2019(04)
■sparkling inner energy
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「――っつーワケで、昨今の事情を鑑みた結果、3年生追いコンの外での開催は自粛っつー形になりヤしたが、その分の金をぶち込んで盛大な陰キャ式追いコンを開催するっつー形になりヤしたんでェ、よろしくお願いしヤーす」
「わー」
「いいぞー」
律の適当でぐだぐだな挨拶から始まったMMPの3年生追いコン、その会場は追い出される側の圭斗先輩宅だ。やれイベントの自粛だなんだというニュースが世間を賑わせているけど、少人数イベントに関してはその限りではない。けれども、卒業式すら中止になった向島大学に措いて外を遊び歩く行事は如何なものかと。
――などという話し合いは全く行われず、このご時世だし小規模イベントをやるとすれば思い切り引きこもればどーです、と具合で律と圭斗先輩の間であれよあれよと話が進んでいたそうだ。あれ、おかしいな。このメンバーでのこんな行事はこれが最後だって年末のカレパだったか鍋パの時に言ってなかったかな。
元々の予定ではボウリング大会や会食などをする予定で進められていたらしいのだけど、そこに使う参加費を家の中で出来る遊びと食事の材料費に全投入。何なら各自がゲーム機やコントローラーなどを持ち寄っているので圭斗先輩のお部屋がちょっとしたeスポーツセンターのようになっている。
「菜月さん、ニンテンドースイッチなんてどうしたんだい」
「バイト代で買ったんだ。実家には兄貴の本体があるからこっちにはうちのを置こうと思ってて」
「ちなみに、何のソフトがあるのかな」
「とりあえずどうぶつの森をやろうかなと。それから、オンラインのテトリス99」
「菜月先輩のお宅にはオンライン環境がなかったかと思いますが」
「ああ、お父さんに言ったらWi-Fi設置していいよって言われて」
「おめでとうございます!」
「ん、菜月さん宅にネット環境が整ってしまうといよいよ卒業に支障が出そうだけどね」
「ウルサイ」
……まあ、俺は脊髄反応のように喜んでしまったけれど、その心配も確かに大きいんだよなあ。菜月先輩宅にネット環境なんかが整ってしまえばパソコンやゲームで実質的にやりたい放題になってしまうというワケで。3年後期の単位は取り逃しがなかったそうだけど、それでもまだ卒業には少し足りていないそうだ。
「ところで、他に面白いソフトがあれば教えて欲しい」
「面白いのはいろいろあるけれど、どうぶつの森にずぶずぶになっている間は手をつけないと思うよ」
「そうか。それもそうだよなあ」
「ちなみにそのテトリスはローカルの対戦は出来るのかな?」
「兄貴が課金してくれたから出来るようになってる」
「へえ、お兄さんが」
「実家にいる間は兄貴と結構対人戦もやってて。対戦相手が欲しいからってオンラインとテトリス、自分のとうちのを課金してくれてる」
「仲のいい兄妹なんだね」
菜月先輩には1つ年上のお兄さんがいらっしゃるという話は聞いたことがある。菜月先輩のお兄さんだけあって超絶美形のイケメンなんだろうなという妄想は幾度となくした。お兄さんに関するデータは菜月先輩と嗜好がほぼ逆の偏食であることと、菜月先輩と同じく野球のチェアーズファンであることなどがある。
せっかくなので、この後でMMP杯争奪テトリス大会をやろうということに決まり、とりあえず食事の支度を進めることに。今日のメニューは圭斗先輩お手製の鶏団子鍋だ。菜月先輩のリクエストとのこと。曰く、奈々の誕生日ということもあって鳥が連想されたのだという。奈々と鳥……口に出したら殺られるヤツ。
「テトリス大会もやりヤすけど、一応今回のために人生ゲームも買ってきたンで、そっちもやりヤしょー」
「人生ゲームなんて久し振りだね」
「圭斗先輩、ボードゲームはやるンすか」
「ボードゲーム自体久し振りだね。ああ、この間、朝霞君がカタンを持ってきてくれてね。菜月さんと山口君の4人でやったけど」
「また変わったメンバーすね」
「卵焼きパーティーをやったりカレーパーティーをしたりしたんだよ。ボードゲームは本当にそれくらいかな」
「圭斗先輩と山口先輩の共通の話題が見えない…!」
「だけど、菜月さんと朝霞君はどっちも食べてるときは喋らないから、僕と山口君の会話のみになるんだよ。まあ、内容は誰とでも出来る他愛もない会話だね」
それに、菜月先輩は山口先輩と不仲でいらしたし、朝霞先輩と共通の話題があるようにも思えない。向島と星ヶ丘の先輩方という組み合わせがとてもレアに思えるのだけど、圭斗先輩から「とある奴のやらかしの件で連帯感が生まれたんだよ」と耳打ちをされれば、納得と同時にそのお声で脳が死んだ。
「山口先輩と朝霞先輩の話はミーちゃんからたまに聞いてましたッ!」
「そうか、水鈴さんがいらっしゃったね。ところで奈々、水鈴さんは元気かな」
「ミーちゃんは今日雄平さんに会いに光洋に行ってますッ!」
「あ、越谷さんは実家に戻ったんだね」
「そうなんですッ! 最初の頃はミーちゃん寂しい寂しいってめそめそしてたんですけど、今日は元気でしたッ!」
「圭斗、ポン酢ある?」
「ん、そのままでも美味しくいただけるはずだよ」
「そうか。ふーっ、ふーっ……ん、うまー! ホントだ」
「そうだろう? 僕が作ってるんだ、不味いわけがない」
「圭斗先輩のドヤ感が素晴らしいです!」
「圭斗先輩はやっぱドヤってないとダメですねッ!」
「ん、これは褒められているのかな?」
「賞賛以外の何物でもありませんが」
「ですよね、うっすうっす」
「ノサカと奈々が真顔で圭斗を褒め讃えるとかいう図だよ」
「まァ、この2人は先輩崇拝が激しいスからね。デフォすわ」
とりあえず、本番のゲーム大会に向けて食べる物を食べてしまうのだ。ゲーマスの律によれば、人生ゲームに関しては2人1組のチーム戦になるという。番組のペア決めならアナミキのパートが関わってくるけど今回は人生ゲームなのでそういうのはなし。贅沢を言うなら菜月先輩か圭斗先輩と組ませていただきたい!
まあ、これだけ見ればどこが追いコンなんだっていう感じがするけど、これはこれで新しい追いコンの形だしMMPらしいと言えばとてもMMPらしい。適当でグダグダで、出不精でっていう。何にせよ追い出す対象の先輩方に楽しんでいただければ目標達成なワケで。うん、きれいにまとめようとしたけどダメか。
end.
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緑ヶ丘が陽キャ集団とするなら陰キャ集団の向島MMPです。まずメインキャラ4人と3人の属性からして完全に陽と陰そのものだもんよ
というワケでMMPの3年生追いコンは圭斗さん宅でわちゃわちゃすることになったのですが、りっちゃんが人生ゲームを調達した件なんかも見たかったなあ。
そして思い出したように奈々の誕生日の件もぶち込み、水鈴さんの名前も久し振りに登場。と言うか向島と星ヶ丘3年生の組み合わせってよくよく考えたら確かにちょっとおかしい。
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「――っつーワケで、昨今の事情を鑑みた結果、3年生追いコンの外での開催は自粛っつー形になりヤしたが、その分の金をぶち込んで盛大な陰キャ式追いコンを開催するっつー形になりヤしたんでェ、よろしくお願いしヤーす」
「わー」
「いいぞー」
律の適当でぐだぐだな挨拶から始まったMMPの3年生追いコン、その会場は追い出される側の圭斗先輩宅だ。やれイベントの自粛だなんだというニュースが世間を賑わせているけど、少人数イベントに関してはその限りではない。けれども、卒業式すら中止になった向島大学に措いて外を遊び歩く行事は如何なものかと。
――などという話し合いは全く行われず、このご時世だし小規模イベントをやるとすれば思い切り引きこもればどーです、と具合で律と圭斗先輩の間であれよあれよと話が進んでいたそうだ。あれ、おかしいな。このメンバーでのこんな行事はこれが最後だって年末のカレパだったか鍋パの時に言ってなかったかな。
元々の予定ではボウリング大会や会食などをする予定で進められていたらしいのだけど、そこに使う参加費を家の中で出来る遊びと食事の材料費に全投入。何なら各自がゲーム機やコントローラーなどを持ち寄っているので圭斗先輩のお部屋がちょっとしたeスポーツセンターのようになっている。
「菜月さん、ニンテンドースイッチなんてどうしたんだい」
「バイト代で買ったんだ。実家には兄貴の本体があるからこっちにはうちのを置こうと思ってて」
「ちなみに、何のソフトがあるのかな」
「とりあえずどうぶつの森をやろうかなと。それから、オンラインのテトリス99」
「菜月先輩のお宅にはオンライン環境がなかったかと思いますが」
「ああ、お父さんに言ったらWi-Fi設置していいよって言われて」
「おめでとうございます!」
「ん、菜月さん宅にネット環境が整ってしまうといよいよ卒業に支障が出そうだけどね」
「ウルサイ」
……まあ、俺は脊髄反応のように喜んでしまったけれど、その心配も確かに大きいんだよなあ。菜月先輩宅にネット環境なんかが整ってしまえばパソコンやゲームで実質的にやりたい放題になってしまうというワケで。3年後期の単位は取り逃しがなかったそうだけど、それでもまだ卒業には少し足りていないそうだ。
「ところで、他に面白いソフトがあれば教えて欲しい」
「面白いのはいろいろあるけれど、どうぶつの森にずぶずぶになっている間は手をつけないと思うよ」
「そうか。それもそうだよなあ」
「ちなみにそのテトリスはローカルの対戦は出来るのかな?」
「兄貴が課金してくれたから出来るようになってる」
「へえ、お兄さんが」
「実家にいる間は兄貴と結構対人戦もやってて。対戦相手が欲しいからってオンラインとテトリス、自分のとうちのを課金してくれてる」
「仲のいい兄妹なんだね」
菜月先輩には1つ年上のお兄さんがいらっしゃるという話は聞いたことがある。菜月先輩のお兄さんだけあって超絶美形のイケメンなんだろうなという妄想は幾度となくした。お兄さんに関するデータは菜月先輩と嗜好がほぼ逆の偏食であることと、菜月先輩と同じく野球のチェアーズファンであることなどがある。
せっかくなので、この後でMMP杯争奪テトリス大会をやろうということに決まり、とりあえず食事の支度を進めることに。今日のメニューは圭斗先輩お手製の鶏団子鍋だ。菜月先輩のリクエストとのこと。曰く、奈々の誕生日ということもあって鳥が連想されたのだという。奈々と鳥……口に出したら殺られるヤツ。
「テトリス大会もやりヤすけど、一応今回のために人生ゲームも買ってきたンで、そっちもやりヤしょー」
「人生ゲームなんて久し振りだね」
「圭斗先輩、ボードゲームはやるンすか」
「ボードゲーム自体久し振りだね。ああ、この間、朝霞君がカタンを持ってきてくれてね。菜月さんと山口君の4人でやったけど」
「また変わったメンバーすね」
「卵焼きパーティーをやったりカレーパーティーをしたりしたんだよ。ボードゲームは本当にそれくらいかな」
「圭斗先輩と山口先輩の共通の話題が見えない…!」
「だけど、菜月さんと朝霞君はどっちも食べてるときは喋らないから、僕と山口君の会話のみになるんだよ。まあ、内容は誰とでも出来る他愛もない会話だね」
それに、菜月先輩は山口先輩と不仲でいらしたし、朝霞先輩と共通の話題があるようにも思えない。向島と星ヶ丘の先輩方という組み合わせがとてもレアに思えるのだけど、圭斗先輩から「とある奴のやらかしの件で連帯感が生まれたんだよ」と耳打ちをされれば、納得と同時にそのお声で脳が死んだ。
「山口先輩と朝霞先輩の話はミーちゃんからたまに聞いてましたッ!」
「そうか、水鈴さんがいらっしゃったね。ところで奈々、水鈴さんは元気かな」
「ミーちゃんは今日雄平さんに会いに光洋に行ってますッ!」
「あ、越谷さんは実家に戻ったんだね」
「そうなんですッ! 最初の頃はミーちゃん寂しい寂しいってめそめそしてたんですけど、今日は元気でしたッ!」
「圭斗、ポン酢ある?」
「ん、そのままでも美味しくいただけるはずだよ」
「そうか。ふーっ、ふーっ……ん、うまー! ホントだ」
「そうだろう? 僕が作ってるんだ、不味いわけがない」
「圭斗先輩のドヤ感が素晴らしいです!」
「圭斗先輩はやっぱドヤってないとダメですねッ!」
「ん、これは褒められているのかな?」
「賞賛以外の何物でもありませんが」
「ですよね、うっすうっす」
「ノサカと奈々が真顔で圭斗を褒め讃えるとかいう図だよ」
「まァ、この2人は先輩崇拝が激しいスからね。デフォすわ」
とりあえず、本番のゲーム大会に向けて食べる物を食べてしまうのだ。ゲーマスの律によれば、人生ゲームに関しては2人1組のチーム戦になるという。番組のペア決めならアナミキのパートが関わってくるけど今回は人生ゲームなのでそういうのはなし。贅沢を言うなら菜月先輩か圭斗先輩と組ませていただきたい!
まあ、これだけ見ればどこが追いコンなんだっていう感じがするけど、これはこれで新しい追いコンの形だしMMPらしいと言えばとてもMMPらしい。適当でグダグダで、出不精でっていう。何にせよ追い出す対象の先輩方に楽しんでいただければ目標達成なワケで。うん、きれいにまとめようとしたけどダメか。
end.
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緑ヶ丘が陽キャ集団とするなら陰キャ集団の向島MMPです。まずメインキャラ4人と3人の属性からして完全に陽と陰そのものだもんよ
というワケでMMPの3年生追いコンは圭斗さん宅でわちゃわちゃすることになったのですが、りっちゃんが人生ゲームを調達した件なんかも見たかったなあ。
そして思い出したように奈々の誕生日の件もぶち込み、水鈴さんの名前も久し振りに登場。と言うか向島と星ヶ丘3年生の組み合わせってよくよく考えたら確かにちょっとおかしい。
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