに入っているワケではなく、次の授業やシフトまでの時間潰しや混雑回避のためにここに来ている。繁忙期はともかく、閑散期は事務所で世間話をしていても何ら問題なく回るのだ。
「補足すると、ミドリの彼女も建築やものづくりなんかに興味があって、工芸品やハンドメイド雑貨も好きな子ですよ」
「へー、ミドリ君と一緒の趣味なんだね」
「それから、一応ほわっと系ですけど基本ミドリは尻に敷かれてます」
「あー、わかる気がする」
「アオ、尻に敷かれてるっていうのはちょっと違うよ」
「第三者から見てそういう風に見える。今はそうじゃなくても、将来的にはもっとユキちゃんの方が強くなるでしょどう考えても」
「うう、はっきりと否定できない」
どいつもこいつも、ゴシップになるとなかなか止めどきが見つからんらしい。当の川北も根掘り葉掘り聞かれてタジタジになっているかと思いきや、昨日の誕生日に彼女からもらったというキーケースを見せるなど満更でもないようだ。楽しい時なのだろうな。しかし、一応は業務中だ。ずっとこうでは困る。
「おい、話もいいが綾瀬、ヒマならホワイトボードの予定表を書き替えてくれんか」
「あっはい、今やりますー」
「それから烏丸、さすがに自習室を空け過ぎだ。そろそろ一度見に行って来い」
「はーい。行って来まーす」
end.
++++
情報センターがほわほわする集団になってしまったのだけど、いずれまたどこかでフルスロットルして欲しい……物足りない
そう考えると春山さんの存在感がデカすぎるなあ。でも、村井サン然りでいないはずだけどいつか現れるんじゃないか感もものっそい。
情報センター新キャラのレン君のキャラがまだ定まらないですが、それは1周する頃には定まるだろ精神。出始めの頃は大体ブレッブレさ
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