2019(04)
■大好きが最大のエナジー
++++
「ただいまなんだー」
「星羅、お疲れ」
「泰稚~! ボクは今日もいっぱい働いたんだー……」
今日もいっぱい働いたんだ、と星羅は帰ってくるなり荷物を放り出してリビングのソファに倒れ込む。俺は当たり前のように須賀家にお邪魔して、今日はUSDX関係の仕事をしているワケだけれども。須賀家的にはそれでいいのかと思うけど、働き詰めの星羅を心配するお母さんから居れるときは居てくれと頼まれているのでお言葉に甘える。
星羅はドラッグストアでアルバイトをしている。如何せんこんな時勢なので、ドラッグストアはスタッフをフル動員しているらしい。休みを取ろうと思えば取れないこともないらしいけど、本当に体がしんどくなったときのために休みは取っておきたいと言って星羅は働き詰めの状態で。だからみんな心配してるんだ。
入退院を繰り返していた頃のことを俺は話に聞いただけだからちゃんとは知らないけど、今も薬を携帯していなければならないことだとか、あまり激しすぎる運動はしない方がいい(適度な運動はむしろいいらしい)ことなんかを聞いている。今では普通に生活出来ているとは言え、必ずしも頑丈とは言えない体だ。
「今日も行列だったんだ」
「マスク入荷待ちか?」
「マスクもなんだ。だけど、紙製品もまだすぐ出て行くんだ」
「デマだって言われてるのにな」
「メーカーの在庫はあるんだ。だけど、店頭には一気に来ないんだ。少し待てばいいんだ。だけど、みんながみんなそう出来ないんだ」
「星羅、何か飲む?」
「レモネードが飲みたいんだ」
湯沸かし器であっと言う間にお湯を沸かし、そのままマグカップの底に敷いたレモネードの原液を希釈する。少し濃いめにしておこう。ソファにぐでっともたれたままマグカップを持とうとするので、さすがにこぼすと危ないし起きるよう促す。渋々起き上がると、星羅はレモネードをちびちびと飲み始めた。
「でも、真面目にそろそろ休んでよかったんじゃないか? 彼是1週間は連続で出てなかったか?」
「さすがに来週は1回休むんだ。昨日今日は、人が少なかったんだ」
「あ、お姉。帰ってきてたんだ。おかえり」
「ただいまなんだ。きららはまだお仕事なんだ?」
「うん。ちょっと休憩。あ、私もレモネードにしようかな」
フリーのイラストレーターとして自宅で働くきららを見ていると、昨今の騒動とはあまり関係がなさそうで自分のペースが守れるのかなと思う。だけど、フリーならフリーランスなりの苦労もあるだろうし一概には言えないのかな。例えば、会社勤めなら会社がやってくれる手続きもあるけど、それを自分でやらないといけないという点で。
テレワークの出来る企業にはそれが推奨されていて、実施されていると一言で言っても、現代の勤務システムじゃそう簡単に全部が全部回るワケでもないということは見た。仕事自体は自宅でやっても、紙の書類にハンコを捺すためだけに出社するとか、自宅にテレワークのシステムを導入するために死んでる部署があるとか。
そう考えると、自分の将来のことも少し考えておかないといけないなあと思う。多分俺が進む進路はテレワークも出来そうな感じの職種になるとは思うけど、現段階でその体制がきっちり整っているかとか、有事の際だけでなく日常的にそういう働き方も可能なのかということは確認しておきたい。
通勤時間で精神と使える時間、それから体力をすり減らした結果、仕事の能率が落ちては元も子もないと思う。それだったら、精神と体力を温存してきっちりと仕事をした方が短い時間できっちり仕事出来ると俺は思う。そうやって捻出した時間を余暇に充てることが出来れば精神衛生も向上するはずだ、と思うけど、どうなのかな。
「お姉、お疲れなのはわかるけどあんま泰稚さんに甘え過ぎるのもどうかと思うよ」
「それはボクもわかってるんだ。だけどみんなが欲しい物をちゃんと買えるようになるまでは見逃して欲しいんだ」
「きらら、俺のことなら大丈夫」
「でも」
「こういう時こそ支え合わないと。俺も普段は星羅に甘えっぱなしだから、これでもまだプラマイゼロにはなってない。気持ちが沈むとそれこそ体にも良くないだろ。体は心が作るって、星羅がいつも言ってる通りだと思うから」
「まあ、ネット知識だけどドラッグストアが戦場みたいなのは知ってる。お姉、クソカス野郎に暴言とか吐かれてない? 大丈夫?」
「そういうことを言われる人はいるんだ。でも、ボクはまだ大丈夫なんだ。心配してくれてありがとうなんだ」
星羅がぺこりと頭を下げると、きららはばつが悪そうに目を反らせた。これも後からお母さんから聞いたことだけど、星羅は体が弱いことを理由に子供の頃は結構からかわれたりしてきたそうだ。それに対してきららが自分のことのように怒るのを星羅が宥めていたと。
「ホント、泰稚さんてお姉に甘々だわ」
「言わせてもらえば、きららも十分お姉大好きな妹だからな」
「……ムカつくからツイッターにコンのネタ絵投下してやろっかな。絵描きの息抜きは落書きってよく言うし」
「ちょっ、どんなネタだよ!」
「でもなんだ、きらら」
「ナニお姉」
「USDXでもコンは地味なんだ! 公式のイラストレーターが非公式落書きでも絵を投下するんだ? それってコン推しにはちょっとしたお祭りなんだ!」
「問題は、そのコン推しがいるかどうかだけどね!」
「うるさい。そんなことは俺が一番わかってんだよ」
「さ、休憩終わり~。お二人さんは、ごゆっくり~」
「きらら! 3人はいるんだ!」
3人はいるんだ? もしそれがコン推しの人数だとすればそれはそれでちょっと哀しい物があるけど、まあ、うん、添え物なのは自覚してるし、いいんだ。うん。「コンは地味すぎてバネとレイにもキャラが負けてる」とかカンがエゴサ結果をぶっ込んできたので知ってるし。
……いいんだ、俺は俺の出来る事をするんだ。星羅ときららと話している間はちっとも進まなかった仕事だけど。って言うか、割と真面目に絶え間なく手を動かしてないと企画が出てくる量にシステム実装が追いつかないんだよな(主に朝霞の所為で)。デバッグとかもいるし追いつかないのは当然としても、せっかく出た物はやっぱり実装したい。
「泰稚も何か飲むんだ? よければ淹れるんだ」
「あ、うん。それじゃあ、俺は紅茶を」
end.
++++
ドラッグストアでアルバイトをしている星羅、ここのところ忙しいようです。あれっ、同じ店で働く誰かさんは今緑風へ旅行しているはずだが……
スガPに関して言えば外野が外堀を完全に埋めて来ているので、須賀家的にはいて当たり前、菅野家的にはいなくて当たり前くらいまで来ているのでしょう。スガP次男以降っぽそう。
きららはデフォルトでマスクをしてるんだけども、外にも出ないのに年中マスクしてるから基本的にまとめ買いしてそうよね
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「ただいまなんだー」
「星羅、お疲れ」
「泰稚~! ボクは今日もいっぱい働いたんだー……」
今日もいっぱい働いたんだ、と星羅は帰ってくるなり荷物を放り出してリビングのソファに倒れ込む。俺は当たり前のように須賀家にお邪魔して、今日はUSDX関係の仕事をしているワケだけれども。須賀家的にはそれでいいのかと思うけど、働き詰めの星羅を心配するお母さんから居れるときは居てくれと頼まれているのでお言葉に甘える。
星羅はドラッグストアでアルバイトをしている。如何せんこんな時勢なので、ドラッグストアはスタッフをフル動員しているらしい。休みを取ろうと思えば取れないこともないらしいけど、本当に体がしんどくなったときのために休みは取っておきたいと言って星羅は働き詰めの状態で。だからみんな心配してるんだ。
入退院を繰り返していた頃のことを俺は話に聞いただけだからちゃんとは知らないけど、今も薬を携帯していなければならないことだとか、あまり激しすぎる運動はしない方がいい(適度な運動はむしろいいらしい)ことなんかを聞いている。今では普通に生活出来ているとは言え、必ずしも頑丈とは言えない体だ。
「今日も行列だったんだ」
「マスク入荷待ちか?」
「マスクもなんだ。だけど、紙製品もまだすぐ出て行くんだ」
「デマだって言われてるのにな」
「メーカーの在庫はあるんだ。だけど、店頭には一気に来ないんだ。少し待てばいいんだ。だけど、みんながみんなそう出来ないんだ」
「星羅、何か飲む?」
「レモネードが飲みたいんだ」
湯沸かし器であっと言う間にお湯を沸かし、そのままマグカップの底に敷いたレモネードの原液を希釈する。少し濃いめにしておこう。ソファにぐでっともたれたままマグカップを持とうとするので、さすがにこぼすと危ないし起きるよう促す。渋々起き上がると、星羅はレモネードをちびちびと飲み始めた。
「でも、真面目にそろそろ休んでよかったんじゃないか? 彼是1週間は連続で出てなかったか?」
「さすがに来週は1回休むんだ。昨日今日は、人が少なかったんだ」
「あ、お姉。帰ってきてたんだ。おかえり」
「ただいまなんだ。きららはまだお仕事なんだ?」
「うん。ちょっと休憩。あ、私もレモネードにしようかな」
フリーのイラストレーターとして自宅で働くきららを見ていると、昨今の騒動とはあまり関係がなさそうで自分のペースが守れるのかなと思う。だけど、フリーならフリーランスなりの苦労もあるだろうし一概には言えないのかな。例えば、会社勤めなら会社がやってくれる手続きもあるけど、それを自分でやらないといけないという点で。
テレワークの出来る企業にはそれが推奨されていて、実施されていると一言で言っても、現代の勤務システムじゃそう簡単に全部が全部回るワケでもないということは見た。仕事自体は自宅でやっても、紙の書類にハンコを捺すためだけに出社するとか、自宅にテレワークのシステムを導入するために死んでる部署があるとか。
そう考えると、自分の将来のことも少し考えておかないといけないなあと思う。多分俺が進む進路はテレワークも出来そうな感じの職種になるとは思うけど、現段階でその体制がきっちり整っているかとか、有事の際だけでなく日常的にそういう働き方も可能なのかということは確認しておきたい。
通勤時間で精神と使える時間、それから体力をすり減らした結果、仕事の能率が落ちては元も子もないと思う。それだったら、精神と体力を温存してきっちりと仕事をした方が短い時間できっちり仕事出来ると俺は思う。そうやって捻出した時間を余暇に充てることが出来れば精神衛生も向上するはずだ、と思うけど、どうなのかな。
「お姉、お疲れなのはわかるけどあんま泰稚さんに甘え過ぎるのもどうかと思うよ」
「それはボクもわかってるんだ。だけどみんなが欲しい物をちゃんと買えるようになるまでは見逃して欲しいんだ」
「きらら、俺のことなら大丈夫」
「でも」
「こういう時こそ支え合わないと。俺も普段は星羅に甘えっぱなしだから、これでもまだプラマイゼロにはなってない。気持ちが沈むとそれこそ体にも良くないだろ。体は心が作るって、星羅がいつも言ってる通りだと思うから」
「まあ、ネット知識だけどドラッグストアが戦場みたいなのは知ってる。お姉、クソカス野郎に暴言とか吐かれてない? 大丈夫?」
「そういうことを言われる人はいるんだ。でも、ボクはまだ大丈夫なんだ。心配してくれてありがとうなんだ」
星羅がぺこりと頭を下げると、きららはばつが悪そうに目を反らせた。これも後からお母さんから聞いたことだけど、星羅は体が弱いことを理由に子供の頃は結構からかわれたりしてきたそうだ。それに対してきららが自分のことのように怒るのを星羅が宥めていたと。
「ホント、泰稚さんてお姉に甘々だわ」
「言わせてもらえば、きららも十分お姉大好きな妹だからな」
「……ムカつくからツイッターにコンのネタ絵投下してやろっかな。絵描きの息抜きは落書きってよく言うし」
「ちょっ、どんなネタだよ!」
「でもなんだ、きらら」
「ナニお姉」
「USDXでもコンは地味なんだ! 公式のイラストレーターが非公式落書きでも絵を投下するんだ? それってコン推しにはちょっとしたお祭りなんだ!」
「問題は、そのコン推しがいるかどうかだけどね!」
「うるさい。そんなことは俺が一番わかってんだよ」
「さ、休憩終わり~。お二人さんは、ごゆっくり~」
「きらら! 3人はいるんだ!」
3人はいるんだ? もしそれがコン推しの人数だとすればそれはそれでちょっと哀しい物があるけど、まあ、うん、添え物なのは自覚してるし、いいんだ。うん。「コンは地味すぎてバネとレイにもキャラが負けてる」とかカンがエゴサ結果をぶっ込んできたので知ってるし。
……いいんだ、俺は俺の出来る事をするんだ。星羅ときららと話している間はちっとも進まなかった仕事だけど。って言うか、割と真面目に絶え間なく手を動かしてないと企画が出てくる量にシステム実装が追いつかないんだよな(主に朝霞の所為で)。デバッグとかもいるし追いつかないのは当然としても、せっかく出た物はやっぱり実装したい。
「泰稚も何か飲むんだ? よければ淹れるんだ」
「あ、うん。それじゃあ、俺は紅茶を」
end.
++++
ドラッグストアでアルバイトをしている星羅、ここのところ忙しいようです。あれっ、同じ店で働く誰かさんは今緑風へ旅行しているはずだが……
スガPに関して言えば外野が外堀を完全に埋めて来ているので、須賀家的にはいて当たり前、菅野家的にはいなくて当たり前くらいまで来ているのでしょう。スガP次男以降っぽそう。
きららはデフォルトでマスクをしてるんだけども、外にも出ないのに年中マスクしてるから基本的にまとめ買いしてそうよね
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