2019(04)
■果報は籠もって待て
++++
「――というワケでカズが荒れててさあ」
「その話は俺も聞いてる」
「でもさ、うちは思うワケですよ」
「多分同じことを俺も思ってる。アンタの思ってることはこうだろ? 花粉症だろうが風邪だろうが毎年何ら対策をしないお前が今更何をゴタゴタ言ってるんだと」
「さすが浅浦クン。完璧な代弁をありがとうございます」
豊葦市内某所抹茶カフェ。浅浦クンを引きずって来てちょっとした愚痴を聞いてもらってるところ。うちが浅浦クンに吐く愚痴と言えば9割9分カズのこと。まあ、愚痴っていう愚痴じゃないかもしれないけど、生まれる前からの腐れ縁の幼馴染みだし、わかってくれるかなと。
「しかしまあ、スーパーでもドラッグストアでも確かに品薄にはなってるよな」
「なんならホムセンもダメ。うちはバイト先に箱で置いてるのがまだあるから何とかやれてるけど、そのうち手に入りやすくなるかな」
「俺は銘柄とか特に気にしないから見つけたのを適当に買えばいいけど、これじゃないとダメって人もいるんだろ」
「あ、うちそう。マスクは耳痛くならないのがいい。立体よりはプリーツ。でも、ないんですよ既に!」
「転売が出てるとも聞くな」
「転売と聞くと殺意しか湧かない。だけどマスクだし、訓練されてない一般の人は買っちゃうんだろうなあ」
新型のナントカがどーしたというニュースで持ちきりの今日この頃、少しずつ手に入りにくくなっていたのが衛生用品のマスク。インフルエンザや風邪が流行る季節だから手元にあると安心なんだけど、このバタバタで街からマスクがどんどんなくなっていっちゃってたよね。
で、問題は先の愚痴ですよ。カズがこのニュースを見て自分もマスクをしなきゃって慌て始めたんですよ。だけど慌て始めた頃にはもう手遅れで。って言うか、毎年花粉症で苦しんでるしそれなりに風邪だってひくのにマスクなんかちーっともしないんだよ? マスクがないときに限って「やんなきゃ!」って。
謎のウイルスが怖いのはわかるけどさ。向島でも出たって言うからね。うちだって怖いし。同人イベントなんかまさに人がごみごみしてるところだからそういうのをもらってくるリスクも高いからね。でもですよ? インフルだって死ぬ可能性のある病気だし、花粉症だって人よりしんどいタイプなんだからマスクは毎年常備しようよって。
「如何せん未知の感染症に対する恐怖はいろんな本や映画でこれまでにも数々取り上げられてきたテーマだからな」
「ですよねえ。マンガでも多々あるよね」
「不謹慎だとは思いながらもそういうパンデミック系の作品の特設コーナーを作らせてもらったよな」
「やだ~、浅浦クンの魔改造が笑えないヤツ~」
「みんな引きこもって本でも読んでれば感染症の対策になる」
「間違いないっすね」
うちも浅浦クンもインドア派だから「みんな引きこもってれば万事解決!」なんて力isパワーみたいなムチャを言うけど、なかなかそう簡単には行かないからみんな怯えているワケで。とりあえず、うちらは春休みに入ったからまだマシだけど、社会人のみなさんは本当に大変だと思う。
だけど、こんなことになってるからっていう理由でバイトしてる本屋にパンデミック系の作品を集めたコーナーを作る浅浦雅弘のセンスよ。もちろんフィクションだけじゃなくて公衆衛生に関する本とか過去の大規模パンデミックに関する本とかそういうのも置いてるそうだけど。ホント自由度の高い店だなあ。
「でも、これを機にマスクする習慣を付けてくれればカズの花粉症も今年はちょっとはマシになるかなあ」
「アイツにそんな期待しない方がいいと思うけど」
「だよねえ、知ってた」
「と言うかこれは俺の素人考えだろうけど、本気でマスクが欲しかったらおじさんに頼んでどうにかしてもらうことだって出来るんじゃないかって」
「あっ、そうじゃん! 持つべきは医者の親!」
「でも、さすがに病院で私的な買い物は出来ないか」
「まあそうか。でも聞いてみるくらいはしてみればいいのにねえ」
「そうだよな。私的に大量キープしてるののおこぼれくらいあるかもしれないし。でも、おじさんもきっと大変だろうな。このご時世だしより敏感になってないといけなさそうだ」
「ホントだねえ。でも、伊東家って季節問わず玄関にアルコール消毒置いてるでしょ?」
「置いてるな」
「こないだカズが「実家の環境が冬のあるべき姿だということを学習した」って嘆いてた」
「アルコールも手に入らなかったんだな」
「そゆことです」
洗濯物とか食器はすごい消毒とかも徹底してるカズだけど、玄関先のアルコールまでは手を回さなかったみたい。実家で当たり前になってたそれをわざわざ下宿先のマンションでまでやんなくたって、という考えで。だけど今になって玄関先のアルコールの必要性を激しく理解したみたい。
確かにうちもそこまでガチガチに除菌消毒って気にしない方だし、常に除菌しなきゃっていう潔癖性ではない。感染症のどうこうだって、消毒は必要かもしれないけど、必要以上に顔に触らなきゃ大丈夫でしょって思ってる節はある。もしかしてうちは逆に余裕ぶっこきすぎなのかな。えっ、どうなのかな。
「まあうちらは今この抹茶パワーで1日くらいは無敵じゃない?」
「無敵ではない」
「あ、さいですか」
「抹茶パワーよりも引きこもりの方が強い」
「それは自分が引きこもってるのを正当化しようとしてるんじゃなくて?」
「引きこもりの何が悪い。あの野郎、お前は引きこもりだからとか何とかって人を小馬鹿にしやがって」
「浅浦クン、引きこもり度でカズにマウント取ろうとしてる?」
「さすがにアンタには勝てないからアイツの中でも俺は雑魚だろ」
「あ、さいですか」
end.
++++
時事です。マスクが手に入らないと大変そうなのは誰かなと思ったら、普段マスクを嫌がるいち氏の顔が浮かんできました。ミーハーだからね。
引きこもりの彼女と腐れ縁が外に出てそんないち氏の愚痴をちょっと。いや、お前いつもマスク嫌がっとるやんけ、と。まあ、可愛いレベルの愚痴ですね
そんなことより浅浦雅弘は引きこもりを正当化しすぎでは? この人ガチでゆったり温泉くらいしか旅行しなさそう
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「――というワケでカズが荒れててさあ」
「その話は俺も聞いてる」
「でもさ、うちは思うワケですよ」
「多分同じことを俺も思ってる。アンタの思ってることはこうだろ? 花粉症だろうが風邪だろうが毎年何ら対策をしないお前が今更何をゴタゴタ言ってるんだと」
「さすが浅浦クン。完璧な代弁をありがとうございます」
豊葦市内某所抹茶カフェ。浅浦クンを引きずって来てちょっとした愚痴を聞いてもらってるところ。うちが浅浦クンに吐く愚痴と言えば9割9分カズのこと。まあ、愚痴っていう愚痴じゃないかもしれないけど、生まれる前からの腐れ縁の幼馴染みだし、わかってくれるかなと。
「しかしまあ、スーパーでもドラッグストアでも確かに品薄にはなってるよな」
「なんならホムセンもダメ。うちはバイト先に箱で置いてるのがまだあるから何とかやれてるけど、そのうち手に入りやすくなるかな」
「俺は銘柄とか特に気にしないから見つけたのを適当に買えばいいけど、これじゃないとダメって人もいるんだろ」
「あ、うちそう。マスクは耳痛くならないのがいい。立体よりはプリーツ。でも、ないんですよ既に!」
「転売が出てるとも聞くな」
「転売と聞くと殺意しか湧かない。だけどマスクだし、訓練されてない一般の人は買っちゃうんだろうなあ」
新型のナントカがどーしたというニュースで持ちきりの今日この頃、少しずつ手に入りにくくなっていたのが衛生用品のマスク。インフルエンザや風邪が流行る季節だから手元にあると安心なんだけど、このバタバタで街からマスクがどんどんなくなっていっちゃってたよね。
で、問題は先の愚痴ですよ。カズがこのニュースを見て自分もマスクをしなきゃって慌て始めたんですよ。だけど慌て始めた頃にはもう手遅れで。って言うか、毎年花粉症で苦しんでるしそれなりに風邪だってひくのにマスクなんかちーっともしないんだよ? マスクがないときに限って「やんなきゃ!」って。
謎のウイルスが怖いのはわかるけどさ。向島でも出たって言うからね。うちだって怖いし。同人イベントなんかまさに人がごみごみしてるところだからそういうのをもらってくるリスクも高いからね。でもですよ? インフルだって死ぬ可能性のある病気だし、花粉症だって人よりしんどいタイプなんだからマスクは毎年常備しようよって。
「如何せん未知の感染症に対する恐怖はいろんな本や映画でこれまでにも数々取り上げられてきたテーマだからな」
「ですよねえ。マンガでも多々あるよね」
「不謹慎だとは思いながらもそういうパンデミック系の作品の特設コーナーを作らせてもらったよな」
「やだ~、浅浦クンの魔改造が笑えないヤツ~」
「みんな引きこもって本でも読んでれば感染症の対策になる」
「間違いないっすね」
うちも浅浦クンもインドア派だから「みんな引きこもってれば万事解決!」なんて力isパワーみたいなムチャを言うけど、なかなかそう簡単には行かないからみんな怯えているワケで。とりあえず、うちらは春休みに入ったからまだマシだけど、社会人のみなさんは本当に大変だと思う。
だけど、こんなことになってるからっていう理由でバイトしてる本屋にパンデミック系の作品を集めたコーナーを作る浅浦雅弘のセンスよ。もちろんフィクションだけじゃなくて公衆衛生に関する本とか過去の大規模パンデミックに関する本とかそういうのも置いてるそうだけど。ホント自由度の高い店だなあ。
「でも、これを機にマスクする習慣を付けてくれればカズの花粉症も今年はちょっとはマシになるかなあ」
「アイツにそんな期待しない方がいいと思うけど」
「だよねえ、知ってた」
「と言うかこれは俺の素人考えだろうけど、本気でマスクが欲しかったらおじさんに頼んでどうにかしてもらうことだって出来るんじゃないかって」
「あっ、そうじゃん! 持つべきは医者の親!」
「でも、さすがに病院で私的な買い物は出来ないか」
「まあそうか。でも聞いてみるくらいはしてみればいいのにねえ」
「そうだよな。私的に大量キープしてるののおこぼれくらいあるかもしれないし。でも、おじさんもきっと大変だろうな。このご時世だしより敏感になってないといけなさそうだ」
「ホントだねえ。でも、伊東家って季節問わず玄関にアルコール消毒置いてるでしょ?」
「置いてるな」
「こないだカズが「実家の環境が冬のあるべき姿だということを学習した」って嘆いてた」
「アルコールも手に入らなかったんだな」
「そゆことです」
洗濯物とか食器はすごい消毒とかも徹底してるカズだけど、玄関先のアルコールまでは手を回さなかったみたい。実家で当たり前になってたそれをわざわざ下宿先のマンションでまでやんなくたって、という考えで。だけど今になって玄関先のアルコールの必要性を激しく理解したみたい。
確かにうちもそこまでガチガチに除菌消毒って気にしない方だし、常に除菌しなきゃっていう潔癖性ではない。感染症のどうこうだって、消毒は必要かもしれないけど、必要以上に顔に触らなきゃ大丈夫でしょって思ってる節はある。もしかしてうちは逆に余裕ぶっこきすぎなのかな。えっ、どうなのかな。
「まあうちらは今この抹茶パワーで1日くらいは無敵じゃない?」
「無敵ではない」
「あ、さいですか」
「抹茶パワーよりも引きこもりの方が強い」
「それは自分が引きこもってるのを正当化しようとしてるんじゃなくて?」
「引きこもりの何が悪い。あの野郎、お前は引きこもりだからとか何とかって人を小馬鹿にしやがって」
「浅浦クン、引きこもり度でカズにマウント取ろうとしてる?」
「さすがにアンタには勝てないからアイツの中でも俺は雑魚だろ」
「あ、さいですか」
end.
++++
時事です。マスクが手に入らないと大変そうなのは誰かなと思ったら、普段マスクを嫌がるいち氏の顔が浮かんできました。ミーハーだからね。
引きこもりの彼女と腐れ縁が外に出てそんないち氏の愚痴をちょっと。いや、お前いつもマスク嫌がっとるやんけ、と。まあ、可愛いレベルの愚痴ですね
そんなことより浅浦雅弘は引きこもりを正当化しすぎでは? この人ガチでゆったり温泉くらいしか旅行しなさそう
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