2019(04)
■お客さんと熱源の加減
++++
「今日は別に暖房ついてなくても大丈夫だよね? 人口密度高いし」
「いや、そこは一応つけとけよ」
「じゃあさ、コンパクトヒーターでいい?」
「それがお前なりの妥協点だっていう」
「そうだね」
MBCCの無制限飲みが明けて、翌7日。それまで飲み会をやっていたとは思えないくらいに部屋の状態は元通りだ。どうやら俺の寝ている間に先輩たちやエイジが片付けてくれたらしい。そして今日はこれからインターフェイスの1年生で集まって俺の誕生会というのを開いてくれることになっている。
昨日の無制限飲みで余った(……と言うか厳密には俺の当面の食糧にするために先輩たちが置いていってくれた)物で今日の会は遣り繰り出来そうだ。その辺りのことは俺よりもエイジに、と先輩たちが言付けて行ったことにエイジが怒っていたけど、それはもうどうしようもないんじゃないかなあ。台所だってエイジの方が把握してるし。
それで、今問題になっているのが暖房問題。俺は熱を発する物が一番電気代が食うと思っている。つまり暖房は家計の敵であると。いくら朝霞先輩の紹介でバイトをしていたからといって、ここで気を緩めてしまっては元も子もない。昨日は寒がりの高崎先輩がいたからオイルヒーターをつけていたけど、本来はつけるレベルの寒さでもない。
それを見かねたエイジが、今日も暖房を入れるんだぞと釘を刺してきた。昨日オイルヒーターを入れたのも渋々だったことは完全にバレている。昨日の来客は先輩だから暖房を入れたけど、もしかしたら同学年の子たち相手だったら暖房を入れないんじゃないかと思われているらしい。まあ、エイジはお客さん扱いじゃからつけないけどね。
「だって、台所は火を扱うからあったかいじゃん」
「まあ、少しはな」
「そこのドア開けとけば、暖気が流れ込んであったまるでしょ。それでなくてもハナちゃんいるんだしみんなお湯割り飲んでハッピーになろうよ」
「お前、怪しいクスリのバイヤーとかに見えるぞ」
「部屋でヒーター使うのってトラウマじゃん。エイジも知ってるでしょ?」
「カーペット焦がしたからだろ」
「うん」
「だから、カーペットが引っかからないように枠の外にヒーターを置けばいいっていう。窓の前とか。実際暖房は窓側に置くのがいいって言うべ。極論を言えば暖房を使いたくないなら鍋やるのが最強だべ。でも机がなきゃカセットコンロを置く場所もないっていう」
「バイト代入ったらコンロと土鍋買おう」
「机が先だろ」
――とか何とかとベッドの上で言っていたら、ピンポーンとインターホンが鳴った。出てみると、ハナちゃんだ。ハナちゃんは昨日の無制限飲みにも参加してくれてたけど、お色直しとかシャワーとか、今日は今日でまた別に準備があるからと一旦部屋に戻っていたんだ。
「タカティ、エージ、来たよー」
「あっ、ハナちゃん。外どう? 寒い?」
「普通かな」
「暖房いる?」
「正直昨日ハナ結構暑くてしょぼんだったんだよ。服の下すっごい汗だくでさ」
「ほらエイジ、実際要らないんじゃん暖房」
「雪国出身の奴の意見を一般論として聞くのがどうかしてる。言っとくけど、ミドリの意見も参考にすんなよ」
「えー、しょぼんですよねー」
「「ですよねー」はともかくお前が「しょぼん」っつってるのめっ……ちゃ! 腹立つ。殴っていいか」
「殴るのは勘弁して」
「今日はお湯割りが暑くなっても大丈夫なように、ロックアイス買ってきたよ」
「さすがハナちゃん。俺もウィスキーに使っていい?」
「いいよいいよ! 使ってー」
やっぱりハナちゃんは話が通じていいね。誤解がないように言えば、別にエイジが話が通じないって言ってるつもりはない。ミドリも寒さに強そうだからともかく、他の子たちがどう言うかが問題になってくるのかな。いやー、やっぱり暖房はねえ。人口密度高いし、なくて平気だと思うんだけどね?
「あ、タカティまた誰か来たよ」
「はーい。あっ、ミドリとユキちゃん。どうぞ」
「いいか、ミドリの意見は」
「わかったよ」
「そもそも、暖房要るか要らないかっていうアンケートもどうかっていう。こんだけ人集まるんだから一応つけといてみるだろ、いくら暖冬だっつっても夕方にもなりゃ多少冷えるべ。俺以外の奴は客扱いしてんだろっていう」
「まあね」
「タカティ、来たよー」
「わー……って、ミドリ、それはもしかしなくても」
「うん、情報センターのプレッツェル。あっ、安心して。緑ヶ丘以外のみんなに配る用だから~」
抱えた箱で顔が見えないけどミドリと、ユキちゃんが来てくれたのでユキちゃんに例のアンケートを。暖房は要りますか、要りませんかっていう。ちなみにミドリが持ってきたのはバイト先の事務所を埋め尽くしてるプレッツェルで、昨日の無制限飲みでも先輩たちに配布されました。需要があるかなと思ってもらっといたんだよね。
「ねえユキちゃん、この部屋寒い?」
「暖かくもないけど特別寒いってこともないかなー。どうかした?」
「いや、コイツが光熱費ケチるために暖房入れたくないっつってて。ハナとミドリの意見は参考にすんなって言ってあるから、残りメンバーから票取って多数決的な? ちなみに俺は暖房要る派」
「最初はつけといて、暑くなったら消せばいいんじゃないの? 強じゃなくて弱にするとかさ、寒い子は暖房の近くに座るとかしたらバランスとれない?」
ごもっとも。俺たち3人はつけるか消すかでしか話し合ってなかったけど、つけたり消したりするという頭はどうやらなかったらしい。確かに昨日も高崎先輩がヒーターの前から動いてなかったっていう。ということで、今日はオイルヒーターじゃなくてコンパクトヒーターの弱温で室温調節をすることに。
「つか、このプレッツェルまた来たんかっていう……」
「えっ、でもエージ昨日カズ先輩からフォンデュソースの作り方教わってたよね」
「教わったけど、いざこの量を前にするとなー……お前風に言えばしょぼんだっていう」
「あっ、エイジもしょぼんって言った」
「ンなトコで食いついて来んなお前は。……よし、フォンデュソース作るべ!」
「ハナも手伝おうか」
end.
++++
TKGはちょっとちょっとバイトをしたくらいではケチるのをやめないようです。油断して散財しないだけまだいいかな。菜月さんとかすぐ散財しそうだし。
というワケで暖房つけるつけない論争です。TKGは1年生ばっかり、と言うかエイジといるとやっぱりちょっとはキャラも砕けてる感じがしますね、しょぼーん
そういや今年は情報センターからプレッツェルを引き上げてくる件やんなかったけど、去年かその前かにやってるあんな感じで今年も引き上げてきました。
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「今日は別に暖房ついてなくても大丈夫だよね? 人口密度高いし」
「いや、そこは一応つけとけよ」
「じゃあさ、コンパクトヒーターでいい?」
「それがお前なりの妥協点だっていう」
「そうだね」
MBCCの無制限飲みが明けて、翌7日。それまで飲み会をやっていたとは思えないくらいに部屋の状態は元通りだ。どうやら俺の寝ている間に先輩たちやエイジが片付けてくれたらしい。そして今日はこれからインターフェイスの1年生で集まって俺の誕生会というのを開いてくれることになっている。
昨日の無制限飲みで余った(……と言うか厳密には俺の当面の食糧にするために先輩たちが置いていってくれた)物で今日の会は遣り繰り出来そうだ。その辺りのことは俺よりもエイジに、と先輩たちが言付けて行ったことにエイジが怒っていたけど、それはもうどうしようもないんじゃないかなあ。台所だってエイジの方が把握してるし。
それで、今問題になっているのが暖房問題。俺は熱を発する物が一番電気代が食うと思っている。つまり暖房は家計の敵であると。いくら朝霞先輩の紹介でバイトをしていたからといって、ここで気を緩めてしまっては元も子もない。昨日は寒がりの高崎先輩がいたからオイルヒーターをつけていたけど、本来はつけるレベルの寒さでもない。
それを見かねたエイジが、今日も暖房を入れるんだぞと釘を刺してきた。昨日オイルヒーターを入れたのも渋々だったことは完全にバレている。昨日の来客は先輩だから暖房を入れたけど、もしかしたら同学年の子たち相手だったら暖房を入れないんじゃないかと思われているらしい。まあ、エイジはお客さん扱いじゃからつけないけどね。
「だって、台所は火を扱うからあったかいじゃん」
「まあ、少しはな」
「そこのドア開けとけば、暖気が流れ込んであったまるでしょ。それでなくてもハナちゃんいるんだしみんなお湯割り飲んでハッピーになろうよ」
「お前、怪しいクスリのバイヤーとかに見えるぞ」
「部屋でヒーター使うのってトラウマじゃん。エイジも知ってるでしょ?」
「カーペット焦がしたからだろ」
「うん」
「だから、カーペットが引っかからないように枠の外にヒーターを置けばいいっていう。窓の前とか。実際暖房は窓側に置くのがいいって言うべ。極論を言えば暖房を使いたくないなら鍋やるのが最強だべ。でも机がなきゃカセットコンロを置く場所もないっていう」
「バイト代入ったらコンロと土鍋買おう」
「机が先だろ」
――とか何とかとベッドの上で言っていたら、ピンポーンとインターホンが鳴った。出てみると、ハナちゃんだ。ハナちゃんは昨日の無制限飲みにも参加してくれてたけど、お色直しとかシャワーとか、今日は今日でまた別に準備があるからと一旦部屋に戻っていたんだ。
「タカティ、エージ、来たよー」
「あっ、ハナちゃん。外どう? 寒い?」
「普通かな」
「暖房いる?」
「正直昨日ハナ結構暑くてしょぼんだったんだよ。服の下すっごい汗だくでさ」
「ほらエイジ、実際要らないんじゃん暖房」
「雪国出身の奴の意見を一般論として聞くのがどうかしてる。言っとくけど、ミドリの意見も参考にすんなよ」
「えー、しょぼんですよねー」
「「ですよねー」はともかくお前が「しょぼん」っつってるのめっ……ちゃ! 腹立つ。殴っていいか」
「殴るのは勘弁して」
「今日はお湯割りが暑くなっても大丈夫なように、ロックアイス買ってきたよ」
「さすがハナちゃん。俺もウィスキーに使っていい?」
「いいよいいよ! 使ってー」
やっぱりハナちゃんは話が通じていいね。誤解がないように言えば、別にエイジが話が通じないって言ってるつもりはない。ミドリも寒さに強そうだからともかく、他の子たちがどう言うかが問題になってくるのかな。いやー、やっぱり暖房はねえ。人口密度高いし、なくて平気だと思うんだけどね?
「あ、タカティまた誰か来たよ」
「はーい。あっ、ミドリとユキちゃん。どうぞ」
「いいか、ミドリの意見は」
「わかったよ」
「そもそも、暖房要るか要らないかっていうアンケートもどうかっていう。こんだけ人集まるんだから一応つけといてみるだろ、いくら暖冬だっつっても夕方にもなりゃ多少冷えるべ。俺以外の奴は客扱いしてんだろっていう」
「まあね」
「タカティ、来たよー」
「わー……って、ミドリ、それはもしかしなくても」
「うん、情報センターのプレッツェル。あっ、安心して。緑ヶ丘以外のみんなに配る用だから~」
抱えた箱で顔が見えないけどミドリと、ユキちゃんが来てくれたのでユキちゃんに例のアンケートを。暖房は要りますか、要りませんかっていう。ちなみにミドリが持ってきたのはバイト先の事務所を埋め尽くしてるプレッツェルで、昨日の無制限飲みでも先輩たちに配布されました。需要があるかなと思ってもらっといたんだよね。
「ねえユキちゃん、この部屋寒い?」
「暖かくもないけど特別寒いってこともないかなー。どうかした?」
「いや、コイツが光熱費ケチるために暖房入れたくないっつってて。ハナとミドリの意見は参考にすんなって言ってあるから、残りメンバーから票取って多数決的な? ちなみに俺は暖房要る派」
「最初はつけといて、暑くなったら消せばいいんじゃないの? 強じゃなくて弱にするとかさ、寒い子は暖房の近くに座るとかしたらバランスとれない?」
ごもっとも。俺たち3人はつけるか消すかでしか話し合ってなかったけど、つけたり消したりするという頭はどうやらなかったらしい。確かに昨日も高崎先輩がヒーターの前から動いてなかったっていう。ということで、今日はオイルヒーターじゃなくてコンパクトヒーターの弱温で室温調節をすることに。
「つか、このプレッツェルまた来たんかっていう……」
「えっ、でもエージ昨日カズ先輩からフォンデュソースの作り方教わってたよね」
「教わったけど、いざこの量を前にするとなー……お前風に言えばしょぼんだっていう」
「あっ、エイジもしょぼんって言った」
「ンなトコで食いついて来んなお前は。……よし、フォンデュソース作るべ!」
「ハナも手伝おうか」
end.
++++
TKGはちょっとちょっとバイトをしたくらいではケチるのをやめないようです。油断して散財しないだけまだいいかな。菜月さんとかすぐ散財しそうだし。
というワケで暖房つけるつけない論争です。TKGは1年生ばっかり、と言うかエイジといるとやっぱりちょっとはキャラも砕けてる感じがしますね、しょぼーん
そういや今年は情報センターからプレッツェルを引き上げてくる件やんなかったけど、去年かその前かにやってるあんな感じで今年も引き上げてきました。
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