2019(04)
■自然と保たれる平穏
++++
「ぶえっきしょーい!」
「カズ、大丈夫?」
「は、ふぁっ……っきしょい!」
今年は去年と比べると飛散量が少ないっていう花粉だけど、少ないなりに飛んでいるので花粉症の人は本当に大変だと思う。隣でくしゃみを連発するカズにしてもその被害者の一人。花粉が飛び始めるのも結構早かったみたいだし、ピークを迎えたこの時期は本当に大変そう。こうなってしまえば、本当に必要最低限の用事でしか出かけたくないって引き籠もるし、買い物だって渡されたメモに従ってうちが代わりにやってる始末。春のカズは本当に大変そう。
不要不急の外出はしないようにっていう感じでいろんなイベントが開催を自粛しちゃってる今日この頃。うちが参加することになってる同人イベントは現段階ではまだ中止になってないけど、いつ中止にしますって言われてもおかしくないもんね。星港でのイベントだからまだいいけど、これで遠方のイベントだったらいろいろ大変だったなって。そういう苦労をする人がスタッフ側にも参加者側にも大勢いるもんね。早く平穏な日常に戻って欲しいなあ。
「フロントガラスめちゃ汚れてんじゃんか……」
「花粉とか黄砂とかだろうね。いくら洗車してもおっつかないよこれじゃ」
ウォッシャー液をひとかけふたかけ。フロントガラスにはワイパーの跡がくっきりとつく。いくら外に出たくないと言っても、うちには車がある。必要最低限の用事で、かつ車を出すからとお願いすれば嫌々ながらも外に出てきてくれるのが優しさだと思う。買い物メモを渡されて一応はその通りにこなしては来るんだけど、カズ自身の目でスーパーを見たいこともあるらしいから。
車に常備してるテントウ虫のティッシュホルダーとゴミ袋を抱え、出かける前からグロッキーなカズの表情は心底春を呪っているかのよう。この春霞に情緒を感じる余裕はないみたい。ただ、寝込むレベルの花粉症を患うカズがこうやって外に出て来れるだけまだマシなのかなって。って言うかここまで新型ウイルスの話が大きくなる前に花粉症で病院に行っとけばよかったのにね。
「ホント、まだまだ花粉飛んでるよねえ。むしろ今からなのかな」
「俺を殺しにかかってるとしか思えない」
「油断してるとうちも花粉症になっちゃうかも」
「勘弁してくれ、お前に倒れられたら生活が成り立たなくなる」
件のウイルスの件もあるし今年は例年以上に気合いを入れないとマジで死ぬ、とカズは峠を越える気配のない花粉の襲撃に備えている。保存の利く食べ物を買い溜めしたり、空気清浄機の状態をチェックしたり。窓だって目張りしてるし着てるパーカーの素材も変わった。元々玄関先には花粉除去のためのアイテムが並んでいたけど、服のコロコロや床のクイックルの他に、部屋に入る前の手洗いうがいがルールに加えられた。
とかやってる割に基本マスクとメガネはしないんだから本末転倒な気がしないでもないけど。きっとそれは本気で死なないと直らないんじゃないかと思う。どんな意地と言うか、プライドと言うか、こだわりなのかな。病院に行かないのは病院嫌いだからっていう理由なんだけどね。お父さんがお医者さんなのに病院嫌いなんだってちょっと不思議に思うんだけど、病院嫌いな人ってまあいるよね。カズの他には浅浦クンとか。
「――ってカズメガネかけてんじゃん! どーしたの!?」
「お前にいろいろやらされてるからメガネに対する抵抗はなくなった。ガチモンの花粉症メガネとまではいかないけど、これでもちょっとは効果あんだろ?」
「まあ、少しだろうけど。顔触んなくなる点ではいいのかな」
「今年はガチだからな」
――と気合いを入れた矢先にまた大きなくしゃみが止めどなく。そして広がるテントウ虫の羽は、保湿仕様。ちーんと鼻をかみ、使用済みティッシュがコンビニ袋の中にこんもりと増えていく。この時勢、花粉症のクシャミでもコロナだと思われて白い目で見られるだろうし、と外に出たくない理由を語るカズの様子は、実際バイト先とかでも何かあったのかなって感じ。一応バイトの時は店で用意してもらってるマスクをしてるみたいなんだけど(って言うかよく用意できたねお店側も)。
「車って素晴らしいな。バイクじゃこうはいかないな」
「そうは言うけどカズ、自分のヘルメットフルフェイスじゃん」
「メットん中で結構悲惨なことになるんだって」
「想像したくないなあ」
「運転してくれる人がいてこその車ではあるけど」
「花粉収まってきたらバイクもちゃんと洗わなきゃね。きっと乗らない間の花粉べっとりだよ」
「想像したくないな……ぶえっきしょい!」
大変なのはよくわかるんだけど、こうやって、うちに身を委ねてくれるのは嬉しいことでもある。とか言ったら怒られちゃうかな? 夏秋冬は好き勝手やってる分、春くらいはちゃんと返さなきゃね。うちは不要不急の外出をしなくたって家の中で十分楽しむ術を知っているし、家の中で多少なりとも経済を回すことだって出来る。こんなとき、日頃から引き籠もってる人間はノウハウがあるのだ。とか言っても怒られそうだなあ。
「スポーツも中止に延期に無観客だもんなあ。オリンピック出来るのかな」
「それは5月まで様子見って言ってなかった?」
「緑大の卒業式も中止だろ」
「そりゃあ、緑大の卒業式は5000人以上が集まる行事だからね。中止要請の対象でしょ」
「慧梨夏、しばらくどうやって過ごすんだ?」
「そりゃあ通常運転ですよ。ゲームやって、動画見て、本を読んで、同人やって、ですよ」
「何か、この状況でお前が平穏な日常を守ってることに安心する、マジで」
「褒められてる?」
「めちゃくちゃ褒めてる。ほら、ここまでの状況になるとみんな心が荒んで来るだろ」
「そうだねえ。うちらは本屋だからともかく、ドラッグストアとか大変そう」
「キッチンペーパーと保湿ティッシュ欲しいけど、店にあるかなあ」
「あるといいね」
end.
++++
このご時勢のいちえりちゃんですが、あまり変わりがないようですね。平常運転が安心安定のクオリティ。
コロナ云々の前にいち氏は花粉症で死んでたようなので、どっちにしても春休みの今は引きこもりだった。慧梨夏も安定のヤツ。ブレないなあ
緑大の卒業式の規模はとんでもないので中止が決まってるようです。今年度要素と言えば要素だけど……他にも影響が出そうですね
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「ぶえっきしょーい!」
「カズ、大丈夫?」
「は、ふぁっ……っきしょい!」
今年は去年と比べると飛散量が少ないっていう花粉だけど、少ないなりに飛んでいるので花粉症の人は本当に大変だと思う。隣でくしゃみを連発するカズにしてもその被害者の一人。花粉が飛び始めるのも結構早かったみたいだし、ピークを迎えたこの時期は本当に大変そう。こうなってしまえば、本当に必要最低限の用事でしか出かけたくないって引き籠もるし、買い物だって渡されたメモに従ってうちが代わりにやってる始末。春のカズは本当に大変そう。
不要不急の外出はしないようにっていう感じでいろんなイベントが開催を自粛しちゃってる今日この頃。うちが参加することになってる同人イベントは現段階ではまだ中止になってないけど、いつ中止にしますって言われてもおかしくないもんね。星港でのイベントだからまだいいけど、これで遠方のイベントだったらいろいろ大変だったなって。そういう苦労をする人がスタッフ側にも参加者側にも大勢いるもんね。早く平穏な日常に戻って欲しいなあ。
「フロントガラスめちゃ汚れてんじゃんか……」
「花粉とか黄砂とかだろうね。いくら洗車してもおっつかないよこれじゃ」
ウォッシャー液をひとかけふたかけ。フロントガラスにはワイパーの跡がくっきりとつく。いくら外に出たくないと言っても、うちには車がある。必要最低限の用事で、かつ車を出すからとお願いすれば嫌々ながらも外に出てきてくれるのが優しさだと思う。買い物メモを渡されて一応はその通りにこなしては来るんだけど、カズ自身の目でスーパーを見たいこともあるらしいから。
車に常備してるテントウ虫のティッシュホルダーとゴミ袋を抱え、出かける前からグロッキーなカズの表情は心底春を呪っているかのよう。この春霞に情緒を感じる余裕はないみたい。ただ、寝込むレベルの花粉症を患うカズがこうやって外に出て来れるだけまだマシなのかなって。って言うかここまで新型ウイルスの話が大きくなる前に花粉症で病院に行っとけばよかったのにね。
「ホント、まだまだ花粉飛んでるよねえ。むしろ今からなのかな」
「俺を殺しにかかってるとしか思えない」
「油断してるとうちも花粉症になっちゃうかも」
「勘弁してくれ、お前に倒れられたら生活が成り立たなくなる」
件のウイルスの件もあるし今年は例年以上に気合いを入れないとマジで死ぬ、とカズは峠を越える気配のない花粉の襲撃に備えている。保存の利く食べ物を買い溜めしたり、空気清浄機の状態をチェックしたり。窓だって目張りしてるし着てるパーカーの素材も変わった。元々玄関先には花粉除去のためのアイテムが並んでいたけど、服のコロコロや床のクイックルの他に、部屋に入る前の手洗いうがいがルールに加えられた。
とかやってる割に基本マスクとメガネはしないんだから本末転倒な気がしないでもないけど。きっとそれは本気で死なないと直らないんじゃないかと思う。どんな意地と言うか、プライドと言うか、こだわりなのかな。病院に行かないのは病院嫌いだからっていう理由なんだけどね。お父さんがお医者さんなのに病院嫌いなんだってちょっと不思議に思うんだけど、病院嫌いな人ってまあいるよね。カズの他には浅浦クンとか。
「――ってカズメガネかけてんじゃん! どーしたの!?」
「お前にいろいろやらされてるからメガネに対する抵抗はなくなった。ガチモンの花粉症メガネとまではいかないけど、これでもちょっとは効果あんだろ?」
「まあ、少しだろうけど。顔触んなくなる点ではいいのかな」
「今年はガチだからな」
――と気合いを入れた矢先にまた大きなくしゃみが止めどなく。そして広がるテントウ虫の羽は、保湿仕様。ちーんと鼻をかみ、使用済みティッシュがコンビニ袋の中にこんもりと増えていく。この時勢、花粉症のクシャミでもコロナだと思われて白い目で見られるだろうし、と外に出たくない理由を語るカズの様子は、実際バイト先とかでも何かあったのかなって感じ。一応バイトの時は店で用意してもらってるマスクをしてるみたいなんだけど(って言うかよく用意できたねお店側も)。
「車って素晴らしいな。バイクじゃこうはいかないな」
「そうは言うけどカズ、自分のヘルメットフルフェイスじゃん」
「メットん中で結構悲惨なことになるんだって」
「想像したくないなあ」
「運転してくれる人がいてこその車ではあるけど」
「花粉収まってきたらバイクもちゃんと洗わなきゃね。きっと乗らない間の花粉べっとりだよ」
「想像したくないな……ぶえっきしょい!」
大変なのはよくわかるんだけど、こうやって、うちに身を委ねてくれるのは嬉しいことでもある。とか言ったら怒られちゃうかな? 夏秋冬は好き勝手やってる分、春くらいはちゃんと返さなきゃね。うちは不要不急の外出をしなくたって家の中で十分楽しむ術を知っているし、家の中で多少なりとも経済を回すことだって出来る。こんなとき、日頃から引き籠もってる人間はノウハウがあるのだ。とか言っても怒られそうだなあ。
「スポーツも中止に延期に無観客だもんなあ。オリンピック出来るのかな」
「それは5月まで様子見って言ってなかった?」
「緑大の卒業式も中止だろ」
「そりゃあ、緑大の卒業式は5000人以上が集まる行事だからね。中止要請の対象でしょ」
「慧梨夏、しばらくどうやって過ごすんだ?」
「そりゃあ通常運転ですよ。ゲームやって、動画見て、本を読んで、同人やって、ですよ」
「何か、この状況でお前が平穏な日常を守ってることに安心する、マジで」
「褒められてる?」
「めちゃくちゃ褒めてる。ほら、ここまでの状況になるとみんな心が荒んで来るだろ」
「そうだねえ。うちらは本屋だからともかく、ドラッグストアとか大変そう」
「キッチンペーパーと保湿ティッシュ欲しいけど、店にあるかなあ」
「あるといいね」
end.
++++
このご時勢のいちえりちゃんですが、あまり変わりがないようですね。平常運転が安心安定のクオリティ。
コロナ云々の前にいち氏は花粉症で死んでたようなので、どっちにしても春休みの今は引きこもりだった。慧梨夏も安定のヤツ。ブレないなあ
緑大の卒業式の規模はとんでもないので中止が決まってるようです。今年度要素と言えば要素だけど……他にも影響が出そうですね
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