2019(03)
■Go well with rice
++++
僕にとっては今週2回目のおでんとなるMMPでの大会も順調に進んでいた。先日菜月さんがガラポン抽選会で当てて来た米も少しは炊いてあるけど、おでんと一緒にご飯を食う奴なんか野坂くらいで、他の面々は大体おでんだけで満足しているんじゃないかと思いたい。
ただ、先日の定例会おでんと比べるとやっぱり毛色がちょっと違うんだね。やっぱり菜月さんの存在が大きいんだけども。菜月さんはとにかく玉子とこんにゃくが好きで、ちくわやはんぺんなんかの練り物も好きだけど、やっぱり玉子とこんにゃくを多く食べているように思う。
「やァー、さすが圭斗先輩、形から入る男は大根の出来が違いヤすわ」
「ん、りっちゃんに褒めてもらえるだなんて光栄だよ」
「自分は村のサ店でバイトをしてるンすが、如何せんムチャ振りでアドリブ料理を頼まれることも多いンす。おでんの注文もまァあるンで作り置き状態になってるンすけどネ?」
「へえ、いいね。日が経つにつれ美味しくなって、さらに継ぎ足し継ぎ足しのヤツかな」
「そーなんスわ」
今日のおでんは少し大根が多め。それと言うのも、朝霞君から譲ってもらった大根の消費だね。定例会おでんは4人だけど、大食漢の大石君がいるし自分も何だかんだ結構食べるからとたくさんもらったんだね。それから、会場を提供してもらっているという理由での差し入れでもあったらしい。
ありがたくその大根はこのMMPおでんでも活用させてもらっている。本当に農学部の友人から譲り受けたときの状態だから葉っぱがついてたのもまた新鮮と言うか、斬新だったね。普段スーパーで大根を買う時は、葉っぱが付いてない物の方が一般的だと思うんだよ。
「ところでりっちゃん」
「へーい、なンでっショ」
「今、台所を大根の葉が埋め尽くしてるんだけどね。これをどうしたものかと悩んでいるんだよ」
「へー、いージャないスか大根の葉。適当にチャチャッとやってもまァ美味いスよね」
「食べられることは知っているから捨てるには勿体ないかなと思うんだけど、さすがにこれだけの量は多いしね。何かいいレシピは思いつくかな?」
「自分だったら……そースね、軽く塩もみでちょっと置いとくだけの漬け物とか、味噌汁の具にしたりスかね」
「なるほどね」
ムチャ振りのメニューをあるもので何となく形にするのが日常のりっちゃんだから、こういう相談にも何となくササッと答えてくれるのがさすがの貫禄だ。ただ、本人的には料理よりもコーヒーを淹れるのが上手くなりたいとのこと。知る人ぞ知るいい喫茶店らしいよ。今度突撃してみようかな。
「圭斗」
「どうしたんだい菜月さん。玉子が足りないのかな」
「いや」
「それじゃあしらたきかな」
「もうちょっとあれば嬉しいけど、じゃなくてうちを何だと思ってるんだ」
「ん、結果足りないんじゃないか。で、どうしたんだい」
「いや、大根の葉っぱがあるんだったら台所を借りていいか」
「いいけど、何をするのかな?」
「大根の葉っぱと聞いてあれが食べたくなった。確かごはんはまだあるよな」
「まさか菜月さんが、白いご飯を食べるのか」
「今から作るのは、俗に言うごはんのおともだ」
「ナ、ナンダッテー!? 菜月先輩が作られるごはんのおとも!? 俺もぜひ食べたいです!」
そういうことだからちょっと借りるぞ、と彼女は箸を置いて台所に立った。ごはんのおともを作ると言うけれど、これから何が始まるのか実に興味深い。僕は台所と部屋の間に立ち、彼女の様子と部屋の様子、どちらも気に掛けて。
しかし、本当に彼女は普段やらないだけでちゃんとやれば家事……この場合は料理もちゃんと出来るんだなとその手つきでわかる。流れるような所作で調理場を整え、大量にある大根の葉を適当な量だけ鍋で茹でている。
「あ、圭斗、味噌も借りるぞ」
「お好きにどうぞ」
茹で上がったそれを流水で洗ってよく搾り、細かく刻んだそれをフライパンの上に投入。ゴマ油で炒め始めた。そして、味噌と少しの砂糖で味付け。ちなみに、この間に大根の葉の栄養価を少し調べていたんだけど、結構凄いようだね。そして、この調理法もなかなか理に適っているらしい。
「ん。こんなもんか。圭斗、味見」
「どれ。ん、濃いめだけど美味しいね」
「少し濃くしたんだ、ごはんと食べる前提だから」
「実家でよく食べていたのかな」
「そうだな。うちはこの上に温玉オンだ。兄貴もちょっとした偏食で、好き嫌いがほとんど真逆だから芽依ちゃん苦労してたんだけど、これはうちも兄貴も好きでさ」
「それはお母さんにとっての救世主だね」
大根の葉を味噌で炒めたこれが、菜月さんの思う最強のごはんのおともだと言う。確かに、色合いも白に緑で食欲をそそるし、ご飯と食べることを前提にした濃いめの味付けも、実際に箸を進めさせるだろうね。
「出来たぞ!」
「あの、菜月先輩、ごはんと一緒にいただいてよろしいでしょうか…!」
「どんどん食べてくれ」
「いただきます!」
「ヤ、これはジッとしてたら野坂に全部食われヤすわ。菜月先輩、自分もいただきヤす」
「どうぞどうぞ」
「私もいただきます」
「僕も改めてご飯と食べようかな」
「それはいいんだけど、そんなにごはん残ってたか? うちが食べたい前提で作ってるし、うちはごはん食べるぞ」
カレーパーティーかと思う量のごはんをよそった野坂とりっちゃん、それから神崎の様子を見ていると、もしかしなくてもごはんが足りなくなるのではと思わざるを得ない。僕もご飯を食べたいしね。と言うか2年ミキサー陣は食う量が見境なさすぎるんだ。
「……早炊きしようか」
「それがいい。あ、ところで圭斗、しらたきは」
「寸胴の中に入ってるから、欲しいだけ土鍋に移しておいてくれるかな」
「よーし、食べるぞー」
「やっぱり、僕にはわからないよ」
「ん、何がだ?」
「いや、別に」
菜月さんはとても食が偏っている。だけど、彼女が普段食べる機会の少ない葉っぱ類をこれで美味しくうまうま出来るなら、それはとても素敵なことなんだね。まあ、今は器に山盛りにした結びしらたきをうまうましているワケなんだけれども。
end.
++++
MMPおでん大会は、定例会おでんが尾を引いているようです。朝霞Pの、と言うか厳密には宇部Pの大根は葉っぱを付けたままだったのね
菜月さんの思う最強のごはんのおともですが、これは最近ごはんづいているMBCCにぶち込んだらどんな反応をされるかしらね
MMPのこのテの大会では2年ミキサー陣がとにかく食い散らかしてるんですね。でもごはんの消費にはとても良いと思います
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僕にとっては今週2回目のおでんとなるMMPでの大会も順調に進んでいた。先日菜月さんがガラポン抽選会で当てて来た米も少しは炊いてあるけど、おでんと一緒にご飯を食う奴なんか野坂くらいで、他の面々は大体おでんだけで満足しているんじゃないかと思いたい。
ただ、先日の定例会おでんと比べるとやっぱり毛色がちょっと違うんだね。やっぱり菜月さんの存在が大きいんだけども。菜月さんはとにかく玉子とこんにゃくが好きで、ちくわやはんぺんなんかの練り物も好きだけど、やっぱり玉子とこんにゃくを多く食べているように思う。
「やァー、さすが圭斗先輩、形から入る男は大根の出来が違いヤすわ」
「ん、りっちゃんに褒めてもらえるだなんて光栄だよ」
「自分は村のサ店でバイトをしてるンすが、如何せんムチャ振りでアドリブ料理を頼まれることも多いンす。おでんの注文もまァあるンで作り置き状態になってるンすけどネ?」
「へえ、いいね。日が経つにつれ美味しくなって、さらに継ぎ足し継ぎ足しのヤツかな」
「そーなんスわ」
今日のおでんは少し大根が多め。それと言うのも、朝霞君から譲ってもらった大根の消費だね。定例会おでんは4人だけど、大食漢の大石君がいるし自分も何だかんだ結構食べるからとたくさんもらったんだね。それから、会場を提供してもらっているという理由での差し入れでもあったらしい。
ありがたくその大根はこのMMPおでんでも活用させてもらっている。本当に農学部の友人から譲り受けたときの状態だから葉っぱがついてたのもまた新鮮と言うか、斬新だったね。普段スーパーで大根を買う時は、葉っぱが付いてない物の方が一般的だと思うんだよ。
「ところでりっちゃん」
「へーい、なンでっショ」
「今、台所を大根の葉が埋め尽くしてるんだけどね。これをどうしたものかと悩んでいるんだよ」
「へー、いージャないスか大根の葉。適当にチャチャッとやってもまァ美味いスよね」
「食べられることは知っているから捨てるには勿体ないかなと思うんだけど、さすがにこれだけの量は多いしね。何かいいレシピは思いつくかな?」
「自分だったら……そースね、軽く塩もみでちょっと置いとくだけの漬け物とか、味噌汁の具にしたりスかね」
「なるほどね」
ムチャ振りのメニューをあるもので何となく形にするのが日常のりっちゃんだから、こういう相談にも何となくササッと答えてくれるのがさすがの貫禄だ。ただ、本人的には料理よりもコーヒーを淹れるのが上手くなりたいとのこと。知る人ぞ知るいい喫茶店らしいよ。今度突撃してみようかな。
「圭斗」
「どうしたんだい菜月さん。玉子が足りないのかな」
「いや」
「それじゃあしらたきかな」
「もうちょっとあれば嬉しいけど、じゃなくてうちを何だと思ってるんだ」
「ん、結果足りないんじゃないか。で、どうしたんだい」
「いや、大根の葉っぱがあるんだったら台所を借りていいか」
「いいけど、何をするのかな?」
「大根の葉っぱと聞いてあれが食べたくなった。確かごはんはまだあるよな」
「まさか菜月さんが、白いご飯を食べるのか」
「今から作るのは、俗に言うごはんのおともだ」
「ナ、ナンダッテー!? 菜月先輩が作られるごはんのおとも!? 俺もぜひ食べたいです!」
そういうことだからちょっと借りるぞ、と彼女は箸を置いて台所に立った。ごはんのおともを作ると言うけれど、これから何が始まるのか実に興味深い。僕は台所と部屋の間に立ち、彼女の様子と部屋の様子、どちらも気に掛けて。
しかし、本当に彼女は普段やらないだけでちゃんとやれば家事……この場合は料理もちゃんと出来るんだなとその手つきでわかる。流れるような所作で調理場を整え、大量にある大根の葉を適当な量だけ鍋で茹でている。
「あ、圭斗、味噌も借りるぞ」
「お好きにどうぞ」
茹で上がったそれを流水で洗ってよく搾り、細かく刻んだそれをフライパンの上に投入。ゴマ油で炒め始めた。そして、味噌と少しの砂糖で味付け。ちなみに、この間に大根の葉の栄養価を少し調べていたんだけど、結構凄いようだね。そして、この調理法もなかなか理に適っているらしい。
「ん。こんなもんか。圭斗、味見」
「どれ。ん、濃いめだけど美味しいね」
「少し濃くしたんだ、ごはんと食べる前提だから」
「実家でよく食べていたのかな」
「そうだな。うちはこの上に温玉オンだ。兄貴もちょっとした偏食で、好き嫌いがほとんど真逆だから芽依ちゃん苦労してたんだけど、これはうちも兄貴も好きでさ」
「それはお母さんにとっての救世主だね」
大根の葉を味噌で炒めたこれが、菜月さんの思う最強のごはんのおともだと言う。確かに、色合いも白に緑で食欲をそそるし、ご飯と食べることを前提にした濃いめの味付けも、実際に箸を進めさせるだろうね。
「出来たぞ!」
「あの、菜月先輩、ごはんと一緒にいただいてよろしいでしょうか…!」
「どんどん食べてくれ」
「いただきます!」
「ヤ、これはジッとしてたら野坂に全部食われヤすわ。菜月先輩、自分もいただきヤす」
「どうぞどうぞ」
「私もいただきます」
「僕も改めてご飯と食べようかな」
「それはいいんだけど、そんなにごはん残ってたか? うちが食べたい前提で作ってるし、うちはごはん食べるぞ」
カレーパーティーかと思う量のごはんをよそった野坂とりっちゃん、それから神崎の様子を見ていると、もしかしなくてもごはんが足りなくなるのではと思わざるを得ない。僕もご飯を食べたいしね。と言うか2年ミキサー陣は食う量が見境なさすぎるんだ。
「……早炊きしようか」
「それがいい。あ、ところで圭斗、しらたきは」
「寸胴の中に入ってるから、欲しいだけ土鍋に移しておいてくれるかな」
「よーし、食べるぞー」
「やっぱり、僕にはわからないよ」
「ん、何がだ?」
「いや、別に」
菜月さんはとても食が偏っている。だけど、彼女が普段食べる機会の少ない葉っぱ類をこれで美味しくうまうま出来るなら、それはとても素敵なことなんだね。まあ、今は器に山盛りにした結びしらたきをうまうましているワケなんだけれども。
end.
++++
MMPおでん大会は、定例会おでんが尾を引いているようです。朝霞Pの、と言うか厳密には宇部Pの大根は葉っぱを付けたままだったのね
菜月さんの思う最強のごはんのおともですが、これは最近ごはんづいているMBCCにぶち込んだらどんな反応をされるかしらね
MMPのこのテの大会では2年ミキサー陣がとにかく食い散らかしてるんですね。でもごはんの消費にはとても良いと思います
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