2018
■病床での紙々の遊び
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長野っちが入院してしまったそうだ。ファンフェスの日、突然受けたその知らせに電話で第一報を聞いた朝霞クンも、朝霞クンからその話を聞いた俺もショックを受けて。で、とりあえず目の前の番組をこなしてから即興会議。
さすがにすぐは迷惑だろうから、少ししたらお見舞いに行こうということになった。それで、朝霞クンが長野っちにずっとついてるらしい松江クンと連絡を取ってくれて、お見舞いの注意事項なんかを聞いて。
「えっと、何か持ってく? お見舞いの定番と言えば果物だけど~」
「食べ物の差し入れは原則禁止だ。食事療法を受けているそうだから」
「だよね~」
――というワケで、俺と朝霞クンは長野っちのお見舞いに行く前に、街で手土産を探すことにした。食べ物は禁止とは言えさすがに手ぶらで行くのもね、という意見が一致して。
俺たち星ヶ丘大学はインターフェイスの中でもイロモノ扱いと言うか、ちょっと浮いている大学だと思う。インターフェイスの活動はラジオメインだけど、星ヶ丘はステージメインだし。で、そんな浮いている俺たちと距離が近いのが、青敬さん。
青敬さん……青浪敬愛大学は映像をメインに活動している学校で、インターフェイスとの距離もちょっと遠めかな。そこまでガツガツしてるワケでもないし。去年、俺と長野っちは対策委員として一緒に活動してた。まあ、正直俺たちは対策でもちょっと浮いてたから、イロモノ同士くっついた的な?
朝霞クンは定例会では一歩引いた目で冷静に物事を見てるポジション。で、存在感がちょっと薄めで控えめな性格の松江クンには「こっちに来いよ」って感じで手を引いてあげるお兄さんみたいな感じなんだって。伊東クンから聞いた話ではね。
そんなこんなでインターフェイスでは星ヶ丘と青敬ってまあまあ仲がいい。先代もそんな雰囲気だったし。何より、あんなに明るくて元気でノリのいい長野っちが病気で(しかも死にかけて)入院って、話に聞くだけでも本当にショックでしょでしょ。
「病院って娯楽があんまりないらしいから~、本の需要があるとは聞いたことがあるけど~」
「ああ、それは何か部屋に積んでた学術書を読んでるらしい。長野に頼まれて持って来たって」
「……長野っちの学術書って、絶対病院で読むような物じゃないよネ…?」
「……ま、まあ……専攻が呪いの民俗学であることは措いといて、本は持ってるそうだから……」
しまった、2人ともドン引きして固まっちゃった。これじゃダメだと慌てて手土産に話を戻す。本以外でね~!
「朝霞クンがもし入院したとして、本を読む以外に何する~?」
「台本書くかな、ステージの。それか映画見る」
「うわ~、安定でしょでしょ~」
「って言うか、長野が読んでる本って学術書なんだから、いずれレポートなり卒論なりに生かすんだろ」
「だろうね~」
「だとしたら、読みながらメモするノートとか弱粘着の付箋って持ってんのかな。あ、3色ペンもいるかなそしたら」
「えっ、朝霞クンまさかお見舞いにノートと付箋? それはいくらなんでもお見舞いとしてはないでしょ~」
「いや、本を読むなら絶対要る! 間違いない! 本を読む俺が言うんだ」
「え~、じゃあ俺は俺のセンスで選ぼ~っと」
本を読むときには要るのかもしれないよ? それに長野っちの読んでるような学術書なんて絶対ニーズが少ないから単価が高いだろうし、本に直接何かを書き込むなんて気が引けちゃって俺なら出来ない。でもね? お見舞いにノートと付箋はさすがにないでしょ。それで喜ぶのは朝霞クンくらいだからね!
じゃあ、ノートと付箋よりセンスが良くて需要のある手土産ってな~に~? という話になるんだよね。食べ物だったらさ、長野っちはやわらかくてもちもちした物が好きって知ってるから何となく選べるけど、物でしょ? う~ん、長野っち、長野っち~……と言えば。あっ、これにしよう。
「山口、決まったか? 散々人のことをボロクソに言ったからにはお前はいい物なんだろうな」
「じゃ~ん、俺はこれで~す」
「え、これはねーよ。折り紙って」
「長野っちは折り紙が上手なんだよ! 割り箸の袋で箸置きなんてちょちょ~いって作っちゃうし、おしぼりでペンギンだってお手の物だよ? 本を読んで疲れたら、折り紙で遊んでもらおうと思って。机もあるしね。それに病院って殺風景だからいろんな色や柄があっていいデショ? ほら、金と銀もあるよ~」
結局、朝霞クンは大学ノートと絵コンテ用のノート、それから付箋を、俺は折り紙を買ってラッピングしてもらった。あとは病院に向かうだけ。だけどその道中、急に恐ろしいくらい冷静になってしまったんだ。
「……山口、今更だけど、これで大丈夫かな」
「えっと、ホントにダメだったら~、長野っちは要らないって言ってくれるから~……」
「だな。長野のツッコミに期待しよう」
end.
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部活を引退してからじゃないと出来ないとばかり思っていましたが、現役の最中にもアホっぽい洋朝の話は案外出来たらしいです
というワケでお見舞いに行く手前の洋朝。やいやい言いながら決めたお土産を長野っちが喜んでくれるといいのだが
やわらかくてもちもちしたものが好きなのね、長野っち。お団子とかかしら。お子様スパゲッティもどちらかと言えば柔らかくてもちもち系よね
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長野っちが入院してしまったそうだ。ファンフェスの日、突然受けたその知らせに電話で第一報を聞いた朝霞クンも、朝霞クンからその話を聞いた俺もショックを受けて。で、とりあえず目の前の番組をこなしてから即興会議。
さすがにすぐは迷惑だろうから、少ししたらお見舞いに行こうということになった。それで、朝霞クンが長野っちにずっとついてるらしい松江クンと連絡を取ってくれて、お見舞いの注意事項なんかを聞いて。
「えっと、何か持ってく? お見舞いの定番と言えば果物だけど~」
「食べ物の差し入れは原則禁止だ。食事療法を受けているそうだから」
「だよね~」
――というワケで、俺と朝霞クンは長野っちのお見舞いに行く前に、街で手土産を探すことにした。食べ物は禁止とは言えさすがに手ぶらで行くのもね、という意見が一致して。
俺たち星ヶ丘大学はインターフェイスの中でもイロモノ扱いと言うか、ちょっと浮いている大学だと思う。インターフェイスの活動はラジオメインだけど、星ヶ丘はステージメインだし。で、そんな浮いている俺たちと距離が近いのが、青敬さん。
青敬さん……青浪敬愛大学は映像をメインに活動している学校で、インターフェイスとの距離もちょっと遠めかな。そこまでガツガツしてるワケでもないし。去年、俺と長野っちは対策委員として一緒に活動してた。まあ、正直俺たちは対策でもちょっと浮いてたから、イロモノ同士くっついた的な?
朝霞クンは定例会では一歩引いた目で冷静に物事を見てるポジション。で、存在感がちょっと薄めで控えめな性格の松江クンには「こっちに来いよ」って感じで手を引いてあげるお兄さんみたいな感じなんだって。伊東クンから聞いた話ではね。
そんなこんなでインターフェイスでは星ヶ丘と青敬ってまあまあ仲がいい。先代もそんな雰囲気だったし。何より、あんなに明るくて元気でノリのいい長野っちが病気で(しかも死にかけて)入院って、話に聞くだけでも本当にショックでしょでしょ。
「病院って娯楽があんまりないらしいから~、本の需要があるとは聞いたことがあるけど~」
「ああ、それは何か部屋に積んでた学術書を読んでるらしい。長野に頼まれて持って来たって」
「……長野っちの学術書って、絶対病院で読むような物じゃないよネ…?」
「……ま、まあ……専攻が呪いの民俗学であることは措いといて、本は持ってるそうだから……」
しまった、2人ともドン引きして固まっちゃった。これじゃダメだと慌てて手土産に話を戻す。本以外でね~!
「朝霞クンがもし入院したとして、本を読む以外に何する~?」
「台本書くかな、ステージの。それか映画見る」
「うわ~、安定でしょでしょ~」
「って言うか、長野が読んでる本って学術書なんだから、いずれレポートなり卒論なりに生かすんだろ」
「だろうね~」
「だとしたら、読みながらメモするノートとか弱粘着の付箋って持ってんのかな。あ、3色ペンもいるかなそしたら」
「えっ、朝霞クンまさかお見舞いにノートと付箋? それはいくらなんでもお見舞いとしてはないでしょ~」
「いや、本を読むなら絶対要る! 間違いない! 本を読む俺が言うんだ」
「え~、じゃあ俺は俺のセンスで選ぼ~っと」
本を読むときには要るのかもしれないよ? それに長野っちの読んでるような学術書なんて絶対ニーズが少ないから単価が高いだろうし、本に直接何かを書き込むなんて気が引けちゃって俺なら出来ない。でもね? お見舞いにノートと付箋はさすがにないでしょ。それで喜ぶのは朝霞クンくらいだからね!
じゃあ、ノートと付箋よりセンスが良くて需要のある手土産ってな~に~? という話になるんだよね。食べ物だったらさ、長野っちはやわらかくてもちもちした物が好きって知ってるから何となく選べるけど、物でしょ? う~ん、長野っち、長野っち~……と言えば。あっ、これにしよう。
「山口、決まったか? 散々人のことをボロクソに言ったからにはお前はいい物なんだろうな」
「じゃ~ん、俺はこれで~す」
「え、これはねーよ。折り紙って」
「長野っちは折り紙が上手なんだよ! 割り箸の袋で箸置きなんてちょちょ~いって作っちゃうし、おしぼりでペンギンだってお手の物だよ? 本を読んで疲れたら、折り紙で遊んでもらおうと思って。机もあるしね。それに病院って殺風景だからいろんな色や柄があっていいデショ? ほら、金と銀もあるよ~」
結局、朝霞クンは大学ノートと絵コンテ用のノート、それから付箋を、俺は折り紙を買ってラッピングしてもらった。あとは病院に向かうだけ。だけどその道中、急に恐ろしいくらい冷静になってしまったんだ。
「……山口、今更だけど、これで大丈夫かな」
「えっと、ホントにダメだったら~、長野っちは要らないって言ってくれるから~……」
「だな。長野のツッコミに期待しよう」
end.
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部活を引退してからじゃないと出来ないとばかり思っていましたが、現役の最中にもアホっぽい洋朝の話は案外出来たらしいです
というワケでお見舞いに行く手前の洋朝。やいやい言いながら決めたお土産を長野っちが喜んでくれるといいのだが
やわらかくてもちもちしたものが好きなのね、長野っち。お団子とかかしら。お子様スパゲッティもどちらかと言えば柔らかくてもちもち系よね
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