2019(03)
■まだ三箇日のうちはお休み
++++
ピンポーンとインターホンが鳴って、兄さんが「出てちょうだい」って言うから出てみれば。誰も宅配は頼んでないし、お客さんが来るような家でもないから何だろうって思ったんだよね。はーいと出てみれば、そこにいたのは塩見さん。
あずさ以外に誰かが訪ねて来るイメージもなかった上に、よりによってどうして塩見さんがっていう驚きがある。そんな驚きもそこそこに、会社でお世話になっているし、今年もお世話になるから挨拶はきっちりしておかないとというのが先に来る。
「あっ、塩見さん。あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます。千晴君は?」
「中でご飯作ってます。兄さんに用事ですか? 汚いところですけど上がって下さい」
「お邪魔します」
「兄さーん、塩見さんがいらっしゃったよー」
いつもよりたくさんご飯を作ってるなあと思ったんだよね。俺と兄さんも結構ご飯を食べる方だけど、それでも食べ切れるかなって感じの量だったんだよね。塩見さんがいるならこの大量のご飯にも納得だ。
昨日から食べてたおせちもあるけど、その他にはとことんお肉だ。ローストビーフの量が物凄い。ちなみに、兄さんはお店を明日まで休みにするっていう風に言ってて、明日まではとことんのんびりしたり初売りに出たりするって宣言してたんだ。
俺はと言えば、バイトは会社のカレンダー通りだから先週の土曜日から休みで、次はいつだったっけ。火曜日の朝だったかな。今は授業との兼ね合いがあるからあんまり入れないけど、テストが終われば本気で行ける。
「拓馬、いらっしゃい。あけましておめでと~!」
「今年もよろしくお願いします」
「兄さん、塩見さんを呼んでたの?」
「拓馬は一人暮らしだし、呼んだら賑やかでいいかなーと思って」
「すみません塩見さん、兄さんの気紛れで」
「いや。飯食わしてもらえるっつって聞いて喜んで来た。あとこれ、差し入れの酒」
「ありがとうございます」
「あらそんな、よかったのに」
「せっかくですし、千晴君も飲みましょうよ」
「そうね、無礼講よー! ちーも飲むわよ!」
おせちと、兄さんが作ってくれたローストビーフと、塩見さんが持って来てくれたお酒とおつまみをテーブルの上に広げていく。話すことは各々の近況や、これからのこと。それから、どこそこにパン屋が出来たとかいう他愛もない世間話なんかも。
俺と兄さんはこの年末年始は何をするでもなく、どこに行くでもなく家で過ごしていた。塩見さんは大晦日にライブイベントがあったとかで、それに向けた練習や、本番当日はひたすら演奏していたそうだ。そう、塩見さんってベースやってるんだよね。
塩見さんは忙しくなければバンド活動のために有給もガンガン使ってるし、それもちゃんと自分のやるべき仕事をきっちり終わらせて、もしも何かが降って湧いても対処できるようにしていってあるんだよね。言付けと言うか引継ぎと言うか。メモ書きを見れば誰でもわかるように要点が書いてある。
お正月に入ってからの塩見さんは、それこそそれまでの反動か外へ出ていくと言うよりかは家でゆっくりと過ごす時間が増えたって。買い物に行く用事とかもないし、イベントも年末で大体区切りがついたからって。塩見さんが家でゆっくりっていうイメージもないんだけどね。
「ん。この黒豆美味いっすね。こういうのって、千晴君が作るんすか」
「それはちーが煮てくれたのよ」
「千景、お前やるな。どんだけでもいける」
「ありがとうございます。って言うか塩見さんがどれだけでもいけるって言うと冗談じゃ済まなさそうです」
「食っていいんならガチでどんだけでも行くぞ」
「あら、残ってもあれだし食べたいなら食べちゃいなさいよ」
「あっ、俺も食べます!」
残ってた黒豆を3人で何となく分け合って。うちはおせちを全部きちんと作ることはせずに、食べたい物だけ作るっていう形式を採用してる。黒豆は、黒豆に込められた願い事がうちに一番必要だからっていう理由で作ったんだ。マメ(勤勉)に働き、マメ(丈夫で元気)に暮らせるようにっていう。
「そうだ千景、お前ツミツミの調子はどうだ」
「も~、昨日のセレクトガチャが酷いですよ! 一応それまでコイン稼ぎは頑張ってたんですけど」
「何万注ぎ込んだ」
「250万です」
「おっ、結構行ったな」
「塩見さんは何万ほど」
「400万」
「おお~。それで、お目当ての物は引けました?」
「まあ、何とかな。お前は」
「いや~、俺はダメでした。それ以上やっても後から響くし引き際を見極めなきゃって思って」
「確かに引き際は大事だ。ここまでの短期決戦じゃ無課金勢には限界がある」
塩見さんのツミツミは本当に凄い。出すスコアもそうだし、いろいろとケタ違いって言うか。ゲーム内通貨のコイン稼ぎも俺とはマルの数が普通に1コ違ってたりするもんね。1回3万のガチャに400万って凄いよなあ。
そしてさっそくスマホを取り出し、互いのツミツミのゲームデータを見せ合いっこが始まって。うーん、やっぱり凄いなあ。現時点で所持コインが1000万って。400万使ってこれって凄くない? 俺も休みの間に使ったお金を少しでも取り戻しておかなくちゃ。現実でもゲームでもお金は大事。
「アンタたち、こうして見てるとホントに仲良いわよね。牧歌的でほのぼのするわ」
「牧歌的…?」
「拓馬、アンタいつから仕事なの? まだ余裕あるようなら明日でも焼肉行かない?」
「仕事は明後日からすね。明日は夜がもう予定あるんで、昼なら行けますよ」
「あらっ、じゃあランチにお肉ね」
「って言うか塩見さん、土曜日からもう仕事なんですか?」
「通販の出荷な。休みの分が溜まってっから」
「えー! 俺も働きたいんですけど!」
「それは俺に言われても困る」
end.
++++
お正月の大石家に塩見さんがお招きされました。ベティさんの犯行ですね。
塩見さんも塩見さんで音楽祭以降は割とゆったりしてたんですかね。ちなみに明日の夜の用事はSDX新年会です。
で、義兄弟たちがツミツミのデータ見せ合ってるのがただただかわいいヤツ。かけたコインはケタ違いだけどな!
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ピンポーンとインターホンが鳴って、兄さんが「出てちょうだい」って言うから出てみれば。誰も宅配は頼んでないし、お客さんが来るような家でもないから何だろうって思ったんだよね。はーいと出てみれば、そこにいたのは塩見さん。
あずさ以外に誰かが訪ねて来るイメージもなかった上に、よりによってどうして塩見さんがっていう驚きがある。そんな驚きもそこそこに、会社でお世話になっているし、今年もお世話になるから挨拶はきっちりしておかないとというのが先に来る。
「あっ、塩見さん。あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます。千晴君は?」
「中でご飯作ってます。兄さんに用事ですか? 汚いところですけど上がって下さい」
「お邪魔します」
「兄さーん、塩見さんがいらっしゃったよー」
いつもよりたくさんご飯を作ってるなあと思ったんだよね。俺と兄さんも結構ご飯を食べる方だけど、それでも食べ切れるかなって感じの量だったんだよね。塩見さんがいるならこの大量のご飯にも納得だ。
昨日から食べてたおせちもあるけど、その他にはとことんお肉だ。ローストビーフの量が物凄い。ちなみに、兄さんはお店を明日まで休みにするっていう風に言ってて、明日まではとことんのんびりしたり初売りに出たりするって宣言してたんだ。
俺はと言えば、バイトは会社のカレンダー通りだから先週の土曜日から休みで、次はいつだったっけ。火曜日の朝だったかな。今は授業との兼ね合いがあるからあんまり入れないけど、テストが終われば本気で行ける。
「拓馬、いらっしゃい。あけましておめでと~!」
「今年もよろしくお願いします」
「兄さん、塩見さんを呼んでたの?」
「拓馬は一人暮らしだし、呼んだら賑やかでいいかなーと思って」
「すみません塩見さん、兄さんの気紛れで」
「いや。飯食わしてもらえるっつって聞いて喜んで来た。あとこれ、差し入れの酒」
「ありがとうございます」
「あらそんな、よかったのに」
「せっかくですし、千晴君も飲みましょうよ」
「そうね、無礼講よー! ちーも飲むわよ!」
おせちと、兄さんが作ってくれたローストビーフと、塩見さんが持って来てくれたお酒とおつまみをテーブルの上に広げていく。話すことは各々の近況や、これからのこと。それから、どこそこにパン屋が出来たとかいう他愛もない世間話なんかも。
俺と兄さんはこの年末年始は何をするでもなく、どこに行くでもなく家で過ごしていた。塩見さんは大晦日にライブイベントがあったとかで、それに向けた練習や、本番当日はひたすら演奏していたそうだ。そう、塩見さんってベースやってるんだよね。
塩見さんは忙しくなければバンド活動のために有給もガンガン使ってるし、それもちゃんと自分のやるべき仕事をきっちり終わらせて、もしも何かが降って湧いても対処できるようにしていってあるんだよね。言付けと言うか引継ぎと言うか。メモ書きを見れば誰でもわかるように要点が書いてある。
お正月に入ってからの塩見さんは、それこそそれまでの反動か外へ出ていくと言うよりかは家でゆっくりと過ごす時間が増えたって。買い物に行く用事とかもないし、イベントも年末で大体区切りがついたからって。塩見さんが家でゆっくりっていうイメージもないんだけどね。
「ん。この黒豆美味いっすね。こういうのって、千晴君が作るんすか」
「それはちーが煮てくれたのよ」
「千景、お前やるな。どんだけでもいける」
「ありがとうございます。って言うか塩見さんがどれだけでもいけるって言うと冗談じゃ済まなさそうです」
「食っていいんならガチでどんだけでも行くぞ」
「あら、残ってもあれだし食べたいなら食べちゃいなさいよ」
「あっ、俺も食べます!」
残ってた黒豆を3人で何となく分け合って。うちはおせちを全部きちんと作ることはせずに、食べたい物だけ作るっていう形式を採用してる。黒豆は、黒豆に込められた願い事がうちに一番必要だからっていう理由で作ったんだ。マメ(勤勉)に働き、マメ(丈夫で元気)に暮らせるようにっていう。
「そうだ千景、お前ツミツミの調子はどうだ」
「も~、昨日のセレクトガチャが酷いですよ! 一応それまでコイン稼ぎは頑張ってたんですけど」
「何万注ぎ込んだ」
「250万です」
「おっ、結構行ったな」
「塩見さんは何万ほど」
「400万」
「おお~。それで、お目当ての物は引けました?」
「まあ、何とかな。お前は」
「いや~、俺はダメでした。それ以上やっても後から響くし引き際を見極めなきゃって思って」
「確かに引き際は大事だ。ここまでの短期決戦じゃ無課金勢には限界がある」
塩見さんのツミツミは本当に凄い。出すスコアもそうだし、いろいろとケタ違いって言うか。ゲーム内通貨のコイン稼ぎも俺とはマルの数が普通に1コ違ってたりするもんね。1回3万のガチャに400万って凄いよなあ。
そしてさっそくスマホを取り出し、互いのツミツミのゲームデータを見せ合いっこが始まって。うーん、やっぱり凄いなあ。現時点で所持コインが1000万って。400万使ってこれって凄くない? 俺も休みの間に使ったお金を少しでも取り戻しておかなくちゃ。現実でもゲームでもお金は大事。
「アンタたち、こうして見てるとホントに仲良いわよね。牧歌的でほのぼのするわ」
「牧歌的…?」
「拓馬、アンタいつから仕事なの? まだ余裕あるようなら明日でも焼肉行かない?」
「仕事は明後日からすね。明日は夜がもう予定あるんで、昼なら行けますよ」
「あらっ、じゃあランチにお肉ね」
「って言うか塩見さん、土曜日からもう仕事なんですか?」
「通販の出荷な。休みの分が溜まってっから」
「えー! 俺も働きたいんですけど!」
「それは俺に言われても困る」
end.
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お正月の大石家に塩見さんがお招きされました。ベティさんの犯行ですね。
塩見さんも塩見さんで音楽祭以降は割とゆったりしてたんですかね。ちなみに明日の夜の用事はSDX新年会です。
で、義兄弟たちがツミツミのデータ見せ合ってるのがただただかわいいヤツ。かけたコインはケタ違いだけどな!
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