2019(04)
■土管と猫と風呂のある町
++++
猫を追い掛け回してどろどろになってしまったから、朝霞クンとスーパー銭湯に行くことになった。朝霞クンが、かわいい猫がいるからお前に見せたいんだと言って大学近くの空き地で張ってたんだけど、なかなか見つからなくて。やっと見つけたと思ったら狭い隙間に入って行ってしまったから、朝霞クンは土管に頭を突っ込んだりしてもう大変。
結局、そのかわいい子猫は俺の足元に来てくれてそれを抱き上げることには成功したけど、無理やり土管から抜け出してきた朝霞クンは着ていたカーディガンを破るわ泥だらけだわで大層なことになっちゃったよね。土管に頭を突っ込むくらいかわいいかって聞かれると、まあ、猫だしかわいいよね。朝霞クン的には、この子猫とステージスターだった頃の俺が似てるっていうのがポイントだったみたい。
カーディガンは破れちゃったし、他の服も汚れちゃったから朝霞クンは一旦部屋に戻って支度をしたいって言う。せっかくお風呂に行くのに汚れた服をまた着るわけにもいかないから、それはわかったよと了承をして。泥汚れだし、すぐ洗濯機にかけた方がいいかもね。でも、本当に朝霞クンてこうと決めたら曲げないと言うか、諦めないよね。土管に頭を突っ込んでまで追いかけた猫だもん。
「待たせたな」
「あっ。お色直し完了?」
「そしたら行くか」
「朝霞クン、せっかく部屋に寄ったのに手ぶらでいいの?」
「普段からあんま風呂とか行かないし、風呂セットみたいなモンは持ってないんだ。現地調達でいいかなと思って」
シャンプーもボディーソープもお風呂の中にあるし、タオルなんかはカウンターか自販機か、どこかしら買う場所があるだろうと敢えて手ぶらで来たそうだ。一人暮らしだとなかなかお風呂に浸かる機会もないだろうから、銭湯に行く人は行くんだろうとは思ったけど、朝霞クンは意外にあまり行かない方の人だったんだね。
俺の中で銭湯好きと言えば、伊東クンかなって。IFサッカー部でフットサルとかをした後に、銭湯行きたいってよく言ってるような気がする。厳密には伊東クンの幼馴染の子が銭湯好きなんだってね。それで自分もたまに行くようになったって。回数券なんかも買ってるし、お風呂セットもその幼馴染の子の車に乗せてるって。
「山口、下駄箱一緒に入れようぜ。2段あるし」
「そうだね。朝霞クン100円ある? 鍵のお金」
「あるある。はいオッケ。で、受付が」
「あっちだね」
会員じゃない大人2人で1600円。一瞬、結構するなって思ったけど、そんなモンなんだろうね。古き良き銭湯と一緒に考えちゃいけない。スーパー銭湯なんだから。スーパーなんだから。マッサージや岩盤浴、レストランまであって、ここで1日過ごせるようだ。岩盤浴コーナーの休憩スペースには、映画が流されている。朝霞クン、あっちには何もないですよ~。
「へえ、あかすりもあるのか」
「痛そう」
「でも、気持ちよさそうじゃないか?」
「え~、絶対痛いよ」
「マッサージにしろ何にしろ、その多少の痛みを越えた先の気持ちよさがあるんじゃないか」
「言いたいことはわかるけど、俺は痛いの嫌だな」
男湯のロッカーで服を脱ぎつつ、周りには何があるかなってきょろきょろ見渡す。アメニティの自販機や、飲み物の自販機、体重計、血圧計、飲料水などなど。とりあえず、手拭いとバスタオルをバーコードで購入。リストバンド式のバーコードで館内を歩くらしい。自販機やマッサージなどもこれで通して、帰るときに清算するんだって。
「朝霞クン、ちょっと痩せた?」
「どうかな。実家では結構食ってたけどこっちでは、つか今は金欠だし、プラマイゼロくらいじゃないかな」
「えっ、お金ないの。どうしたの」
「きっかけ作った奴が何を言ってんだ。いや、使ったのは俺か。先月の旅行から、使いすぎたんだよ。でもって例年この時期はバイト断ってたから、それを学習しやがったのか会社も仕事依頼を寄こしてこなくてよ。まあ、今は大石のバイト先で吊札付けの仕事始めたから金欠はもうしばらくの辛抱だな。さ、行こうぜ」
風呂場へと繋がる引き戸を開ければむわっとした風呂場の空気が流れ込んできて、桶が床にぶつかる音が反響してる。よくある銭湯のイメージは、スーパー銭湯にもあるみたい。風呂場の中にはサウナルームがあったり、ジャグジー式のお風呂がある。露天風呂の奥の方にも、ここからじゃ何かはわからないけど小屋が見える。
「明るいうちから風呂に入るって贅沢だよな」
「ホントに」
「つか、お前って夜から働くだろ。風呂っていつ入ってんだ?」
「帰ってきてからだったり、今日はもういいや~ってなるときは朝だったりするね」
「へえ、やっぱそうなるんだな」
「朝霞クンは? 毎日ちゃんとお風呂……ってか、部屋だったらシャワーになっちゃうのかな」
「そうだな。清潔にしなきゃいけないとは思いつつ、作業とか映画とかに夢中になってると1日飛ばすとかは割と普通で、人と会うことになっちまったらボディシートで応急処置をしたり」
「あ~、想像つく~。でも朝霞クン緊張性頭痛持ちなんだから血行は良くした方がいいよ」
「わかってはいるんだけどな」
ジャグジーも入りたいし露天もいいな、なんて朝霞クンはお風呂の機会を楽しもうとしてる。もしかするとこれも後学のためになっちゃうのかもしれないけど。こないだの温泉とはまた違う町の風景として刻まれるのかな。
「一通り回ってみる?」
「そうだな。せっかく来たしいろいろ楽しみたい」
「お背中流しましょうか~」
「いや、自分でやる、ってか何すんだ!」
end.
++++
2年前? 3年前? くらいにやった洋朝の猫探訪の話を引っ張って来て、お風呂のターンです。
朝霞Pは普段シャワーだし、なんなら物事に集中してるとすっ飛ばすとかも割とあるらしい……冬はともかく夏場とかどーしてたんや……
朝霞Pの頭痛がちゃんと緊張性のヤツだって理解してるやまよである。血行良くした方がいいよ~ってね
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猫を追い掛け回してどろどろになってしまったから、朝霞クンとスーパー銭湯に行くことになった。朝霞クンが、かわいい猫がいるからお前に見せたいんだと言って大学近くの空き地で張ってたんだけど、なかなか見つからなくて。やっと見つけたと思ったら狭い隙間に入って行ってしまったから、朝霞クンは土管に頭を突っ込んだりしてもう大変。
結局、そのかわいい子猫は俺の足元に来てくれてそれを抱き上げることには成功したけど、無理やり土管から抜け出してきた朝霞クンは着ていたカーディガンを破るわ泥だらけだわで大層なことになっちゃったよね。土管に頭を突っ込むくらいかわいいかって聞かれると、まあ、猫だしかわいいよね。朝霞クン的には、この子猫とステージスターだった頃の俺が似てるっていうのがポイントだったみたい。
カーディガンは破れちゃったし、他の服も汚れちゃったから朝霞クンは一旦部屋に戻って支度をしたいって言う。せっかくお風呂に行くのに汚れた服をまた着るわけにもいかないから、それはわかったよと了承をして。泥汚れだし、すぐ洗濯機にかけた方がいいかもね。でも、本当に朝霞クンてこうと決めたら曲げないと言うか、諦めないよね。土管に頭を突っ込んでまで追いかけた猫だもん。
「待たせたな」
「あっ。お色直し完了?」
「そしたら行くか」
「朝霞クン、せっかく部屋に寄ったのに手ぶらでいいの?」
「普段からあんま風呂とか行かないし、風呂セットみたいなモンは持ってないんだ。現地調達でいいかなと思って」
シャンプーもボディーソープもお風呂の中にあるし、タオルなんかはカウンターか自販機か、どこかしら買う場所があるだろうと敢えて手ぶらで来たそうだ。一人暮らしだとなかなかお風呂に浸かる機会もないだろうから、銭湯に行く人は行くんだろうとは思ったけど、朝霞クンは意外にあまり行かない方の人だったんだね。
俺の中で銭湯好きと言えば、伊東クンかなって。IFサッカー部でフットサルとかをした後に、銭湯行きたいってよく言ってるような気がする。厳密には伊東クンの幼馴染の子が銭湯好きなんだってね。それで自分もたまに行くようになったって。回数券なんかも買ってるし、お風呂セットもその幼馴染の子の車に乗せてるって。
「山口、下駄箱一緒に入れようぜ。2段あるし」
「そうだね。朝霞クン100円ある? 鍵のお金」
「あるある。はいオッケ。で、受付が」
「あっちだね」
会員じゃない大人2人で1600円。一瞬、結構するなって思ったけど、そんなモンなんだろうね。古き良き銭湯と一緒に考えちゃいけない。スーパー銭湯なんだから。スーパーなんだから。マッサージや岩盤浴、レストランまであって、ここで1日過ごせるようだ。岩盤浴コーナーの休憩スペースには、映画が流されている。朝霞クン、あっちには何もないですよ~。
「へえ、あかすりもあるのか」
「痛そう」
「でも、気持ちよさそうじゃないか?」
「え~、絶対痛いよ」
「マッサージにしろ何にしろ、その多少の痛みを越えた先の気持ちよさがあるんじゃないか」
「言いたいことはわかるけど、俺は痛いの嫌だな」
男湯のロッカーで服を脱ぎつつ、周りには何があるかなってきょろきょろ見渡す。アメニティの自販機や、飲み物の自販機、体重計、血圧計、飲料水などなど。とりあえず、手拭いとバスタオルをバーコードで購入。リストバンド式のバーコードで館内を歩くらしい。自販機やマッサージなどもこれで通して、帰るときに清算するんだって。
「朝霞クン、ちょっと痩せた?」
「どうかな。実家では結構食ってたけどこっちでは、つか今は金欠だし、プラマイゼロくらいじゃないかな」
「えっ、お金ないの。どうしたの」
「きっかけ作った奴が何を言ってんだ。いや、使ったのは俺か。先月の旅行から、使いすぎたんだよ。でもって例年この時期はバイト断ってたから、それを学習しやがったのか会社も仕事依頼を寄こしてこなくてよ。まあ、今は大石のバイト先で吊札付けの仕事始めたから金欠はもうしばらくの辛抱だな。さ、行こうぜ」
風呂場へと繋がる引き戸を開ければむわっとした風呂場の空気が流れ込んできて、桶が床にぶつかる音が反響してる。よくある銭湯のイメージは、スーパー銭湯にもあるみたい。風呂場の中にはサウナルームがあったり、ジャグジー式のお風呂がある。露天風呂の奥の方にも、ここからじゃ何かはわからないけど小屋が見える。
「明るいうちから風呂に入るって贅沢だよな」
「ホントに」
「つか、お前って夜から働くだろ。風呂っていつ入ってんだ?」
「帰ってきてからだったり、今日はもういいや~ってなるときは朝だったりするね」
「へえ、やっぱそうなるんだな」
「朝霞クンは? 毎日ちゃんとお風呂……ってか、部屋だったらシャワーになっちゃうのかな」
「そうだな。清潔にしなきゃいけないとは思いつつ、作業とか映画とかに夢中になってると1日飛ばすとかは割と普通で、人と会うことになっちまったらボディシートで応急処置をしたり」
「あ~、想像つく~。でも朝霞クン緊張性頭痛持ちなんだから血行は良くした方がいいよ」
「わかってはいるんだけどな」
ジャグジーも入りたいし露天もいいな、なんて朝霞クンはお風呂の機会を楽しもうとしてる。もしかするとこれも後学のためになっちゃうのかもしれないけど。こないだの温泉とはまた違う町の風景として刻まれるのかな。
「一通り回ってみる?」
「そうだな。せっかく来たしいろいろ楽しみたい」
「お背中流しましょうか~」
「いや、自分でやる、ってか何すんだ!」
end.
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2年前? 3年前? くらいにやった洋朝の猫探訪の話を引っ張って来て、お風呂のターンです。
朝霞Pは普段シャワーだし、なんなら物事に集中してるとすっ飛ばすとかも割とあるらしい……冬はともかく夏場とかどーしてたんや……
朝霞Pの頭痛がちゃんと緊張性のヤツだって理解してるやまよである。血行良くした方がいいよ~ってね
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