2019(04)
■Normally Excellent!
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秋学期の成績が出た。向島大学では、理系の学生は2年の段階で一度足切りがある。一定数単位を修得出来ていなければ3年に進級することが出来ないそうなのだ。当然、普通にやっていればそうそう進級が危うくなることはない。やむを得ず授業を休むことだって、1回や2回くらいだったら進級に何の影響も与えないワケで。逆に進級がヤバくなるにはどうすればいいのかがわからない。
成績を確認したり履修登録をするには学内システムにログインしなければならないのだけど、3、4年生は自宅からでもログイン出来るのに1、2年生はわざわざ大学まで出て来なければならないというのはどう考えてもおかしいと思う。仮にも理系の学部が強い向島大学だぞ。健康診断と履修登録が同日なのはまだわかる。健康診断があるならどうせ大学まで来なければならない。だけど、成績を確認するためだけに大学に来るのは実際結構面倒だ。
「新3年も家で成績見れればいーんに。何でわざわざ大学まで来んとアカンの」
「間違いない。でも、せっかく来たんだし春から受ける講義に目星を付ける意味でシラバスを見て行こう」
「ノサカ履修一緒にしよ」
「下心しか感じないのだが。と言うか、現時点で単位数に差があるのに同じ履修になると思うな」
ヒロから連絡が入り、一緒に成績を確認しに行くことになった。ヒロはさっそくわざわざ大学に来なければならないことに文句を言っていたけど、それに関しては俺も全く同じ意見なので一緒に文句を言う。わざわざ片道1時間半の道のりを来るのに成績の確認だけで終わってしまっては、それこそバカバカしい。だからせめて健康診断の後の履修登録がスムーズに行くように今のうちに予習をしておこうかと。
春からの履修を一緒にしようとヒロからの誘いがあったけど、いくら情報メディア学科がオリジナリティのある履修にしにくいからと言ってそれはかなり難しい相談だ。それというのも、ヒロは単位の数がかなり少ない。それこそ進級が危ぶまれるくらいには。これまでに履修した必修科目もいくつか落としているようだから、それらを全てクリアした俺と今後も同じような履修にはそうそう出来ないだろう。
進級がヤバくなるのにはどうすればいいのかがわからないとは言ったけど、ヒロのように過ごしていれば進級出来るか出来ないかが怪しくなるんだなということは学んだ。授業に出ないわ、出ていてもまともに聞いてないわ、課題は出さないわ。基本、一緒に授業を受けている人を当てにして自分はとことん手を抜いているような感じだ。出席も少ないからテストでよりいい点を取る必要があるのにそれが出来ないモンだから単位を落とすんだ。
「ログインの番号って何番やったっけ」
「学籍番号」
「って何番?」
「知るかよ。学生証見ろよ」
「出すんめんどくさい」
「どうしようもない」
情報知能センターのPC自習室には俺たちと似たような目的で来たらしい奴らがちょこちょこといる。講義期間中は自習以外の目的でも人がいるから座れないこともあるけど、今は春休み。席はまあまあ空いているから並んで座り、学内システムへのログインを。学生メニューの単位修得数確認という項目を開く。この画面では1年春学期から直近の学期まで、どの講義を履修して成績はどうだったのかという確認をすることが出来る。
画面を開いて最初に出て来るのが直近の成績だから、それをまじまじと見る。履修していた物は全部しっかりと単位を取れたようだ。落としたとも思ってなかったけど、成績は悪いよりいい方がいいし、ここまでSを揃えてたならここから先もSの並ぶ成績表を見ていたいとは少し。秋学期も無事にオールSだったので成績を数値化した平均値、GPAは4.0をキープ。このまま頑張れば、3年の秋頃には履修にも少しは余裕が出て来るかもしれない。
「ノサカノサカ」
「ん?」
「これって進級出来とるん?」
「学部固有はいくつ単位あるんだ」
「42」
「めっちゃギリじゃねーか!」
「進級出来たん!?」
「出来てるけど限りなくギリギリだぞ」
「でも進級出来たんならいーわ。はーよかった」
「ヒロ、俺に何か言うことは?」
「春からもよろしく」
「そうじゃねーだろ…!」
テスト期間になる度に俺はヒロからやれ課題を手伝えだのノートをよこせだのを言われていろいろな物を毟り取られてきたワケだ。そうやってここまで4セメスター過ごしてきたけれども、感謝されることもなく俺に何かお礼があるでもなく、俺がヒロを助けるのがさも当たり前かのように振る舞う様がまあ呆れるしかなく。どうして俺もそこまでされてヒロと絶縁していないのかが不思議で仕方ないのだけど、コイツが進級出来たのは8割くらいは俺のおかげだろと。
ぶっちゃけヒロが留年しようが知ったこっちゃないんだけど、ヒロが留年することであらゆる被害に遭うのは絶対俺だろうし、今酷い目に遭うのも後から酷い目に遭うのも結果同じだから出来るだけ被害を軽減出来るように今出来ることはやっておこうという考えになってしまいがちだ。だけども俺とヒロの修得単位数にはかなり差がある。今後もこれまでと同じように助けろと言われてはいどうぞと言うことは出来ないだろう。
「ノサカ単位いくつあるん? ……えっ、90とか意味わからん。えっ、しかも全部Sやん」
「普通にやればこんなモンだろ」
「ゆーとくけどノサカ普通やって思っとること全然普通とちゃうからね」
「ちなみに、ゼミと卒研を引けば残り22だからな」
「それってどーゆーコト?」
「春で程よく単位を取れば、3年後期にもなれば全休を作る余裕も出て来るってコトだ。春も十分ゆったりとした履修に出来るし」
「えー! 何やのそれ! ノサカばっかりズルい!」
「ズルくない。そろそろ一般教養メインの履修になるかなー。とりあえず、サークルのある日に履修を集めようか」
俺は俺自身の力で頑張ったから今があるんだ。ずっとヒロの世話ばっかりもしていられない。ズルいだの何だのと言われても、単位はもう取ってしまってあるしどうしようもないんだ。3年からはどう時間を使って行こうか。そろそろバイトなんかも始められるだろうか。
「えー、ボク毎日大学来なアカンのとちゃうの」
「自業自得だ。まあ、精々卒業出来るように頑張ってくれ」
end.
++++
進級できるかギリギリだったヒロですが、何とか進級できるようです。よかったねえ。しかし8割自分のおかげっていうのは大きく出たなノサカよ
そう言えばノサカはコバヤスが勉強教えてもらった後にありがとうって言ってくれることに感動してるレベルでしたね
3年生にもなると各種委員会の仕事も終わるし本当にゆったりした感じになるのかしらノサカは。4年生のロボコンに向けて動き始めてもいいかもね
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秋学期の成績が出た。向島大学では、理系の学生は2年の段階で一度足切りがある。一定数単位を修得出来ていなければ3年に進級することが出来ないそうなのだ。当然、普通にやっていればそうそう進級が危うくなることはない。やむを得ず授業を休むことだって、1回や2回くらいだったら進級に何の影響も与えないワケで。逆に進級がヤバくなるにはどうすればいいのかがわからない。
成績を確認したり履修登録をするには学内システムにログインしなければならないのだけど、3、4年生は自宅からでもログイン出来るのに1、2年生はわざわざ大学まで出て来なければならないというのはどう考えてもおかしいと思う。仮にも理系の学部が強い向島大学だぞ。健康診断と履修登録が同日なのはまだわかる。健康診断があるならどうせ大学まで来なければならない。だけど、成績を確認するためだけに大学に来るのは実際結構面倒だ。
「新3年も家で成績見れればいーんに。何でわざわざ大学まで来んとアカンの」
「間違いない。でも、せっかく来たんだし春から受ける講義に目星を付ける意味でシラバスを見て行こう」
「ノサカ履修一緒にしよ」
「下心しか感じないのだが。と言うか、現時点で単位数に差があるのに同じ履修になると思うな」
ヒロから連絡が入り、一緒に成績を確認しに行くことになった。ヒロはさっそくわざわざ大学に来なければならないことに文句を言っていたけど、それに関しては俺も全く同じ意見なので一緒に文句を言う。わざわざ片道1時間半の道のりを来るのに成績の確認だけで終わってしまっては、それこそバカバカしい。だからせめて健康診断の後の履修登録がスムーズに行くように今のうちに予習をしておこうかと。
春からの履修を一緒にしようとヒロからの誘いがあったけど、いくら情報メディア学科がオリジナリティのある履修にしにくいからと言ってそれはかなり難しい相談だ。それというのも、ヒロは単位の数がかなり少ない。それこそ進級が危ぶまれるくらいには。これまでに履修した必修科目もいくつか落としているようだから、それらを全てクリアした俺と今後も同じような履修にはそうそう出来ないだろう。
進級がヤバくなるのにはどうすればいいのかがわからないとは言ったけど、ヒロのように過ごしていれば進級出来るか出来ないかが怪しくなるんだなということは学んだ。授業に出ないわ、出ていてもまともに聞いてないわ、課題は出さないわ。基本、一緒に授業を受けている人を当てにして自分はとことん手を抜いているような感じだ。出席も少ないからテストでよりいい点を取る必要があるのにそれが出来ないモンだから単位を落とすんだ。
「ログインの番号って何番やったっけ」
「学籍番号」
「って何番?」
「知るかよ。学生証見ろよ」
「出すんめんどくさい」
「どうしようもない」
情報知能センターのPC自習室には俺たちと似たような目的で来たらしい奴らがちょこちょこといる。講義期間中は自習以外の目的でも人がいるから座れないこともあるけど、今は春休み。席はまあまあ空いているから並んで座り、学内システムへのログインを。学生メニューの単位修得数確認という項目を開く。この画面では1年春学期から直近の学期まで、どの講義を履修して成績はどうだったのかという確認をすることが出来る。
画面を開いて最初に出て来るのが直近の成績だから、それをまじまじと見る。履修していた物は全部しっかりと単位を取れたようだ。落としたとも思ってなかったけど、成績は悪いよりいい方がいいし、ここまでSを揃えてたならここから先もSの並ぶ成績表を見ていたいとは少し。秋学期も無事にオールSだったので成績を数値化した平均値、GPAは4.0をキープ。このまま頑張れば、3年の秋頃には履修にも少しは余裕が出て来るかもしれない。
「ノサカノサカ」
「ん?」
「これって進級出来とるん?」
「学部固有はいくつ単位あるんだ」
「42」
「めっちゃギリじゃねーか!」
「進級出来たん!?」
「出来てるけど限りなくギリギリだぞ」
「でも進級出来たんならいーわ。はーよかった」
「ヒロ、俺に何か言うことは?」
「春からもよろしく」
「そうじゃねーだろ…!」
テスト期間になる度に俺はヒロからやれ課題を手伝えだのノートをよこせだのを言われていろいろな物を毟り取られてきたワケだ。そうやってここまで4セメスター過ごしてきたけれども、感謝されることもなく俺に何かお礼があるでもなく、俺がヒロを助けるのがさも当たり前かのように振る舞う様がまあ呆れるしかなく。どうして俺もそこまでされてヒロと絶縁していないのかが不思議で仕方ないのだけど、コイツが進級出来たのは8割くらいは俺のおかげだろと。
ぶっちゃけヒロが留年しようが知ったこっちゃないんだけど、ヒロが留年することであらゆる被害に遭うのは絶対俺だろうし、今酷い目に遭うのも後から酷い目に遭うのも結果同じだから出来るだけ被害を軽減出来るように今出来ることはやっておこうという考えになってしまいがちだ。だけども俺とヒロの修得単位数にはかなり差がある。今後もこれまでと同じように助けろと言われてはいどうぞと言うことは出来ないだろう。
「ノサカ単位いくつあるん? ……えっ、90とか意味わからん。えっ、しかも全部Sやん」
「普通にやればこんなモンだろ」
「ゆーとくけどノサカ普通やって思っとること全然普通とちゃうからね」
「ちなみに、ゼミと卒研を引けば残り22だからな」
「それってどーゆーコト?」
「春で程よく単位を取れば、3年後期にもなれば全休を作る余裕も出て来るってコトだ。春も十分ゆったりとした履修に出来るし」
「えー! 何やのそれ! ノサカばっかりズルい!」
「ズルくない。そろそろ一般教養メインの履修になるかなー。とりあえず、サークルのある日に履修を集めようか」
俺は俺自身の力で頑張ったから今があるんだ。ずっとヒロの世話ばっかりもしていられない。ズルいだの何だのと言われても、単位はもう取ってしまってあるしどうしようもないんだ。3年からはどう時間を使って行こうか。そろそろバイトなんかも始められるだろうか。
「えー、ボク毎日大学来なアカンのとちゃうの」
「自業自得だ。まあ、精々卒業出来るように頑張ってくれ」
end.
++++
進級できるかギリギリだったヒロですが、何とか進級できるようです。よかったねえ。しかし8割自分のおかげっていうのは大きく出たなノサカよ
そう言えばノサカはコバヤスが勉強教えてもらった後にありがとうって言ってくれることに感動してるレベルでしたね
3年生にもなると各種委員会の仕事も終わるし本当にゆったりした感じになるのかしらノサカは。4年生のロボコンに向けて動き始めてもいいかもね
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