2019(04)
■季節のグラデーション
++++
「おはようございまーす」
「みんな500円ちょーだい。機材保障費と交換でクジ引けるから。アナウンサーはこっちで、ミキサーはこっちから引いて」
「はーい」
とうとう春の番組制作会当日を迎えた。今回の番組制作会は、5月にあると信じたいファンタジックフェスタに向けたダブルトークの練習会としての性質がある。それから、インターフェイス的には番組の同録の収録方法の実験にも重点が置かれているように思う。こちらの想像以上に来年度のインターフェイスにとっては結構大事になってくるであろう会に発展してしまったように思う。
春の番組制作会は去年から始まった歴の浅い行事だ。本来、2月から3月にかけては班ごとに週替わりでスキー場DJに行っていたそうだけど、その行事が無くなった結果の代替案として始まったという経緯がある。スキー場DJと並んで一般の人に向けて番組を行うのは5月のファンタジックフェスタ。それならば、そこに向けたダブルトークの練習をするのではいいのではないか、という結論に至ったそうだ。
俺たちはスキー場DJに行っていない世代なので、この時期の行事と言えばこの番組制作会だ。唯一ファンフェスが外部の人に向けた番組をやる機会だし、そこに向けた練習と言われればなるほどと納得をする。初心者講習会や夏合宿のように講師の方を置いて行う講習会ではないけれど、ダブルトークをやってみるということが大事なのだ。それで得た課題を各々持ち帰ってもらって、練習してもらうのがいいだろうと。
「つばめ、こんなモンで行けるか」
「行けるっしょ。ちょっとやってみよっか。あーあーあー、まままままー」
ヒロが機材保障費と班決めのクジを交換している間に、俺とつばめ、それからゴティの3人は同録収録用に使うパソコンのセッティングをしていた。機材のセッティング自体は11月から会議に参加している次期対策委員のミキサー陣に任せたのだけど、さすがにこのセッティングは経験のある自分たちがやる方がいいだろうと。尤も、果林のゼミからお下がりでもらった機材なので、同ゼミになるタカティに関して言えばそれなりに知識もあるのかもしれないけれど、次代の活躍に期待。
「おーいゲンゴロー、これどっか間違ってるけど?」
「えっ、間違ってますか?」
「ほら、ここ見てみ? あーあーあー。マイクに向かって喋ってんのに信号入って来てないっしょ?」
「あ、ホントですね」
「ちょっとやり直してみて」
「はい。わかりました」
機材のセッティングを1年生に任せるというのはつばめの発案だ。この1年弱で1年生たちも経験を積んできているはずだし、何かが間違っていれば今ならまだ教えることも出来るから、と。定例会の代替わりは11月で、多くのサークルと同じ時期に行われる。そして最上学年は代替わりと同時に引退される。一方、対策委員の代替わりはスキー場DJなり春の制作会が終わった後だ。その割に、次期対策委員ですと決まるのは多くの代替わりと同じ時期という。
俺たちは去年のこの時期にこうして対策委員の中に放り込まれて先輩と一緒に行動するということはなかった。4月になり、その年度の活動が始まってから初回の顔合わせがあるというような感じで。だけど、いきなり活動を始めなさいと言われても何をどうすればいいかわからないし、戸惑いが大きかった。ということで、どうせ11月に次の対策委員を決めるなら、早いうちから会議に来てもらって雰囲気を掴んでもらった方がいいんじゃないかと全会一致で決まり現在に至っている。
ゲンゴローとアオが一緒に機材セッティングをやり直す様子を、つばめが鬼教官か何かのように見ている。その横でタカティはつばめに「ここが違うんですかね」と答え合わせをしている。それに加えて、MP3音源収録用パソコンのポジショニングなども考えているという感じだ。ミキサー歴が他の子と比べて短いわかばには、奈々がセッティングのポイントを教えている。
「ノサカ、これで参加者全員とちゃうかな」
「そうか、サンキュ」
「つばめ、そろそろ機材オッケーになりそうか?」
「ゲンゴロー、どう?」
「これで、出来たと思います。つばめ先輩、確認お願いします」
「あーあーあー。うん、ミキサーはこれでオッケー。タカティ、MP3は?」
「はい、録音出来てます」
「野坂、こっちはいつでもオッケー!」
「了解!」
腕時計を見れば、あと5分で10時になるところだった。思ったより早くみんな集まったなという感じだ。……まあ、普通はこうなんだよな。ぶっちゃけ、インターフェイスの中で一番遅刻が不安なのは俺だろうし。10時になったら開会しますと宣言をして、トイレとかに行きたい人は今のうちに行っといてなーと声をかけた。対策委員サイドとしても、あと5分で準備することは特にない。後は自分がどこの班で、誰と番組をやるのかを確認するくらいか。
今日この講習会が終われば、俺の対策委員としての仕事も一段落だ。俺たちが対策委員として動き出したのはちょっと前のことだと思っていたけど、もう終わるのかという驚きがとても強い。この後の反省会で、次の対策委員になる1年生と代替わりをする。対策委員になるとは決まっていても、まだ誰が議長でというようなことは決まっていない。定例会と違って対策委員の役職は自分たちの話し合いで決まるから、その様子を見届けるのも楽しみだ。
「ねえノサカ」
「どうしたヒロ」
「ちょっとこのクジ見て欲しいんやけどさ、この番号って、あそこやよね。左の角っこの方」
「そうだな。あのちょうど空いてるトコだろ」
「もしかしてやけど、あの班ボクの他にアナウンサーおらんのとちゃう?」
「えー……どうかなー…?」
「あっ! ボクまたピントークなんちゃうん! ノサカの陰謀やろ!」
「陰謀ではない。全てはお前のクジ運だ」
end.
++++
いよいよ対策委員も代替わりの日を迎えました。そしてミキサーの機材組み立ては1年生にやってもらったようです。つばめ監督がお似合い。
そして思い出したようにラストに毎年やってるヒロのアレをぶち込んでおくけどそれ以上は特になし。例年やってるから。
主にノサカが1年生の姿を見て時間が流れるのは早いねえと思っているだけの話でした。ノサカももうハタチだもんなあ
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「おはようございまーす」
「みんな500円ちょーだい。機材保障費と交換でクジ引けるから。アナウンサーはこっちで、ミキサーはこっちから引いて」
「はーい」
とうとう春の番組制作会当日を迎えた。今回の番組制作会は、5月にあると信じたいファンタジックフェスタに向けたダブルトークの練習会としての性質がある。それから、インターフェイス的には番組の同録の収録方法の実験にも重点が置かれているように思う。こちらの想像以上に来年度のインターフェイスにとっては結構大事になってくるであろう会に発展してしまったように思う。
春の番組制作会は去年から始まった歴の浅い行事だ。本来、2月から3月にかけては班ごとに週替わりでスキー場DJに行っていたそうだけど、その行事が無くなった結果の代替案として始まったという経緯がある。スキー場DJと並んで一般の人に向けて番組を行うのは5月のファンタジックフェスタ。それならば、そこに向けたダブルトークの練習をするのではいいのではないか、という結論に至ったそうだ。
俺たちはスキー場DJに行っていない世代なので、この時期の行事と言えばこの番組制作会だ。唯一ファンフェスが外部の人に向けた番組をやる機会だし、そこに向けた練習と言われればなるほどと納得をする。初心者講習会や夏合宿のように講師の方を置いて行う講習会ではないけれど、ダブルトークをやってみるということが大事なのだ。それで得た課題を各々持ち帰ってもらって、練習してもらうのがいいだろうと。
「つばめ、こんなモンで行けるか」
「行けるっしょ。ちょっとやってみよっか。あーあーあー、まままままー」
ヒロが機材保障費と班決めのクジを交換している間に、俺とつばめ、それからゴティの3人は同録収録用に使うパソコンのセッティングをしていた。機材のセッティング自体は11月から会議に参加している次期対策委員のミキサー陣に任せたのだけど、さすがにこのセッティングは経験のある自分たちがやる方がいいだろうと。尤も、果林のゼミからお下がりでもらった機材なので、同ゼミになるタカティに関して言えばそれなりに知識もあるのかもしれないけれど、次代の活躍に期待。
「おーいゲンゴロー、これどっか間違ってるけど?」
「えっ、間違ってますか?」
「ほら、ここ見てみ? あーあーあー。マイクに向かって喋ってんのに信号入って来てないっしょ?」
「あ、ホントですね」
「ちょっとやり直してみて」
「はい。わかりました」
機材のセッティングを1年生に任せるというのはつばめの発案だ。この1年弱で1年生たちも経験を積んできているはずだし、何かが間違っていれば今ならまだ教えることも出来るから、と。定例会の代替わりは11月で、多くのサークルと同じ時期に行われる。そして最上学年は代替わりと同時に引退される。一方、対策委員の代替わりはスキー場DJなり春の制作会が終わった後だ。その割に、次期対策委員ですと決まるのは多くの代替わりと同じ時期という。
俺たちは去年のこの時期にこうして対策委員の中に放り込まれて先輩と一緒に行動するということはなかった。4月になり、その年度の活動が始まってから初回の顔合わせがあるというような感じで。だけど、いきなり活動を始めなさいと言われても何をどうすればいいかわからないし、戸惑いが大きかった。ということで、どうせ11月に次の対策委員を決めるなら、早いうちから会議に来てもらって雰囲気を掴んでもらった方がいいんじゃないかと全会一致で決まり現在に至っている。
ゲンゴローとアオが一緒に機材セッティングをやり直す様子を、つばめが鬼教官か何かのように見ている。その横でタカティはつばめに「ここが違うんですかね」と答え合わせをしている。それに加えて、MP3音源収録用パソコンのポジショニングなども考えているという感じだ。ミキサー歴が他の子と比べて短いわかばには、奈々がセッティングのポイントを教えている。
「ノサカ、これで参加者全員とちゃうかな」
「そうか、サンキュ」
「つばめ、そろそろ機材オッケーになりそうか?」
「ゲンゴロー、どう?」
「これで、出来たと思います。つばめ先輩、確認お願いします」
「あーあーあー。うん、ミキサーはこれでオッケー。タカティ、MP3は?」
「はい、録音出来てます」
「野坂、こっちはいつでもオッケー!」
「了解!」
腕時計を見れば、あと5分で10時になるところだった。思ったより早くみんな集まったなという感じだ。……まあ、普通はこうなんだよな。ぶっちゃけ、インターフェイスの中で一番遅刻が不安なのは俺だろうし。10時になったら開会しますと宣言をして、トイレとかに行きたい人は今のうちに行っといてなーと声をかけた。対策委員サイドとしても、あと5分で準備することは特にない。後は自分がどこの班で、誰と番組をやるのかを確認するくらいか。
今日この講習会が終われば、俺の対策委員としての仕事も一段落だ。俺たちが対策委員として動き出したのはちょっと前のことだと思っていたけど、もう終わるのかという驚きがとても強い。この後の反省会で、次の対策委員になる1年生と代替わりをする。対策委員になるとは決まっていても、まだ誰が議長でというようなことは決まっていない。定例会と違って対策委員の役職は自分たちの話し合いで決まるから、その様子を見届けるのも楽しみだ。
「ねえノサカ」
「どうしたヒロ」
「ちょっとこのクジ見て欲しいんやけどさ、この番号って、あそこやよね。左の角っこの方」
「そうだな。あのちょうど空いてるトコだろ」
「もしかしてやけど、あの班ボクの他にアナウンサーおらんのとちゃう?」
「えー……どうかなー…?」
「あっ! ボクまたピントークなんちゃうん! ノサカの陰謀やろ!」
「陰謀ではない。全てはお前のクジ運だ」
end.
++++
いよいよ対策委員も代替わりの日を迎えました。そしてミキサーの機材組み立ては1年生にやってもらったようです。つばめ監督がお似合い。
そして思い出したようにラストに毎年やってるヒロのアレをぶち込んでおくけどそれ以上は特になし。例年やってるから。
主にノサカが1年生の姿を見て時間が流れるのは早いねえと思っているだけの話でした。ノサカももうハタチだもんなあ
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