2020
■Critical situation
++++
「さァーて、今日はMMP的に重要なことを話し合いたいと、思いヤーす」
最近わかってきたのだけど、こういう風に律が切り出してくるのは、大体俺たちがヤバい状況に陥っている時だ。MMP的に重要なことを話し合うとのことだけど、それに心当たりはあまりない。ああ、だからヤバいことに気付かないのか。
「それで土田さん、今日の議題は」
「来週から本格的に5月になるンで、そろそろ昼放送のことについても本腰入れて考える必要があるンすが」
「ああ、もうそんな時期か」
「で、ここで問題になるのがヒロの履修スわ」
「なあ律、ひとつ聞いていいか」
「なンすか野坂」
「もしかしてもしかすると、今期の昼放送って1ペアしか出来ないのか…?」
「やァー、さすが野坂、ご名答スわ。現状MMPはアナウンサー1人にミキサー4人っつーサークルっスから? どう頑張ってもペアなんか出来ヤしやせん。よっぽどヒロが帯番組をやるとかでねーとミキサーが3人あぶれヤすね」
MMPは通念の活動として食堂で30分間の昼放送を流させてもらっている。あらかじめ収録したそれを食堂の機材に繋いでの放送だけど、それでも一応はそれらしい番組になっているとは思う。
これまで……特に去年はアナウンサーが4人ミキサーが4人とバランスが非常に良かったのだけど、現4年生の先輩方が3人ともアナウンサーだったから、それがいなくなった瞬間こうですよ。わかっちゃいたけどヤバすぎる。
しかも残された唯一のアナウンサーが気紛れが過ぎるヒロだというのがより俺たちの不安を駆り立てた。番組をやるかやらないかも、やったとしてもその構成すら気紛れで決まるものだから、俺なんかはペアを組むことも耐えられない。
「1ペアはさすがにマズいんじゃないですか? 一応、こんなグダグダでもちゃんと通年の活動をしているというのが私たちの心の支えみたいなところがあったでしょう」
「そーなンすよね。非常にマズいスわ。つーか、ヒロがアナウンス部長になった時点でこの危機的状況への対策を講じるべきではありヤしたわ」
「でも、1組しかペアが出来ないにしろ、継続する必要はあるだろ。春学期はとりあえずヒロで凌いで、ワンチャンアナ志望の1年生が来るのに賭けるしかない」
「1年生が来ればいーンすけどね。そっちの状況としてもそろそろヤバいスわ。割とマジメにMMP存亡の危機が迫ってヤす」
MMP存亡の危機。その言葉が現実に出てくるくらい、サークルの状況は大分ヤバかったようだ。とりあえず、ヒロには唯一のアナウンサーとしての自覚を持って下手なことで番組を休むなと律からのお達しが入った。
アナウンサーが1人しかいないこともヤバいけど、俺たち4人がいなくなると、来期は奈々しか残らなくなる。1年生が入らないと、よほど奈々がマルチでの番組制作に目覚めない限りはここでの活動が物理的に開店休業状態になりかねないのだ。
「それで、ボクしかアナウンサーおらんのはわかったけど、誰が組むん」
「それをこれから決めるンすわ。ま、言って自分とこーたは履修がそれなりに緩くなってるンで、理系組よりかは融通も利きヤすわ。さ、いつ収録したいか言ってみ」
「えっとね、ボク水曜日の4限とかの時間にやりたいわ。サークル始まるまでのいー隙間やし」
「あー……っと。こーた、お前水曜来てる?」
「私は全休ですね」
「マジすか。自分もなンすよね」
ひそひそと、律とこーたが何やら話をすり合わせている。水曜日の履修がどうとか。と言うか、菜月先輩は普通に3年生でも水曜日に一般教養の授業を履修されていたけど、菜月先輩は言ってしまえば単位が少ない方のお方だったワケで……。
「これが普通に単位を取ってる文系3年ならではの問題か!」
「っつーコトで、野坂か奈々が現実的スね」
「えー、ボクノサカイヤなんやけど!」
「何だとこの野郎、俺だってお前なんか願い下げだ」
「奈々、水曜は大学には来てヤすか?」
「はいッ! 普通に2、3限の授業があるので来てますッ!」
「尚更都合がいースわ」
「出来ればりっちゃんがいーんやけど」
「や、そこは奈々と組んでくだせーよ。奈々がイヤっつーなら野坂と組ませヤす」
「それはイヤや! しょーがない。奈々、よろしく」
「よろしくお願いしますッ!」
俺がボロクソに言われているのはともかく、とりあえずは平和的にペアが出来たということでひとまずMMPの危機はひとつ潰すことが出来たと言っていいだろう。まあ、俺がヒロと組めと言われても同じ反応をするからおあいこだな。
「と言うか、何かの間違いで1年生が来ませんかね」
「各所に貼ってるポスターはちょこちょこ隙を見て1番上に貼り直してるンすけど、まーあ反応は芳しくない感じスよね」
「どうしたモンかな。5月中旬までに来なかったら今年度の新歓はもう終了かな」
「や、過去の例で言えば菜月先輩が6月加入スし、青女の話にはなりヤすけど秋加入のわかばの件もありヤすから、季節問わずウェルカムの雰囲気だけは醸しヤしょう。あとは奈々が野良の友達を連れてくるなり何なりしてもらって」
「野良の友達っすね! 了解っす!」
「言いたいことはわかるけど野良って」
もうひとつの危機の方は秋までずっと続く話だ。誰かしらMMPに入りたいっていう人が来てくれるといいけど、ビラを配ったり学内にブースを設置したりっていう大っぴらな新歓が終わっている今、チャンスは残っているのだろうか。
end.
++++
MBCCの方も現4年生がいないのでペア数も減っているようですが、MMPはもっとヤバかった。
というワケで昼放送のペア決めですが、これは本格的にヤバそうな予感。3年ミキサーがあぶれただと……
リツ神が「水曜来てる?」ってひそひそ確認し合ってるのがただただかわいいヤツ。
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「さァーて、今日はMMP的に重要なことを話し合いたいと、思いヤーす」
最近わかってきたのだけど、こういう風に律が切り出してくるのは、大体俺たちがヤバい状況に陥っている時だ。MMP的に重要なことを話し合うとのことだけど、それに心当たりはあまりない。ああ、だからヤバいことに気付かないのか。
「それで土田さん、今日の議題は」
「来週から本格的に5月になるンで、そろそろ昼放送のことについても本腰入れて考える必要があるンすが」
「ああ、もうそんな時期か」
「で、ここで問題になるのがヒロの履修スわ」
「なあ律、ひとつ聞いていいか」
「なンすか野坂」
「もしかしてもしかすると、今期の昼放送って1ペアしか出来ないのか…?」
「やァー、さすが野坂、ご名答スわ。現状MMPはアナウンサー1人にミキサー4人っつーサークルっスから? どう頑張ってもペアなんか出来ヤしやせん。よっぽどヒロが帯番組をやるとかでねーとミキサーが3人あぶれヤすね」
MMPは通念の活動として食堂で30分間の昼放送を流させてもらっている。あらかじめ収録したそれを食堂の機材に繋いでの放送だけど、それでも一応はそれらしい番組になっているとは思う。
これまで……特に去年はアナウンサーが4人ミキサーが4人とバランスが非常に良かったのだけど、現4年生の先輩方が3人ともアナウンサーだったから、それがいなくなった瞬間こうですよ。わかっちゃいたけどヤバすぎる。
しかも残された唯一のアナウンサーが気紛れが過ぎるヒロだというのがより俺たちの不安を駆り立てた。番組をやるかやらないかも、やったとしてもその構成すら気紛れで決まるものだから、俺なんかはペアを組むことも耐えられない。
「1ペアはさすがにマズいんじゃないですか? 一応、こんなグダグダでもちゃんと通年の活動をしているというのが私たちの心の支えみたいなところがあったでしょう」
「そーなンすよね。非常にマズいスわ。つーか、ヒロがアナウンス部長になった時点でこの危機的状況への対策を講じるべきではありヤしたわ」
「でも、1組しかペアが出来ないにしろ、継続する必要はあるだろ。春学期はとりあえずヒロで凌いで、ワンチャンアナ志望の1年生が来るのに賭けるしかない」
「1年生が来ればいーンすけどね。そっちの状況としてもそろそろヤバいスわ。割とマジメにMMP存亡の危機が迫ってヤす」
MMP存亡の危機。その言葉が現実に出てくるくらい、サークルの状況は大分ヤバかったようだ。とりあえず、ヒロには唯一のアナウンサーとしての自覚を持って下手なことで番組を休むなと律からのお達しが入った。
アナウンサーが1人しかいないこともヤバいけど、俺たち4人がいなくなると、来期は奈々しか残らなくなる。1年生が入らないと、よほど奈々がマルチでの番組制作に目覚めない限りはここでの活動が物理的に開店休業状態になりかねないのだ。
「それで、ボクしかアナウンサーおらんのはわかったけど、誰が組むん」
「それをこれから決めるンすわ。ま、言って自分とこーたは履修がそれなりに緩くなってるンで、理系組よりかは融通も利きヤすわ。さ、いつ収録したいか言ってみ」
「えっとね、ボク水曜日の4限とかの時間にやりたいわ。サークル始まるまでのいー隙間やし」
「あー……っと。こーた、お前水曜来てる?」
「私は全休ですね」
「マジすか。自分もなンすよね」
ひそひそと、律とこーたが何やら話をすり合わせている。水曜日の履修がどうとか。と言うか、菜月先輩は普通に3年生でも水曜日に一般教養の授業を履修されていたけど、菜月先輩は言ってしまえば単位が少ない方のお方だったワケで……。
「これが普通に単位を取ってる文系3年ならではの問題か!」
「っつーコトで、野坂か奈々が現実的スね」
「えー、ボクノサカイヤなんやけど!」
「何だとこの野郎、俺だってお前なんか願い下げだ」
「奈々、水曜は大学には来てヤすか?」
「はいッ! 普通に2、3限の授業があるので来てますッ!」
「尚更都合がいースわ」
「出来ればりっちゃんがいーんやけど」
「や、そこは奈々と組んでくだせーよ。奈々がイヤっつーなら野坂と組ませヤす」
「それはイヤや! しょーがない。奈々、よろしく」
「よろしくお願いしますッ!」
俺がボロクソに言われているのはともかく、とりあえずは平和的にペアが出来たということでひとまずMMPの危機はひとつ潰すことが出来たと言っていいだろう。まあ、俺がヒロと組めと言われても同じ反応をするからおあいこだな。
「と言うか、何かの間違いで1年生が来ませんかね」
「各所に貼ってるポスターはちょこちょこ隙を見て1番上に貼り直してるンすけど、まーあ反応は芳しくない感じスよね」
「どうしたモンかな。5月中旬までに来なかったら今年度の新歓はもう終了かな」
「や、過去の例で言えば菜月先輩が6月加入スし、青女の話にはなりヤすけど秋加入のわかばの件もありヤすから、季節問わずウェルカムの雰囲気だけは醸しヤしょう。あとは奈々が野良の友達を連れてくるなり何なりしてもらって」
「野良の友達っすね! 了解っす!」
「言いたいことはわかるけど野良って」
もうひとつの危機の方は秋までずっと続く話だ。誰かしらMMPに入りたいっていう人が来てくれるといいけど、ビラを配ったり学内にブースを設置したりっていう大っぴらな新歓が終わっている今、チャンスは残っているのだろうか。
end.
++++
MBCCの方も現4年生がいないのでペア数も減っているようですが、MMPはもっとヤバかった。
というワケで昼放送のペア決めですが、これは本格的にヤバそうな予感。3年ミキサーがあぶれただと……
リツ神が「水曜来てる?」ってひそひそ確認し合ってるのがただただかわいいヤツ。
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