2019(04)

■記念日は血で祝え

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「きゃー! おたま様!? これは!?」
「アヤちゃんに日頃の感謝とお祝いの気持ちを込めて~」

 今日はアヤちゃんの誕生日だということで、うちの部屋に呼びつけて薄い本を贈り付けてやりましたとも。まあ、アヤちゃんクラスになればいろんな人がお祝いしてくれるだろうけど、うちが出来ることと言ったらこれくらいなんですよね。アヤちゃんが好きであろう感じの本を作って後頭部を殴るくらいしか…!
 作った本はうちが書いてるお話のスピンオフ的な感じで、文庫サイズ200ページくらい。実質的な短編集かな。前々からこっそり準備してましたよね、それこそ年が明ける前からね。各種原稿を抱えながらアヤ誕に向けても動いてたんですね。割と常に締め切りを抱えてないと死んじゃう病を患ってるからね。

「ありがとうございますー! 帰ったらじっくり読ませていただきます!」
「お口に合えばよろしいのですが」
「でも、これはたまちゃんだから出来る殺人方法だよね」
「表現よ」
「実際今日はオフの人からもプレゼントをもらったりしたんだけど、おたま様が一番殺傷能力高かったよね」
「プレゼントってセンスが問われるよねえ」
「ホントに。難しいよね。私たまちゃんに紅茶あげたけど、こう、なんだろ。たまちゃんが作業中に紅茶飲むとかそういうの知ってるからピンポイントであげれるけど、外したときの怖さよ」
「でも、この歳にもなるとプレゼント交換なんてそうそうしなくない? オンの人へのお布施の方が多い!」
「それ! お布施! なんなら紅茶もお布施!」

 その人だからこそ出来る殺人方法というのはまさにそれで、うちの相方の片桐さんなんかがやってくるヤツですよね。片桐さんはうちの誕生日にそれはもうどエライものをぶっこんでくれまして。本当に死ぬかと思ったしこの建物の管理会社に怒られてもおかしくないくらいの絶叫をした。
 オンの人だとそれこそ性癖なんかも野ざらしになってるからピンポイントで急所を狙って来るんですよね。本当に性質悪い人たちですよ。その点に関して言えばうちも人のことは言えないんだけど、やっぱり、そこを突く能力があるならやっとかなきゃなあと思うワケで。

「オフの方では何かいい物はいただけましたか?」
「オフの頂き物と言えば、誕生日とは関係ないんだけど、研修先の先輩がさ」
「どの?」
「バンドのピアノさん」
「おお、ラスボスのね! うんうん、それで?」
「ピアノさんがバイトリーダーに就任しました」
「あれっ、そしたらアヤちゃんの後ろ盾になってくれてた先輩は勇退したってこと?」
「まだシフトには入るけど、代替わりの時期ではあるよね。で、ピアノさんが私に言うわけですよ、これからも研修生を名乗って居座るつもりならそれ相応の態度で臨めって」
「まあそうだよね」
「そこで問題視されたのが私の静電気で」
「あ~、アヤちゃん静電気酷いもんねえ。静電気強いと何がダメなの?」
「言ってパソコンとか精密機器を扱う教室だから、静電気でクラッシュする可能性もあるーって。そこで! これですよ!」

 そう言ってアヤちゃんはねじねじとケーブル状に巻かれたリングのはめられた手首を見せてくれた。それこそババーンって効果音と集中線が入ってる感じ。アヤちゃんのアクセサリーとしてはちょっと無骨って感じ。リングの色はネイビーの単色で、それもまた地味と言うか。

「なにそれ」
「これ、静電気を抑えてくれるっていうヤツで、ピアノさんが「それでもしておけ」って呆れた様子で投げ渡してくれて~! 蔑むような目がまたイイ!」
「あ、もらったんだ。よかったねえ」
「私は借りたつもりだったから返そうとしたら、私自身が静電気対策をするまでの間に何か起きないとも限らないからって」
「うちもそういうの気になってたんだけど、実際どう? 効果ある?」
「体感としてバチッとなるのがちょっと減った感はある」
「へー、本当に効果あるんだ!」
「もうね、服の素材から重ね着の仕方までダメ出しが入るからね」
「厳しい」
「でもそれがいい」
「さすアヤ」

 ある意味アヤちゃんにとって最も需要のある物で、かつ蔑みとか哀れみ、呆れといった視線というおまけ付き。その研修先の新しいバイトリーダーさん的には職場にあるリスクをひとつでも潰すための行動なんだろうけど、それでここまで性癖を刺激するとは、ですよ。
 静電気軽減ブレスレット的な物は雑貨屋さんとかでもたまに見るけど、それこそアヤちゃんがしてそうなかわいい飾り付きのヤツとかだよね、そういうお店にあるのって。線も細くってさ。だけど「機能に特化しました!」的なシンプルさとか無骨さとアヤちゃんの対比がまたいいね。

「ここで地元の先輩さんが見つかれば最高なんだけどねえ、アヤちゃん」
「あー、あー、きーこーえーなーいー、わー」
「現実逃避しちゃったよ」
「現実逃避はおうちに帰ってから改めてするんで。しばらくツイッターとか静かになると思いますけどそのときはたまちゃんに殺されたと思っていただいて」
「ゆーてアヤちゃん元々オンの人だからプレゼントは実質襲撃だよね」


end.


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カナコの誕生日だということで、慧梨夏がカナコを殴り殺しに来たようです。まあやるよね。殴り殴られは日常の人たちです。
締め切りを抱えてないと死ぬ病気の慧梨夏、カナコもためだけの本をいつから作ってたのやら。イベントにも出てるし他も充実してるしユニット説出るわそら
と言うか、地元の先輩さんからピアノの先輩様に完全に魂移ってる感じだけど大丈夫かカナコ

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