2020
■適材適所のリーダーズ
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「それじゃあ君たち、今日のゼミだけどね、最初に連絡があるよ」
木曜3限のゼミは、今日が2回目。前回は1年を通して活動する班のメンバーとの顔合わせがメインだった。俺は鵠さんと一緒に3班に編成され、パンクっぽい服装が特徴的な安曇野さんと、天性のまとめ役っぽい佐竹さんという2人の女子と一緒になった。今日は最初に連絡があるということだけど、どんな内容だろう。
「5月の13日、水曜日は合同ゼミでバーベキューをやるよ。2年生から4年生までみんな揃うけど、食材やバーベキューの網は学年ごとの括りになるから、それを仕切る幹事を決めて欲しいんだよね」
「鵠さん、合同ゼミって水曜日の4、5限だっけ?」
「だな。履修コマにはカウントされない不定期開催の」
「それから、佐藤ゼミでは1人1幹事ということで、卒業するまでの間に1回は何かしらの事柄で中心になること」
――と言われても、俺に幹事なんか出来るだろうかと不安に思っていた時のこと。先生が何やらこっちを見ているような気がする。気のせいだといいんだけどなあ。
「ああ、高木君」
「はい」
「君は1人1幹事制度の例外。やりたかったら別だけど、無理して幹事やらなくていいから」
「え、何でですか?」
「君にはミキサーとして活躍してもらわなきゃいけないからね。嫌でも中心になる時が来るでしょう」
「高木、よかったじゃん?」
「ええー……よくないよ」
先生の言い方からすると、MBCCのミキサーが重宝されるシチュエーションというのがあるんだろうなと想像することが出来る。何と言うか、果林先輩が「アナウンサーだとMBCCでも特に優遇はない」って言ってたけど、ミキサーはミキサーでなかなか大変そうな予感。
これからバーベキューの幹事を決めて、その幹事を中心にバーベキューで食べたいものだとか、その他のことについて話し合うのがゼミの前半でやることだそうだ。俺は幹事をやらなくていいことが確定してるから、食べたい物を考えればいいような感じかな。
「ああ、それから。ゼミでは学年ごとにお揃いのTシャツを作ってるんだよ。君たちの中で誰かデザインの出来る人いない? ちなみにこのデザインも幹事にカウントするから」
「じゃあアタシやります」
「そう。みんな、Tシャツ係は安曇野君でいい? うん、いいみたいだから、デザインをしたら誰が何サイズかっていうのを聞いて注文してちょうだい」
「はーい」
さすが安曇野さんは美術部だけあって、デザインなんかは得意分野なんだろうか。安曇野さんからすれば「Tシャツのデザインくらいでイベントの幹事を回避出来るなら先にやっとくのが得策」とのことらしい。それには一理あるなと思いつつも、俺には選択肢がない。
ただ、後ろから聞こえた「先にやっとくのが得策」という言葉に考え込んでいるのが鵠さんだ。1人1回いつかどこかで幹事をやらなきゃいけないのなら、早いうちに済ませて肩の荷を下ろしたいと思うのは自然のことだと思う。
「それじゃあ、バーベキューの幹事、我こそはという人、いる?」
「はい」
「おお~、いいねえ~。鵠沼君、君、いかにもって感じだもんねえ。他にやりたい人。……いないみたいだから、ここから話し合いを仕切ってね」
ちなみに予算は2万円。2年生は原則お酒禁止で、バーベキューの後に打ち上げの飲み会をやることもあるみたいだけど、それはゼミの活動じゃなくて私的な範囲での集まりということで先生は責任を持たないそうだ。予算の使い道は食材や飲み物が基本だとのこと。
「あ、そうそう鵠沼君」
「はい」
「2年生はお酒が禁止だし初めてってこともあって例年食材を余らせがちだから、買い出しのときは気を付けるように。今年の3年生は食材を余らせなかったけど、大体毎年食材を余らせて誰が持ち帰るかってジャンケン合戦してるから。そういうことだからよろしくね」
3年生の先輩たちが食材を余らせなかったのは絶対果林先輩がいたからだと思うし、冬に行った合宿での様子を見てる限り俺たちの学年の中に果林先輩ばりに食べる人もいなかった。だから食材は余らせ過ぎない程度に買うのがいいんだろうね。
さっそく幹事に決まった鵠さんがマイクを受け取って、本格的な話し合いが始まる。バーベキューで何が食べたいかということが今回の議題。ホワイトボードには佐竹さんが板書をしているけど、ナチュラルにそのポジションに着くからまとめ役みたいに見られるんだろうな。実際頼りになるし。
「えー、では、何か食べたいものがある人」
「アタシとうもろこし食べたいし! 一本丸ごと焼いてさ」
「とうもろこし。他には」
「俺は焼きそばが食べたいなあ」
「焼きそば。とりあえず、採用するしないは後で改めて考えるし、今はとりあえずあったらいいなって思うモンをどんどん出してって欲しいっす。例えば、肉は肉でも牛とか豚とかいろいろあるし、串焼きにしたいとかいろいろあると思うんす?」
先生もいかにもって感じって言ってたけど、鵠さんがバーベキューを仕切ってるとそれらしく感じるよなあ。やっぱりこれってジャージの効果なんだろうか。ひとまず俺は焼きそばという案を出したし、他にみんなから案が出なければもうちょっと出していく感じで行こう。自分の財布を開かずに肉を食べれるって控えめに言って最高だ。
end.
++++
この話は最早テッパンですね。佐藤ゼミバーベキューの話し合いですが、しかしTKGが人の金で食べる肉に喜びを見出している
佐藤ゼミの1人1幹事制度だけど、ゆかりんは何気に幹事をやらないままスルーしそうな気がする。やってる風に見える効果か何かで
せっかくなので食材ジャンケン合戦も久々にやりたいし、鵠さんが焼肉のたれを獲得する件も穿り返したい
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「それじゃあ君たち、今日のゼミだけどね、最初に連絡があるよ」
木曜3限のゼミは、今日が2回目。前回は1年を通して活動する班のメンバーとの顔合わせがメインだった。俺は鵠さんと一緒に3班に編成され、パンクっぽい服装が特徴的な安曇野さんと、天性のまとめ役っぽい佐竹さんという2人の女子と一緒になった。今日は最初に連絡があるということだけど、どんな内容だろう。
「5月の13日、水曜日は合同ゼミでバーベキューをやるよ。2年生から4年生までみんな揃うけど、食材やバーベキューの網は学年ごとの括りになるから、それを仕切る幹事を決めて欲しいんだよね」
「鵠さん、合同ゼミって水曜日の4、5限だっけ?」
「だな。履修コマにはカウントされない不定期開催の」
「それから、佐藤ゼミでは1人1幹事ということで、卒業するまでの間に1回は何かしらの事柄で中心になること」
――と言われても、俺に幹事なんか出来るだろうかと不安に思っていた時のこと。先生が何やらこっちを見ているような気がする。気のせいだといいんだけどなあ。
「ああ、高木君」
「はい」
「君は1人1幹事制度の例外。やりたかったら別だけど、無理して幹事やらなくていいから」
「え、何でですか?」
「君にはミキサーとして活躍してもらわなきゃいけないからね。嫌でも中心になる時が来るでしょう」
「高木、よかったじゃん?」
「ええー……よくないよ」
先生の言い方からすると、MBCCのミキサーが重宝されるシチュエーションというのがあるんだろうなと想像することが出来る。何と言うか、果林先輩が「アナウンサーだとMBCCでも特に優遇はない」って言ってたけど、ミキサーはミキサーでなかなか大変そうな予感。
これからバーベキューの幹事を決めて、その幹事を中心にバーベキューで食べたいものだとか、その他のことについて話し合うのがゼミの前半でやることだそうだ。俺は幹事をやらなくていいことが確定してるから、食べたい物を考えればいいような感じかな。
「ああ、それから。ゼミでは学年ごとにお揃いのTシャツを作ってるんだよ。君たちの中で誰かデザインの出来る人いない? ちなみにこのデザインも幹事にカウントするから」
「じゃあアタシやります」
「そう。みんな、Tシャツ係は安曇野君でいい? うん、いいみたいだから、デザインをしたら誰が何サイズかっていうのを聞いて注文してちょうだい」
「はーい」
さすが安曇野さんは美術部だけあって、デザインなんかは得意分野なんだろうか。安曇野さんからすれば「Tシャツのデザインくらいでイベントの幹事を回避出来るなら先にやっとくのが得策」とのことらしい。それには一理あるなと思いつつも、俺には選択肢がない。
ただ、後ろから聞こえた「先にやっとくのが得策」という言葉に考え込んでいるのが鵠さんだ。1人1回いつかどこかで幹事をやらなきゃいけないのなら、早いうちに済ませて肩の荷を下ろしたいと思うのは自然のことだと思う。
「それじゃあ、バーベキューの幹事、我こそはという人、いる?」
「はい」
「おお~、いいねえ~。鵠沼君、君、いかにもって感じだもんねえ。他にやりたい人。……いないみたいだから、ここから話し合いを仕切ってね」
ちなみに予算は2万円。2年生は原則お酒禁止で、バーベキューの後に打ち上げの飲み会をやることもあるみたいだけど、それはゼミの活動じゃなくて私的な範囲での集まりということで先生は責任を持たないそうだ。予算の使い道は食材や飲み物が基本だとのこと。
「あ、そうそう鵠沼君」
「はい」
「2年生はお酒が禁止だし初めてってこともあって例年食材を余らせがちだから、買い出しのときは気を付けるように。今年の3年生は食材を余らせなかったけど、大体毎年食材を余らせて誰が持ち帰るかってジャンケン合戦してるから。そういうことだからよろしくね」
3年生の先輩たちが食材を余らせなかったのは絶対果林先輩がいたからだと思うし、冬に行った合宿での様子を見てる限り俺たちの学年の中に果林先輩ばりに食べる人もいなかった。だから食材は余らせ過ぎない程度に買うのがいいんだろうね。
さっそく幹事に決まった鵠さんがマイクを受け取って、本格的な話し合いが始まる。バーベキューで何が食べたいかということが今回の議題。ホワイトボードには佐竹さんが板書をしているけど、ナチュラルにそのポジションに着くからまとめ役みたいに見られるんだろうな。実際頼りになるし。
「えー、では、何か食べたいものがある人」
「アタシとうもろこし食べたいし! 一本丸ごと焼いてさ」
「とうもろこし。他には」
「俺は焼きそばが食べたいなあ」
「焼きそば。とりあえず、採用するしないは後で改めて考えるし、今はとりあえずあったらいいなって思うモンをどんどん出してって欲しいっす。例えば、肉は肉でも牛とか豚とかいろいろあるし、串焼きにしたいとかいろいろあると思うんす?」
先生もいかにもって感じって言ってたけど、鵠さんがバーベキューを仕切ってるとそれらしく感じるよなあ。やっぱりこれってジャージの効果なんだろうか。ひとまず俺は焼きそばという案を出したし、他にみんなから案が出なければもうちょっと出していく感じで行こう。自分の財布を開かずに肉を食べれるって控えめに言って最高だ。
end.
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この話は最早テッパンですね。佐藤ゼミバーベキューの話し合いですが、しかしTKGが人の金で食べる肉に喜びを見出している
佐藤ゼミの1人1幹事制度だけど、ゆかりんは何気に幹事をやらないままスルーしそうな気がする。やってる風に見える効果か何かで
せっかくなので食材ジャンケン合戦も久々にやりたいし、鵠さんが焼肉のたれを獲得する件も穿り返したい
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