2018
■翻訳できない言語と文化
++++
「ねえ野坂、何でまた来てんの」
「俺が聞きたい」
今日も今日とて対策委員だ。もう初心者講習会まで日がない。各人、講師候補の先輩と打ち合わせをしたりやれることをやっているけど、今日の会議にはまたこの人が乱入している。今日は尾行されているかどうか少し気を付けてきたのに、気付かなかった。
三井先輩は是が非でも初心者講習会の講師に自分の推すプロのラジオパーソナリティーの人を組み込みたいようだった。インターフェイスの空気の軟化のような物を危惧しているようで、すぐにでもプロの人にガツンと言ってもらいたい、と。昨日はサークルでそんなようなことを言っていた。
「プロの人と話したけどさ、インターフェイスのヤバさが伝わってるみたいだよ」
「そりゃあ、アンタがインターフェイスの代表面してんなら、ヤバくも見えるわな」
「ちょっ、つばめ!」
「つばちゃん、そりゃないでしょ」
つばめは相変わらず言うことがド正論と言うか全員の本音ではあるけど、基本喧嘩腰の姿勢だけにいつ何がどうなるかわからないのが怖い。ガチなケンカにならないといいんだけど。止める自信がなさすぎる。
「そもそも、何でそこまでプロどうこうにこだわんの? 今インターフェイスでプロになろうと思って活動してる人なんかいないじゃん」
「違うんだよつばちゃん、それは去年くらいからね、こういうぬるま湯でやりたいっていう人が多数派になってね、僕みたいに意識を高く持って頑張ろうとしてる人を潰してきた結果なんだよ」
「アンタさ、自分は数の暴力で潰されてるって言ってるけど、アンタはアタシたちを学年の力で潰しにかかってんじゃん」
「そんなことないよ、僕は実力もあるしプロに知り合いもたくさんいるよ」
「で、自分は何した? アタシらに何か言える立場なの? 前対策委員だとか、定例会? それともコンテストか何かで結果出した? FMむかいじまで惨敗したみたいだけど」
「いやいや、定例会とかじゃなくても、対策委員を正しい道に誘導するくらいはいいじゃない」
「正しい正しくないはアンタが決めることじゃないからね。それが暴力だって言ってんの。生憎、暴力を言語にしてる奴と話すことなんかないよね」
もし誰か先輩から助言をいただけたとして、それが本当に今の俺たちに即したものであるなら定例会とか前対策委員とか、そんなことは関係なくありがとうございますとお礼を言って参考にさせてもらっていただろう。だけど、三井先輩のそれは今の俺たちには即さない。
最初から講習会の講師は3年生の先輩にお願いすることになっていて、どういうことを教えて欲しいかも話し合って決めてあった。だけど三井先輩はそんなことはお構いなしに勝手に話を進めて、俺たちが話を聞かないと言って勝手に怒っている風にしか見えないのだ。
いくら身内の先輩だからと言って全く擁護も弁護も出来ないし、したくない。と言うか、身内だからこそあなたは一体何を言っているのだと言いたい気持ちでいっぱいだ。ただ、如何せん先輩だけにそんなことは言えない俺がいて。つばめの言い方はともかく、言っていることには頷きたい。
「ちょっと何なのー、星ヶ丘は教育がなってないよねー。そもそも星ヶ丘の子にラジオの何が分かるの?」
「っざけんな、星ヶ丘だからってバカにされる理由は一個もねーぞ!」
「ロイとアニはちゃんと指導してんの? まあ、星ヶ丘のステージもあのレベルだもんね、出来っこないか。それにロイなんてあのレベルの部活でも力がなくて押し込められてるんでしょ?」
「テメー表出ろや!」
「ちょっ、つばめ! これ以上はダメだ!」
「止めんな野坂! アタシはアタシの意思で、自分の言葉で言ってんだ、いちいち関係ない名前出して煽ってんじゃねーぞクソが! 来るなら真正面からかかって来いや! これ以上ウチの人ディスったらタダじゃ置かねーぞ!」
つばめは完全に頭に血が上っているようだし、それに伝染されているのか女子がとにかくヤバい。男はみんな気圧されていてドン引きしている。こんな状態でまともに会議なんか出来ない、そう思うのは1週間ぶりだ。
「三井先輩、言い過ぎです。確かにつばめの態度は若干難がありますが、三井先輩は度を越しています。これ以上場を荒らされるようであれば、対策委員の議長として厳重に抗議します」
「抗議? 何で? 僕はインターフェイスと対策委員のために動いてるんだよ」
「何でって……単純に、会議の進行が阻害されているという事実だけでは理由になりませんか」
「野坂、怒ってる?」
「怒っていないように見えるのであれば、三井先輩の目は相当な節穴かと。今日のところはお引き取りください」
「わかったよ、今日は帰るけど、僕は僕で話進めとくねー。いいの? 決まったこと聞かなくて」
「お疲れ様でした」
淡々と、ただ形式ばった挨拶をすれば三井先輩は諦めたのか帰って行ったようだ。果たしてこれで良かったのだろうか。
「つばめ、落ち着いたか」
「ダメだ、ムリ」
「気持ちは察する」
「でも、アンタみたいに静かにキレる方が怖いわ」
「あ~……明日のサークルが怖いなぁ~…!」
end.
++++
この枠で何度でも言っていますが、直属の先輩をコケにされるのが特に地雷なのは果林・ノサカ・つばちゃんです。
朝霞班的には「戸田はまだ手を出していないだけ一応は抑えている」という部類には入りそうな感じ……星ヶ丘は修羅の国~
ノサカもとうとう激おこだよ! 怒っていないように見えるならあなたの目は節穴! 後で冷静になって明日どうしようって言ってるのもまたをかし
.
++++
「ねえ野坂、何でまた来てんの」
「俺が聞きたい」
今日も今日とて対策委員だ。もう初心者講習会まで日がない。各人、講師候補の先輩と打ち合わせをしたりやれることをやっているけど、今日の会議にはまたこの人が乱入している。今日は尾行されているかどうか少し気を付けてきたのに、気付かなかった。
三井先輩は是が非でも初心者講習会の講師に自分の推すプロのラジオパーソナリティーの人を組み込みたいようだった。インターフェイスの空気の軟化のような物を危惧しているようで、すぐにでもプロの人にガツンと言ってもらいたい、と。昨日はサークルでそんなようなことを言っていた。
「プロの人と話したけどさ、インターフェイスのヤバさが伝わってるみたいだよ」
「そりゃあ、アンタがインターフェイスの代表面してんなら、ヤバくも見えるわな」
「ちょっ、つばめ!」
「つばちゃん、そりゃないでしょ」
つばめは相変わらず言うことがド正論と言うか全員の本音ではあるけど、基本喧嘩腰の姿勢だけにいつ何がどうなるかわからないのが怖い。ガチなケンカにならないといいんだけど。止める自信がなさすぎる。
「そもそも、何でそこまでプロどうこうにこだわんの? 今インターフェイスでプロになろうと思って活動してる人なんかいないじゃん」
「違うんだよつばちゃん、それは去年くらいからね、こういうぬるま湯でやりたいっていう人が多数派になってね、僕みたいに意識を高く持って頑張ろうとしてる人を潰してきた結果なんだよ」
「アンタさ、自分は数の暴力で潰されてるって言ってるけど、アンタはアタシたちを学年の力で潰しにかかってんじゃん」
「そんなことないよ、僕は実力もあるしプロに知り合いもたくさんいるよ」
「で、自分は何した? アタシらに何か言える立場なの? 前対策委員だとか、定例会? それともコンテストか何かで結果出した? FMむかいじまで惨敗したみたいだけど」
「いやいや、定例会とかじゃなくても、対策委員を正しい道に誘導するくらいはいいじゃない」
「正しい正しくないはアンタが決めることじゃないからね。それが暴力だって言ってんの。生憎、暴力を言語にしてる奴と話すことなんかないよね」
もし誰か先輩から助言をいただけたとして、それが本当に今の俺たちに即したものであるなら定例会とか前対策委員とか、そんなことは関係なくありがとうございますとお礼を言って参考にさせてもらっていただろう。だけど、三井先輩のそれは今の俺たちには即さない。
最初から講習会の講師は3年生の先輩にお願いすることになっていて、どういうことを教えて欲しいかも話し合って決めてあった。だけど三井先輩はそんなことはお構いなしに勝手に話を進めて、俺たちが話を聞かないと言って勝手に怒っている風にしか見えないのだ。
いくら身内の先輩だからと言って全く擁護も弁護も出来ないし、したくない。と言うか、身内だからこそあなたは一体何を言っているのだと言いたい気持ちでいっぱいだ。ただ、如何せん先輩だけにそんなことは言えない俺がいて。つばめの言い方はともかく、言っていることには頷きたい。
「ちょっと何なのー、星ヶ丘は教育がなってないよねー。そもそも星ヶ丘の子にラジオの何が分かるの?」
「っざけんな、星ヶ丘だからってバカにされる理由は一個もねーぞ!」
「ロイとアニはちゃんと指導してんの? まあ、星ヶ丘のステージもあのレベルだもんね、出来っこないか。それにロイなんてあのレベルの部活でも力がなくて押し込められてるんでしょ?」
「テメー表出ろや!」
「ちょっ、つばめ! これ以上はダメだ!」
「止めんな野坂! アタシはアタシの意思で、自分の言葉で言ってんだ、いちいち関係ない名前出して煽ってんじゃねーぞクソが! 来るなら真正面からかかって来いや! これ以上ウチの人ディスったらタダじゃ置かねーぞ!」
つばめは完全に頭に血が上っているようだし、それに伝染されているのか女子がとにかくヤバい。男はみんな気圧されていてドン引きしている。こんな状態でまともに会議なんか出来ない、そう思うのは1週間ぶりだ。
「三井先輩、言い過ぎです。確かにつばめの態度は若干難がありますが、三井先輩は度を越しています。これ以上場を荒らされるようであれば、対策委員の議長として厳重に抗議します」
「抗議? 何で? 僕はインターフェイスと対策委員のために動いてるんだよ」
「何でって……単純に、会議の進行が阻害されているという事実だけでは理由になりませんか」
「野坂、怒ってる?」
「怒っていないように見えるのであれば、三井先輩の目は相当な節穴かと。今日のところはお引き取りください」
「わかったよ、今日は帰るけど、僕は僕で話進めとくねー。いいの? 決まったこと聞かなくて」
「お疲れ様でした」
淡々と、ただ形式ばった挨拶をすれば三井先輩は諦めたのか帰って行ったようだ。果たしてこれで良かったのだろうか。
「つばめ、落ち着いたか」
「ダメだ、ムリ」
「気持ちは察する」
「でも、アンタみたいに静かにキレる方が怖いわ」
「あ~……明日のサークルが怖いなぁ~…!」
end.
++++
この枠で何度でも言っていますが、直属の先輩をコケにされるのが特に地雷なのは果林・ノサカ・つばちゃんです。
朝霞班的には「戸田はまだ手を出していないだけ一応は抑えている」という部類には入りそうな感じ……星ヶ丘は修羅の国~
ノサカもとうとう激おこだよ! 怒っていないように見えるならあなたの目は節穴! 後で冷静になって明日どうしようって言ってるのもまたをかし
.