2018
■共存のブレストチェッカー
++++
「議長、何か言うことは?」
「例によって遅れてしまい大変申し訳ありませんでした」
「あのさあ、次遅れたら真面目に全員分のドリンク奢りよ? アンタ待ってる間に飲んじゃうんだから」
「ははーっ」
今日は木曜日で、対策委員の会議だ。ファンタジックフェスタも終わり、対策委員はここから本格的に初心者講習会に向けて動くことになる。ただ、例によって俺の遅刻からスタート。委員長からさっそく釘が刺される。真面目に全員分奢りは回避したいところ。
さて、初心者講習会というイベントだ。これは、学生ラジオとは何ぞやということを、概念やら簡単な技術やらのインターフェイススタンダードをみんなで共有しておこうという物だ。主に1年生を対象にしてるけど、別に2年生が出てもらっても構わない。
講師は去年の感じを見ていると1コ上の先輩に頼むのが通例っぽい。いや、去年から始まった行事で通例も何もないような気もするけど、去年がそうだったんだし今年も3年生の先輩にお願いするという方針で行くというところまでは決まった。
「具体的に講師を誰にするかの前に、何を教えてもらうのかっていう話ね」
「これはアナミキに分かれて話し合った方がいいんじゃないか、大喜……もとい、ブレーンストーミングで」
「アナミキもそうだけど、全体講習で何を聞きたいかっていうのもあるじゃん」
「あ、そっか」
「まあ、それもブレストでも大喜利でも何でもいいけど、みんなで出すだけ出していこうよ。啓子さん、去年のアンケートある?」
「あるよ」
そう言って啓子さんが出してくれたのは去年のアンケートの集計結果だ。確か前回まではそんなまとめなんてしてなかったと思うんだけど、もしかしなくてもこれは啓子さんが密かにやってくれてたようですね。
自分たちが去年講習会後に書いたアンケートだけど、まさかそれを改めて見ることになるとは思わなかった。それも、自分たちが開く講習会の参考資料として。もちろん先代の先輩方も反省会とか、夏合宿の参考に見たんだとは思うけど。
「そしたらブレスト始めます。啓子さん、書記お願いします」
「わかりました」
「じゃあ、まず俺から。えっと、番組をやる上でのTPOみたいなものとか?」
「それ、わざわざやるほどでもなくない? 当たり前のことだし」
「まあ、そうか。そんなことは普通に各大学で教えてるよな」
「果林、野坂、ちょい待ち」
「つばめ」
「ラジオ系大学じゃ当たり前でもウチじゃ当たり前じゃないからね。もっとグッとレベルを落としてもらわないと」
――とまあ、インターフェイスにはいろんな大学さんがいる。俺や果林といったラジオ系大学の人間にとっては今更やるほどのことでもというようなことでも、つばめのようなステージ系大学の人間には新鮮な話だったりもする。だから何でも出していく。
「ステージとラジオはさ、やっぱいろいろ決定的に違うトコがあんのよ。ミキサーにしても屋外のことの方が多いからラジオの時とは挟む機材の数や設定が違ったりするし。アナにしてもさ、台本の書き方が違う的なコトはやっぱあるみたいじゃんね」
「あー、ステージは一言一句書くんだっけ」
「ウチは洋平が台本無視してアドリブ入れるから朝霞サンがキレてんだけど、まあ大体はそうだよね。一言一句書いてそれを読む。MCは基本的に立ってるし。ラジオでやるならマイクの前に座る姿勢から始めなきゃいけないんだよ。マイクスタンドなんてそうそう使わないし」
対策委員は俺も含めてほとんどがラジオ系の大学から出ている。星ヶ丘以外で強いてラジオっ気の薄い大学と言えば青女くらいか。啓子さんはつばめの話をうんうんと頷きながら聞いているようだけど、俺たちにとってはカルチャーショックだ。
だけど、もし星ヶ丘や青女から講習会に出て来てもらえるなら、ほとんどの子にとって学生ラジオの現場を初めて見る機会になる。今の俺たちが受けているのと同じくらいのカルチャーショックを受けるだろう。
「発声のこととかマイクの前に座る姿勢についてはアナウンサー講習でやってもらうことにしようか」
「そうだね。ミキサーは何かあるかな」
「ミキサーはアレじゃない? 初心者講習のレベルじゃないけど初心者講習会でやっとかなきゃいけない機材の組み立て」
「あ~……やったな去年。全っ然わかんなくて村井サンに後からめっちゃ怒られた記憶が……」
話し合いが深まれば、意見も積もり積もっていく。ドリンクももうすっかりなくなってしまって、氷の溶け残りを啜って口を潤す。ここから会議の頻度も上がって行く。会議の内容も大事だけど、俺にとって一番大事なのはまず遅刻をしないということ。少なくとも次回はマジで遅れられない…!
end.
++++
果林がなかなかの鬼である。全員分ドリンク奢れとかなかなか酷いけど、ノサカの遅刻の方がもっと酷いか
インターフェイスで発言力が強くなりがちなのはラジオ系の大学だけど、ここでつばちゃんの強気な性格が吉と出そうですね
対策委員だけできゃいきゃいと話し合いを進められるうちに進めておきなさい……がんばれ対策委員
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「議長、何か言うことは?」
「例によって遅れてしまい大変申し訳ありませんでした」
「あのさあ、次遅れたら真面目に全員分のドリンク奢りよ? アンタ待ってる間に飲んじゃうんだから」
「ははーっ」
今日は木曜日で、対策委員の会議だ。ファンタジックフェスタも終わり、対策委員はここから本格的に初心者講習会に向けて動くことになる。ただ、例によって俺の遅刻からスタート。委員長からさっそく釘が刺される。真面目に全員分奢りは回避したいところ。
さて、初心者講習会というイベントだ。これは、学生ラジオとは何ぞやということを、概念やら簡単な技術やらのインターフェイススタンダードをみんなで共有しておこうという物だ。主に1年生を対象にしてるけど、別に2年生が出てもらっても構わない。
講師は去年の感じを見ていると1コ上の先輩に頼むのが通例っぽい。いや、去年から始まった行事で通例も何もないような気もするけど、去年がそうだったんだし今年も3年生の先輩にお願いするという方針で行くというところまでは決まった。
「具体的に講師を誰にするかの前に、何を教えてもらうのかっていう話ね」
「これはアナミキに分かれて話し合った方がいいんじゃないか、大喜……もとい、ブレーンストーミングで」
「アナミキもそうだけど、全体講習で何を聞きたいかっていうのもあるじゃん」
「あ、そっか」
「まあ、それもブレストでも大喜利でも何でもいいけど、みんなで出すだけ出していこうよ。啓子さん、去年のアンケートある?」
「あるよ」
そう言って啓子さんが出してくれたのは去年のアンケートの集計結果だ。確か前回まではそんなまとめなんてしてなかったと思うんだけど、もしかしなくてもこれは啓子さんが密かにやってくれてたようですね。
自分たちが去年講習会後に書いたアンケートだけど、まさかそれを改めて見ることになるとは思わなかった。それも、自分たちが開く講習会の参考資料として。もちろん先代の先輩方も反省会とか、夏合宿の参考に見たんだとは思うけど。
「そしたらブレスト始めます。啓子さん、書記お願いします」
「わかりました」
「じゃあ、まず俺から。えっと、番組をやる上でのTPOみたいなものとか?」
「それ、わざわざやるほどでもなくない? 当たり前のことだし」
「まあ、そうか。そんなことは普通に各大学で教えてるよな」
「果林、野坂、ちょい待ち」
「つばめ」
「ラジオ系大学じゃ当たり前でもウチじゃ当たり前じゃないからね。もっとグッとレベルを落としてもらわないと」
――とまあ、インターフェイスにはいろんな大学さんがいる。俺や果林といったラジオ系大学の人間にとっては今更やるほどのことでもというようなことでも、つばめのようなステージ系大学の人間には新鮮な話だったりもする。だから何でも出していく。
「ステージとラジオはさ、やっぱいろいろ決定的に違うトコがあんのよ。ミキサーにしても屋外のことの方が多いからラジオの時とは挟む機材の数や設定が違ったりするし。アナにしてもさ、台本の書き方が違う的なコトはやっぱあるみたいじゃんね」
「あー、ステージは一言一句書くんだっけ」
「ウチは洋平が台本無視してアドリブ入れるから朝霞サンがキレてんだけど、まあ大体はそうだよね。一言一句書いてそれを読む。MCは基本的に立ってるし。ラジオでやるならマイクの前に座る姿勢から始めなきゃいけないんだよ。マイクスタンドなんてそうそう使わないし」
対策委員は俺も含めてほとんどがラジオ系の大学から出ている。星ヶ丘以外で強いてラジオっ気の薄い大学と言えば青女くらいか。啓子さんはつばめの話をうんうんと頷きながら聞いているようだけど、俺たちにとってはカルチャーショックだ。
だけど、もし星ヶ丘や青女から講習会に出て来てもらえるなら、ほとんどの子にとって学生ラジオの現場を初めて見る機会になる。今の俺たちが受けているのと同じくらいのカルチャーショックを受けるだろう。
「発声のこととかマイクの前に座る姿勢についてはアナウンサー講習でやってもらうことにしようか」
「そうだね。ミキサーは何かあるかな」
「ミキサーはアレじゃない? 初心者講習のレベルじゃないけど初心者講習会でやっとかなきゃいけない機材の組み立て」
「あ~……やったな去年。全っ然わかんなくて村井サンに後からめっちゃ怒られた記憶が……」
話し合いが深まれば、意見も積もり積もっていく。ドリンクももうすっかりなくなってしまって、氷の溶け残りを啜って口を潤す。ここから会議の頻度も上がって行く。会議の内容も大事だけど、俺にとって一番大事なのはまず遅刻をしないということ。少なくとも次回はマジで遅れられない…!
end.
++++
果林がなかなかの鬼である。全員分ドリンク奢れとかなかなか酷いけど、ノサカの遅刻の方がもっと酷いか
インターフェイスで発言力が強くなりがちなのはラジオ系の大学だけど、ここでつばちゃんの強気な性格が吉と出そうですね
対策委員だけできゃいきゃいと話し合いを進められるうちに進めておきなさい……がんばれ対策委員
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