2019(03)

■外野3人、きゃっきゃしたい

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「あっ、なっちー」
「ああ。おはよう大石。あれっ、美奈も来たんだ」
「美奈とはたまたま学内で会ってさ」
「無理を言って、ついて来させてもらった……」

 場所は青池駅前のファストフード店。今日は、今日までに溜まった話題の報告会じゃないけど、先日していた話に少々動きがあったので、軽くつまみながら話でもしませんかというノリで大石と会うことになっていた。まあ、端的に言えば三井関連の動きの報告だな。
 だけど、まさか美奈までいるとは思わなかった。これは嬉しい誤算。そっか、同じ学校だったらそういうのもあるんだな。でも、学部が違えば同じ大学でもそうそうバッタリ会ったりすることもないから、本当に偶然だったんだと思う。何にせよ、美奈と会うのも久し振りだから嬉しい。

「車の中で、成り行きは少し聞いた……だけど、菜月と大石君が、そこまで頻繁に会っているイメージは、なかった……」
「インターフェイスの中で言えば、最近だと大石と一番会ってる気がする」
「……BJより…?」
「なんなら高崎とは全然会ってないな。夏合宿以来とか、それっくらいになるんじゃないかな」
「俺も定例会以外なら今年はなっちが一番会ってるかな」
「やっぱり、1年生の頃からの付き合いだというのも、ある…?」
「ああ、そういやうちら1年の頃から付き合いあるな」
「そうだね。確か夏合宿で知り合ったんだよね。でも、やっぱりファンフェスで一緒の班になったのが大きかったんじゃないかな」
「ああ、それだそれだ。あと、ツミツミも大きい」
「ああ~、確かに」

 インターフェイスでは1年の頃の夏合宿で同じ班になった奴と付き合いが続きやすいとか何とかと言われている。実際うちはそれで高崎と続いてるし、伊東と石川なんかも頻繁には会わないにせよ、会ったときには悪くない関係が続いているそうだ。だけど、何だかんだ結局は直近の付き合い方なんだと思う。
 大石は雰囲気がほわほわしていて居心地がとてもいい。うちのフェチ的な意味で目の保養にもなるし、癒しと言ってもいいだろう。スマホゲーのツミツミでは良いライバルだ。最近では三井関係の相談が多かったりして物騒な話題も多いけど、三井の春なんか外野がどうこう言わなくても勝手に玉砕して次の春に移るんだから、議論する必要もないくらいだ。

「そう、本題。三井の春について動きがありました」
「あっ、本当」
「あずさちゃん本人から聞いてるかもだけど、結局三井はあずさちゃんが朝霞と付き合ってると勝手に勘違いをして、あずさちゃんを尻軽認定した上で負け惜しみを吐きつつ次の春へと移っていったっていう、いつものヤツな」
「あー……うん、本当にあるあるだ。UHBCじゃ本当によく聞くよ、それ」
「……彼がまた、女性を追いかけていた…?」
「俺の幼馴染みの子がさ、ミッツに付きまとわれてたんだって」
「三井の理論では、自分と話すときに上目遣いだったからこの子は自分のことが好きなんだ、きっとこれは運命だ、僕も好き! ……的な。ちなみにその子は中肉中背だから、181センチの人間と話そうとすれば見上げる形になるのは当然なんだけどな」
「……理解に、苦しむ……」
「三井が星ヶ丘の大学祭に乱入したみたいなんだけど、そこで自分と一緒に学祭を回れってあずさちゃんを追いかけてたところに通りかかった朝霞に助けを求めて」
「だけど、その朝霞はステージ直前で気が立ってて……」
「ああ……」
「ステージ前の時間を邪魔された朝霞はブチ切れるわ、その犠牲になった山口は半泣きでうちに電話をして来るわ、三井は反省の素振りがないわでもーう大変よ。圭斗なんか朝霞と電話しながら本当に申し訳ないの繰り返し」
「朝霞は怖いからね。ダテに鬼のプロデューサーじゃないよ」

 ノサカのヤツを借りると「意味がわからない」、麻里さんのヤツを借りると「アイツバカなの? ああ、バカだわ」というヤツだ。そんなあれこれをミックスしたような顔をして、美奈が首を傾げている。うん、まあ、三井関係のあれこれは理解出来る方が希有だし。

「まあ、三井は人様のモノに手を出すのには懲りてるから、あずさちゃんはもう眼中にないと」
「あずさも怒ってたけどね。自分はむしろ被害者なのに、どうしてあたしがあの人を好きだったことにされて勝手にフられたみたいになって負け惜しみを吐かれてるのかーって」
「三井だからしょうがない」
「としか言いようがないよね」

 三井に関して深くどうこう議論する方がどうかしているので、しょうがないよねという結論を出して3人で大きな溜め息を。どうしよーもねーなアイツ、と村井おじちゃんの声で再生されている。

「あっ、そうだなっち、話は全然変わるんだけどさ」
「うん」
「スポーツブランドのファミリーセールに興味ない?」
「ファミリーセール?」
「うん。メーカー物のグッズとかが安く買えるんだ。俺がバイトしてる会社の関係で入場出来るんだけど、興味ないかなと思って」
「ちなみに、どんなブランドが?」
「たとえば、今なっちがしてるポーチのブランドとか」

 この花柄のポーチは9月にこっちに帰ってきたときに、美奈とお揃いになるねーなんて言いながら買ったヤツだ。如何せんいいブランドだからか、ジャケット1枚に結構いい値段がしてて。

「他にもいろいろあるけど、主力はそれだね」
「行ってみたいです!」
「わー、よかったー。じゃあ一緒に行こう。美奈も覗いてみたいって言ってたけど、スポーツブランドはなっちの方が好きだと思うって教えてくれてさー」
「ちなみに、何がどれくらい安くなるんだ?」
「俺の私服は大体ファミリーセールで買ってるよ。このスウェットとか、定価6000円くらいはすると思うけど、社割もあるから1400円とか」
「安っ」
「この靴は、定価15000円が汚れ品だからって理由で3000円でさらに社割が」
「楽しい現場だってことはよくわかった。節約しなきゃ」

 ちょっと前までのどうしようもない話よりも、先の楽しそうな話の方が圧倒的にしていて楽しい。何度でも言うけど、三井の話なんかしてたところで所詮外野だしどうしようもないしな。一応報告はさせてもらったけど。せっかくこうしてそうそう会わない人と会ってるんだから、楽しい話をしていたい。

「えっ、大石って何気に全身ブランドだった?」
「あはは。そうだけど、買った時の値段全部合わせてもなっちのブーツより安いと思うよー」
「えっ、このブーツ、12000円だけど」
「あっはは、全然行かないよ。定価なら靴だけで超えるけどね」
「菜月……大石君は、買い物上手……服だけじゃなくて、きっと普段の、スーパーでの買い物でも……」
「なるほど! 買い物術を教わればいいんだな!」
「ええっ!? そんな特別な買い物の仕方はしてないよー!」


end.


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ナツちーがやりたいというだけのヤツ。ナツちーが可愛すぎるからね、仕方ないね
三井サンの話の振り返りが彼女たちの本題だったようですが、話しててもしゃーないんですよね実際。他の話をしたいですね
で、ファミリーセールの件ね。確か昨年度高崎が頭おかしいって言ってた例のヤツ。今年もそんな物が見られるのか!

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