2017(02)
■幹から頒つ
++++
「伊東。そう言えば、ミキサーテストの結果はどうだったんだ?」
ぶっちゃけ聞かれたくなかったし、正直に言えばめっちゃ逃げたいこの瞬間。夏合宿3日目、番組モニターのために来てくれた4年生の先輩から突き刺さる視線が痛いやらキツいやら何やらで。
「あ、えーと……」
「当然、95点以上を取ってトップ通過だっただろう?」
ミキサーテストというのは、ミキサーの理解度などを測る夏合宿の恒例イベント。今年の問題を作ったのが泣く子も黙る定例会前議長の咲良さんだったのだ。と言うか一人じゃ怖いからと野坂に付き合わされましたよね、問題作ってくれっていう依頼を。
そこで俺に出されたノルマは95点以上を取ってのトップ通過。3年なんだし初心者講習会のミキサー講師だったんだからそれくらい出来るだろう、と言われてしまえば「や、やります……」としか言えなかったワケで。
「咲良ー、お前伊東をいじめんなよー」
「この程度で何がいじめだ。MBCCの機材部長なら当然だろう」
「ひー、緑ヶ丘はキビシーねー」
「MBCCの機材部長で定例会委員長なんだ。やれないよりはやれていた方がいいに決まってるだろう。実力が伴うからこそ言動に説得力も生まれるんだ」
「ウチなんてそこまでガチガチな指導やってた覚えもねーや」
「ほっといても育つ向島とは何もかもが違うからな」
「圭斗なんかアナとしての実力は残念だけど言動に変な説得力はあるぞ」
「松岡のアレは……まあ、なんだ、特殊例だろう。そもそも今はミキサーの話だ」
言うなら、徹底的に管理して育てた緑ヶ丘の整ったミキサーと、その辺から生えてきた野性味溢れる向島の個性派ミキサーと言ったところだろうか。確かにウチは向島みたいな機材王国じゃないし基礎から丁寧にやってかなきゃいけないのはわかる。
やいやいと、咲良さんと村井さんがミキサー育成論を戦わせているその裏で、話を先に進めることも逃げることも出来ないでいる俺は立ち尽くすのみ。ぶっちゃけトップ通過出来てないので逃げたいです!
「咲良、ミキサー育成論もいいけど伊東の成績は聞かなくていいのか」
「はっ。そうだった。広瀬、たまにはいいことを言うな。それで伊東、どうだった」
「えーと……97点で」
「おー! 咲良の鬼畜なはずの問題でマジかやるな伊東!」
「順位は」
「……2位でした」
「ナ、ナンダッテー!?」
「村井さん今それマジでやめてください!」
95点以上をとるというノルマは達成できたけど、1位通過は出来なかったワケで。1位は98点を取った野坂だったワケで。実技ならともかくペーパーじゃ。いや、ペーパーだからこそ雰囲気で誤魔化せないモンが出るのか。
「ナニナニ、何の話ー?」
「あっ、ダイさん。咲良が伊東をいじめてる現場ですよ」
「いじめてないと何度言えばわかるんだお前は」
「えっ、何、どーしたの」
「ミキサーテストで咲良は伊東に95点以上で1位通過しろっつってたみたくて」
「確か1位は野坂だったね」
「あー……ペーパーテストで野坂相手はしんどいわな」
「水沢さん、どうでしたか今回の問題は」
「今回はねえ、1年生が思ったより良かったよ。2年生より良かったんじゃないかな。それで1年生の子に話聞いてみたら、初心者講習会で聞いたことが結構問題になってたって言ってて。はー、なるほどーと思って」
それを聞いてちょっとだけ安心した。初心者講習会で講師をやった都合上、1年生の子のミキサーに対する理解とか、そんなようなことにはちょっとと言っても責任がついて回ると思うから。確かに、1年生は誰も罰ゲームをやってなかったはずだ。
ハチミツ大根の汁をセンブリ茶で割った物を飲んでのたうち回ってたのはボーダーに行かなかった世界のシゲトラと、アナなのに巻き込まれた青敬のハマちゃんの印象が強い。あの2人が特に強烈だったからその陰で誰が、とかはあんまり見えなかったけど。
「まあ、今回は良しとしよう。95点は超えたわけだし」
「あざっす!」
「精進を怠るなよ」
「はい」
3年になった今でも、こんな風に目をかけてもらえるのはある意味贅沢で、幸せなことなのかもしれない。確かに怖いし恐ろしいしおっかないけど、気は引き締まりますし、はい。何かもうそう思わないとやってられませんよね。
「あっ、4年生の皆様方! この度はモニター会にお越しいただき本当に――」
「野坂てめえ! 一発殴らせろ!」
「えっ!? 伊東先輩急に何を! ええっ!?」
end.
++++
通りかかったノサカが可哀想なだけのヤツ。いち氏と城戸女史のあれこれ。村井おじちゃんはおまけ。
って言うか城戸女史の圧がなかなかにキツイ。高崎の圧がどうこう言うけど城戸女史がまずアレなんよなあMBCCって。そらイズムを受け継いだいち氏がドS言われるわ
アナなのにミキサーの罰ゲームに巻き込まれたハマちゃん……いつかその件やりたい
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「伊東。そう言えば、ミキサーテストの結果はどうだったんだ?」
ぶっちゃけ聞かれたくなかったし、正直に言えばめっちゃ逃げたいこの瞬間。夏合宿3日目、番組モニターのために来てくれた4年生の先輩から突き刺さる視線が痛いやらキツいやら何やらで。
「あ、えーと……」
「当然、95点以上を取ってトップ通過だっただろう?」
ミキサーテストというのは、ミキサーの理解度などを測る夏合宿の恒例イベント。今年の問題を作ったのが泣く子も黙る定例会前議長の咲良さんだったのだ。と言うか一人じゃ怖いからと野坂に付き合わされましたよね、問題作ってくれっていう依頼を。
そこで俺に出されたノルマは95点以上を取ってのトップ通過。3年なんだし初心者講習会のミキサー講師だったんだからそれくらい出来るだろう、と言われてしまえば「や、やります……」としか言えなかったワケで。
「咲良ー、お前伊東をいじめんなよー」
「この程度で何がいじめだ。MBCCの機材部長なら当然だろう」
「ひー、緑ヶ丘はキビシーねー」
「MBCCの機材部長で定例会委員長なんだ。やれないよりはやれていた方がいいに決まってるだろう。実力が伴うからこそ言動に説得力も生まれるんだ」
「ウチなんてそこまでガチガチな指導やってた覚えもねーや」
「ほっといても育つ向島とは何もかもが違うからな」
「圭斗なんかアナとしての実力は残念だけど言動に変な説得力はあるぞ」
「松岡のアレは……まあ、なんだ、特殊例だろう。そもそも今はミキサーの話だ」
言うなら、徹底的に管理して育てた緑ヶ丘の整ったミキサーと、その辺から生えてきた野性味溢れる向島の個性派ミキサーと言ったところだろうか。確かにウチは向島みたいな機材王国じゃないし基礎から丁寧にやってかなきゃいけないのはわかる。
やいやいと、咲良さんと村井さんがミキサー育成論を戦わせているその裏で、話を先に進めることも逃げることも出来ないでいる俺は立ち尽くすのみ。ぶっちゃけトップ通過出来てないので逃げたいです!
「咲良、ミキサー育成論もいいけど伊東の成績は聞かなくていいのか」
「はっ。そうだった。広瀬、たまにはいいことを言うな。それで伊東、どうだった」
「えーと……97点で」
「おー! 咲良の鬼畜なはずの問題でマジかやるな伊東!」
「順位は」
「……2位でした」
「ナ、ナンダッテー!?」
「村井さん今それマジでやめてください!」
95点以上をとるというノルマは達成できたけど、1位通過は出来なかったワケで。1位は98点を取った野坂だったワケで。実技ならともかくペーパーじゃ。いや、ペーパーだからこそ雰囲気で誤魔化せないモンが出るのか。
「ナニナニ、何の話ー?」
「あっ、ダイさん。咲良が伊東をいじめてる現場ですよ」
「いじめてないと何度言えばわかるんだお前は」
「えっ、何、どーしたの」
「ミキサーテストで咲良は伊東に95点以上で1位通過しろっつってたみたくて」
「確か1位は野坂だったね」
「あー……ペーパーテストで野坂相手はしんどいわな」
「水沢さん、どうでしたか今回の問題は」
「今回はねえ、1年生が思ったより良かったよ。2年生より良かったんじゃないかな。それで1年生の子に話聞いてみたら、初心者講習会で聞いたことが結構問題になってたって言ってて。はー、なるほどーと思って」
それを聞いてちょっとだけ安心した。初心者講習会で講師をやった都合上、1年生の子のミキサーに対する理解とか、そんなようなことにはちょっとと言っても責任がついて回ると思うから。確かに、1年生は誰も罰ゲームをやってなかったはずだ。
ハチミツ大根の汁をセンブリ茶で割った物を飲んでのたうち回ってたのはボーダーに行かなかった世界のシゲトラと、アナなのに巻き込まれた青敬のハマちゃんの印象が強い。あの2人が特に強烈だったからその陰で誰が、とかはあんまり見えなかったけど。
「まあ、今回は良しとしよう。95点は超えたわけだし」
「あざっす!」
「精進を怠るなよ」
「はい」
3年になった今でも、こんな風に目をかけてもらえるのはある意味贅沢で、幸せなことなのかもしれない。確かに怖いし恐ろしいしおっかないけど、気は引き締まりますし、はい。何かもうそう思わないとやってられませんよね。
「あっ、4年生の皆様方! この度はモニター会にお越しいただき本当に――」
「野坂てめえ! 一発殴らせろ!」
「えっ!? 伊東先輩急に何を! ええっ!?」
end.
++++
通りかかったノサカが可哀想なだけのヤツ。いち氏と城戸女史のあれこれ。村井おじちゃんはおまけ。
って言うか城戸女史の圧がなかなかにキツイ。高崎の圧がどうこう言うけど城戸女史がまずアレなんよなあMBCCって。そらイズムを受け継いだいち氏がドS言われるわ
アナなのにミキサーの罰ゲームに巻き込まれたハマちゃん……いつかその件やりたい
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