2018
■約束のリスタート
++++
「今日はどこに行くですか?」
「責任とれって言われたし、ステージありそうなイベント」
寿さし屋でご飯を食べていた時に冗談のつもりで何となく言ったことが実現してしまったことに対する申し訳なさが少しと、今日のお出かけに対する楽しみが少しと。気付いたら何かカンノと出かけることになってましたよね。
ファンフェスのステージでカンノのアコーディオンが気になってステージの勉強どころじゃなかった、責任を取れとクレーマーのようなことは確かに言った。だけど、それを本気にするとか真面目ですか。
今いるのはファンフェスをやっていたのと同じ公園。街の中心にあるこういう大きな公園は、毎週何かしらイベントをやっていたりする。今日も何だか賑やかで、楽しそうな雰囲気が漂っている。
「何か、1時からあっちのステージでアルペン踊りやるって。俺、それが見たいんだって」
「アルペン踊りって、アルプス一万尺の歌にあるヤツですか」
「わかんないけど、気になるなと思って」
「何だかんだ言って自分がステージの参考にしたいんじゃないです? 踊りのあるところには音楽があるですよ」
「そ、それまでは普通にイベントを楽しむし…! あっほら、ウインナーとか超美味そうじゃんか」
民芸品を売っていたり、食べ物のブースが並んでいたりと目を引く店ばかりが立ち並んでいる。1時まではまだまだ時間があるけど、時間は余裕で潰せそう。ウインナーを食べたり、チョコレートを掴み取りしたり。こんな風に遊ぶのが久し振りで本当に楽しい。
「……人の顔を何じろじろ見てるですか」
「いや、お前基本ムキーッって感じで怒ってるイメージが強かったから。ちゃんと笑うと可愛いんじゃんと思って」
「な、何をバカなことを言ってるですよ! それを言ったら自分なんて、音楽のときの真剣な顔はどこ行ったですよ! いつものへらへらしたカンノですよバカかです!?」
「ホント口わりィなー…! 逆に言えば、音楽やってる俺はかっこいいって解釈でオッケ?」
「ま、まあ、それは認めてやりますよ」
「今の、客観的に見たらどこのバカップルだよって感じだな」
「ホントですよ、クソかです?」
それから、カンノはチーズを、私はソフトクリームを食べ歩きながら北欧雑貨を見たりしている間に1時が近付いていた。そろそろお目当てのステージだと、さっそく私たちはそっちの方に移動する。
壇上では、予想通り民族衣装を着た人たちが並んでいて、ステージの端の方では楽隊の人たちがスタンバイしている。踊りも気になるけど、カンノはこれをどう見てるのかなっていう方が正直気になって。
ステージが始まってからは、脇目でチラチラとカンノの様子を見ていた。音楽に合わせて手拍子をしたり、踊りに合わせてステップを踏んだり。その場の空気を楽しみながら体に刻み込んでいるような感じ。
「はー、楽しかったー! なあ!」
「はいです」
「まあ、チラッチラ視線は感じてたけど」
「気付いてたです!?」
「俺さ、ああいう場で自分が楽しむのを優先してなかなか連れにレスしない癖が治らないんだよな」
「別にレスは求めてなかったんでいいですよ。楽しんでるカンノを見てるのが楽しいってだけの話ですから」
「……お前さ、あんまそーゆーコトをポンポン言うと勘違いする野郎が出て来るから気を付けろよ」
「何を勘違いするですか」
「いや、だから……コイツ俺のこと好きなのかな、とか」
当然、私はそんなことをちっとも思ってなかったワケで。多分カンノが言ってる“好き”って言うのは恋愛のそれですよね。忠告をくれるということはカンノはそんな勘違いしないだろうし、別に何を遠慮するでもないですよ。
「もう嫌いじゃないですよ。私はあくまで本当のことを言ってるだけですし」
「あ、嫌いではあったのな」
「自分もチビなのに人をちびっ子って言うからですよ」
「まだ根に持ってんなお前。絶対許してねーだろ」
「サンデーで許したって言ってますですよ。疑うならマカロンを買ってもらうですよ」
「わかったよ、せっかくだしマカロン買いに行くか。でも、そんなに食ってお前夕飯大丈夫なのか?」
「夕飯って概念がなくなってたですよ」
「ん? 家で食わないの?」
「何か、一緒にいるのが楽しくて、帰るって概念がなくなってたですよ」
「……そしたら、また今度2人で遊ぼう。そん時に続きをすることにして、今日はちゃんと家で夕飯を食う。な? そうしよう」
そんな風に言われて頭をポンポンってされると、返事が「うん」しか残されてないような感じがした。カンノは、多分私が思うよりずっと大人だ。ノリと勢いでこのまま遊ぶっていう選択肢だってあったはずですよ。
「わかったですよ。何ですか、人のことを子供扱いして」
「子供扱いとかじゃねーの」
「じゃあマカロン買いやがれ下さいですよ」
「……覚えてやがったか」
end.
++++
デートらしきことをしているカンDとマリンです。カンDはお祭りの露店とかそういうの好きそう。
こういうイベントでステージやらバンドの参考に~ってどっかで聞いたような感じがするけど、星ヶ丘にはそういう人が多いのかね
ナノスパではなかなかない頭ポンポンなどのシチュエーション。まさかこういう組み合わせでやるとは思わなかったぜ!
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「今日はどこに行くですか?」
「責任とれって言われたし、ステージありそうなイベント」
寿さし屋でご飯を食べていた時に冗談のつもりで何となく言ったことが実現してしまったことに対する申し訳なさが少しと、今日のお出かけに対する楽しみが少しと。気付いたら何かカンノと出かけることになってましたよね。
ファンフェスのステージでカンノのアコーディオンが気になってステージの勉強どころじゃなかった、責任を取れとクレーマーのようなことは確かに言った。だけど、それを本気にするとか真面目ですか。
今いるのはファンフェスをやっていたのと同じ公園。街の中心にあるこういう大きな公園は、毎週何かしらイベントをやっていたりする。今日も何だか賑やかで、楽しそうな雰囲気が漂っている。
「何か、1時からあっちのステージでアルペン踊りやるって。俺、それが見たいんだって」
「アルペン踊りって、アルプス一万尺の歌にあるヤツですか」
「わかんないけど、気になるなと思って」
「何だかんだ言って自分がステージの参考にしたいんじゃないです? 踊りのあるところには音楽があるですよ」
「そ、それまでは普通にイベントを楽しむし…! あっほら、ウインナーとか超美味そうじゃんか」
民芸品を売っていたり、食べ物のブースが並んでいたりと目を引く店ばかりが立ち並んでいる。1時まではまだまだ時間があるけど、時間は余裕で潰せそう。ウインナーを食べたり、チョコレートを掴み取りしたり。こんな風に遊ぶのが久し振りで本当に楽しい。
「……人の顔を何じろじろ見てるですか」
「いや、お前基本ムキーッって感じで怒ってるイメージが強かったから。ちゃんと笑うと可愛いんじゃんと思って」
「な、何をバカなことを言ってるですよ! それを言ったら自分なんて、音楽のときの真剣な顔はどこ行ったですよ! いつものへらへらしたカンノですよバカかです!?」
「ホント口わりィなー…! 逆に言えば、音楽やってる俺はかっこいいって解釈でオッケ?」
「ま、まあ、それは認めてやりますよ」
「今の、客観的に見たらどこのバカップルだよって感じだな」
「ホントですよ、クソかです?」
それから、カンノはチーズを、私はソフトクリームを食べ歩きながら北欧雑貨を見たりしている間に1時が近付いていた。そろそろお目当てのステージだと、さっそく私たちはそっちの方に移動する。
壇上では、予想通り民族衣装を着た人たちが並んでいて、ステージの端の方では楽隊の人たちがスタンバイしている。踊りも気になるけど、カンノはこれをどう見てるのかなっていう方が正直気になって。
ステージが始まってからは、脇目でチラチラとカンノの様子を見ていた。音楽に合わせて手拍子をしたり、踊りに合わせてステップを踏んだり。その場の空気を楽しみながら体に刻み込んでいるような感じ。
「はー、楽しかったー! なあ!」
「はいです」
「まあ、チラッチラ視線は感じてたけど」
「気付いてたです!?」
「俺さ、ああいう場で自分が楽しむのを優先してなかなか連れにレスしない癖が治らないんだよな」
「別にレスは求めてなかったんでいいですよ。楽しんでるカンノを見てるのが楽しいってだけの話ですから」
「……お前さ、あんまそーゆーコトをポンポン言うと勘違いする野郎が出て来るから気を付けろよ」
「何を勘違いするですか」
「いや、だから……コイツ俺のこと好きなのかな、とか」
当然、私はそんなことをちっとも思ってなかったワケで。多分カンノが言ってる“好き”って言うのは恋愛のそれですよね。忠告をくれるということはカンノはそんな勘違いしないだろうし、別に何を遠慮するでもないですよ。
「もう嫌いじゃないですよ。私はあくまで本当のことを言ってるだけですし」
「あ、嫌いではあったのな」
「自分もチビなのに人をちびっ子って言うからですよ」
「まだ根に持ってんなお前。絶対許してねーだろ」
「サンデーで許したって言ってますですよ。疑うならマカロンを買ってもらうですよ」
「わかったよ、せっかくだしマカロン買いに行くか。でも、そんなに食ってお前夕飯大丈夫なのか?」
「夕飯って概念がなくなってたですよ」
「ん? 家で食わないの?」
「何か、一緒にいるのが楽しくて、帰るって概念がなくなってたですよ」
「……そしたら、また今度2人で遊ぼう。そん時に続きをすることにして、今日はちゃんと家で夕飯を食う。な? そうしよう」
そんな風に言われて頭をポンポンってされると、返事が「うん」しか残されてないような感じがした。カンノは、多分私が思うよりずっと大人だ。ノリと勢いでこのまま遊ぶっていう選択肢だってあったはずですよ。
「わかったですよ。何ですか、人のことを子供扱いして」
「子供扱いとかじゃねーの」
「じゃあマカロン買いやがれ下さいですよ」
「……覚えてやがったか」
end.
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デートらしきことをしているカンDとマリンです。カンDはお祭りの露店とかそういうの好きそう。
こういうイベントでステージやらバンドの参考に~ってどっかで聞いたような感じがするけど、星ヶ丘にはそういう人が多いのかね
ナノスパではなかなかない頭ポンポンなどのシチュエーション。まさかこういう組み合わせでやるとは思わなかったぜ!
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