2019(03)

■先輩、筆を執りませんか!

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「たまちゃん、片桐神のツイッター見ました!」
「あー、ご丁寧にも@付きで紹介なんてしてくれちゃってね。おかげでフォロワーが10人増えましたわ」

 12月にある舞台の練習に励むアヤちゃんだけどのその合間にうちとも会議に忙しくしている。11月下旬から12月にかけてはいろいろと勝負だからね。うちも新刊の締め切りが続々続々来ちゃって楽しすぎるよね。やめられない止まらない。自らに課す締め切りロード! く~っ。
 で、昨日、11月19日はChocolate Soul Musicというサークルでコンビを組ませてもらってる片桐さんの誕生日。日頃からお世話になっているお礼の意味を込めて片桐さんを狙い撃ちした絵とSSと、それから片桐さんが公開してるほしい物リストから1つプレゼントを贈りましたよね。
 それを、相方の雨宮からもらいましたって片桐さんが宣伝してくれちゃったモンだから通知がもう大変。片桐さん、フォロワーがうちの何倍もいるから拡散力がね。物凄い。作品もそうだし、ほしい物リストからは今回アーモンドとハチミツを選んだんだけど、それの写真を上げてたんですね。

「「落描きで悪いけど、雨宮さんこれからも末永くよろしく」って、片桐神からのこれ! たまちゃんすごい!」
「ボールペン一発描きでこのクオリティは大変なことですよ」

 男前が停めたビッグスクーターの脇で缶コーヒー+タバコはアカンヤツですわ片桐さん、とのたうち回ってましたとも。そのモデルは身近に高崎クンっていうドンピシャのがいるんだけど、その雰囲気がありありであーもうこれはもうあれですわ、ええ、語彙力どっか行った。
 片桐さんてロリ好きのはずなんだけど、ロリ以外も上手いからこその片桐神っていう呼称なんだよなあ。ロリの可愛さ、柔らかさと反対を行くものじゃん、ゴツゴツの男の人にバイク類って。質感や色の使い方も同じ人なのこれって。いつも言ってるけど、そんな人がなぜうちの相方なの!

「しかもさ、片桐さんこのボールペン絵描いてるところ動画で上げてたよねえ、手元撮影で」
「ホントに描いてる、動いてる~って感動した」
「この冬にはChocolate Soul Musicの新刊も出ます」
「ホントに!? 買います!」
「うち個人の新刊も出ますし、イベントには片桐神のツイッターまとめログ本を委託で置きますので、アヤちゃんにはぜひ売り子としてお手伝いいただければと」
「喜んでお手伝いします…!」
「お礼はうちの個人誌とCSM新刊でいいですか」
「ありがとうございます! ありがたき幸せ!」

 アヤちゃんにはいつもいろいろ手伝ってもらっちゃってるのに、お礼がいつも本ばかりなので、そろそろちゃんとお金も計算しないとなーと思うところ。うちのスペースにCSMの本も置いてる頻度高いし、片桐さんにもその辺ちょっと相談してみようかな。金の切れ目が縁の切れ目とも言いますからね。
 うちからすればアヤちゃんも十分神と呼ばれるレベルのコスプレイヤーだと思う。上には上がいるんだろうし、アヤちゃんはそんなところで満足するような人じゃないけど、十分スゴい人だ。そういう人と実質的オフ友みたいにならせてもらってる縁ってそうそうあることじゃない。大切にしたいご縁ですね。

「そうだたまちゃん聞いて」
「うん、どうしたの」
「昨日研修先でさ、例のバンドのピアノさんがね」
「イジメられた?」
「ううん、逆!」

 昨日、アヤちゃんがスタッフになるため研修している星大のPC自習室に、以前エキストラで出演したインディーズ映画の現場で一緒になった人がいたそうだ。その人はアヤちゃんじゃない女の子を待ち伏せていたそうだけど、アヤちゃんも声をかけられてビックリしたって。
 いつもは研修生を自称するアヤちゃんを認めずに厳しい言葉を投げかける先輩が、外から目隠しになるようパーテーションを動かして壁を作ってくれて、驚きで立てなくなっちゃったアヤちゃんを抱え上げてイスに座らせてくれた上に、自前の紅茶まで出してくれてこれを飲んで落ち着けと言ってくれたとのこと。

「先輩、そのギャップダメじゃない…!? 私が地元の先輩の物じゃなかったら、普通の女の子なら即堕ちしてセンターから追い出されてるところだった…!」
「もっと詳しく」
「普段は露出狂だの異常性癖だの機械音痴だのって私を罵ってくれてるピアノの先輩さんが、この事態を何とかしなきゃってやってるときには「これでも女だから何かあっても良くない」って!」
「だってこれ、出待ちしてる不審者からアヤちゃんを含めた女子スタッフを守ってくれようとしてるんでしょ!? でも、アヤちゃんに対するこれは完全に「コイツを貶していいのは俺だけだ」のパターンのヤツ!」
「でしょ!?」
「せんぱ~い、憎い男ですわぁ~」
「しかも、自分とバイトリーダー……あっ、ベースの先輩さんね。が出てもいいけど、オレたちは穏便に済ませる自信がないって。穏便に済ませられないところをむしろ見たかった! だって、情報センターのツートップなの! 極悪とか凶悪で名高いの! 絶対素敵だったんだろうなあって。ナントカが如く的な!? 見たかったぁ~…!」

 アヤちゃん、転んでもタダじゃ起きないなあって思う。突然声をかけられて、自分も怖かったはずなのにね。センターのスタッフさんたちが良くしてくれたからネタとしてうちに吐くことが出来てるんだろうね。でも、そこまで言うなら本当にナントカが如く的な先輩たちを見てみたい気もする。どんな人たちなんだろう。

「はっ…! 片桐神に極道センターの資料を提出してラフい作画してもらうヤツ!?」
「きゃー! さすがたまちゃん! 片桐神をこき使えるのはたまちゃんだけ!」
「アヤちゃん、極道センターの資料ください……コピー本作るから……どんな話になるかはわかんないけど短編集かしら……」
「えっと、ピアノの先輩さんが卒論書いてる人を退出させた結果その人が卒業出来なくなって、殺害予告出されたっていう話とか?」


end.


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極道センターって何やねんwww でもミドリに言ったら同意してもらえそうだから何ともね。
というワケでイシカー兄さん誕生日の後日談。オフの幼馴染みからもプレゼントをもらっていたようですが、オンラインの相方もプレゼントを贈っていたようです。
そういやカナコからリン様の評価って、「2次元的に見ればどちゃくそえっち」だからね、見る目が大概だよ

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