2018
■live a healthy life!
++++
「う~ん、今日もういろうがおいしゅうございますね」
「……いつ見ても引くぞ。どうやったらういろうを丸々一本そのまま齧りつこうという発想になるんだ」
「ういろうは食べても2~3切れくらいじゃないか?」
こーたは和菓子が好きだ。洋菓子も好きらしいけど、お茶と一緒に食べる和菓子が最高に美味いらしい。そんなこーたのおやつタイムを眺めながら、俺と菜月先輩はドン引きしていた。こーたがよくやるのが、ういろうのポッキー食いだ。要は、切り分けられる前のそれに丸ごとかじりつく。
「そんな話をしてたら甘い物が食べたくなってきた。誰か買って来てくれないかなー」
「まさかそんな都合よく」
――などと言っていたら割とあるのがこのMMPというサークルなのだ。菜月先輩の言霊か神通力のような物は確かに存在する。都合よく鴨が葱を背負って来ること数知れず。……だからどっちの先輩も調子に乗るんだろうなあ。
「おはよー。差し入れ買ってきたよ」
「おっ、来たな三井。差し入れの中身は何だ?」
「シュークリームだよ。バイト先の催事コーナーに売っててさ」
「ほら来た!」
「う、うわー」
三井先輩は180センチを超える長身にモデル並みのスタイル、顔はイタリア系でちょっと濃い目。俺の好みではないけどまあイケメンの部類かもしれない。MMPではアナウンス部長兼機材管理担当を務める3年生だ。
この三井先輩の何がアレって、菜月先輩に対するあからさまな下心があって、それを抜きにしても謎によく差し入れなどをサークルに買って来てくれるのだ。最早三井先輩と書いて財布と読み、隙さえあれば菜月先輩に貢いでるとかそんな感じ。
もちろんそんな状況を愛の伝道師でMMPの敏腕代表会計の圭斗先輩は生温い目線でじとーっと見守っている。曰く、「菜月に貢いだところで何が返ってくるワケでも彼女に出来るワケでもないのに三井はよくやるね」とのこと。
「う、うまー!」
「でしょ? 菜月は絶対好きだと思って。あっ、野坂もこーたも食べてね」
「三井先輩、いただきます!」
「やったーい。私もいただきまーす」
「こーたお前ういろう食ったのにまだ食うのかよ」
「別腹ですよ」
「こーた、健康にも気を遣った方がいいんじゃない? またちょっと太らなかった?」
「メタボは今更ですからねえ。運動を始める気にもなりませんし。ああ、野坂さんが憎い。私以上に食べているのにどうして太らないんでしょ。は~あ、これだからイケメン詐欺は」
「うるせーよ、俺はこれまで運動をしてきて培ってきた肉体のなせる燃費の悪さであってだなあ」
むにむにと、こーたの腹をつまみながら話していると、いつしか話題は健康に気を遣うという内容に。健康に気を遣うには具体的にどうすればいいんだろうかというような話だ。すると、案外各々が個々人の課題を持っていたりもする。
「私や野坂さんの場合は睡眠時間の確保ですね。あっ、野坂さんは電車の中で爆睡して終点で折り返してましたっけ~、ぷーくすくす」
「ウザドルうぜー」
「カンザキ、お前は食生活の改善もあるんじゃないか?」
「ま~あ、菜月先輩! どの口が仰るんです~!? 食生活の改善が必要なのはド偏食の菜月先輩じゃありませんこと~!?」
「こーたお前、何キャラなんだそれ。でも菜月先輩にこそ食生活の改善が必要だというのは否定しません。野菜を食べましょう。せめてお菓子を主食にするのはやめた方がいいかと」
「む」
「いやいや、それより運動じゃない? それでなくてもMMPって文化系サークルだし、意識しないと体なんて動かさないでしょ」
「大学に来るのだけでも十分運動だけどな」
「菜月は徒歩だからまだウォーキングになってるかもしれないけど、こーたは電車だしねえ。野坂も高校までの遺産でどこまで頑張れるか」
「確かに高校までの遺産ですけど、そう言う三井先輩は何かやってるんですか?」
「そう、聞いて。僕は最近ランニングを始めたよ。最初は家の近所を走ってたんだけど、ランニングコースに良さそうな場所を見つけたらそこに行って~。ウエアやシューズも揃えたよ。それでね、緑ヶ丘大学の中にあるランニングコースが――」
すると、菜月先輩がそっと俺の脇腹を小突き、三井先輩の演説を聞いているこーたを後目にこそっと耳打ちを。「三井の話のベースは自慢話なんだから、「お前はどうしてる?」なんて聞いたら話が終わらないじゃないか」と。
さすが、3年目の付き合いにもなると三井先輩の扱い方も極まって来ているなあという感じがする。ダテに財布にしてないな! 三井先輩のランニング武勇伝にこーたが巻き込まれて続ける中、俺は自分の体について少し考える。
「たまに体は動かしたいんですけどね」
「そしたら、今度収録後に余裕があったら駐車場でバドミントンでもやるか? 友達にラケット借りるし」
end.
++++
今回はそんなにアレじゃない三井サンのお話。これからだんだんアレになってくるので普通の話もやっておかねばならん
菜月さんの言霊……甘い物が欲しいと言えば甘い物がやってくるよ! 圭斗さんの目でも見てみたい
さて、緑ヶ丘のランニングコースにも遠征しているらしい三井サンですが、これから健康づくりはどうなることやら
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「う~ん、今日もういろうがおいしゅうございますね」
「……いつ見ても引くぞ。どうやったらういろうを丸々一本そのまま齧りつこうという発想になるんだ」
「ういろうは食べても2~3切れくらいじゃないか?」
こーたは和菓子が好きだ。洋菓子も好きらしいけど、お茶と一緒に食べる和菓子が最高に美味いらしい。そんなこーたのおやつタイムを眺めながら、俺と菜月先輩はドン引きしていた。こーたがよくやるのが、ういろうのポッキー食いだ。要は、切り分けられる前のそれに丸ごとかじりつく。
「そんな話をしてたら甘い物が食べたくなってきた。誰か買って来てくれないかなー」
「まさかそんな都合よく」
――などと言っていたら割とあるのがこのMMPというサークルなのだ。菜月先輩の言霊か神通力のような物は確かに存在する。都合よく鴨が葱を背負って来ること数知れず。……だからどっちの先輩も調子に乗るんだろうなあ。
「おはよー。差し入れ買ってきたよ」
「おっ、来たな三井。差し入れの中身は何だ?」
「シュークリームだよ。バイト先の催事コーナーに売っててさ」
「ほら来た!」
「う、うわー」
三井先輩は180センチを超える長身にモデル並みのスタイル、顔はイタリア系でちょっと濃い目。俺の好みではないけどまあイケメンの部類かもしれない。MMPではアナウンス部長兼機材管理担当を務める3年生だ。
この三井先輩の何がアレって、菜月先輩に対するあからさまな下心があって、それを抜きにしても謎によく差し入れなどをサークルに買って来てくれるのだ。最早三井先輩と書いて財布と読み、隙さえあれば菜月先輩に貢いでるとかそんな感じ。
もちろんそんな状況を愛の伝道師でMMPの敏腕代表会計の圭斗先輩は生温い目線でじとーっと見守っている。曰く、「菜月に貢いだところで何が返ってくるワケでも彼女に出来るワケでもないのに三井はよくやるね」とのこと。
「う、うまー!」
「でしょ? 菜月は絶対好きだと思って。あっ、野坂もこーたも食べてね」
「三井先輩、いただきます!」
「やったーい。私もいただきまーす」
「こーたお前ういろう食ったのにまだ食うのかよ」
「別腹ですよ」
「こーた、健康にも気を遣った方がいいんじゃない? またちょっと太らなかった?」
「メタボは今更ですからねえ。運動を始める気にもなりませんし。ああ、野坂さんが憎い。私以上に食べているのにどうして太らないんでしょ。は~あ、これだからイケメン詐欺は」
「うるせーよ、俺はこれまで運動をしてきて培ってきた肉体のなせる燃費の悪さであってだなあ」
むにむにと、こーたの腹をつまみながら話していると、いつしか話題は健康に気を遣うという内容に。健康に気を遣うには具体的にどうすればいいんだろうかというような話だ。すると、案外各々が個々人の課題を持っていたりもする。
「私や野坂さんの場合は睡眠時間の確保ですね。あっ、野坂さんは電車の中で爆睡して終点で折り返してましたっけ~、ぷーくすくす」
「ウザドルうぜー」
「カンザキ、お前は食生活の改善もあるんじゃないか?」
「ま~あ、菜月先輩! どの口が仰るんです~!? 食生活の改善が必要なのはド偏食の菜月先輩じゃありませんこと~!?」
「こーたお前、何キャラなんだそれ。でも菜月先輩にこそ食生活の改善が必要だというのは否定しません。野菜を食べましょう。せめてお菓子を主食にするのはやめた方がいいかと」
「む」
「いやいや、それより運動じゃない? それでなくてもMMPって文化系サークルだし、意識しないと体なんて動かさないでしょ」
「大学に来るのだけでも十分運動だけどな」
「菜月は徒歩だからまだウォーキングになってるかもしれないけど、こーたは電車だしねえ。野坂も高校までの遺産でどこまで頑張れるか」
「確かに高校までの遺産ですけど、そう言う三井先輩は何かやってるんですか?」
「そう、聞いて。僕は最近ランニングを始めたよ。最初は家の近所を走ってたんだけど、ランニングコースに良さそうな場所を見つけたらそこに行って~。ウエアやシューズも揃えたよ。それでね、緑ヶ丘大学の中にあるランニングコースが――」
すると、菜月先輩がそっと俺の脇腹を小突き、三井先輩の演説を聞いているこーたを後目にこそっと耳打ちを。「三井の話のベースは自慢話なんだから、「お前はどうしてる?」なんて聞いたら話が終わらないじゃないか」と。
さすが、3年目の付き合いにもなると三井先輩の扱い方も極まって来ているなあという感じがする。ダテに財布にしてないな! 三井先輩のランニング武勇伝にこーたが巻き込まれて続ける中、俺は自分の体について少し考える。
「たまに体は動かしたいんですけどね」
「そしたら、今度収録後に余裕があったら駐車場でバドミントンでもやるか? 友達にラケット借りるし」
end.
++++
今回はそんなにアレじゃない三井サンのお話。これからだんだんアレになってくるので普通の話もやっておかねばならん
菜月さんの言霊……甘い物が欲しいと言えば甘い物がやってくるよ! 圭斗さんの目でも見てみたい
さて、緑ヶ丘のランニングコースにも遠征しているらしい三井サンですが、これから健康づくりはどうなることやら
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