2019(04)
■一周回って身バレ危機
++++
「すごい…! 本当に買い込んだね石川クン」
「これくらいは買うよね」
この季節はいろんな場所でチョコレート関係のイベントが開催されている。2月14日まで、特に週末はいろいろな場所でこのテの祭りが開かれるんだけど、今日は青女近くのプリズムテラスの特設会場で開催されるイベントに参戦することにしていた。百貨店でやっているチョコレートフェスタにはよく足を運ぶけど、場所が違えば出店している店も違う。やっぱり、いろいろ買って楽しみたい。
そして今日は青女近くのイベントということで福島さんにも声をかけていた。IF3年会の連絡ついでに前対策委員の甘党代表・高崎や奥村さんにも声をかけてみたけど週末は2人とも都合が悪かったらしく。山口がそこまで甘いものを好きだった覚えもないし、長野は病気の関係で食べられる物が限られているとか。福島さんの予定が合ってよかった。2人いればその分シェアの可能性が広がる。
「福島さんも俺と同族だろうからわかってもらえると思うけど、オタクってさ、出すところでは本当に惜しまない人種ばかりでしょ」
「そうだね。石川クンのチョコレートもそういうことでオッケー?」
「まあ、似たような物かな。同人イベントとチョコレートのイベントで財布がどうとか考えたらダメだからね」
「石川クンイベントも行くんだ」
「あれっ、福島さんはもしかして行かない人だった?」
「アタシ通販とかショップでの委託販売とかで買う方が多いかも。行きたいとは思ってるんだけど、気付いたら終わってる」
「今って通販とか委託とかやってくれる人も増えてるからね」
「ホントに! ありがたくってありがたくって。送料手数料なんか交通費とか宿泊費のことを考えたら全然安いし、作家さんに投げ銭もする」
俺は聞かれれば隠さない程度のオタク(ただし自分がイベントに出て本を出しているとはさすがに言わない)という体でやらせてもらっている。福島さんはよくいる腐女子で、ソシャゲなんかも好きでよくやっているそうだ。確かソシャゲのためにスマホを2台持ちしていたと思う。だけど、彼女は軽度の白衣フェチ程度のキャラクターだそうで、ソシャゲにズブズブの腐女子である風には見せられない、と。
彼女からすればこんな話を出来る相手もなかなかいないそうで、同人イベントとチョコレートのイベントで財布がどうとか、という例えにもうんうんと理解を示すことが出来るのが楽しいらしかった。一応青女には声優志望のオタクの子もいるようだけど、彼女は普通のアニオタだからちょっと毛色が違うとか。ジャンルや考え方が違えば一歩間違うと戦争になるし、下手に話題を切り出さないようにしていると。
「石川クンはイベントに行く人なんだよね」
「そうだね。もちろん予めどこを回るかも考えるけど、予期せぬ出会いを楽しみたいっていうのはあるからね」
「わかるよ、わかる。アタシも出会いたい」
「福島さんが推してる作家さんとか、紹介してもらおうかな」
「えっ、アタシが石川クンに?」
「予期せぬ出会いってヤツをね」
「アタシが通販でよく買ってるのは雨宮さんって人がやってるRainboundsっていうサークルの本で」
――っとっと。予期しない話ではあるけど予期しない出会いではない。お前どこにでも湧いてくるな雨宮! いや、あの人の書く話は元々BLに興味なくても話として面白いんだけど、腐女子にも普通に面白いんだな。まあ、そうじゃなきゃツイッターのフォロワーも4ケタにはならないか。いや、しかしこの話にどう反応しろと。知らない体でいればいいんだろうけどまさかの相方かよ。
「生活感が好きなんだよね。本当にいそう、ありそうな雰囲気がさ」
「なるほどね。ある意味リアリティがあるのかな。ファンタジーし過ぎないと言うか」
「石川クンの推し作家さんは?」
「推し作家と言うか、こないだネットでぶち当たった人が最近気になってて。その人は本を作ってる人じゃなくて音楽を書いてる人なんだけど」
「へえ、すごいね! どんな音楽なの?」
「ゲーム音楽だね。今開くよ」
ゲームのこういう場面でありそうな曲というのをとにかく大量に投稿しているその人が、冬のコミフェで音源を頒布していたらしい。量だけじゃなくて普通に曲もいいしいつ寝てるんだっていうレベルの投稿頻度をしてるからハンパないんだ。俺がその人を知ったのはコミフェ後だったけど、最近になってリンがその人の音源を持ってたから頼み込んで貸してもらったという経緯もある。
「RPGとかでありそうな感じだね。旅立ちのフィールド、みたいな」
「わかる?」
「わかるよ。据え置きのゲームも少しやってるから。でも、同人にしろ何にしろ、自分で作ってイベントに出る人って本当に凄いよね。ABCの2年生にさとちゃんて子がいるんだけど、その子はハンドメイドでイベントに出てて」
「ああ、ハンドメイドだったら美奈もやってるから何となくわかるよ」
「えっ、美奈ちゃんもハンドメイドやってるんだー。美奈ちゃんてどんなの作ってるの?」
「レジンとかも好きみたいだけど、あの、これ。このマスクケースは俺の誕生日に美奈が作ってくれたヤツで」
「えー、凄い。普通に雑貨屋さんで売ってるのかと思ったよ。この小物入れがいいね」
「最近俺、チョコレートフェスタとかにもよく行ってて、ゼミ室で戦利品を広げたりもするんだけど、ああいうチョコの箱って結構手芸で使うパーツとかを分けて収納するのに都合がよかったりするみたくてさ」
「ああ、なるほどね。仕切りがあったり程よい大きさだったりってことで」
「そう。しかも元々の外装が綺麗だから俺が中身を食べ終えた後の箱は大体美奈に取られるよね」
「チョコレートと言えば、さっき言ってたアタシの推し作家さんの雨宮さんの、合同サークルやってる相方さんがすごいチョコレート好きらしくて。雨宮さんを狙い撃ちしてるその相方さんの絵とかがアタシのTLにも流れて来るんだけど、いいねと一緒にこの中から何かチョコ渡したい気持ち」
「さすがに住所は公開してないだろうけど、その人がAmazonとかの欲しい物リスト公開してたらいいね」
「あっ、その手があったかも! ちょっと後で見てみよう」
……どうする、これでうちに欲しい物リストに入れてるチョコが届いたら。真面目に福島さんからのお布施なんじゃないかって考えざるを得ないんだが。雨宮をピンポイントで殴ってるつもりだったけど、そうか。ちょっと、今度からは殴り方も考えて行こう。って言うか割とガチめに身バレも秒読みだな!?
end.
++++
どうする、イシカー兄さんの欲しい物リストからガチでチョコレートが届いたら。頑張れ兄さん!
チョコレートのイベントに行った話なのに趣味の話になってしまうのは、まあしゃーないわなっていうキャラの組み合わせ。
ところで兄さんが最近気になってるっていう音源はもしかして……リン様経由で作家さん褒めたらこれでもかと送られてきそうだけどw
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「すごい…! 本当に買い込んだね石川クン」
「これくらいは買うよね」
この季節はいろんな場所でチョコレート関係のイベントが開催されている。2月14日まで、特に週末はいろいろな場所でこのテの祭りが開かれるんだけど、今日は青女近くのプリズムテラスの特設会場で開催されるイベントに参戦することにしていた。百貨店でやっているチョコレートフェスタにはよく足を運ぶけど、場所が違えば出店している店も違う。やっぱり、いろいろ買って楽しみたい。
そして今日は青女近くのイベントということで福島さんにも声をかけていた。IF3年会の連絡ついでに前対策委員の甘党代表・高崎や奥村さんにも声をかけてみたけど週末は2人とも都合が悪かったらしく。山口がそこまで甘いものを好きだった覚えもないし、長野は病気の関係で食べられる物が限られているとか。福島さんの予定が合ってよかった。2人いればその分シェアの可能性が広がる。
「福島さんも俺と同族だろうからわかってもらえると思うけど、オタクってさ、出すところでは本当に惜しまない人種ばかりでしょ」
「そうだね。石川クンのチョコレートもそういうことでオッケー?」
「まあ、似たような物かな。同人イベントとチョコレートのイベントで財布がどうとか考えたらダメだからね」
「石川クンイベントも行くんだ」
「あれっ、福島さんはもしかして行かない人だった?」
「アタシ通販とかショップでの委託販売とかで買う方が多いかも。行きたいとは思ってるんだけど、気付いたら終わってる」
「今って通販とか委託とかやってくれる人も増えてるからね」
「ホントに! ありがたくってありがたくって。送料手数料なんか交通費とか宿泊費のことを考えたら全然安いし、作家さんに投げ銭もする」
俺は聞かれれば隠さない程度のオタク(ただし自分がイベントに出て本を出しているとはさすがに言わない)という体でやらせてもらっている。福島さんはよくいる腐女子で、ソシャゲなんかも好きでよくやっているそうだ。確かソシャゲのためにスマホを2台持ちしていたと思う。だけど、彼女は軽度の白衣フェチ程度のキャラクターだそうで、ソシャゲにズブズブの腐女子である風には見せられない、と。
彼女からすればこんな話を出来る相手もなかなかいないそうで、同人イベントとチョコレートのイベントで財布がどうとか、という例えにもうんうんと理解を示すことが出来るのが楽しいらしかった。一応青女には声優志望のオタクの子もいるようだけど、彼女は普通のアニオタだからちょっと毛色が違うとか。ジャンルや考え方が違えば一歩間違うと戦争になるし、下手に話題を切り出さないようにしていると。
「石川クンはイベントに行く人なんだよね」
「そうだね。もちろん予めどこを回るかも考えるけど、予期せぬ出会いを楽しみたいっていうのはあるからね」
「わかるよ、わかる。アタシも出会いたい」
「福島さんが推してる作家さんとか、紹介してもらおうかな」
「えっ、アタシが石川クンに?」
「予期せぬ出会いってヤツをね」
「アタシが通販でよく買ってるのは雨宮さんって人がやってるRainboundsっていうサークルの本で」
――っとっと。予期しない話ではあるけど予期しない出会いではない。お前どこにでも湧いてくるな雨宮! いや、あの人の書く話は元々BLに興味なくても話として面白いんだけど、腐女子にも普通に面白いんだな。まあ、そうじゃなきゃツイッターのフォロワーも4ケタにはならないか。いや、しかしこの話にどう反応しろと。知らない体でいればいいんだろうけどまさかの相方かよ。
「生活感が好きなんだよね。本当にいそう、ありそうな雰囲気がさ」
「なるほどね。ある意味リアリティがあるのかな。ファンタジーし過ぎないと言うか」
「石川クンの推し作家さんは?」
「推し作家と言うか、こないだネットでぶち当たった人が最近気になってて。その人は本を作ってる人じゃなくて音楽を書いてる人なんだけど」
「へえ、すごいね! どんな音楽なの?」
「ゲーム音楽だね。今開くよ」
ゲームのこういう場面でありそうな曲というのをとにかく大量に投稿しているその人が、冬のコミフェで音源を頒布していたらしい。量だけじゃなくて普通に曲もいいしいつ寝てるんだっていうレベルの投稿頻度をしてるからハンパないんだ。俺がその人を知ったのはコミフェ後だったけど、最近になってリンがその人の音源を持ってたから頼み込んで貸してもらったという経緯もある。
「RPGとかでありそうな感じだね。旅立ちのフィールド、みたいな」
「わかる?」
「わかるよ。据え置きのゲームも少しやってるから。でも、同人にしろ何にしろ、自分で作ってイベントに出る人って本当に凄いよね。ABCの2年生にさとちゃんて子がいるんだけど、その子はハンドメイドでイベントに出てて」
「ああ、ハンドメイドだったら美奈もやってるから何となくわかるよ」
「えっ、美奈ちゃんもハンドメイドやってるんだー。美奈ちゃんてどんなの作ってるの?」
「レジンとかも好きみたいだけど、あの、これ。このマスクケースは俺の誕生日に美奈が作ってくれたヤツで」
「えー、凄い。普通に雑貨屋さんで売ってるのかと思ったよ。この小物入れがいいね」
「最近俺、チョコレートフェスタとかにもよく行ってて、ゼミ室で戦利品を広げたりもするんだけど、ああいうチョコの箱って結構手芸で使うパーツとかを分けて収納するのに都合がよかったりするみたくてさ」
「ああ、なるほどね。仕切りがあったり程よい大きさだったりってことで」
「そう。しかも元々の外装が綺麗だから俺が中身を食べ終えた後の箱は大体美奈に取られるよね」
「チョコレートと言えば、さっき言ってたアタシの推し作家さんの雨宮さんの、合同サークルやってる相方さんがすごいチョコレート好きらしくて。雨宮さんを狙い撃ちしてるその相方さんの絵とかがアタシのTLにも流れて来るんだけど、いいねと一緒にこの中から何かチョコ渡したい気持ち」
「さすがに住所は公開してないだろうけど、その人がAmazonとかの欲しい物リスト公開してたらいいね」
「あっ、その手があったかも! ちょっと後で見てみよう」
……どうする、これでうちに欲しい物リストに入れてるチョコが届いたら。真面目に福島さんからのお布施なんじゃないかって考えざるを得ないんだが。雨宮をピンポイントで殴ってるつもりだったけど、そうか。ちょっと、今度からは殴り方も考えて行こう。って言うか割とガチめに身バレも秒読みだな!?
end.
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どうする、イシカー兄さんの欲しい物リストからガチでチョコレートが届いたら。頑張れ兄さん!
チョコレートのイベントに行った話なのに趣味の話になってしまうのは、まあしゃーないわなっていうキャラの組み合わせ。
ところで兄さんが最近気になってるっていう音源はもしかして……リン様経由で作家さん褒めたらこれでもかと送られてきそうだけどw
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