2020
■Is it as usual?
++++
「さて……MMPの新入生勧誘に関して何か連絡は!」
「ありません!」
「はい通常運転~!」
入学式から10日、公立向島大学では通常授業が始まり、放送サークルMMPもいつも通りに活動をしている。入学式のどさくさの中新歓のビラを配り切ったのはよかった。興味のある方は連絡くださいとかサークル室に来てくださいとかいう文言に対するレスポンスが一向に来ない!
というワケで、今日のMMPはこれまでと全く変わらない通常運転が始まるのか? まあ、新入生勧誘と言ってもまだまだ始まったばかりだし、こういうのは長い目を見ないといけない。まだたったの10日しか経っていないじゃないかと強がることしか出来ないのが悲しいが。
「何か連絡のある人ー」
「はいッ!」
「はい奈々」
「定例会からのお知らせですッ! あのですね、野坂先輩以外の人は班長さんから連絡が来たかと思いますけど、ファンフェスの班が決まりましたッ! 全体の班割りがこれなんで興味のある人は見といてください。大体そんな感じですッ」
「それじゃァ、今日はファンフェスのコトでもなんとな~く考える回にしヤす?」
「そうだな。何となくな」
奈々が取り出したファンフェスの班割りを眺め、それにやいやいと茶々を入れるだけの簡単なお仕事だ。俺は対策委員経験者だし、そもそも3年にもなれば班割りを見ればどういうペアが出来て、どういう番組になるかくらいは予測がつくようになる。野暮な裏事情なんかも少しは。
定例会以外で班長を務めることになった人間に対してはLから「こういう感じになったんでよろしく」的な連絡が先週のうちに来ていた。それに基づき班長から班員に挨拶を入れて、班の顔合わせの日程を決めていくという作業をするワケだ。
「ところで皆さんどういうタイプの班なんですかね」
「やァー、自分の班は2年アナが2人なんスけど、個人的にはミドリと組みたい気持ちでいっぱいスわァー」
「ああ……サドニナは癖がありますからねえ。慣れた人間でないと扱いには苦労するでしょうね」
「こーたはどーゆー班なん」
「それが不可思議なんですよねえ。私の班は果林が班長でユキちゃんとわかばという青女の2年生の子がいるんですが、私と果林は去年のファンフェスでも同じ班でしたし、果林とユキちゃんは夏合宿でも同じ班だったんですよ」
「他の事情を優先した結果だろ。わかばはラジオ経験そんなにないし、面倒見てくれる3年アナの班にぶちこむことを優先したんじゃね。果林かヒロかっつったら青女さん的には果林に預けたいだろ」
「野坂先輩すごいですッ! まさにその通りですッ!」
「何やの! まるでボクが2年生の面倒見れやんみたいな言い方やん!」
「や、自分でも果林とヒロだったら果林に預けたいスわ」
「りっちゃんまでそんな意地悪言うん。ボクの班あやめおるんやけど」
「それは班長のつばめに対する信頼じゃね」
「わかります。つばちゃんならヒロさんくらい軽くシメられそうですし」
MMPではアナウンス部長兼会計として役職を持っているヒロだけど、会計はこーたの方が実権を握っているし、アナウンス部長に関しては消去法での繰り上がり当選なのでその資質に関しては疑問符が残る。去年の夏合宿でも「7班のマジハンパないラジオ」とかいうロクでもないことをしでかした前科があるんだ。
わかばに関してはインターフェイスの大きな行事が実質的に初めてだし、性格がIF比で控えめで内向的だ。同じ青女のユキと一緒の班にすることで不安を和らげたかったのかなと考えることが出来る。班編成で大人の事情が隠せないことは多々ある。それに気付いても組んだ側を責めることは出来ない。
「野坂さんはどういう班なんです?」
「ちょっと、意外だなっていうのがさ。それこそ果林とかヒロみたくラジオやらない子を預かるのかなと思ってたから。この班割り見てる限り俺と組むのエージだし、まさかの緑ヶ丘かと思って」
「もしかして魅せる枠ですかね」
「何だそれ。俺が魅せる枠とか意味がわからない」
ファンタジックフェスタというイベントは、一般の人に向けた番組をやるということで、時たま頭一つ実力を抜けさせた班を用意することがあるそうだ。一昨年なら高崎先輩・菜月先輩・伊東先輩の班がそうだし、去年も高崎先輩や菜月先輩の能力を殺さないような班編成をしていたとは圭斗先輩談。
ただ、今の4年生のように俺たち3年生には何かの能力に突出した人間がいるワケでもない。普通に班を編成すれば、それはもう程よくバランスの取れた横並びな感じに揃うだろう。その中で、敢えて魅せようと考えるかなと思い込んでいたのだけど。
「そうですね、野坂先輩の班に関しては実際に特別な意図があったわけじゃなくて、気付いたらそんな感じになってたって感じですッ」
「ほら見たか! いいぞ定例会!」
「ま、実際高崎先輩や菜月先輩クラスのアナウンサーでも出ない限りそんな博打打ちヤせんわ」
「ただでさえ私たちはミキサーの方が多い学年ですもんね」
事故がないよう楽しくやりましょうよ、とこーたがこの話を適当に閉める。言ってしまえば、律とこーたは去年の時点でファンフェスでは大きな役割を定例会から担わされていて、今年は当時よりも気楽にやれるポジションなのだ。俺の班もぶっちゃけそこまでクセがない。ヒロに関してはつばめがシメるだろうし。
「あの、野坂先輩」
「ん?」
「ハマちゃん先輩ってどんな感じの人なんですか。同じ班なんですけどマジパねえの印象しかなくて」
「それで大体合ってる。あとは不用意に乗せないこと」
「うっすうっす」
end.
++++
MMPにはまだ新入生からの連絡が来ないようなので、通常運転でやっているようですね。わちゃわちゃよ
ファンフェスのことについてもいろいろ下世話に突っ込んでいるものだと考えられますが、今の2、3年生は確かにそこまでクセがない。
と言うかつばちゃんに対するみんなからの絶大な信頼よ。つばちゃん本人がしっかりしてるのもそうだけど、三井サンを相手にした経験なんかも買われてそうだわ
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「さて……MMPの新入生勧誘に関して何か連絡は!」
「ありません!」
「はい通常運転~!」
入学式から10日、公立向島大学では通常授業が始まり、放送サークルMMPもいつも通りに活動をしている。入学式のどさくさの中新歓のビラを配り切ったのはよかった。興味のある方は連絡くださいとかサークル室に来てくださいとかいう文言に対するレスポンスが一向に来ない!
というワケで、今日のMMPはこれまでと全く変わらない通常運転が始まるのか? まあ、新入生勧誘と言ってもまだまだ始まったばかりだし、こういうのは長い目を見ないといけない。まだたったの10日しか経っていないじゃないかと強がることしか出来ないのが悲しいが。
「何か連絡のある人ー」
「はいッ!」
「はい奈々」
「定例会からのお知らせですッ! あのですね、野坂先輩以外の人は班長さんから連絡が来たかと思いますけど、ファンフェスの班が決まりましたッ! 全体の班割りがこれなんで興味のある人は見といてください。大体そんな感じですッ」
「それじゃァ、今日はファンフェスのコトでもなんとな~く考える回にしヤす?」
「そうだな。何となくな」
奈々が取り出したファンフェスの班割りを眺め、それにやいやいと茶々を入れるだけの簡単なお仕事だ。俺は対策委員経験者だし、そもそも3年にもなれば班割りを見ればどういうペアが出来て、どういう番組になるかくらいは予測がつくようになる。野暮な裏事情なんかも少しは。
定例会以外で班長を務めることになった人間に対してはLから「こういう感じになったんでよろしく」的な連絡が先週のうちに来ていた。それに基づき班長から班員に挨拶を入れて、班の顔合わせの日程を決めていくという作業をするワケだ。
「ところで皆さんどういうタイプの班なんですかね」
「やァー、自分の班は2年アナが2人なんスけど、個人的にはミドリと組みたい気持ちでいっぱいスわァー」
「ああ……サドニナは癖がありますからねえ。慣れた人間でないと扱いには苦労するでしょうね」
「こーたはどーゆー班なん」
「それが不可思議なんですよねえ。私の班は果林が班長でユキちゃんとわかばという青女の2年生の子がいるんですが、私と果林は去年のファンフェスでも同じ班でしたし、果林とユキちゃんは夏合宿でも同じ班だったんですよ」
「他の事情を優先した結果だろ。わかばはラジオ経験そんなにないし、面倒見てくれる3年アナの班にぶちこむことを優先したんじゃね。果林かヒロかっつったら青女さん的には果林に預けたいだろ」
「野坂先輩すごいですッ! まさにその通りですッ!」
「何やの! まるでボクが2年生の面倒見れやんみたいな言い方やん!」
「や、自分でも果林とヒロだったら果林に預けたいスわ」
「りっちゃんまでそんな意地悪言うん。ボクの班あやめおるんやけど」
「それは班長のつばめに対する信頼じゃね」
「わかります。つばちゃんならヒロさんくらい軽くシメられそうですし」
MMPではアナウンス部長兼会計として役職を持っているヒロだけど、会計はこーたの方が実権を握っているし、アナウンス部長に関しては消去法での繰り上がり当選なのでその資質に関しては疑問符が残る。去年の夏合宿でも「7班のマジハンパないラジオ」とかいうロクでもないことをしでかした前科があるんだ。
わかばに関してはインターフェイスの大きな行事が実質的に初めてだし、性格がIF比で控えめで内向的だ。同じ青女のユキと一緒の班にすることで不安を和らげたかったのかなと考えることが出来る。班編成で大人の事情が隠せないことは多々ある。それに気付いても組んだ側を責めることは出来ない。
「野坂さんはどういう班なんです?」
「ちょっと、意外だなっていうのがさ。それこそ果林とかヒロみたくラジオやらない子を預かるのかなと思ってたから。この班割り見てる限り俺と組むのエージだし、まさかの緑ヶ丘かと思って」
「もしかして魅せる枠ですかね」
「何だそれ。俺が魅せる枠とか意味がわからない」
ファンタジックフェスタというイベントは、一般の人に向けた番組をやるということで、時たま頭一つ実力を抜けさせた班を用意することがあるそうだ。一昨年なら高崎先輩・菜月先輩・伊東先輩の班がそうだし、去年も高崎先輩や菜月先輩の能力を殺さないような班編成をしていたとは圭斗先輩談。
ただ、今の4年生のように俺たち3年生には何かの能力に突出した人間がいるワケでもない。普通に班を編成すれば、それはもう程よくバランスの取れた横並びな感じに揃うだろう。その中で、敢えて魅せようと考えるかなと思い込んでいたのだけど。
「そうですね、野坂先輩の班に関しては実際に特別な意図があったわけじゃなくて、気付いたらそんな感じになってたって感じですッ」
「ほら見たか! いいぞ定例会!」
「ま、実際高崎先輩や菜月先輩クラスのアナウンサーでも出ない限りそんな博打打ちヤせんわ」
「ただでさえ私たちはミキサーの方が多い学年ですもんね」
事故がないよう楽しくやりましょうよ、とこーたがこの話を適当に閉める。言ってしまえば、律とこーたは去年の時点でファンフェスでは大きな役割を定例会から担わされていて、今年は当時よりも気楽にやれるポジションなのだ。俺の班もぶっちゃけそこまでクセがない。ヒロに関してはつばめがシメるだろうし。
「あの、野坂先輩」
「ん?」
「ハマちゃん先輩ってどんな感じの人なんですか。同じ班なんですけどマジパねえの印象しかなくて」
「それで大体合ってる。あとは不用意に乗せないこと」
「うっすうっす」
end.
++++
MMPにはまだ新入生からの連絡が来ないようなので、通常運転でやっているようですね。わちゃわちゃよ
ファンフェスのことについてもいろいろ下世話に突っ込んでいるものだと考えられますが、今の2、3年生は確かにそこまでクセがない。
と言うかつばちゃんに対するみんなからの絶大な信頼よ。つばちゃん本人がしっかりしてるのもそうだけど、三井サンを相手にした経験なんかも買われてそうだわ
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