2020
■はじめの一歩はより強く
++++
緑ヶ丘大学に入学して、やっと本格的な授業が始まる。月曜の1限は体育で、種目はバドミントン。学部ガイダンスでは体育館の場所までは案内してくれなかったから、どこに行けばいいのか探すのに一苦労。つか何個体育館あんだよこの大学。
やっとたどり着いた第2中体育館には、一緒に授業を受けるんだろうなって人らがわらわらしてた。俺も靴を履き替えて、さっそくその中に混ざっていく。だけど知らない人ばっかりだし、どう攻めようか。友達を作るチャンスでもあるはずなんだけど。
「はーい、集合」
この授業を担当する先生が来て、笛を鳴らす。先生を囲むように集まった俺たちは、この授業がどのように進むかの説明を聞く。成績は出席が100%だということ、授業はランニングとストレッチから始めて軽いラリーをして、という具合に。
体育にしては緩いなって感じ。やっぱ大学だからかな。なんなら体動かすのに向かない私服の奴も普通にいる。俺はジャージ羽織ってるけど。そうやって周りをきょろきょろ見ていると、見たことあるような奴がいた。白いパーカーの奴。
「では、体育館5周、スタート」
――とみんなが散らばった隙に、白パーカーの脇にスッと入り込む。誰かと一緒に来てる感じでもなかったし、攻めるにはちょうどいい。どっかで見たんだけど、どこで見たんだったかな。……なんて考えてるうちに5周終わっちまった。思ったより短い。
「はい、2人一組でストレッチー」
何とかアイツに近いポジションをキープしながら走って来たから、軽く振り返って声をかけるだけでいい。ここだ!
「あの! 俺と一緒にストレッチやりませんか!」
「あ、はい」
「よっしゃ! 自己紹介した方がいい? この場限りの付き合いだしそんなん要らねーよっていうなら黙るけど」
「ぷっ」
「えっ、何か俺おかしいこと言った!?」
「いや、面白いなと思って。名前教えて。これからも会うだろうから。俺は佐々木陸。そっちは?」
「篠木 智也」
よろしくと挨拶をして、ストレッチをしながらの会話が始まる。わかっていることはまだ名前だけ。簡単なデータは聞いておきたい。どこに住んでるとか、何の授業取ってるとか。
「てか何でこれからも会うってわかんの?」
「体育とか英語とかは班ごとに履修出来るコマが決まってるんだよ。同じコマで取ってるなら、班が同じか近いってこと。名前聞いたら同じ班って考えるのが自然かな。確か学部ガイダンスでも一緒だったはず。佐藤ゼミのラジオ体験やってたよな」
「えっ、つか知識量と記憶力ヤバない?」
「って言うか、一緒にブースに入ってたはずなんだけど。俺がマイクの前で喋ってて、そっちが機材触ってて」
「ホントに?」
「ホントに。あの時の子一緒なんだと思って勝手に親近感抱いてたんだけど」
「そう聞いて安心した! どこで見たかは覚えてなかったけど、見たことある奴だってのは覚えてて、ぼっちになりたくなかったし声かけなきゃって思ってたからさ」
佐藤ゼミの体験をやってたくらいだし、興味があることは近いんだろうなと思う。それに、体育もバドミントンだし班も同じ。そうなったら大学生活最初の友達としてはこれ以上ないんじゃないかと思う。
班のこととか履修コマのことに関しては俺が知らなすぎるのか、コイツがきちんとし過ぎてるのか。うーん、大事なことほどすみっこに小さく書いてあるって言うし、きちんと落ち着いて行動しないとな。
「リク、2限何?」
「英語。って言うか班一緒だしそっちも英語なんじゃ?」
「あ、そーゆーことか! 教室まで行くの迷いそうだし一緒に行かね?」
「あー、確かに。それじゃあよろしく」
「基礎英語リーディングだろ、どこの教室だったかなー」
「あ、悪い。俺応用英語コミュニケーションだから違う教室だ」
「マジか! やっぱ頭いーんじゃんか! てか基礎とか応用とか選べなくなかった?」
「入学案内の封筒に入ってきてた。英語得意そうな奴は応用を履修してくれって感じで入ってたはず」
でも、教室自体は同じ建物にあるはずだからそこまでは一緒に行こうなとフォローしてくれるのがもう、な。いいんだ、実際英語そんな得意じゃなかったし。これからの時代を生きるには英語出来てなきゃダメなんだろうけどさ。
「サークルとか入る予定は?」
「ガイダンスの時ビラもらったラジオのサークルを見学してみようかなって」
「あ、俺も行こうと思ってたんだよ」
「じゃあ、4限終わったら一緒に行こうか。今日やってるみたいだし」
「オッケー。後でLINE教えてー」
「わかった」
「つかゼミのラジオでちょっと体験させてもらったけど、ぶっちゃけ物足りなくなかった?」
触らせてもらっといて文句言える立場でもないと思うけど、つまみの上げ下げくらいじゃやっぱり面白くないワケで。せっかくガラス張りのブースなんだから、もうちょっといろんなことをぶちかましたかったって気持ちはある。
「体験っていうレベルだからだとは思うけど、まあ、正直に言えば」
「サークルだったらもっとガツガツ機材触れるかな」
「やっぱ、機材の方に興味ある感じ?」
「だってカッケーじゃん! ラジオ番組の収録風景とかの動画見ててさ、デッカい機材の前に座って場を支配してるディレクターみたいな人? マジカッケーって思って。そういや、リクってトークの方の体験してたよな? 何で?」
「単純に、言葉だけでどれだけ伝えることが出来るかっていう奥深さだと思うんだ。あと、勉強してる時に作業用の雑談動画のお世話になってた影響も大きいかな」
「なるほどー。そのサークル、何てったっけ?」
「MBCC。サークル棟の205号室でやってるって」
勉強もだけど、サークルの話にもなってくるといよいよ大学生って感じがする。だけど、思い切って声をかけてよかった。このままリクと同じサークルに入ったとしたら、4年生まで深く付き合う友達になるだろうし。最初の1週間は、勇気が一番必要だ。
「よし、ラリーやろう。ラケットと羽取ってくる」
「サンキュー」
end.
++++
+2年の概念があった年度にタカちゃんの後輩の2年生として初登場していたササシノが1年生として登場です。
ササシノはシノがササを引きずり回してるのかと思いきや、ササも結構な行動派のようですね。今のところ、落ち着いた感じのキャラではあるようだけど。
さて、MBCCには少しずつ動きが見えてきましたが、他の大学さんはどんな感じになっているでしょうか
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緑ヶ丘大学に入学して、やっと本格的な授業が始まる。月曜の1限は体育で、種目はバドミントン。学部ガイダンスでは体育館の場所までは案内してくれなかったから、どこに行けばいいのか探すのに一苦労。つか何個体育館あんだよこの大学。
やっとたどり着いた第2中体育館には、一緒に授業を受けるんだろうなって人らがわらわらしてた。俺も靴を履き替えて、さっそくその中に混ざっていく。だけど知らない人ばっかりだし、どう攻めようか。友達を作るチャンスでもあるはずなんだけど。
「はーい、集合」
この授業を担当する先生が来て、笛を鳴らす。先生を囲むように集まった俺たちは、この授業がどのように進むかの説明を聞く。成績は出席が100%だということ、授業はランニングとストレッチから始めて軽いラリーをして、という具合に。
体育にしては緩いなって感じ。やっぱ大学だからかな。なんなら体動かすのに向かない私服の奴も普通にいる。俺はジャージ羽織ってるけど。そうやって周りをきょろきょろ見ていると、見たことあるような奴がいた。白いパーカーの奴。
「では、体育館5周、スタート」
――とみんなが散らばった隙に、白パーカーの脇にスッと入り込む。誰かと一緒に来てる感じでもなかったし、攻めるにはちょうどいい。どっかで見たんだけど、どこで見たんだったかな。……なんて考えてるうちに5周終わっちまった。思ったより短い。
「はい、2人一組でストレッチー」
何とかアイツに近いポジションをキープしながら走って来たから、軽く振り返って声をかけるだけでいい。ここだ!
「あの! 俺と一緒にストレッチやりませんか!」
「あ、はい」
「よっしゃ! 自己紹介した方がいい? この場限りの付き合いだしそんなん要らねーよっていうなら黙るけど」
「ぷっ」
「えっ、何か俺おかしいこと言った!?」
「いや、面白いなと思って。名前教えて。これからも会うだろうから。俺は佐々木陸。そっちは?」
「
よろしくと挨拶をして、ストレッチをしながらの会話が始まる。わかっていることはまだ名前だけ。簡単なデータは聞いておきたい。どこに住んでるとか、何の授業取ってるとか。
「てか何でこれからも会うってわかんの?」
「体育とか英語とかは班ごとに履修出来るコマが決まってるんだよ。同じコマで取ってるなら、班が同じか近いってこと。名前聞いたら同じ班って考えるのが自然かな。確か学部ガイダンスでも一緒だったはず。佐藤ゼミのラジオ体験やってたよな」
「えっ、つか知識量と記憶力ヤバない?」
「って言うか、一緒にブースに入ってたはずなんだけど。俺がマイクの前で喋ってて、そっちが機材触ってて」
「ホントに?」
「ホントに。あの時の子一緒なんだと思って勝手に親近感抱いてたんだけど」
「そう聞いて安心した! どこで見たかは覚えてなかったけど、見たことある奴だってのは覚えてて、ぼっちになりたくなかったし声かけなきゃって思ってたからさ」
佐藤ゼミの体験をやってたくらいだし、興味があることは近いんだろうなと思う。それに、体育もバドミントンだし班も同じ。そうなったら大学生活最初の友達としてはこれ以上ないんじゃないかと思う。
班のこととか履修コマのことに関しては俺が知らなすぎるのか、コイツがきちんとし過ぎてるのか。うーん、大事なことほどすみっこに小さく書いてあるって言うし、きちんと落ち着いて行動しないとな。
「リク、2限何?」
「英語。って言うか班一緒だしそっちも英語なんじゃ?」
「あ、そーゆーことか! 教室まで行くの迷いそうだし一緒に行かね?」
「あー、確かに。それじゃあよろしく」
「基礎英語リーディングだろ、どこの教室だったかなー」
「あ、悪い。俺応用英語コミュニケーションだから違う教室だ」
「マジか! やっぱ頭いーんじゃんか! てか基礎とか応用とか選べなくなかった?」
「入学案内の封筒に入ってきてた。英語得意そうな奴は応用を履修してくれって感じで入ってたはず」
でも、教室自体は同じ建物にあるはずだからそこまでは一緒に行こうなとフォローしてくれるのがもう、な。いいんだ、実際英語そんな得意じゃなかったし。これからの時代を生きるには英語出来てなきゃダメなんだろうけどさ。
「サークルとか入る予定は?」
「ガイダンスの時ビラもらったラジオのサークルを見学してみようかなって」
「あ、俺も行こうと思ってたんだよ」
「じゃあ、4限終わったら一緒に行こうか。今日やってるみたいだし」
「オッケー。後でLINE教えてー」
「わかった」
「つかゼミのラジオでちょっと体験させてもらったけど、ぶっちゃけ物足りなくなかった?」
触らせてもらっといて文句言える立場でもないと思うけど、つまみの上げ下げくらいじゃやっぱり面白くないワケで。せっかくガラス張りのブースなんだから、もうちょっといろんなことをぶちかましたかったって気持ちはある。
「体験っていうレベルだからだとは思うけど、まあ、正直に言えば」
「サークルだったらもっとガツガツ機材触れるかな」
「やっぱ、機材の方に興味ある感じ?」
「だってカッケーじゃん! ラジオ番組の収録風景とかの動画見ててさ、デッカい機材の前に座って場を支配してるディレクターみたいな人? マジカッケーって思って。そういや、リクってトークの方の体験してたよな? 何で?」
「単純に、言葉だけでどれだけ伝えることが出来るかっていう奥深さだと思うんだ。あと、勉強してる時に作業用の雑談動画のお世話になってた影響も大きいかな」
「なるほどー。そのサークル、何てったっけ?」
「MBCC。サークル棟の205号室でやってるって」
勉強もだけど、サークルの話にもなってくるといよいよ大学生って感じがする。だけど、思い切って声をかけてよかった。このままリクと同じサークルに入ったとしたら、4年生まで深く付き合う友達になるだろうし。最初の1週間は、勇気が一番必要だ。
「よし、ラリーやろう。ラケットと羽取ってくる」
「サンキュー」
end.
++++
+2年の概念があった年度にタカちゃんの後輩の2年生として初登場していたササシノが1年生として登場です。
ササシノはシノがササを引きずり回してるのかと思いきや、ササも結構な行動派のようですね。今のところ、落ち着いた感じのキャラではあるようだけど。
さて、MBCCには少しずつ動きが見えてきましたが、他の大学さんはどんな感じになっているでしょうか
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