2019(03)
■マルの数が異次元
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「ロイドく~ん、聞いてくれよ~! ひでーんだよ高崎のヤツがよー!」
「高崎がどうしたんだ」
「アイツ、俺が年末で帰省するっつった時に何つったと思う!?」
「お土産よろしくとか?」
「そんなかわいいモンじゃねー! レポート書けだの資料を集めて来いだの自分のことしか考えてねー!」
年末の帰省も夏と同じくシンの車に乗せてきてもらった。今回はさすがにちょっと渋滞に引っかかったけど、それでも楽しいドライブだったと思う。って言うか夏は高速代をケチって一般道で来たけど、今回はさすがに高速で帰って来た。
で、昨日の今日でさっそくシンと会っている。カフェでこれから年末年始の予定について話し合うことになっているらしい。もしかして俺はこの冬休みの大半をシンとの時間に費やすことになるのだろうか。それはそうと本題はどうした。
「レポートなんかよ、ホントこの世の地獄だぜ」
「そうか? ちなみに何文字の課題なんだ?」
「1万5千」
「それくらいならちょっと集中してやればすぐじゃないか? まあ、メモ見ながらとかになるから1時間に3000字だとして」
「あのさ、文字書く能力で俺とロイド君を比べちゃいけないワケよ。わかる? 1時間に3000字!? 頭おかしくね!?」
「何だと」
「そもそも俺は全部で3000字書くのもやっとなんだよ~…!」
「1万字だろうと2万字だろうと1000字ずつをちょこちょこ積み重ねるだけじゃないか。何がそんなに出来ないんだ」
「つか、1000字2000字ってそんな簡単に言うことじゃないからな? ロイド君感覚バグってるからわかんないかもしんないけど」
夏に聞いた話によれば、シンと高崎は同じゼミに所属しているそうだ。それで、高崎と教授の間には、シンのレポートをそれなりの形にする代わりに自分の出席をどうにか賄うことが出来ないかという契約が成り立っている。
高崎のことをあまりよく知らないなりに抱くイメージでは、高崎はとにかくストイックと言うか、自分にも他人にも厳しいという印象がある。ドライと言うか。そのイメージ通りにビシバシ扱かれているとするならシンが音を上げても仕方ない。
「だけど、高崎も出席目当てとは言えそうやってちゃんと釘を刺してくれるのはありがたいじゃないか。ほっといたらシンはずーっと遊び呆けるだろ」
「そうかもしんねーけどよー」
「で、資料集め? 論文、どんなテーマだっけ」
「えー? 祭とかについて」
「範囲がデカいな」
「いや、祭って言うかイベントって言う方が近いかもしれない。高崎が言ってたんだけど、俺の興味からしたらイベントとか祭をやってる人たちが何を目的にしてんのかみたいなことを調べた方がやりやすいとか何とか」
「あー、シンも大祭実行委員だもんな。そしたら、自分が大祭実行でやってることと他の人のそれがどう違うのかっていうのを比べてみたらいいんじゃないか?」
「えっ、どーゆーコト?」
「自分は大祭実行でこういう目的を持って実際こういう風に動いてます」
「うん」
「じゃあ、イベントを趣味として仕事と両立してる人はどうか、イベントを仕事にしてる人はどうかっていうのはまた違うだろ。仕事だとお金も発生するし、そのイベントだの祭りだのをただ続けたいのか、大きくしたいのかもまた違うだろ。自分のそれと比較して、何が同じで何が違うのかをパッとわかりやすくするだけでも大分それらしくなると思う。誰がどんなケースで動いてるのかっていうのを書くだけでも文字数はそこそこ使うし」
それは、俺自身の進路にも少し関わることだった。大学3年という学年柄、就職についても少しずつ考えて行かなくてはならない時期に来ていた。イベントの仕事がどういうものなのかというのは、俺も調べていかなくてはならないのだ。
たまたまシンの論文のテーマがそういう事柄だからか、より親身になると言うか、熱が入ると言うか。高崎の出席じゃないけど、俺も業界研究を目当てにシンの論文の手助けをしたいような気もちょっとある。まあ、こっちにいる間でもせめて。遊ぶついでにでも。
「ロイド君、今のメモして俺にちょーだい」
「はいはい。とにかく、シンは参考文献を上手く使えない以上、足で稼ぐしかないだろ」
「それ、全く同じことを高崎からも言われてんだよ」
「ならやることはひとつじゃんか」
「だから大祭実行の名刺も一応持って来てんだよ。俺が何者なのか示す物として」
「そういういいアイテムがあるんなら使って行くべきだろ。もしこっちでもフィールドワークとかするなら付き合うけど」
「頼むわー、俺1人だと何をどうしていいのかわかんねーし」
――というワケで、こっちでやってる何かしらのイベントに出陣することが決まったところでさてどうする。山羽でのスケジュールを埋めていくのはこれからだ。
「あっ、関係ないけどロイド君さ、大晦日に高校で花火やんない?」
「花火?」
「適当に集まった奴らで騒ぐ的な?」
「花火はいいんだけど、騒いで大丈夫か? 許可とかさ」
「ぶっちゃけ主催じゃないからよく知らない」
「何だそれ。本当に大丈夫なのか」
「ま、なるようになるんじゃね? あとさ、バンちゃんも帰って来てるみたいだからさ、初詣行かね?」
「お、いいな。バンデンか、懐かしい」
end.
++++
飯野包囲網が着々と狭まっているようです。果たして高崎の出席は1回分確保されるか
帰省した飯野と朝霞Pです。今回はさすがに高速道路を使ったようだけど、確か夏は高崎に毟られたせいで金欠っつってたな
飯野のレポートを助けるメリットをそれぞれに見出しているようですね。まあ、そうでなきゃ人の課題なんか手伝わんわなあ
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「ロイドく~ん、聞いてくれよ~! ひでーんだよ高崎のヤツがよー!」
「高崎がどうしたんだ」
「アイツ、俺が年末で帰省するっつった時に何つったと思う!?」
「お土産よろしくとか?」
「そんなかわいいモンじゃねー! レポート書けだの資料を集めて来いだの自分のことしか考えてねー!」
年末の帰省も夏と同じくシンの車に乗せてきてもらった。今回はさすがにちょっと渋滞に引っかかったけど、それでも楽しいドライブだったと思う。って言うか夏は高速代をケチって一般道で来たけど、今回はさすがに高速で帰って来た。
で、昨日の今日でさっそくシンと会っている。カフェでこれから年末年始の予定について話し合うことになっているらしい。もしかして俺はこの冬休みの大半をシンとの時間に費やすことになるのだろうか。それはそうと本題はどうした。
「レポートなんかよ、ホントこの世の地獄だぜ」
「そうか? ちなみに何文字の課題なんだ?」
「1万5千」
「それくらいならちょっと集中してやればすぐじゃないか? まあ、メモ見ながらとかになるから1時間に3000字だとして」
「あのさ、文字書く能力で俺とロイド君を比べちゃいけないワケよ。わかる? 1時間に3000字!? 頭おかしくね!?」
「何だと」
「そもそも俺は全部で3000字書くのもやっとなんだよ~…!」
「1万字だろうと2万字だろうと1000字ずつをちょこちょこ積み重ねるだけじゃないか。何がそんなに出来ないんだ」
「つか、1000字2000字ってそんな簡単に言うことじゃないからな? ロイド君感覚バグってるからわかんないかもしんないけど」
夏に聞いた話によれば、シンと高崎は同じゼミに所属しているそうだ。それで、高崎と教授の間には、シンのレポートをそれなりの形にする代わりに自分の出席をどうにか賄うことが出来ないかという契約が成り立っている。
高崎のことをあまりよく知らないなりに抱くイメージでは、高崎はとにかくストイックと言うか、自分にも他人にも厳しいという印象がある。ドライと言うか。そのイメージ通りにビシバシ扱かれているとするならシンが音を上げても仕方ない。
「だけど、高崎も出席目当てとは言えそうやってちゃんと釘を刺してくれるのはありがたいじゃないか。ほっといたらシンはずーっと遊び呆けるだろ」
「そうかもしんねーけどよー」
「で、資料集め? 論文、どんなテーマだっけ」
「えー? 祭とかについて」
「範囲がデカいな」
「いや、祭って言うかイベントって言う方が近いかもしれない。高崎が言ってたんだけど、俺の興味からしたらイベントとか祭をやってる人たちが何を目的にしてんのかみたいなことを調べた方がやりやすいとか何とか」
「あー、シンも大祭実行委員だもんな。そしたら、自分が大祭実行でやってることと他の人のそれがどう違うのかっていうのを比べてみたらいいんじゃないか?」
「えっ、どーゆーコト?」
「自分は大祭実行でこういう目的を持って実際こういう風に動いてます」
「うん」
「じゃあ、イベントを趣味として仕事と両立してる人はどうか、イベントを仕事にしてる人はどうかっていうのはまた違うだろ。仕事だとお金も発生するし、そのイベントだの祭りだのをただ続けたいのか、大きくしたいのかもまた違うだろ。自分のそれと比較して、何が同じで何が違うのかをパッとわかりやすくするだけでも大分それらしくなると思う。誰がどんなケースで動いてるのかっていうのを書くだけでも文字数はそこそこ使うし」
それは、俺自身の進路にも少し関わることだった。大学3年という学年柄、就職についても少しずつ考えて行かなくてはならない時期に来ていた。イベントの仕事がどういうものなのかというのは、俺も調べていかなくてはならないのだ。
たまたまシンの論文のテーマがそういう事柄だからか、より親身になると言うか、熱が入ると言うか。高崎の出席じゃないけど、俺も業界研究を目当てにシンの論文の手助けをしたいような気もちょっとある。まあ、こっちにいる間でもせめて。遊ぶついでにでも。
「ロイド君、今のメモして俺にちょーだい」
「はいはい。とにかく、シンは参考文献を上手く使えない以上、足で稼ぐしかないだろ」
「それ、全く同じことを高崎からも言われてんだよ」
「ならやることはひとつじゃんか」
「だから大祭実行の名刺も一応持って来てんだよ。俺が何者なのか示す物として」
「そういういいアイテムがあるんなら使って行くべきだろ。もしこっちでもフィールドワークとかするなら付き合うけど」
「頼むわー、俺1人だと何をどうしていいのかわかんねーし」
――というワケで、こっちでやってる何かしらのイベントに出陣することが決まったところでさてどうする。山羽でのスケジュールを埋めていくのはこれからだ。
「あっ、関係ないけどロイド君さ、大晦日に高校で花火やんない?」
「花火?」
「適当に集まった奴らで騒ぐ的な?」
「花火はいいんだけど、騒いで大丈夫か? 許可とかさ」
「ぶっちゃけ主催じゃないからよく知らない」
「何だそれ。本当に大丈夫なのか」
「ま、なるようになるんじゃね? あとさ、バンちゃんも帰って来てるみたいだからさ、初詣行かね?」
「お、いいな。バンデンか、懐かしい」
end.
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飯野包囲網が着々と狭まっているようです。果たして高崎の出席は1回分確保されるか
帰省した飯野と朝霞Pです。今回はさすがに高速道路を使ったようだけど、確か夏は高崎に毟られたせいで金欠っつってたな
飯野のレポートを助けるメリットをそれぞれに見出しているようですね。まあ、そうでなきゃ人の課題なんか手伝わんわなあ
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