2020
■みんなのファンフェスパズル
++++
「それでは、定例会を始めます」
これから始まるのは、向島インターフェイス放送委員会の定例会。向島エリアにある7大学の放送系団体からなる組織がインターフェイスで、その代表者が最低月1回集まって行っている会議が定例会だ。5月にかけて定例会はちょっと忙しいから会議も増えて来るんだけど。
IFを構成するのは緑ヶ丘大学、向島大学、星港大学、青葉女学園大学、星ヶ丘大学、青浪敬愛大学、桜貝大学の7大学だけど、桜貝さんはもう誰も会議に来てないし、これからどうするかというのもさっぱり。だから実質6校でなる組織だ。ラジオやステージ、映像など得意分野はそれぞれ違う。
ちなみに、定例会議長が俺、浅田類。委員長が青女の宮崎直。副委員長が星大のテルこと羽咋信輝。それから、今年から定例会に参加してくれた青敬のハマちゃんこと浜田真司に会計をお願いした。定例会の任期は2年だ。
「前々から言ってたけど、今日はファンフェスの班を決めてくから。ちょっと、机を真ん中に寄せてくれるかな。直、例のヤツ出して」
「はい」
5月には向島エリアのど真ん中、花栄という街で行われるファンタジックフェスタというイベントにDJブースを出展することになっている。大きな公園の中に露店のテントがたくさん立ち並んで、南北のステージではステージイベントが行われるんだ。俺たちはここで7時間にわたってラジオ番組をやることになっている。
ファンフェスではアナウンサー2人ミキサー2人の4人班を組んで1時間番組を作り上げる。アナウンサーは各15分ずつ1人で喋るピントークの番組を、そしてあとの30分間は2人で喋るダブルトークを組み込むという番組構成だ。
班は様々な事情を織り込みながら、極力班ごとの力の差がないようにとか、人間関係で問題がないようにとかいろいろなことを見ながら決めていく。いろんな大学の人が参加するワケだから、その辺やっぱり繊細に気を配って行かなくちゃいけない。
「これが班長だね。黄色が3年生のアナウンサーで、紫が3年生のミキサー。緑が2年生のアナ、ピンクがミキ」
「ありがとう。今回は定例会の3年生4人の他に、果林と野坂、それからつばめに班長をお願いしました。さあ、それを踏まえて組んで行こう」
机にぺたぺたと名前の書いた付箋を貼って行く。これを直接貼りながらみんなで考えることでよりいい班編成が出来るんじゃないかと思って採用した案だ。これを囲みながら、みんなそわそわしているのがよくわかる。でも、こうでもしないと2年生は消極的になるもんな。
「青女を代表してボクからひとつお願いがあるんだ」
「何だ?」
「なっちゃん……わかばのことだね。インターフェイスの大きな行事に出るのが初めてだから、出来ればラジオ経験豊富な人の班に入れてあげたいかなとは」
「あー、なるほどな」
「L先輩、わかばは野坂先輩を神格化してるです。野坂先輩の班に入れるですか?」
「いや、ファンを入れるのはやめとこう。夏もそれで問題になってたし。そうだな、わかばは2年ミキだし、3年アナでそれらしい相手っつったら……果林かヒロか」
「果林で!」
「直クンの返事の速さマジパねえ」
「あ、つい」
「それこそ“7班のマジハンパないラジオ”のトラウマなんじゃないか? わかばは果林の班に入れるとして、他に何かあるかな」
「他のみんなは夏合宿にも出てるし大体大丈夫じゃないかな。素直に力量とか相性とかで決めて行こう」
果林の班に「わかば」と書かれたピンクの付箋が貼られたところで、改めて話し合いを詰めていく。傾向としては、星ヶ丘や青敬といった普段ラジオをやらない大学さんは緑ヶ丘や向島といったラジオメインの大学から人を出すとか、誰と誰がダメと言ったNGの組み合わせを考慮しつつとかいろいろ。これは必ずしも仲が悪いばかりがNG要素ではない。
「なーなーL、3年の人数数えてみたけどこれ、3年のアナウンサーがいない班とかフツーに出来るのな」
「ああ、3年はミキサーの方が多い学年だから去年もそんな感じだった。その辺は柔軟に対応していくしかないな」
「ふーん、マジパねえ。あー、そしたら2年生はアナアナで組むこともあるってことか」
「そうなる。一応班編成をやるにあたっての組み合わせNGは、人間関係的なガチアウト案件と、付き合ってる相手同士な。俺と直はどっちも班長だから物理的に無理だけど、ミドリとユキな。2年アナアナの班が出来るらしいけど、まあそれはなしということで」
「わかってまーす」
真面目に編成を始めた結果、つばめやハマちゃんといったラジオやらない系の班長の班には定例会からハナと奈々をそれぞれサポート役として送り込むことにした。ただ、ハマちゃんはともかくつばめはラジオ局での実戦でバイトしてるから腕は一流だ。ハナはそれはもう高崎先輩を思い出すレベルでゴリゴリに扱かれるだろう。
夏合宿で一緒になった人は極力避けるとか、ラジオ系とかそれ以外とかうんぬんかんぬんということを考えていく。バッチリハマったと思っても、ダブルトークが同じ大学のアナウンサー同士になるとかでやり直しってなることもザラ。インターフェイスの行事だし、出来れば他校の人と組ませたい。
「はー……何とか出来たな。果林野坂つばめには俺から連絡しとくし、3年生は班員に連絡よろしく。2年生も、来年は自分たちだったらどうするかっていうのを考えながらファンフェスまでの時間を過ごしてください。以上です」
「おつかれさまでしたー!」
「はーい、気を付けて帰れなー」
ひとまず、大人の事情という言葉でゴリ押ししなければならない班も出来てしまったけど、班編成は無事に終了。ここからファンフェスまでの期間で顔合わせをして番組を詰めて、当日にはしっかりやれるように。定例会は円滑に進むよう裏できっちり働かなくてはならない。
「あー……疲れた」
「類、お疲れさま。ご飯行く?」
「行く」
end.
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定例会のファンフェスパズル会ですが、今年は2年生も積極的に参加しやすい空気にしていった新議長です。
そして7班のマジハンパないラジオという言葉がまさかこんなところで出て来るとは思わなかった。直クンの軽いトラウマである。
今後5月頃までファンフェスに関係する話も少しずつ増えて来ると思います。さて、どうなることやら。
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「それでは、定例会を始めます」
これから始まるのは、向島インターフェイス放送委員会の定例会。向島エリアにある7大学の放送系団体からなる組織がインターフェイスで、その代表者が最低月1回集まって行っている会議が定例会だ。5月にかけて定例会はちょっと忙しいから会議も増えて来るんだけど。
IFを構成するのは緑ヶ丘大学、向島大学、星港大学、青葉女学園大学、星ヶ丘大学、青浪敬愛大学、桜貝大学の7大学だけど、桜貝さんはもう誰も会議に来てないし、これからどうするかというのもさっぱり。だから実質6校でなる組織だ。ラジオやステージ、映像など得意分野はそれぞれ違う。
ちなみに、定例会議長が俺、浅田類。委員長が青女の宮崎直。副委員長が星大のテルこと羽咋信輝。それから、今年から定例会に参加してくれた青敬のハマちゃんこと浜田真司に会計をお願いした。定例会の任期は2年だ。
「前々から言ってたけど、今日はファンフェスの班を決めてくから。ちょっと、机を真ん中に寄せてくれるかな。直、例のヤツ出して」
「はい」
5月には向島エリアのど真ん中、花栄という街で行われるファンタジックフェスタというイベントにDJブースを出展することになっている。大きな公園の中に露店のテントがたくさん立ち並んで、南北のステージではステージイベントが行われるんだ。俺たちはここで7時間にわたってラジオ番組をやることになっている。
ファンフェスではアナウンサー2人ミキサー2人の4人班を組んで1時間番組を作り上げる。アナウンサーは各15分ずつ1人で喋るピントークの番組を、そしてあとの30分間は2人で喋るダブルトークを組み込むという番組構成だ。
班は様々な事情を織り込みながら、極力班ごとの力の差がないようにとか、人間関係で問題がないようにとかいろいろなことを見ながら決めていく。いろんな大学の人が参加するワケだから、その辺やっぱり繊細に気を配って行かなくちゃいけない。
「これが班長だね。黄色が3年生のアナウンサーで、紫が3年生のミキサー。緑が2年生のアナ、ピンクがミキ」
「ありがとう。今回は定例会の3年生4人の他に、果林と野坂、それからつばめに班長をお願いしました。さあ、それを踏まえて組んで行こう」
机にぺたぺたと名前の書いた付箋を貼って行く。これを直接貼りながらみんなで考えることでよりいい班編成が出来るんじゃないかと思って採用した案だ。これを囲みながら、みんなそわそわしているのがよくわかる。でも、こうでもしないと2年生は消極的になるもんな。
「青女を代表してボクからひとつお願いがあるんだ」
「何だ?」
「なっちゃん……わかばのことだね。インターフェイスの大きな行事に出るのが初めてだから、出来ればラジオ経験豊富な人の班に入れてあげたいかなとは」
「あー、なるほどな」
「L先輩、わかばは野坂先輩を神格化してるです。野坂先輩の班に入れるですか?」
「いや、ファンを入れるのはやめとこう。夏もそれで問題になってたし。そうだな、わかばは2年ミキだし、3年アナでそれらしい相手っつったら……果林かヒロか」
「果林で!」
「直クンの返事の速さマジパねえ」
「あ、つい」
「それこそ“7班のマジハンパないラジオ”のトラウマなんじゃないか? わかばは果林の班に入れるとして、他に何かあるかな」
「他のみんなは夏合宿にも出てるし大体大丈夫じゃないかな。素直に力量とか相性とかで決めて行こう」
果林の班に「わかば」と書かれたピンクの付箋が貼られたところで、改めて話し合いを詰めていく。傾向としては、星ヶ丘や青敬といった普段ラジオをやらない大学さんは緑ヶ丘や向島といったラジオメインの大学から人を出すとか、誰と誰がダメと言ったNGの組み合わせを考慮しつつとかいろいろ。これは必ずしも仲が悪いばかりがNG要素ではない。
「なーなーL、3年の人数数えてみたけどこれ、3年のアナウンサーがいない班とかフツーに出来るのな」
「ああ、3年はミキサーの方が多い学年だから去年もそんな感じだった。その辺は柔軟に対応していくしかないな」
「ふーん、マジパねえ。あー、そしたら2年生はアナアナで組むこともあるってことか」
「そうなる。一応班編成をやるにあたっての組み合わせNGは、人間関係的なガチアウト案件と、付き合ってる相手同士な。俺と直はどっちも班長だから物理的に無理だけど、ミドリとユキな。2年アナアナの班が出来るらしいけど、まあそれはなしということで」
「わかってまーす」
真面目に編成を始めた結果、つばめやハマちゃんといったラジオやらない系の班長の班には定例会からハナと奈々をそれぞれサポート役として送り込むことにした。ただ、ハマちゃんはともかくつばめはラジオ局での実戦でバイトしてるから腕は一流だ。ハナはそれはもう高崎先輩を思い出すレベルでゴリゴリに扱かれるだろう。
夏合宿で一緒になった人は極力避けるとか、ラジオ系とかそれ以外とかうんぬんかんぬんということを考えていく。バッチリハマったと思っても、ダブルトークが同じ大学のアナウンサー同士になるとかでやり直しってなることもザラ。インターフェイスの行事だし、出来れば他校の人と組ませたい。
「はー……何とか出来たな。果林野坂つばめには俺から連絡しとくし、3年生は班員に連絡よろしく。2年生も、来年は自分たちだったらどうするかっていうのを考えながらファンフェスまでの時間を過ごしてください。以上です」
「おつかれさまでしたー!」
「はーい、気を付けて帰れなー」
ひとまず、大人の事情という言葉でゴリ押ししなければならない班も出来てしまったけど、班編成は無事に終了。ここからファンフェスまでの期間で顔合わせをして番組を詰めて、当日にはしっかりやれるように。定例会は円滑に進むよう裏できっちり働かなくてはならない。
「あー……疲れた」
「類、お疲れさま。ご飯行く?」
「行く」
end.
++++
定例会のファンフェスパズル会ですが、今年は2年生も積極的に参加しやすい空気にしていった新議長です。
そして7班のマジハンパないラジオという言葉がまさかこんなところで出て来るとは思わなかった。直クンの軽いトラウマである。
今後5月頃までファンフェスに関係する話も少しずつ増えて来ると思います。さて、どうなることやら。
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