2019(04)

■出張組を見守り隊

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「あー、始まったよー、レイ君がんばえー」
「しかし、アイツはUSDXでの生配信経験も乏しいからな。……何もやらかさなければいいが」

 うちのテレビには、パソコンから引き込んだ動画サイトの画面。今日は何と、人気ゲーム実況者・でじかもさんの企画にUSDXからチータがご指名でお呼ばれしたということで、レイ君も一緒に出演するのです! 控えめに言って熱いよね。という話をバネ様ことリンちゃんにしたら、一緒に見ることになりましたよね!
 今日の企画はマインクラフトの音ブロックを使った音楽堂の建築。音ブロックを回路で繋ぐと音楽を奏でることが出来るんだけど、音ブロックで再現する曲をチータに書いて欲しいというでじかもさんからの依頼だっていうからビックリですよ。ちなみにレイ君はチータのバーター出演だそうです。

「でも、チータも凄いねえ。大出世じゃない?」
「元々アイツは作曲能力があるからな。個人でもコミフェで音楽作品を頒布しているそうだが、なかなか完成度が高かった」
「この部屋の2軒隣にチータ推しの友達がいるんだけど、この企画の話が発表されてから今日に至るまでもーうそれは凄い凄い」
「また厭に近くにいるのだな」
「多分今日とかもパソコンの前でガン待機してたはずだから。でも、レイ君が生配信、それも人様の企画に出るなんて珍しいねえ」
「キョージュからチータにその話が行った時点でプロソルの都合が付かず、残りメンバーの中からもう1人を選んでくれということだったそうなのだが、コンも都合が悪く、たまたま目の前にいたアイツに白羽の矢が立った、と。その場にはオレを除く3人がいたそうなのだが、全員がまずPSを心配したらしい」
「……まあ、レイ君はマイクラ初心者だしねえ」
「だが、PvP企画などではなく建築が主だから何とかなるのではないかという結論に至ったそうだ」

 動画上では、今回の企画主のでじかもさんが企画概要と参加者を説明しているところ。音楽堂を作ってマイクラ上できゃいきゃいと騒ぐことでせめて気持ちの上での閉塞感を打破したいというのがこの企画を立ち上げた目的みたい。このご時世、実況者さんや動画配信者さんたちには楽しませてもらってます、本当に。
 でも、画面を見ると今回の企画に参加してる人たちが錚々たるメンバーだっていうのがわかるよね。でじかもさんがまずチャンネル登録者数が70万人くらいいる人なんだけど、その人の人脈で企画が立ち上がってるからそれに連なる人も50万60万、100万超えの人とかもザラにいて。その中に15万弱のUSDXだからね。いや、15万弱でも凄いけどさ。

『今日のメインとなる音楽! それを作ってくれたのが、USDXのチータ君です!』
『USDXの作曲担当、チータです! よろしくお願いしまーす!』
『作曲担当もウソじゃないかもだけど、メインはガヤでしょ?』
『ちょっ、でじかもさん勘弁してくださいよ!』
『わはは。ガヤ担当だって』
『うるせー笑うなレイテメーこのやろちきしょ! じゃあお前は何担当だ!』
『こちら、チータ君と一緒にUSDXから来てくれたのが、レイ君でーす! TRPGのシナリオを書いてるんだよね』
『USDXの物書き担当、新人のレイです。大きな企画で皆さんに迷惑掛けないように頑張ります』
『あー、レイ君緊張しないで。今日は僕がバネ君の代わりにいろいろ教えるからね』
『言っときますけど、コイツホントにやらかすんで大事な資材は絶対に持たせない方がいいっすよ。ドジっ子キャラでも付ける気かよってレベルなんで』
『うるさいな。ゲーム初心者なりに真剣にやってんだよこっちは』

 オレのことも認識されているのだなとバネ様が感心しつつ、レイ君がんばえー、と応援団のうちらが紹介の件を見ながら大きく息を吐いたその時。突然インターホンが短く強く、何度も連打されたかと思えばこちらがはーいと返事もしていないのに玄関のドアが勢い良く開いた。

「みやっちぃいいいい!」
「あれっ、みなも。配信見てなくていいの?」
「みやっちも見てると信じて来た! ……って、お客さん!?」
「あ、大丈夫大丈夫。こっちもでじかもさんの配信見てるトコだから。リンちゃん、これがさっき言ってた2軒隣のチータ推しの友達。多分今飛んできたのもチータが可愛いとか何とかってリアルタイムで叫びたいがためだね」
「ほう」
「何でバレたし」
「それからみなも、こちらがうちの高校の友達でUSDXではバネ様を担当してるリンちゃん。あ、リンちゃん、ちなみにだけどバネレイがリア友だった話はみなもにはしてあるしこの人も秘密は共有出来る人だから」
「パブビューの相手がまさかのバネ様! さすがみやっちレベルが違う!」
「うちら実質レイ君の応援団だからね。ただただがんばえーって子供のおつかいを見守ってる感じ」
「レイ君の生は貴重だもんねえ」

 みなももやって来て3人での鑑賞になったところで、いよいよ本格的に企画が始まる。再現する音楽はチータがすでに作ってきてくれているので、肝となるのは音ブロックを繋ぐ回路と音楽堂の建築。その素材集めが序盤の大きな仕事。ツールを作って木をこって~っていう、本当に基本のき。
 ただ、普通に昼夜があるし敵も出るっていう設定でやってる世界だから、夜になって敵が出てくるとただの木こりでもレイ君がちょっと怪しくなるだろうなあというのが応援団の見方。一方、動画の方ではでじかもさんがこの配信で流してるBGMもチータが作った曲なんだよーという紹介をしている。

「チータが何故か大御所に気に入られてる!」
「……っていう見方も出来るねえ」
「これはUSDXに帰ってきたら調子に乗ってバネ様に消されるヤツ!」
「まあ、十中八九イキり散らかすだろうから、有無を言わさず殺るだろうな」
「バネ様マジバネ様」
「バネ様やっちゃってクダサーイ!」
「あー、レイ君そんな暗いトコ行ったらスケさんいるよ~たいまつ持った~?」
「宮ちゃんが完全に保護者だな。あ」
「あ」
「レイ君の死亡ログ出ましたねさっそく」
「まだロクに木もこってないのに!」
「まあ、現段階では重要な資材を持っていなさそうなことが救いだな。しかし、高い所から落ちたとは」

 全参加者中一番早く死んじゃったので、コメントの流れ方もまあ早い。だけど中にはUSDXを知っている人なのか「親の顔より見た光景」とか「レイ暗いトコ歩くな」というようなコメントもちらほら。で、さっそくチータがレイ君を煽ってるもんね。それを見たみなもは大歓喜なんですが。

『ねー、あっちに溶岩溜まりあったからバケツ作ればネザー行けるよー』
『誰か鉄見つけたー!?』
『あっ、さっき僕が死んだところに洞窟あったんで、そこならきっとあると思うんですけど』
『ナイスレイ君! はーい洞窟探検隊集合ー! 視点主の俺と場所を知ってるレイ君も来てね。あと2人ほどー』
『レイ洞窟行くならこれ付けてけ。お前絶対死ぬから。致死率下げるの大事』
『おお。チータサンキュ』

 あ、みなもが死んでる。これはもうしばらくチータの絵が量産されるヤツですわ。洞窟探検隊に任命されたレイ君は、チータから譲ってもらった皮防具一式を装備して準備万端。革装備の防御力なんか高が知れてるけど、ないよりはいくらかマシだからね。でも、応援団はちょっと期待してますよね。レイ君がやらかしてくれることを。

「ところで宮ちゃん、今回は投げ銭の予定は」
「一応上限5000円ですが準備してますよ」
「さすがだな」
「レイ君が活躍したら投げます」
「それは投げない宣言と等しいような気もするが」
「大丈夫大丈夫。オイシイ死に方すればそれは活躍だから!」


end.


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慧梨夏とリン様が企画配信に出演中の朝霞Pを応援していたようなのですが、そこにみなもちゃんが乱入してきました。まあ、慧梨夏の部屋だったらあり得るわね。
錚々たるメンバーの中に放り込まれたらしいガヤ担当の2人ですが、果たして爪痕を残すことは出来たのか! 正直プロ氏はリアタイで配信見てそう。
しかし慧梨夏の応援の仕方よ。そんな暗いとこ行くと死んじゃうよ~ってな感じだもんなあ。やっぱ死ぬことが前提の下手くそさなのねまだまだ

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