2020
■真円のマルゲリータ
++++
「それじゃあ、お疲れ様でしたー」
「お疲れっしたー」
「エイジ、今日はうち来る?」
「いや、今日は帰るわ」
「そしたらエージ、こっち乗ってく?」
「おー、頼むべ」
「それじゃあエイジ、ハナちゃんお疲れ」
「お疲れー」
サークルが終わると、最近ではどこに帰るのかを聞かれるようになっていた。俺の家は緑ヶ丘大学から2時間ちょいかかる山浪エリアの山間部にある。電車を乗り継いで帰るんだけど、最近では星港市内にある高木の部屋に行くことも増えているからだ。
家に帰る時は、途中まで方角が同じハナの車に乗っけてもらって飯を食ったりすることもある。緑風エリアから出て来ているハナは、自分の車を持っている。だからなのか、大学から凄く近いってこともない場所で1人暮らしをしている。
「ハナ、今日イタリアンにしね?」
「いいね。トマトっぽい味食べたいかも」
帰り道で食べる飯は大体道なりにあって目についたところを気紛れで選ぶという感じ。いくらハナがひらひらしたお嬢さんみたいな服を着ていたって所詮は普通の学生、ラーメンだろうが牛丼だろうが普通に食うし、なんならMBCCの人間らしく普通に大酒飲みだ。
「やっぱ金曜夜は混んでるね」
「しゃーねーべ。多少の待ち時間くらいは覚悟するからその分席の衛生状態だけちゃんとしてくれればいいっていう」
少しの待ち時間の後、席に通された。今さっき席を片付けましたという感じの店員が霧吹きとふきんを手に「ごゆっくりどうぞ」と俺たちに声をかけてくれる。あの霧吹きの中身がアルコールなどの消毒液であることを願いたい。
トマトっぽい味の物が食べたいと話していた通り、トマトっぽい味のパスタと2人で分けて食べるピザを注文した。如何せん高木の部屋に入り浸っていると、食べるパスタは奴の好みでカルボナーラとかのクリーム系になりがちだ。トマトっぽい味のパスタとか久し振りだ。
「エージ、ところでファンフェスはどんな感じ?」
「ウチの班はさ、マーシーさんが班長で青女のKちゃんさんと、あとはアオがいるんだけど全員クソ真面目で全然話が脱線しないっていう」
「うわー、名前聞くだけで肩凝りそう。あっ、いい意味でね」
「いい意味でねって言えば許されると思ってんべ?」
「違う違う! でも2年生と3年生の真面目成分を抽出した感じの班だねっていう意味で、別にバカにしてはないよ! しょぼーん!」
インターフェイスの真面目成分を抽出した感じの班と言われれば確かにそうなのかもしれない。ただ、Kちゃんさんはともかくマーシーさんは向島の人だけあって悪乗りを始めたらヤバそうだし、2年で悪乗りと言えば高木かアオみたいなところはある。今のところ、辛うじて平和を保っているだけなのかもしれない。
そしてマーシーさんが対策委員の前議長ということもあって、今の対策委員の議長・委員長のアオと俺は、会議であったちょっとしたことを簡単に相談したりアドバイスをもらったりもしている。そしてKちゃんさんはわかばの様子が気にかかる様子。
「うん、やっぱ真面目だわ」
「そっちの班はどうなんだっていう」
「こっちは良くも悪くもヒロ先輩次第って感じ。班長はつばめ先輩で、あとはあやめがいるんだけど」
「つばめサンがいるなら大丈夫だろっていう」
「ここだけの話だけどさ、ワイヤレスで中継飛ばそうとしてるんだよウチの班。ヒロ先輩の発案で」
「あー、夏合宿であったあの番組みたいな感じか」
「うん。ほら、つばめ先輩大体の機材なら使えちゃうじゃん」
「そーだな、その辺やっぱ星ヶ丘の人はいろいろ融通利くっていう」
「でもホントに中継飛ばすとして、ハナはどーしたらいいの!? 的な」
「……まあ、なるようになるしかないんだろうけどな。ヒロさんて正直よくわからん人だっていう。気紛れが過ぎるって言うか」
1秒単位でカチカチな番組になりそうなウチの班と、当日になるまでどうなるか未知数なハナの班。話を聞くだけでもかなり対極だなと思う。だけど、見ようによってはこれも向島の人のカラーに左右されてんなと思う。影響力が凄いっていう。
「あと昼放送だよエージ」
「それな。ハナお前今期相手誰だっけ」
「L先輩。ゴティ先輩の時よりはキュー見にくいだろうけどって挨拶されたよ」
「まあ、あの食堂じゃキューの見やすさは普段以上に死活問題だしな」
インターフェイスでの活動の他に、MBCCでは通年の活動として第1学食での昼放送を行っている。それがそろそろ始まるということでペアも決まって、番組制作に乗り出すことになっている。俺と組むミキサーは高木、ハナと組むミキサーはL先輩だ。
「エージとタカティは打ち合わせしやすそうだね」
「それな。なんならアイツの部屋で飲みながら話すとかも全然あると思う」
「いいよねー、日常的にゆったり晩酌する相手がいるってさー」
「でもアイツ使った食器とかすぐ片付けないっていう」
――とか言ってたら、茹でたてのパスタと石窯で焼いたピザが席に届いた。ワインなんかがあれば最高だったんだろうけど、ハナは車だから飲めないし。そういうのはまた今度ゆっくりとやれるときに。
「グリグリやるヤツあるしピザ切るか?」
「そうだね。エージお願ーい」
「えっ、俺がやるのかっていう」
「エージの方が細かいから均等になりそう」
「あ!? 誰が細かいって!?」
「エージだけどー? しょぼーん」
end.
++++
久々にエイハナ。フェーズ2に入ってから気持ち緑ヶ丘強めな感じがする。多分気のせいじゃない
千葉班の話でもあったけど、緑ヶ丘の人たちが向島をどういう大学だと思っているのかがよくわかりますね。悪乗り大好きムライズムが基本らしい。
そう言えば昼放送という活動もあったし、エイジには新しくサークル活動でやりたいこともちょいちょいあるんでした
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「それじゃあ、お疲れ様でしたー」
「お疲れっしたー」
「エイジ、今日はうち来る?」
「いや、今日は帰るわ」
「そしたらエージ、こっち乗ってく?」
「おー、頼むべ」
「それじゃあエイジ、ハナちゃんお疲れ」
「お疲れー」
サークルが終わると、最近ではどこに帰るのかを聞かれるようになっていた。俺の家は緑ヶ丘大学から2時間ちょいかかる山浪エリアの山間部にある。電車を乗り継いで帰るんだけど、最近では星港市内にある高木の部屋に行くことも増えているからだ。
家に帰る時は、途中まで方角が同じハナの車に乗っけてもらって飯を食ったりすることもある。緑風エリアから出て来ているハナは、自分の車を持っている。だからなのか、大学から凄く近いってこともない場所で1人暮らしをしている。
「ハナ、今日イタリアンにしね?」
「いいね。トマトっぽい味食べたいかも」
帰り道で食べる飯は大体道なりにあって目についたところを気紛れで選ぶという感じ。いくらハナがひらひらしたお嬢さんみたいな服を着ていたって所詮は普通の学生、ラーメンだろうが牛丼だろうが普通に食うし、なんならMBCCの人間らしく普通に大酒飲みだ。
「やっぱ金曜夜は混んでるね」
「しゃーねーべ。多少の待ち時間くらいは覚悟するからその分席の衛生状態だけちゃんとしてくれればいいっていう」
少しの待ち時間の後、席に通された。今さっき席を片付けましたという感じの店員が霧吹きとふきんを手に「ごゆっくりどうぞ」と俺たちに声をかけてくれる。あの霧吹きの中身がアルコールなどの消毒液であることを願いたい。
トマトっぽい味の物が食べたいと話していた通り、トマトっぽい味のパスタと2人で分けて食べるピザを注文した。如何せん高木の部屋に入り浸っていると、食べるパスタは奴の好みでカルボナーラとかのクリーム系になりがちだ。トマトっぽい味のパスタとか久し振りだ。
「エージ、ところでファンフェスはどんな感じ?」
「ウチの班はさ、マーシーさんが班長で青女のKちゃんさんと、あとはアオがいるんだけど全員クソ真面目で全然話が脱線しないっていう」
「うわー、名前聞くだけで肩凝りそう。あっ、いい意味でね」
「いい意味でねって言えば許されると思ってんべ?」
「違う違う! でも2年生と3年生の真面目成分を抽出した感じの班だねっていう意味で、別にバカにしてはないよ! しょぼーん!」
インターフェイスの真面目成分を抽出した感じの班と言われれば確かにそうなのかもしれない。ただ、Kちゃんさんはともかくマーシーさんは向島の人だけあって悪乗りを始めたらヤバそうだし、2年で悪乗りと言えば高木かアオみたいなところはある。今のところ、辛うじて平和を保っているだけなのかもしれない。
そしてマーシーさんが対策委員の前議長ということもあって、今の対策委員の議長・委員長のアオと俺は、会議であったちょっとしたことを簡単に相談したりアドバイスをもらったりもしている。そしてKちゃんさんはわかばの様子が気にかかる様子。
「うん、やっぱ真面目だわ」
「そっちの班はどうなんだっていう」
「こっちは良くも悪くもヒロ先輩次第って感じ。班長はつばめ先輩で、あとはあやめがいるんだけど」
「つばめサンがいるなら大丈夫だろっていう」
「ここだけの話だけどさ、ワイヤレスで中継飛ばそうとしてるんだよウチの班。ヒロ先輩の発案で」
「あー、夏合宿であったあの番組みたいな感じか」
「うん。ほら、つばめ先輩大体の機材なら使えちゃうじゃん」
「そーだな、その辺やっぱ星ヶ丘の人はいろいろ融通利くっていう」
「でもホントに中継飛ばすとして、ハナはどーしたらいいの!? 的な」
「……まあ、なるようになるしかないんだろうけどな。ヒロさんて正直よくわからん人だっていう。気紛れが過ぎるって言うか」
1秒単位でカチカチな番組になりそうなウチの班と、当日になるまでどうなるか未知数なハナの班。話を聞くだけでもかなり対極だなと思う。だけど、見ようによってはこれも向島の人のカラーに左右されてんなと思う。影響力が凄いっていう。
「あと昼放送だよエージ」
「それな。ハナお前今期相手誰だっけ」
「L先輩。ゴティ先輩の時よりはキュー見にくいだろうけどって挨拶されたよ」
「まあ、あの食堂じゃキューの見やすさは普段以上に死活問題だしな」
インターフェイスでの活動の他に、MBCCでは通年の活動として第1学食での昼放送を行っている。それがそろそろ始まるということでペアも決まって、番組制作に乗り出すことになっている。俺と組むミキサーは高木、ハナと組むミキサーはL先輩だ。
「エージとタカティは打ち合わせしやすそうだね」
「それな。なんならアイツの部屋で飲みながら話すとかも全然あると思う」
「いいよねー、日常的にゆったり晩酌する相手がいるってさー」
「でもアイツ使った食器とかすぐ片付けないっていう」
――とか言ってたら、茹でたてのパスタと石窯で焼いたピザが席に届いた。ワインなんかがあれば最高だったんだろうけど、ハナは車だから飲めないし。そういうのはまた今度ゆっくりとやれるときに。
「グリグリやるヤツあるしピザ切るか?」
「そうだね。エージお願ーい」
「えっ、俺がやるのかっていう」
「エージの方が細かいから均等になりそう」
「あ!? 誰が細かいって!?」
「エージだけどー? しょぼーん」
end.
++++
久々にエイハナ。フェーズ2に入ってから気持ち緑ヶ丘強めな感じがする。多分気のせいじゃない
千葉班の話でもあったけど、緑ヶ丘の人たちが向島をどういう大学だと思っているのかがよくわかりますね。悪乗り大好きムライズムが基本らしい。
そう言えば昼放送という活動もあったし、エイジには新しくサークル活動でやりたいこともちょいちょいあるんでした
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