2020
■誕生日にはお茶とケーキを
++++
「ミドリ、来たよー」
「いらっしゃい」
「ケーキとお茶買ってきたから、後でお茶しよ」
「うん」
今日は俺の誕生日。だから前々からユキちゃんと会う約束をしていたんだ。ユキちゃんとは3月に付き合い始めて、大体ひと月半くらいになるのかな。外でのデートもするけど、今日はおうちでケーキを食べるのがメイン。
「はー……ミドリの部屋って何でこんなに落ち着くんだろー……」
「今なら、ステージの台本の事とかを考えなくていいからじゃないかな。それでピリピリしちゃってるでしょ?」
「ホントにー……ステージの台本ってこんなに難しかったの!? って感じー」
ユキちゃんは5月末に青女のサークルでやる植物園ステージの台本を書いている。青女さんのこのステージは伝統的に2年生が主体となるらしく、先輩たちの助けもあるけど基本的には自分たちで何でもやらなければならない。
もちろんステージの台本なんて初めて書くユキちゃんは、ああでもないこうでもないと試行錯誤しながら頑張ってる。俺は具体的なアドバイスなんかは出来ないし、出来ることと言えば話を聞いてあげることくらい。
今日のデートがおうちでまったりなのは、外に出ていろいろな物を目に入れてしまうとステージに繋がってしまいそうなのが嫌だというユキちゃんの希望。動かない空気の中でゆったりとした時間を過ごしたいんだそうだ。
「ミドリの誕生日なのにごめんね、あたしのワガママで」
「ううん。あっ、そしたら今度はユキちゃんの誕生日に俺が1つリクエストをするっていうのでどう?」
「わかりました!」
「ユキちゃんて1月3日生まれだよね」
「そうだよ。そう言えばミドリ、メールくれたもんね」
ユキちゃんには俺が内緒で持ってる2台目のスマホの存在を教えてあるから自由に連絡をし合えるんだけど、それでもLINEに対してはまだどこかで恐怖心がある。だから連絡は基本的に電話かメール。
「あのねミドリ、誕生日だから、プレゼント」
「えっ、本当!? ありがとう! えっと、見ていい?」
「うん、見て! すっごいいいの見つけたんだよ!」
「えー、何だろう、楽しみだなあ」
受け取った包みを開けてみると、中に入っていたのは木があしらわれた皮のキーケース。手触りもかなりいいし、鍵もしっかりつけられるし、片手で鍵の出し入れも簡単。何より見た目がスタイリッシュでカッコいい。
すっごいいいの見つけたんだよ、という言葉が本当にすごいなあと思う。もし逆の立場だったとして、俺はユキちゃんがこれだけ喜ぶ物がわかるのかな。そう考えると、今が4月だから8ヶ月の猶予はありがたい。
「ユキちゃん、これは凄い。本当にいいよ。えっ、本当にもらっていいの?」
「どうぞー」
「ありがとう! さっそく使わせてもらうね!」
俺は雑貨とかが好きな割に、キーケースにはあまりこだわりがなくって適当に選んだ物を使ってたんだけど、それを軽く越える良さだからすぐにでも替えるよね。今使ってるキーケースから、さっそく鍵を移していく。車の鍵と、家の鍵と。
「これでオッケー。ユキちゃんありがとう」
「これを選びながらミドリはこういうの好きだろうなーと思ってたんだけど、想像よりも喜んでくれて良かった」
「そりゃ喜ぶよ! だって、本当にいい物だし、ユキちゃんが俺のことを考えて選んでくれたんでしょ? って言うかごめんね、嬉しくて変な顔してない?」
「うん、ちょっとニヤついてる」
「よね。ごめん、早く普通の顔に戻すね」
ほっぺたをむにむにと揉んで普通の顔に戻そう戻そうと努力はしてみるけど、そう簡単には戻らないや。いっか、ここにはユキちゃんしかいないんだし。しばらくはキーケースを見る度にこうなるんだろうなあ。
「えっと、お茶にする?」
「そうだね」
「そしたら、ちょっと待ってて。今お茶淹れるよ」
「あっ、あたしが」
「紅茶を淹れるのは任せて。バイト先で鍛えられてるから」
俺が自分で飲むのはほうじ茶が多いんだけど、情報センターでみんなのお茶を淹れてる間に紅茶の淹れ方がちょっとずつ極まってきてたんだよね。ティーポットを使ってっていう本格的なヤツはあんまり経験がないんだけど、勉強したし。
それに関しては本当に林原さん様々。ティーバッグの紅茶の淹れ方やミルクインファースト式のミルクティーの淹れ方なんかは本当に得意になってるからね。今ユキちゃんが持ってきてくれたのはちゃんとした茶葉だけど、これは勉強の成果を見せたい。
「お茶が入りましたー」
「ありがとー」
「それから、ケーキです。これ、2つそれぞれ違うけど、俺がこっちの茶色い方でいいんだよね?」
「あっうん、そうそう! ミドリがこっちのほうじ茶ケーキで、あたしがこっちのフルーツケーキ。それはいつもと一緒で」
「うん、そうだと思った。いつものお店のケーキだもんね」
「そうそう」
最近ではこれが日常になり始めていて、平穏が本当に幸せだなって感じる。今日の晩ご飯は何にしようとか、それぞれの大学はどんな感じとか、他愛もない会話をして。それがユキちゃんの息抜きになってるんなら俺も嬉しいし。
「ユキちゃん、お茶が終わったら夕飯の買い物行くでしょ?」
「うん。張り切って作るからね!」
end.
++++
ちゃんとやるのは初めてに近いレベルのミドリ誕です。フェーズ2だとミドユキが成立しているのでこうなりますわな
前の年度にミドリの誕生日にはお茶がどうのこうの言ってた気がしたのでおうちでまったりデートです。
ミドユキは趣味も合うし話が盛り上がったらそれは長くなるんだろうなあ。何やかんやペースが合う2人です。
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「ミドリ、来たよー」
「いらっしゃい」
「ケーキとお茶買ってきたから、後でお茶しよ」
「うん」
今日は俺の誕生日。だから前々からユキちゃんと会う約束をしていたんだ。ユキちゃんとは3月に付き合い始めて、大体ひと月半くらいになるのかな。外でのデートもするけど、今日はおうちでケーキを食べるのがメイン。
「はー……ミドリの部屋って何でこんなに落ち着くんだろー……」
「今なら、ステージの台本の事とかを考えなくていいからじゃないかな。それでピリピリしちゃってるでしょ?」
「ホントにー……ステージの台本ってこんなに難しかったの!? って感じー」
ユキちゃんは5月末に青女のサークルでやる植物園ステージの台本を書いている。青女さんのこのステージは伝統的に2年生が主体となるらしく、先輩たちの助けもあるけど基本的には自分たちで何でもやらなければならない。
もちろんステージの台本なんて初めて書くユキちゃんは、ああでもないこうでもないと試行錯誤しながら頑張ってる。俺は具体的なアドバイスなんかは出来ないし、出来ることと言えば話を聞いてあげることくらい。
今日のデートがおうちでまったりなのは、外に出ていろいろな物を目に入れてしまうとステージに繋がってしまいそうなのが嫌だというユキちゃんの希望。動かない空気の中でゆったりとした時間を過ごしたいんだそうだ。
「ミドリの誕生日なのにごめんね、あたしのワガママで」
「ううん。あっ、そしたら今度はユキちゃんの誕生日に俺が1つリクエストをするっていうのでどう?」
「わかりました!」
「ユキちゃんて1月3日生まれだよね」
「そうだよ。そう言えばミドリ、メールくれたもんね」
ユキちゃんには俺が内緒で持ってる2台目のスマホの存在を教えてあるから自由に連絡をし合えるんだけど、それでもLINEに対してはまだどこかで恐怖心がある。だから連絡は基本的に電話かメール。
「あのねミドリ、誕生日だから、プレゼント」
「えっ、本当!? ありがとう! えっと、見ていい?」
「うん、見て! すっごいいいの見つけたんだよ!」
「えー、何だろう、楽しみだなあ」
受け取った包みを開けてみると、中に入っていたのは木があしらわれた皮のキーケース。手触りもかなりいいし、鍵もしっかりつけられるし、片手で鍵の出し入れも簡単。何より見た目がスタイリッシュでカッコいい。
すっごいいいの見つけたんだよ、という言葉が本当にすごいなあと思う。もし逆の立場だったとして、俺はユキちゃんがこれだけ喜ぶ物がわかるのかな。そう考えると、今が4月だから8ヶ月の猶予はありがたい。
「ユキちゃん、これは凄い。本当にいいよ。えっ、本当にもらっていいの?」
「どうぞー」
「ありがとう! さっそく使わせてもらうね!」
俺は雑貨とかが好きな割に、キーケースにはあまりこだわりがなくって適当に選んだ物を使ってたんだけど、それを軽く越える良さだからすぐにでも替えるよね。今使ってるキーケースから、さっそく鍵を移していく。車の鍵と、家の鍵と。
「これでオッケー。ユキちゃんありがとう」
「これを選びながらミドリはこういうの好きだろうなーと思ってたんだけど、想像よりも喜んでくれて良かった」
「そりゃ喜ぶよ! だって、本当にいい物だし、ユキちゃんが俺のことを考えて選んでくれたんでしょ? って言うかごめんね、嬉しくて変な顔してない?」
「うん、ちょっとニヤついてる」
「よね。ごめん、早く普通の顔に戻すね」
ほっぺたをむにむにと揉んで普通の顔に戻そう戻そうと努力はしてみるけど、そう簡単には戻らないや。いっか、ここにはユキちゃんしかいないんだし。しばらくはキーケースを見る度にこうなるんだろうなあ。
「えっと、お茶にする?」
「そうだね」
「そしたら、ちょっと待ってて。今お茶淹れるよ」
「あっ、あたしが」
「紅茶を淹れるのは任せて。バイト先で鍛えられてるから」
俺が自分で飲むのはほうじ茶が多いんだけど、情報センターでみんなのお茶を淹れてる間に紅茶の淹れ方がちょっとずつ極まってきてたんだよね。ティーポットを使ってっていう本格的なヤツはあんまり経験がないんだけど、勉強したし。
それに関しては本当に林原さん様々。ティーバッグの紅茶の淹れ方やミルクインファースト式のミルクティーの淹れ方なんかは本当に得意になってるからね。今ユキちゃんが持ってきてくれたのはちゃんとした茶葉だけど、これは勉強の成果を見せたい。
「お茶が入りましたー」
「ありがとー」
「それから、ケーキです。これ、2つそれぞれ違うけど、俺がこっちの茶色い方でいいんだよね?」
「あっうん、そうそう! ミドリがこっちのほうじ茶ケーキで、あたしがこっちのフルーツケーキ。それはいつもと一緒で」
「うん、そうだと思った。いつものお店のケーキだもんね」
「そうそう」
最近ではこれが日常になり始めていて、平穏が本当に幸せだなって感じる。今日の晩ご飯は何にしようとか、それぞれの大学はどんな感じとか、他愛もない会話をして。それがユキちゃんの息抜きになってるんなら俺も嬉しいし。
「ユキちゃん、お茶が終わったら夕飯の買い物行くでしょ?」
「うん。張り切って作るからね!」
end.
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ちゃんとやるのは初めてに近いレベルのミドリ誕です。フェーズ2だとミドユキが成立しているのでこうなりますわな
前の年度にミドリの誕生日にはお茶がどうのこうの言ってた気がしたのでおうちでまったりデートです。
ミドユキは趣味も合うし話が盛り上がったらそれは長くなるんだろうなあ。何やかんやペースが合う2人です。
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