2018
■父母のイメージ
＋＋＋＋
「いっちーせんぱーい」
「いらっしゃい。何かちょっと変わったメンツだね」
「そうですか？」
「果林とタカシはわかるにしても、Ｌがいるからかな。まあ、上がってよ」
「お邪魔しまーす」
日曜日のお昼前、いっちー先輩の部屋に遊びに来た。タカちゃんとＬを引き連れて。いっちー先輩は最近定例会で忙しくしていたのもあるし、無制限飲みもご無沙汰だったから母のご飯が恋しくなったとかそんなようなノリで。それに今日は母の日だからちょうどいい。
いっちー先輩はMBCCの母と呼ばれるような人。高ピー先輩が昔のドラマとかにある頑固で厳格な父親みたいなイメージだとすると、いっちー先輩は一歩引いて高ピー先輩を支えつつも子供たちを温かく包み込む、そんなお母さんのイメージ。
「いっちーお母さんいつもありがとうございます」
「あー、母の日だね。でもさ、言うほど俺ってお母さんぽい？」
「今の３年生の先輩たちの中だったら一番お母さんぽいですよ。“お母さん”って言葉から導き出されるイメージにもよりますけど、少なくともアタシの中ではいっちー先輩は優しくて甘えても怒んなくてご飯作るの上手で～っていう、最高のお母さんです」
「まあ、悪いイメージじゃないんだったらいいけどさ。そろそろいい時間だし、ご飯にしようか。今から作るしちょっと待ってて」
「わーいやったーごはんー！」
今のやり取りに、Ｌが首を傾げている。やっぱり自分にはよくわからないというような顔で。台所からは、いっちー先輩が調理を始めた音。いっちー先輩の料理にハズレはないし、何を作ってくれるのか今から楽しみだ。
「やっぱさ、カズ先輩が優しいお母さんっていうのは違う気がする」
「え、優しいじゃんいっちー先輩」
「俺から見たら、カズ先輩こそが厳格な父親って感じがする。基本怖いし厳しいし、甘えたこと言ったらぶっ飛ばされるし」
「じゃあ高ピー先輩は？」
「高崎先輩はちょっと無愛想だけど優しい兄貴って感じだな。リラックス出来る相手と言うか。普通の先輩よりも砕けた感じになっても怒んないし」
「えー、そっちのが理解出来ないわ。兄貴はともかくリラックスはわかんない。タカちゃんはどう思う？」
「え。俺はまだサークルに入って日が浅いのでよくわからないです」
「そっか」
アタシとＬの間で高ピー先輩に対するイメージといっちー先輩に対するイメージが結構真逆みたいな風になってるのは面白いなあと思う。それでも高ピー先輩は怖いしいっちー先輩は優しい。でもＬからすれば高ピー先輩は優しくていっちー先輩は怖い。
するとこの話に傍観をキメていたタカちゃんが、「確かにアナウンサーとかミキサーの指導の時はどっちの先輩もピリッとしてますよね」と決定打を放つのだ。それに「あー」と２人の声が揃う。先入観のない１年生さすが！
「伊東先輩は俺にはまだＬ先輩に対してみたく本格的に厳しくはしてもらってないとは思うんですけど、サークルで練習してる時のイメージが強そうですよね。先輩たちの話を聞いてるとそんな感じがします」
「そうなんだよね。高ピー先輩は何だかんだ面倒見がいいんだよ。でも練習のときはも～う本当に怖いの！」
「それな。カズ先輩は確かに優しいけど、練習と定例会の時はいつ何が飛んでくるか怖くてしょうがない」
何かを思い出しているのかガクガクと震えながらＬが話していると、台所に繋がるドアの前には……うん、見なかったことにしよう。
「Ｌ、俺が何だって？」
「うわっ、カズ先輩！ いつからいたんすか！」
「今だ。パスタ茹でてる間に机の上軽く片付けようと思ったら何か面白そうな話してんじゃん、なあ」
「いっちー先輩Ｌがいっちー先輩のこと鬼だ畜生だって言ってました！」
「そこまでは言ってねーよ。高木が証人で」
「えっと、俺は何も見てません」
「お前～…！」
「Ｌお前、人のことをどういう言ってる余裕はあんのな。今ここでファンフェス番組の講評でもしてやろうか」
「ホントすんませんっした！」
「あっいっけない。ゴメン果林、今ふきん用意するしテーブルの上拭いてもらっていいかな？」
「はーい。子供は何でも手伝いまーす」
――と、お手伝いをしながらちょっと考えてみる。確かにミキサー陣に対するいっちー先輩は、アナウンサー陣に対してよりもちょっと厳しい感じはある。今にしてもそうだった。だけど、同じ２年ミキサーのゴティに対してはここまで厳しかったかな、と。
「果林、スープとサラダもいるでしょ？」
「食べます！」
「４人分きっかりしか作ってないけど足りるかな」
「あ、大丈夫ですＬが量食べないんでその分もらいます」
「そっか、そうしよっか。Ｌー、お前そこまで量食わないだろー？」
end.
＋＋＋＋
毎度お馴染みMBCCの母の日ですが、今年はＬも参加してちょっと珍しい感じの取り合わせになっています。
Ｌからすれば高崎は優しい兄貴分のようにも映っているとかで、環境が変われば見え方も違って来るようです。
ところでＬは小食である。食欲もそこまでないし、ちょっと摘まむくらいで問題ないよ！
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「いっちーせんぱーい」
「いらっしゃい。何かちょっと変わったメンツだね」
「そうですか？」
「果林とタカシはわかるにしても、Ｌがいるからかな。まあ、上がってよ」
「お邪魔しまーす」
日曜日のお昼前、いっちー先輩の部屋に遊びに来た。タカちゃんとＬを引き連れて。いっちー先輩は最近定例会で忙しくしていたのもあるし、無制限飲みもご無沙汰だったから母のご飯が恋しくなったとかそんなようなノリで。それに今日は母の日だからちょうどいい。
いっちー先輩はMBCCの母と呼ばれるような人。高ピー先輩が昔のドラマとかにある頑固で厳格な父親みたいなイメージだとすると、いっちー先輩は一歩引いて高ピー先輩を支えつつも子供たちを温かく包み込む、そんなお母さんのイメージ。
「いっちーお母さんいつもありがとうございます」
「あー、母の日だね。でもさ、言うほど俺ってお母さんぽい？」
「今の３年生の先輩たちの中だったら一番お母さんぽいですよ。“お母さん”って言葉から導き出されるイメージにもよりますけど、少なくともアタシの中ではいっちー先輩は優しくて甘えても怒んなくてご飯作るの上手で～っていう、最高のお母さんです」
「まあ、悪いイメージじゃないんだったらいいけどさ。そろそろいい時間だし、ご飯にしようか。今から作るしちょっと待ってて」
「わーいやったーごはんー！」
今のやり取りに、Ｌが首を傾げている。やっぱり自分にはよくわからないというような顔で。台所からは、いっちー先輩が調理を始めた音。いっちー先輩の料理にハズレはないし、何を作ってくれるのか今から楽しみだ。
「やっぱさ、カズ先輩が優しいお母さんっていうのは違う気がする」
「え、優しいじゃんいっちー先輩」
「俺から見たら、カズ先輩こそが厳格な父親って感じがする。基本怖いし厳しいし、甘えたこと言ったらぶっ飛ばされるし」
「じゃあ高ピー先輩は？」
「高崎先輩はちょっと無愛想だけど優しい兄貴って感じだな。リラックス出来る相手と言うか。普通の先輩よりも砕けた感じになっても怒んないし」
「えー、そっちのが理解出来ないわ。兄貴はともかくリラックスはわかんない。タカちゃんはどう思う？」
「え。俺はまだサークルに入って日が浅いのでよくわからないです」
「そっか」
アタシとＬの間で高ピー先輩に対するイメージといっちー先輩に対するイメージが結構真逆みたいな風になってるのは面白いなあと思う。それでも高ピー先輩は怖いしいっちー先輩は優しい。でもＬからすれば高ピー先輩は優しくていっちー先輩は怖い。
するとこの話に傍観をキメていたタカちゃんが、「確かにアナウンサーとかミキサーの指導の時はどっちの先輩もピリッとしてますよね」と決定打を放つのだ。それに「あー」と２人の声が揃う。先入観のない１年生さすが！
「伊東先輩は俺にはまだＬ先輩に対してみたく本格的に厳しくはしてもらってないとは思うんですけど、サークルで練習してる時のイメージが強そうですよね。先輩たちの話を聞いてるとそんな感じがします」
「そうなんだよね。高ピー先輩は何だかんだ面倒見がいいんだよ。でも練習のときはも～う本当に怖いの！」
「それな。カズ先輩は確かに優しいけど、練習と定例会の時はいつ何が飛んでくるか怖くてしょうがない」
何かを思い出しているのかガクガクと震えながらＬが話していると、台所に繋がるドアの前には……うん、見なかったことにしよう。
「Ｌ、俺が何だって？」
「うわっ、カズ先輩！ いつからいたんすか！」
「今だ。パスタ茹でてる間に机の上軽く片付けようと思ったら何か面白そうな話してんじゃん、なあ」
「いっちー先輩Ｌがいっちー先輩のこと鬼だ畜生だって言ってました！」
「そこまでは言ってねーよ。高木が証人で」
「えっと、俺は何も見てません」
「お前～…！」
「Ｌお前、人のことをどういう言ってる余裕はあんのな。今ここでファンフェス番組の講評でもしてやろうか」
「ホントすんませんっした！」
「あっいっけない。ゴメン果林、今ふきん用意するしテーブルの上拭いてもらっていいかな？」
「はーい。子供は何でも手伝いまーす」
――と、お手伝いをしながらちょっと考えてみる。確かにミキサー陣に対するいっちー先輩は、アナウンサー陣に対してよりもちょっと厳しい感じはある。今にしてもそうだった。だけど、同じ２年ミキサーのゴティに対してはここまで厳しかったかな、と。
「果林、スープとサラダもいるでしょ？」
「食べます！」
「４人分きっかりしか作ってないけど足りるかな」
「あ、大丈夫ですＬが量食べないんでその分もらいます」
「そっか、そうしよっか。Ｌー、お前そこまで量食わないだろー？」
end.
＋＋＋＋
毎度お馴染みMBCCの母の日ですが、今年はＬも参加してちょっと珍しい感じの取り合わせになっています。
Ｌからすれば高崎は優しい兄貴分のようにも映っているとかで、環境が変われば見え方も違って来るようです。
ところでＬは小食である。食欲もそこまでないし、ちょっと摘まむくらいで問題ないよ！
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