2018
■いち抜けたと叫びたい
公式学年＋１年
＋＋＋＋
「君たち、バーベキューの季節だよ。今日は最初の45分でバーベキューとＴシャツの打ち合わせね。幹事決めから。そうそう、ゼミ生は２年から４年までの３年間に１人１回は幹事やリーダーをやってもらいます。最初にやっとくのもいいかもね」
カットされたバウムクーヘンのような形の机が円形に組まれ、輪になって授業をするのが緑ヶ丘大学社会学部メディア文化学科、佐藤ゼミのゼミ光景だ。８号館地下１階にある学部のスタジオを事実上佐藤ゼミが占拠している。
佐藤ゼミは「ブロック一のサブカル・メディアゼミ」を掲げた実践型メディアゼミで、学部はもちろんのこと、緑ヶ丘大学の花形ゼミ……というのが先生の言っていること。センタービルにあるガラス張りのラジオブースでお昼に番組をやっていて、実際目立つゼミではある。
俺はサブカル的な趣味もないし成績ボーダーが若干怪しかったけど、MBCCのミキサーであるということだけを武器にゼミに飛び込んだ。で、無事に通りましたよね。先生からも高木という名前よりMBCCのミキサーとして覚えられているから、今後はお察し。
で、これから始まるのはゼミの２年生から４年生までの合同イベントであるバーベキューの打ち合わせ。予算は３万円で、これをどうするかという話し合い。それと、学年で揃いのＴシャツを用意するというミッション。
「由香里さん、Ｔシャツも幹事１回にカウントされる？」
「先生、Ｔシャツは幹事にカウントされますか？」
「されるよ。Ｔシャツのデザインと注文は幹事扱い」
「じゃアタシＴシャツやるし」
「Ｔシャツは唯香さんでいいですか。賛成の人は拍手で」
議事進行は趣味でコスプレをしているアーチェリー部の佐竹由香里さん、Ｔシャツのデザインはゲームや歴史、声優さんが好きな美術部の安曇野唯香さんが担当することになった。ちなみにこの女子２人は俺と鵠さんと同じ３班のメンバーだ。
２年生のゼミでは班でひとつの作品を作っていくことになっている。フィールドワークに出たり、文献を紐解いたり。そうやって内容を考えて１本の社会学的なラジオ作品を作る。もちろん、台本も喋るのも録音も編集も自分たちの手で。３年生は映像になるそうだ。
なんか自然にゼミのリーダーポジションになっていた佐竹さんと、デザインとかマシンの扱いに関するセンスのありそうな安曇野さんがいて班的には面白くなりそうだなと。安曇野さんは、分けた前髪を半分赤く染めてて怖いなって思ってたけど。
「やった、これでアタシ今後３年ラクできるし！」
「で、バーベキューだけど」
「じゃあ、バーベキューは俺やるわ」
「えっ、鵠さんバーベキューの幹事やるの？」
「サークルでやったから要領はわかるし、安曇野作戦じゃん？ さっさとやって後から楽する的な」
「バーベキューの幹事は鵠沼くんでいいですか」
当然これにも賛成の拍手が沸いたよね。それでなくても鵠さんの体育会系オーラがバーベキューの幹事という役職に説得力を持たせすぎている。鵠さんてバスケサークルの白いジャージが正装みたいな感じだし。
そして気付く。イベントの幹事なんて柄じゃない俺が、いつ、どのタイミングで「抜～けた」ってやればいいのかと。果林先輩から大体のイベントは聞いてるけど、俺に学祭のブースの店長なんてやれそうにないしなあ。どうしよう。
「鵠沼君、２年生はお酒禁止ね。予算はバーベキューの後の打ち上げにも使っていいけど、問題は起こさないでね」
「わかりました。佐竹、マイク。あと書記頼む」
「鵠沼なんか馬鹿でかい声してんだからマイクなんかいらないし」
「うるせー安曇野、黙っとけ。えー、バーベキューの幹事になりました鵠沼です。まずは希望の食材を聞いていきたいと思います」
はあ、お酒禁止か。まあ、それも聞いてたから大丈夫。ゼミでどんな風にやっていけばいいかはまだわからないけど、バーベキューの幹事がゼミ入り前の段階で友達になってる鵠さんなおかげでちょっと意見が言いやすいかもしれない。
「鵠さん、はい」
「はい高木」
「焼きそばがあるといいなって思うんだけど」
「おっ、いいじゃん焼きそば」
「で、焼きそばやるんだったらソースは絶対オタフクにしてほしい」
「何だそのこだわり」
「は!? ソースはコーミだし！ ふざけんなし！」
「あー、高木、安曇野、その戦争長くなるなら後でやってくれ。あと俺のソウルソースはブルドックじゃん？」
突如勃発しそうなソース戦争。いや、でも普通に考えてソースはオタフクだしなあ……確かにいろいろあるのはわかるんだけどさ。地方の方言のこととかいろいろ調べてるエイジならソースの境界線とか地方勢力図みたいなのも知ってるかな。
そういう育ってきた環境に左右されそうなことは措いといて、まずはみんなが等しく食べたいと思う物の話し合いが優先。焼きそばを食べたいという案自体は特に何の異論もなかったワケだから。
end.
＋＋＋＋
突如勃発したソース戦争ｗ そうか、鵠さんはブルドック派か。今年度の佐藤ゼミのお話は公式学年＋１年に戻してお送りします。
と言うか鵠さんの正装よ。GREENsのジャージが正装なのか？ まあ、TKGにはそう見えるのね。お前さんも黒いジャケットばっかりだけどな
そしてヒゲゼミソース戦争と幹事どうしようってもちゃもちゃ言ってる疫病神様の話もやりたいなあ
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公式学年＋１年
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「君たち、バーベキューの季節だよ。今日は最初の45分でバーベキューとＴシャツの打ち合わせね。幹事決めから。そうそう、ゼミ生は２年から４年までの３年間に１人１回は幹事やリーダーをやってもらいます。最初にやっとくのもいいかもね」
カットされたバウムクーヘンのような形の机が円形に組まれ、輪になって授業をするのが緑ヶ丘大学社会学部メディア文化学科、佐藤ゼミのゼミ光景だ。８号館地下１階にある学部のスタジオを事実上佐藤ゼミが占拠している。
佐藤ゼミは「ブロック一のサブカル・メディアゼミ」を掲げた実践型メディアゼミで、学部はもちろんのこと、緑ヶ丘大学の花形ゼミ……というのが先生の言っていること。センタービルにあるガラス張りのラジオブースでお昼に番組をやっていて、実際目立つゼミではある。
俺はサブカル的な趣味もないし成績ボーダーが若干怪しかったけど、MBCCのミキサーであるということだけを武器にゼミに飛び込んだ。で、無事に通りましたよね。先生からも高木という名前よりMBCCのミキサーとして覚えられているから、今後はお察し。
で、これから始まるのはゼミの２年生から４年生までの合同イベントであるバーベキューの打ち合わせ。予算は３万円で、これをどうするかという話し合い。それと、学年で揃いのＴシャツを用意するというミッション。
「由香里さん、Ｔシャツも幹事１回にカウントされる？」
「先生、Ｔシャツは幹事にカウントされますか？」
「されるよ。Ｔシャツのデザインと注文は幹事扱い」
「じゃアタシＴシャツやるし」
「Ｔシャツは唯香さんでいいですか。賛成の人は拍手で」
議事進行は趣味でコスプレをしているアーチェリー部の佐竹由香里さん、Ｔシャツのデザインはゲームや歴史、声優さんが好きな美術部の安曇野唯香さんが担当することになった。ちなみにこの女子２人は俺と鵠さんと同じ３班のメンバーだ。
２年生のゼミでは班でひとつの作品を作っていくことになっている。フィールドワークに出たり、文献を紐解いたり。そうやって内容を考えて１本の社会学的なラジオ作品を作る。もちろん、台本も喋るのも録音も編集も自分たちの手で。３年生は映像になるそうだ。
なんか自然にゼミのリーダーポジションになっていた佐竹さんと、デザインとかマシンの扱いに関するセンスのありそうな安曇野さんがいて班的には面白くなりそうだなと。安曇野さんは、分けた前髪を半分赤く染めてて怖いなって思ってたけど。
「やった、これでアタシ今後３年ラクできるし！」
「で、バーベキューだけど」
「じゃあ、バーベキューは俺やるわ」
「えっ、鵠さんバーベキューの幹事やるの？」
「サークルでやったから要領はわかるし、安曇野作戦じゃん？ さっさとやって後から楽する的な」
「バーベキューの幹事は鵠沼くんでいいですか」
当然これにも賛成の拍手が沸いたよね。それでなくても鵠さんの体育会系オーラがバーベキューの幹事という役職に説得力を持たせすぎている。鵠さんてバスケサークルの白いジャージが正装みたいな感じだし。
そして気付く。イベントの幹事なんて柄じゃない俺が、いつ、どのタイミングで「抜～けた」ってやればいいのかと。果林先輩から大体のイベントは聞いてるけど、俺に学祭のブースの店長なんてやれそうにないしなあ。どうしよう。
「鵠沼君、２年生はお酒禁止ね。予算はバーベキューの後の打ち上げにも使っていいけど、問題は起こさないでね」
「わかりました。佐竹、マイク。あと書記頼む」
「鵠沼なんか馬鹿でかい声してんだからマイクなんかいらないし」
「うるせー安曇野、黙っとけ。えー、バーベキューの幹事になりました鵠沼です。まずは希望の食材を聞いていきたいと思います」
はあ、お酒禁止か。まあ、それも聞いてたから大丈夫。ゼミでどんな風にやっていけばいいかはまだわからないけど、バーベキューの幹事がゼミ入り前の段階で友達になってる鵠さんなおかげでちょっと意見が言いやすいかもしれない。
「鵠さん、はい」
「はい高木」
「焼きそばがあるといいなって思うんだけど」
「おっ、いいじゃん焼きそば」
「で、焼きそばやるんだったらソースは絶対オタフクにしてほしい」
「何だそのこだわり」
「は!? ソースはコーミだし！ ふざけんなし！」
「あー、高木、安曇野、その戦争長くなるなら後でやってくれ。あと俺のソウルソースはブルドックじゃん？」
突如勃発しそうなソース戦争。いや、でも普通に考えてソースはオタフクだしなあ……確かにいろいろあるのはわかるんだけどさ。地方の方言のこととかいろいろ調べてるエイジならソースの境界線とか地方勢力図みたいなのも知ってるかな。
そういう育ってきた環境に左右されそうなことは措いといて、まずはみんなが等しく食べたいと思う物の話し合いが優先。焼きそばを食べたいという案自体は特に何の異論もなかったワケだから。
end.
＋＋＋＋
突如勃発したソース戦争ｗ そうか、鵠さんはブルドック派か。今年度の佐藤ゼミのお話は公式学年＋１年に戻してお送りします。
と言うか鵠さんの正装よ。GREENsのジャージが正装なのか？ まあ、TKGにはそう見えるのね。お前さんも黒いジャケットばっかりだけどな
そしてヒゲゼミソース戦争と幹事どうしようってもちゃもちゃ言ってる疫病神様の話もやりたいなあ
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