2020
■遠隔感覚プランニング
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「はい、というワケで班打ち合わせだけど。大体知ってるよね? 自己紹介端折っていい?」
「ええよ、つばちゃんどんどん端折ってこう」
「じゃ、そういうことで」
今日はファンフェスの班打ち合わせだ。定例会から頼まれて、アタシは班長を務めることになった。だけど班のメンバーになかなか癖がある。と言うかヒロだよ。向島のヒロとは対策委員で去年1年活動してきてるからどういう奴かっていうのは大体わかるけど、自由極まりないという印象だ。
2年がアタシとヒロで、1年が緑ヶ丘のハナと青敬のあやめ。定例会の配慮とかでアタシの班にはラジオ慣れしてるハナとヒロが入れられたらしいんだけど、ぶっちゃけアタシには気を遣ってもらわなくても大丈夫だったわ。と言うかヒロの子守りを押し付けられてんじゃねーか。
「おハナは問題ないとして、あやめはラジオ大丈夫そう?」
「練習は大学でも出来るようになったので頑張ります」
「そう。ミキサーの技術的なことで困ったらいつでも言ってくれていいから。で、アタシが何を一番心配してるかって言ったらアンタだからね、ヒロ」
「えっ、ボク!?」
「おめーだよ。それ以外に何があるってんだよ」
「ボクつばちゃんに対して何かした覚えないんやけど」
「アタシ個人に対して何もしてなくても、去年の夏合宿とか対策委員とかで自由極まりない行動で散々好き勝手してただろ」
「大丈夫やって。ボクも3年やし、ノサカもおらんし好き勝手はせんよ多分」
「多分って辺りがしょぼんですね」
ヒロがどう自由なのかと言うと、時間にルーズだわワガママだわ、会議中や行事の準備中もやりたい放題で案も出さなきゃ手伝いもロクにしない。いる意味自体も正直あんまりよくわからなかった。野坂と一緒にしとくとそれだけで内ゲバか漫才が始まるし。
何が一番アレだったかって言ったら去年の夏合宿だね。大体みんなよくある機材でよくある番組をやってた中、ウン年間も眠ってたワイヤレスの機材を掘り起こして中継っていう手段を採って来たりね。良くも悪くも本能のままにやってるって感じ。
「一応言っとくけど、急な思い付きで中継飛ばすとか言うのナシだかんね」
「中継とか覚えてなかったし今回全然考えてなかったけど、そう言われたらここを逃したら二度とやれん気がして来た。つばちゃんボク中継やりたい」
「しまった、寝た子を起こしたか」
インターフェイスの機材の中には、ワイヤレスマイクのセットがある。いつ、どう使われていたのかもわからないそれが、去年の夏、長い時を経て日の目を見た。ヒロの束ねた7班にはウチのシゲトラがいた。アイツがワイヤレスの機材を蘇らせた結果、中継という新たな手法の番組が登場したんだ。
言ってアタシも星ヶ丘のディレクター(ミキサー)、シゲトラに出来てアタシに出来ないはずもなく、当然ワイヤレスの機材は使える。つか野坂だのゴティだのっていうラジオメイン校の人間がこれの用途をわかってなかったもんな。今後も使われるかどうかぶっちゃけ怪しいわ。
「急じゃないならいいよ。100歩譲ってね。やるんだったらちゃんとプラン練ってさ、どう展開すんのかはアンタが考えてよ。アタシはアンタが言った通りに機材を扱うことは出来るけど、どういう構成の番組にするのかっていうのは考えてもらわないと」
「えー、ボク考えるん?」
「当たり前だろ!」
得てしてアタシはディレクター、プロデューサーが持って来た案に沿って必要な物を用意するけど、アタシ自身が何をするか考えることはそうそうないし、得意でもない。中継をやりたいと言われたところでどういう番組にしたいのかっていうビジョンは持って来てもらわないと。
「って言うか今期定例会の機材管理って誰? 本当にワイヤレス使うんだったら話付けとかなきゃでしょ荷物増えるんだし」
「今期は3年生の人数が少ないので機材管理は三役の先輩たちが3人でやるって」
「あーね。ワイヤレス使うなら定例会の3年に言う感じね」
やるんだったらあらかじめ話を通しておかないと。荷物が増えるワケだし他の班はほぼほぼワイヤレスなんか使わないだろうし。定例会3年はミキサーが多いから、要らない機材を弾けちゃうんだよね。持って来ない選択も十分にある。
「つばちゃんホントにやってええん?」
「何回も言うけど、ちゃんとどういう番組にしたいかっていうのを示してくれればだよ」
「テントの前とか歩いとる人らに話聞きたい」
「それはわかるけど、ピントークでやるのか、ダブルトークでやるのか、アンタが行くのかおハナに行ってもらってアンタが受けるのか、2人ともアナウンサー席にいてアタシかあやめをインタビュアーにするのかとか、考え得ることはいろいろあるっしょ」
「はー、そんなことも考えなアカンのや」
「は!? アンタそんなんで今までどーやって番組やってたの!? つか向島って毎週番組やってんだろ!」
「ほら、ボクこんなんやから大体諦められとるやん? それなんにノサカは細かいことばっかウルサイん」
「いやいやいや、それに関しては野坂が100パー正しいわ。はー……いい? ちゃんと考えてよ! やっぱ飽きたからやーめたとかナシ! やるならやる! いい?」
「はーい」
こうやってアタシもガーガー言うけど、決して本能のままに作られる変な番組が嫌いなワケじゃない。今までもそういうのには腐るほど付き合って来たから。ただ、ここは訓練された人間の揃う朝霞班じゃない。だからきっちり筋道を決めておきたいんだ。
「つばめ先輩、一応ワイヤレス使う番組の立ち回りをハマちゃん先輩に聞いておいた方がいいですか?」
「そうね、一応ハマ男に聞いといて」
end.
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つばちゃん、どうやら朝霞班が変な班だという認識はあった模様。そういやあの人急な構成変更とか平気でやってたわ。本当は出来るけど、他の班員もあるからね
というワケでFFの戸田班はマジラジ7を踏襲するの? という感じになりそうですね。星ヶ丘ミキサーの系譜かしら
Dとかミキとしては大体何でも出来るつばちゃんだけど、番組の構成を考えたりするのは管轄外の様子。ある意味星ヶ丘らしい感じですね
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「はい、というワケで班打ち合わせだけど。大体知ってるよね? 自己紹介端折っていい?」
「ええよ、つばちゃんどんどん端折ってこう」
「じゃ、そういうことで」
今日はファンフェスの班打ち合わせだ。定例会から頼まれて、アタシは班長を務めることになった。だけど班のメンバーになかなか癖がある。と言うかヒロだよ。向島のヒロとは対策委員で去年1年活動してきてるからどういう奴かっていうのは大体わかるけど、自由極まりないという印象だ。
2年がアタシとヒロで、1年が緑ヶ丘のハナと青敬のあやめ。定例会の配慮とかでアタシの班にはラジオ慣れしてるハナとヒロが入れられたらしいんだけど、ぶっちゃけアタシには気を遣ってもらわなくても大丈夫だったわ。と言うかヒロの子守りを押し付けられてんじゃねーか。
「おハナは問題ないとして、あやめはラジオ大丈夫そう?」
「練習は大学でも出来るようになったので頑張ります」
「そう。ミキサーの技術的なことで困ったらいつでも言ってくれていいから。で、アタシが何を一番心配してるかって言ったらアンタだからね、ヒロ」
「えっ、ボク!?」
「おめーだよ。それ以外に何があるってんだよ」
「ボクつばちゃんに対して何かした覚えないんやけど」
「アタシ個人に対して何もしてなくても、去年の夏合宿とか対策委員とかで自由極まりない行動で散々好き勝手してただろ」
「大丈夫やって。ボクも3年やし、ノサカもおらんし好き勝手はせんよ多分」
「多分って辺りがしょぼんですね」
ヒロがどう自由なのかと言うと、時間にルーズだわワガママだわ、会議中や行事の準備中もやりたい放題で案も出さなきゃ手伝いもロクにしない。いる意味自体も正直あんまりよくわからなかった。野坂と一緒にしとくとそれだけで内ゲバか漫才が始まるし。
何が一番アレだったかって言ったら去年の夏合宿だね。大体みんなよくある機材でよくある番組をやってた中、ウン年間も眠ってたワイヤレスの機材を掘り起こして中継っていう手段を採って来たりね。良くも悪くも本能のままにやってるって感じ。
「一応言っとくけど、急な思い付きで中継飛ばすとか言うのナシだかんね」
「中継とか覚えてなかったし今回全然考えてなかったけど、そう言われたらここを逃したら二度とやれん気がして来た。つばちゃんボク中継やりたい」
「しまった、寝た子を起こしたか」
インターフェイスの機材の中には、ワイヤレスマイクのセットがある。いつ、どう使われていたのかもわからないそれが、去年の夏、長い時を経て日の目を見た。ヒロの束ねた7班にはウチのシゲトラがいた。アイツがワイヤレスの機材を蘇らせた結果、中継という新たな手法の番組が登場したんだ。
言ってアタシも星ヶ丘のディレクター(ミキサー)、シゲトラに出来てアタシに出来ないはずもなく、当然ワイヤレスの機材は使える。つか野坂だのゴティだのっていうラジオメイン校の人間がこれの用途をわかってなかったもんな。今後も使われるかどうかぶっちゃけ怪しいわ。
「急じゃないならいいよ。100歩譲ってね。やるんだったらちゃんとプラン練ってさ、どう展開すんのかはアンタが考えてよ。アタシはアンタが言った通りに機材を扱うことは出来るけど、どういう構成の番組にするのかっていうのは考えてもらわないと」
「えー、ボク考えるん?」
「当たり前だろ!」
得てしてアタシはディレクター、プロデューサーが持って来た案に沿って必要な物を用意するけど、アタシ自身が何をするか考えることはそうそうないし、得意でもない。中継をやりたいと言われたところでどういう番組にしたいのかっていうビジョンは持って来てもらわないと。
「って言うか今期定例会の機材管理って誰? 本当にワイヤレス使うんだったら話付けとかなきゃでしょ荷物増えるんだし」
「今期は3年生の人数が少ないので機材管理は三役の先輩たちが3人でやるって」
「あーね。ワイヤレス使うなら定例会の3年に言う感じね」
やるんだったらあらかじめ話を通しておかないと。荷物が増えるワケだし他の班はほぼほぼワイヤレスなんか使わないだろうし。定例会3年はミキサーが多いから、要らない機材を弾けちゃうんだよね。持って来ない選択も十分にある。
「つばちゃんホントにやってええん?」
「何回も言うけど、ちゃんとどういう番組にしたいかっていうのを示してくれればだよ」
「テントの前とか歩いとる人らに話聞きたい」
「それはわかるけど、ピントークでやるのか、ダブルトークでやるのか、アンタが行くのかおハナに行ってもらってアンタが受けるのか、2人ともアナウンサー席にいてアタシかあやめをインタビュアーにするのかとか、考え得ることはいろいろあるっしょ」
「はー、そんなことも考えなアカンのや」
「は!? アンタそんなんで今までどーやって番組やってたの!? つか向島って毎週番組やってんだろ!」
「ほら、ボクこんなんやから大体諦められとるやん? それなんにノサカは細かいことばっかウルサイん」
「いやいやいや、それに関しては野坂が100パー正しいわ。はー……いい? ちゃんと考えてよ! やっぱ飽きたからやーめたとかナシ! やるならやる! いい?」
「はーい」
こうやってアタシもガーガー言うけど、決して本能のままに作られる変な番組が嫌いなワケじゃない。今までもそういうのには腐るほど付き合って来たから。ただ、ここは訓練された人間の揃う朝霞班じゃない。だからきっちり筋道を決めておきたいんだ。
「つばめ先輩、一応ワイヤレス使う番組の立ち回りをハマちゃん先輩に聞いておいた方がいいですか?」
「そうね、一応ハマ男に聞いといて」
end.
++++
つばちゃん、どうやら朝霞班が変な班だという認識はあった模様。そういやあの人急な構成変更とか平気でやってたわ。本当は出来るけど、他の班員もあるからね
というワケでFFの戸田班はマジラジ7を踏襲するの? という感じになりそうですね。星ヶ丘ミキサーの系譜かしら
Dとかミキとしては大体何でも出来るつばちゃんだけど、番組の構成を考えたりするのは管轄外の様子。ある意味星ヶ丘らしい感じですね
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